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2016年06月01日

東北大、非正規教員3200人「雇い止め」? 非常勤講師労組がブログで告発

Jcastニュース(2016/6/1)

東北大学が実に3000人を超える非正規教職員を2年後に「雇い止め」しようとしている――。非常勤講師らで作る労働組合「首都圏大学非常勤講師組合」(本部:東京都豊島区)のそんな告発が、話題を集めている。

背景にあるのは、2013年4月に施行された改正労働契約法の「無期転換ルール」だ。最初の有期雇用契約から満5年経過後は、任期の定めのない無期雇用への転換を望んだ労働者は無期雇用としなければならないことを定めている。これが有期雇用の非正規雇用を大量に抱える大学法人にとって深刻な問題となり、非常勤講師などの働ける期間を最長5年に定める大学が相次いでいた。

大学当局「現在検討中です」

首都圏大学非常勤講師組合の「告発」は、2016年5月31日のブログに掲載された。それによると、東北大学は2018年以降、その時点で6年以上勤務する非正規教職員を、順次雇い止めする方針を固めたのだという。予想される対象人数は、およそ3200人。J-CASTニュースが取材した首都圏大学非常勤講師組合の関係者によると、無期雇用への転換となるのは04年の独立行政法人化のときから働いている教職員などで、各教職員にはすでに自身の雇い止め期日を知らせる文書も配られているらしい。

関係者によると、対象の非正規教職員は16年4月の学内説明会で2年後の雇い止めを通告された。ただ、説明会で配布された文書には「無期転換候補」となれる「選考基準」も示されており、それには正規職員と「同等、あるいは同等以上の成果を出すと見込まれるものであること」と記されているという。改正労働契約法の「無期転換ルール」とは異なる基準とみられる。組合関係者は

「正規と同じ仕事をして欲しいなら、正規職員を雇えばいいじゃないですか。大学側は雇い止めの理由を『無期雇用を活用するため』と言っていますが、おかしな話ですよ」
と批判する。

 ちなみに、東北大学にコトの真偽を問い合わせたが、「本学における無期転換制度については、現在検討中です」としか答は返ってこなかった。

 大学教職員の「雇い止め」問題は「無期転換ルール」との兼ね合いで、以前から話題となっている。日本の大学は非常勤講師やTA(ティーチングアシスタント)といった非正規の教職員を多く抱えている。彼らのほとんどは大学と有期雇用契約を結び、1年ごとに契約を更新する。契約期間を過ぎれば契約を解除されてしまう不安定なポストだ。

そんな非正規教職員の数はここ数年右肩上がりだ。文部科学省が15年3月31日に発表した資料「大学教員の雇用状況に関する調査」によると、07年度から13年度の間に任期付きの教員が4000人も増えている。教員数全体に占める任期付き教員の割合は27%から39%に上昇。逆に、無期雇用の教員は約1400人減った。

3年前に「ブラック企業」特別賞を受賞

この傾向は若手教員の間で顕著だ。30歳以上35歳未満の教員の場合、任期付きは07年度の1618人から13年度には2493人に、35歳以上40歳未満は1650人から2899人に急増している。

大学は雇用の安定化を図るため、有期雇用の教職員を活用する方針に切り替え始めた。ところが、「無期転換ルール」によって大学側は逆に、大量の無期雇用を抱えるリスクを背負ってしまったわけだ。

無期雇用の急増は避けたい――。そう考えた多くの大学が、労働契約法が改正された13年頃から学内の就業規則を変えるなどして非正規教職員の雇用年数を最長5年に定め始めた。

早稲田大学など一部の大学では、これに反発する教職員労働組合が大規模な抗議活動を展開した。こうした活動も作用したのか、16年までに多くの大学で5年の上限は撤廃されている。早稲田大も15年11月に組合と和解し、撤回した。そんな中、突如持ちあがった東北大の通告。組合の関係者は

「こんなことやっていいのかと思います。時代に逆行していますよ」
と呆れ返る。

なお、今回の件と直接の関係はないが、東北大は13年6月27日発表の「第2回ブラック企業大賞」で、研究職員の過重労働を理由に、教育機関としては唯一「ブラック企業」特別賞を受賞している。


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