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2017年03月23日

上野学園を告発して解雇…ピアニスト横山幸雄氏が全激白

日刊ゲンダイ(2017年3月22日)

 「このまま学園が潰れたら、学生たちが路頭に迷う。(経営陣と)ケンカをしたいわけでもなければ、犯罪者にしたいわけでもありません。学生たちが音楽を学べる環境を取り戻したい。ただそれだけなんです」

 こう悲痛な思いを語るのは、上野学園大元教授で、世界的なピアニストの横山幸雄氏(46)だ。

 同大は1904(明治37)年に設立された学園が経営する名門音楽大。創設初期に校長を務めた石橋蔵五郎以来、一族経営が続いている。

 一方、横山氏は1990年に最年少でショパン国際ピアノコンクールで3位入賞した世界的ピアニスト。98年から同大で指導し、「盲目のピアニスト」辻井伸行氏(28)を育てた。

「私が学園に携わった当初は、現役の演奏家が後進を育成することはそれほど一般的ではありませんでした。そこで仲間の演奏家たちに『上野学園に力を貸して欲しい』とお願いしました。ところが学園は、毎年数億円の赤字を出し続け、給与を半分に下げ、中には月給が10万円になった専任教授もいます。彼らは演奏家としての貴重な時間を削りながら、教育に力を注いでくれた。それが『経済的にも精神的にもきつい。辞めさせてください』と頭を下げられ、言葉を失いました」(横山幸雄氏)

 その元凶が創業家一族による学園の私物化だという。横山氏は昨年8月、学園の旧経営陣を背任の疑いで東京地検と上野警察署に刑事告発した。

 学園側はHPで石橋慶晴前理事長(49)と母親の石橋裕学園長(今年死去)の役員報酬について、「高額であり、適切性を欠く水準」と明記。第三者委の調査報告書によると、10年以降、勤務実態のない裕氏に1億4000万円が支払われ、補助金が減額される一因となった。さらに石橋一族が役員を務める関連企業「和」に高額な業務委託を行っていた。その一方で赤字補填のため、昨年7月にはバッハの直筆の譜面を3億4000万円で売却したというのだから、メチャクチャだ。

「経営環境の悪化を理由に教職員の給与を減額する一方、前理事長は報酬を下げたように見せかけて、給与に付け替えていました。第三者委では過去9年間で学園が『和』に業務委託したことによる損失が8億4000万円になるという指摘がありました」(横山幸雄氏)

 学園側は今月13日、経営の健全化を求める横山氏を、「就業規則違反を繰り返していた」として解雇した。

「複数のメディアにおいて、学園の創業一族が多額の金員を着服したかのような内容が報道されています。これらの報道は事実を伝えるものではありません」(上野学園広報担当者)

 そこで学園側に横山氏に対する法的措置を取るのか尋ねたところ、代理人を通じて「回答不要」とのことだった。

「本来なら教育に回るべきお金が創業者一族に流れ、『犯罪者の片棒を担ぐようなことをこれ以上続けるのはムリだ』と辞めていった同僚もいます。しかし『私と一緒に音楽を学びたい』と言ってくれる学生がいる限り、無責任なことはできません」(横山幸雄氏)

 横山氏は近く、「学生たちを守らなければならない」と、地位保全の仮処分を申請する予定だ。

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