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2018年02月21日

常葉大学不当解雇事件、最高裁「懲戒解雇処分の不当性」を認める

■静岡大学の職組ニュース,第5号(2018年新年号)

「懲戒解雇処分の不当性」
最高裁判所の判断にて勝ち取りました

 例えば、ある役職で補助金の不正取得の書類作成を強いられた時、皆さんはどうしますか?そして協力を拒否した後に、陰湿な脅し等のパワハラを受けるようになったらどうしますか?決して他人ごとではない誰もが経験するかもしれないケ スですが、教育研究にかかわるものとしてそういう現実と折り合って行くのは簡単なことでしょうか? 常葉学園のM先生は、補助金の不正行為に目をつぶることができず、そしてパワハラ等が内部告発阻止のために組織的に行われていると認識し大学側を訴えました。それは異常な行動でしょうか?常葉学園は大学を訴えたことをもってM先生が「学園の秩序を乱し、学園の名誉又は信用を害したとき」として懲戒解雇処分を行いましたが、それは大学の組織運営における当然の権利なのでしょうか?

 本年1月19日に最高裁判所は 、M先生に対する常葉学園の懲戒解雇処分が「解雇権の濫用であり無効である」との静岡地裁から東京高裁へと引き継がれた判決を維持する決定を下しましだ。2015年3月末の懲戒解雇処分以来、2016年1月の静岡地裁での地位保全を認める勝訴、2017年7月での静岡地裁判決を維持する東京高裁決定に続き、最高裁においても懲戒解雇は不当であるとの判断が下されたことでM先生の労働契約上の地位は最終的に確定することになりました。2015年12月にM先生から支援の訴えが私たち静岡大学教職員組合に寄せられたことをきっかけに、静岡県立大学と静岡英和学院大学の各教職員組合が国立 ・公立・私立の枠を超えて共同での支援が行われて来ましたが、ここに勝訴が最終的に確定したことに安堵し喜ぶとともに、皆様方の支援協力により感謝申し上げる次第です。

 今回の裁判の発舗は、常葉学園の補朗金不正取得に対するM先生の良心に基づく行動でした。公益通報に至るM先生の行動に対して様々な脅迫まがいの言動やパワハラが行われました。その行為に対して常葉学園を強要罪で訴えた訳ですが、脅迫・パワハラ行為が公益通報阻止を目的として行われたという証拠が不十分として不起訴となりました。これ が根拠の乏しい訴えで学園の名誉を傷つけたとして懲戒解雇事由とされたわけですが、裁判では 「本件懲戒解雇は、懲戒権の濫用であり、本件刑事告訴をその理由とするも、実質的には公益通報に対する報復措置である可能性がT否定できない」 と認めています。なぜならM先生の懲戒処分の検討は、刑事告訴の後ではなく、公益通報の直後に始まり、そのために必要な懲戒規定も事後的に作成されたからです。

 もちろん裁判においてそれぞれの主張があり、その主張が認められる揚合もあればそうでない場合もあります。そういう経緯はともかく最高裁という司法の最終的判断が下された揚合は、それを真摯に実行するのは最低限の責務と言えます。しかし今回の最高裁決定が下された後ち、常葉学園側はM先生の職場復帰に向けた行動を伺ら起こしていません。教育研究者として不正行為への協力を拒否し゛、良心に基づいて訴えたことを持って,組織への裏切り者の熔印を押して罰し続ける学園側の行動は異常であり、最高裁の決定も無視し続ける姿勢は教育機関の資格がないと言わざるを得ませ ん。
 

 1月29日に県庁記者クラブで弁護団西ヶ谷弁護士と支援教職員組合で共同記者会見を開催し、M先生の教育研究者としての職場復帰の速やかな実行を訴えました。地位保全は当然M先生の教育条件の回復を伴ったものでなければなりません。折しも、常葉大学も草薙キャンパスオープンで新たなスタートを切ろうとしていますが,常葉大学も本年4月以降M先生の教育研究者としての権利保証の具体的措置を取ることで過去の負の遺産を清算することが求められていると思います。良心と信念を貫いたM先生こそ教育者として大学の財産となるのではないでしょうか。最終的な解決まで皆様のご協力支援を引き続き心から訴えさせて頂きます。

(過半数代表者:前教職員組合委員長 鳥畑与一)


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