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2018年02月21日

明治学院、「いじめ対策せず」元高校女生徒に続き―大学でも「盗聴」に抗議する教授を懲戒解雇し提訴されていた

『アクセスジャーナル』(2018年2月20日)

「いじめ対策せず」元高校女生徒に続き―大学でも「盗聴」に抗議する教授を懲戒解雇し提訴されていた「明治学院」

山岡俊介

 「明治学院」(東京都港区)といえば、ヘボン式ローマ字で知られるアメリカ人宣教師ヘボン博士夫妻が開いた私塾が源流。150年以上の歴史を誇り、わが国最古のミッションスクール。

 そんな博愛精神を説く由緒正しい学校法人傘下の「明治学院東村山高等学校」(東京都東村山市)の女生徒(当時)が、いじめに会っていると訴えたにも拘わらずキチンと対策をしてくれなかったとして校長を相手取り、提訴したことは以前、本紙でお伝えしたが、同じく傘下の「明治学院大学」(東京都港区)でも、懲戒解雇された教授が、地位確認と約1372万円の慰謝料を求めて提訴していたことはわかったので報じる。

 この訴訟、大学側が教授の授業中に無断で教室に立ち入り"秘密録音"した内容を根拠に懲戒解雇しており、「大学自治」「学問の自由」「信教の自由」にも関わる重大な点が問われているのだが、なぜか大手マスコミではまったくというほど報じられていない。

 もっとも、すでに16年12月に提訴され、今年1月25日には証人尋問が行われ、いよいよ一審判決が迫っている。

 原告は愛知大学法学部教授を経て、10年4月から明治学院大学へ移籍、教養教育センターの教授として16年9月まで、教養科目の「倫理学」を教えていた寄川条路氏(56)。

 訴状などによれば、被告が懲戒の最大の理由にあげたのは、授業の無断録音の事実を知った原告が誰が録音したか、またその録音を聞かせて欲しいと要求したが拒否されたことから、止む無く授業で配るレポート用紙の欄外に情報提供を求める書き込みをした点。

 また、原告の授業は生徒に大人気だったところ、学校側が一方的に300名に履修制限したことから、その是非と理由を問う質問を、生徒向けの授業評価アンケートの質問内容に加えたこと。それから、授業で用いた原告の著書のなかに、キリスト教主義に批判的な内容が一部含まれていたことも懲戒理由としてあげられている。

 読者のなかには、原告が政治的発言を行う者だったからではないかと推測する方もいるかも知れないが、原告はそんなことはなく、上記のような行為をしたに過ぎない。

 ところが、被告側は授業の盗聴は今回に限らず、以前から大学組織を守るために「慣例」として認められていると、「違法行為」と抗議する原告に言い放っていたという。

 そして、盗聴に限らず、以前から大学の権威やキリスト教主義を批判しないように、授業で使う教科書を検閲したり、教材を事前に検閲し配布禁止にしたりしていた。また、原告に限らず、以前にも些細と思われる理由で懲戒解雇された事例があるそうだ。

 横に、会員制情報誌『ベルダ』に寄稿した慶應大名誉教授で弁護士の小林節氏の記事(17年10月号)を転載しておいたが、同氏もいうように、教授は大学と契約した授業に関して自由に研究や発言する「学問の自由」(憲法23条)が保障されている。そして、教授の使う教科書を「検閲」するのも、まして「盗聴」など論外というか「違法行為」のはずだ。

 実際、16年10月、寄川氏が労働審判の申し立てを東京地裁に行なったところ、同年12月、解雇は無効として地裁は寄川氏を復職させるように明治学院を説得。ところが拒否したことから本訴訟に移行している。

 かつては東大ポポロ事件のように、大学構内に警官を入れることさえ大学の「学問の自由」と「自治」を犯すとして大問題になったのに、いつしか警官導入は当たり前に。本来、大学側の「盗聴」行為と聞けば大学内外から大きな批判の声が起きて当然とも思うのだがそれもなく、報道もなく、原告がほとんど孤立している状況は世も末というべき。

 遅ればせながら、今後の判決など注視したい。

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