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2018年06月05日

日大教職組、「日本大学アメリカンフットボール部による重大な反則事件に関する声明文」

■東京私大教連ニュース

2018年5月21日

学校法人日本大学理事長 田中英壽殿
学校法人日本大学学長 大塚吉兵衛殿

日本大学アメリカンフットボール部による重大な反則事件に関する声明文

日本大学教職員組合執行委員会委員長 菊地香
文理学部支部長 初見基
経済学部支部長 木暮雅夫
商学部支部長 竹内真人
船橋支部長 吉田洋明
湘南支部長 清水みゆき

 2018年5月6日に行われたアメリカンフットボールの日本大学と関西学院大学の定期戦において、本学アメリカンフットボール部選手が関西学院大学チームのQB(司令塔)に対してきわめて危険な反則プレーを行い負傷退場させる「事件」が起こってしまった。このことをめぐって、連日、新聞・TV・ネットなどで大きく報じられ、その行為のみならず、本学の示した事後対応が不透明・不誠実であるとの批判・非難の声が強まったのは周知の事実である。
 
 本学が教育機関であることを踏まえれば、上述した外部からの批判・非難の有無にかかわらず、本学の選手がなぜあのような悪質極まりない言語道断な暴力的行為におよんでしまったのかに関しては、第三者機関による調査活動とは別に、大学当局が自浄作用を働かせて公正かつ厳正な調査を実施して、真相を徹底的に究明しなければならない。また、被害者や関学アメフト部をはじめとする関係者の方々に納得していただくことができる説明と謝罪、ならびに補償と再発防止に向けた具体的な取り組みが示されなければならないことも当然である。
 5月19日(土)の報道によれば、アメフト部の内田正人監督がすべての責任を認めて謝罪し、監督を辞する旨を表明した。だが、その対応は遅きに失し、もっとも肝心な点が一切言及されなかったため、監督の辞任だけでは済まされない状況を自ら作ってしまったと言えよう。さらに、今回の事件に関して、内田監督が本学の人事担当の常務理事という要職に就き、学内で絶大な権力を行使する立場にあることから、一スポーツ部の一監督や一選手のあり方ばかりか、本学の大学としてのあり方、なかんずく外部の関係者に対する「姿勢」(不誠実と呼ばざるを得ない対応)や「体質」(有無を言わせずに従わせる上意下達の体育会的気風)や「社会構造」(学内の意思決定のあり方、権力構造や人的資源の配分構造)にまで関連させて問題視する指摘が各方面から相次いでなされるようにもなってしまった。今回の事件は、こうした本学の抱える看過できない問題性が、図らずも衆目にさらされることとなったのである。

 私たちは、スポーツマンシップ以前に人間としての基本姿勢に反する事件が起きたことに対して、高等教育機関であり、知の共同体であるべき本学の教職員一人一人が、この大学を創っているのだということを反省的に捉え返し、今後の歩みに生かしていく必要があるだろう。その上で、理事長、理事会と大学学長に対して、以下の諸事項の履行を強く求めるものである。

(1)付属学校も含めた本学における健全なスポーツのあり方を再検討し、すべての競技選手に対してあらためてフェアプレイ精神の重要性を再教育すると同時に、ラフプレーを行った当該選手が個人的な攻撃に見舞われないよう大学として最大限に配慮すること。
(2)第三者機関の徹底した真相究明に全面的に協力し、協力した者への如何なる圧力も禁じること。
(3)専断的でなく民主的な大学を創るために、一人一人の学生及び教職員を、それぞれ独自の意思を持つ人格的な存在として尊重し、権力を行使し得る立場にある自分たちと同等に位置づけ、多様な声に絶えず耳を傾けて、それを最大限に大学運営に反映させる制度を確立すること。
(4)運動部だけでなく、日本大学の全組織を挙げて、上意下達の体質を改め、パワーハラスメントになりやすい権力行使を抑制する仕組みを構築して、風通しの良い学内環境を醸成しつつ、自主創造の精神が十分に発揮される生き生きとした大学に再生させる行動計画を策定すること。
(5)本学のあり方(姿勢・体質・構造)に対する厳しい批判を真正面から受け止め真摯に反省し、人事及び人心を一新すること。

 連日メディアでセンセーショナルに報道されているこの問題によって、本学に対するイメージと社会的信用は深く傷つけられてしまった。学生の勉学意欲や様々な対外活動、学部生・大学院生等の就職活動、教職員の士気、さらには受験生の本学に対する見方や教職員の採用に至るまで深刻な悪影響が懸念される。ひいては、このことが本学の教育を誠実に支えてきた教職員の労働環境悪化にもつながりかねないことを危惧するものである。

 早急に本学の社会的信用を回復すべく、理事長、理事会と大学学長は直ちにことの真相をあますところなく明らかにして、関西学院大学の関係者に対してはもちろんのこと、上述した本学のイメージと社会的信用の低下に直面せざるをえない本学学生と教職員にも説明責任を果たすことが不可欠である。そして、この状況を踏まえた大学改革の道筋を、教職員からの声を充分に聞き届けたうえで社会に提示し、それを滞りなく推進していくべきである。

 以上、問題の深刻さと社会的広がりをふまえて、現時での私たちの見解を表明しておくものである。


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