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2018年07月14日

明治学院大学、授業無断録音に抗議した教授の解雇は「無効」判決(東京地裁)

『アクセスジャーナル』(2018年7月12日)

明治学院大学―授業無断録音に抗議した教授の解雇は「無効」判決(東京地裁)

山岡俊介

 本紙で今年2月20日に取り上げた、明治学院大学教授が大学側に授業中に無断録音されていたことを知り抗議したところ、目を付けられ、その後、授業で使用していた教科書や授業内容がキリスト教を批判しているなどとして解雇されたことに端を発する「授業無断録音訴訟」につき、6月28日に一審判決が出ていた。
 もっとも、大手マスコミで報じたのは唯一、「東京新聞」のみのようだ。
 7月3日、原告の教授側が司法記者クラブで記者会見まで開いたにも拘わらずだ。
 この訴訟、いくら教授も雇われとはいえ、授業に関して自由に研究や発言する「学問の自由」(憲法23条)が保障されないようではとんでもないということで本紙は注目していた。
 何しろ、明治学院大学(東京都港区。経営は「明治学院」)では、授業の盗聴が慣例として行われているという。大学の権威、キリスト教主義を批判していないかなど授業を担う教授らをチェックするためで、授業で使う教科書や教材の検閲も同様だという。
 そんななか、授業中に無断録音されたことに倫理学担当の寄川条路教授(横写真。56)が抗議したところ、15年12月、大学から「厳重注意」に。それを告発したところ、16年10月、今度は懲戒解雇されたという。
 そこで寄川氏は東京地裁に地位確認の労働審判を申し立て。
 16年12月、地裁は解雇は無効として寄川氏の復職を提案したが、大学側が拒否したことから提訴して争われていた。
 東京地裁は6月28日、解雇権の濫用だとして、教授としての地位確認と賃金の支払いを命じた。
 もっとも、この一審判決、(1)無断録音に関与したと思われる教員の氏名を公開したこと、(2)教授会の要請に応じなかったことに寄川氏も落ち度があると認定。しかしながら、教授会の要請が原告の認識に反するような見解を表明させるものであるなど、原告にも酌むべき事情があるとして、解雇は相当でないと判断した。
 また、寄川氏は無断録音は学問の自由を侵害する違法なものなどとして、損害賠償請求も行っていたが、これに対し一審判決は、録音対象の大半は授業ではなくガイダンス部分だったとして、これを認めなかった。
 一方、大学側は「解雇は録音を告発したことが理由ではない」「(東京地裁判決は)録音の対象は、初回授業におけるガイダンスの部分で講義ではなく、大学の管理運営のための権限の範囲内において適法に行われた、と判示された」としている。
 こうした見解の相違から、大学側も原告側も控訴する方針。
 なお、寄川氏、代理人の太期宗平弁護士と共に記者会見に同席した小林節慶應大学名誉教授は、「学者は個性的で、それをお互いに許容し合って、歴史のなかで評価が定まって来るもの。個性を尊重しない多数決で押さえ込もうということが日本中で起きている」と懸念を表明した。
 学問の自由がどこまで守られるか、控訴審の行方にも要注目だ。


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