研究者の地位と権利を守るための全国的ネットワークをつくろう!

2019年02月11日

「大学オンブズマン・龍谷大学経営学部李洙任先生を支援する全国連絡会」の呼びかけ文

■大学オンブズマン
 ∟●「龍谷大学経営学部李洙任先生を支援する全国連絡会」の呼びかけ文

更なる呼びかけ人を募ります。連絡先は、uniomb@yahoo.co.jpまでお願いします。

「大学オンブズマン・龍谷大学経営学部李洙任先生を支援する全国連絡会」の呼びかけ文

2019年2月10日

 2019年1月11日、龍谷大学経営学部教授・李洙任先生は、京都地方裁判所に提訴されました。訴えの要点は後述の通りですが、この提訴は、大学運営の根幹である教授会運営のあり方、特にその民主的・合理的な審議、手続のあり方を問うものです。
 いま日本の国公私立大学全般のガバナンスのあり方が問われています。李先生の裁判は、この「大学ガバナンス」を問うものであります。
 「大学の自治」は「学問の自由」を制度化したものとされます。それは、市民から負託されたものであります。したがって、「大学の自治」は、大学人自らが大学の民主的・合理的運営を行なうことによってはじめて保障されるものです。
 このようなことから、わたしたちは李先生の裁判を通じて、大学の民主的・合理的運営について問うていきたいと考え、ここに李洙任先生支援の全国連絡会の結成を呼びかけます。多くの方々に呼びかけ人としてご参加をお願いする次第です。

1.この間の経緯

1)2017年6月16日、経営学部の学生たちは、「専門演習」の数の少なさ・多様性のなさ等を理由に、要望書(訴え)を、多くの学生署名(327名)を添えて、学長、経営学部長、経営学部教授会構成員に対して提出しました。この事態は少人数教育を教学理念とする龍谷大学および経営学部の現在のあり方の問題を顕在化させました。
 この事態は多くのテレビ、新聞等のマスコミによって報道され、一大学・一学部の問題を越えて社会問題化しました。大学関係者のみならず社会的な関心が高まりました。しかし、事態の改善は進まず、学生たちは教員有志とともに2017年10月30日、京都弁護士会の人権擁護委員会に人権救済申立を行いました。現在、予備調査を終え本調査が行われているところです。

2)こうした状況(「未ゼミ問題」)のもとで、李教授は数年にわたって、そして繰り返し「専門演習」の担当を教授会に対して正式に申し入れてきました。これに対し、前任および現在の経営学部長は、これを取り上げる(実質的審議に入る)ことなく、一貫して「門前払い」(排除)するための審議のみを続け、結果として李先生の「専門演習」担当の道を閉ざしました。
 それは、終始一貫、「最初に結論ありき」の対応であり、次々と「拒否する」理由を作り出していくという、教務主任が主導する学部執行部の対応が問題の根幹にあると言えます。したがって、李先生お一人の教学権問題にとどまらず大学運営および大学教育のあり方を厳しく問う問題です。

3)この「門前払い」(排除)とはいったい何か。教員自らが教学上で積極的な提案や取り組みを行おうとしたのに対し、主たる担当科目が(龍谷大学における)「専門教育科目」であるか「教養教育科目」であるかの区別によってのみ、その実質的審議に入ることなく排除されることは許されることではありません。また、職務的優位(学部執行部)にあるものの行為としては明らかにパワーハラスメントにあたります。それは、審議決定過程において看過することのできない手続き的瑕疵が多く存在することによって明らかであります。
 1991年のいわゆる「設置基準の大綱化」以降、各大学は「一般教育科目」と「専門教育科目」の区別を廃止する方向で取り組んできました。「一般教育科目」と「専門教育科目」の区別は「教育の質」を確保する上での「壁」あるいは「障害」であり、この「障害」を打ち破り積極的に全ての教員がトータルに学部教育にあたることが大学教育の大きな課題であると考えます。
 そのようなもとで、李先生は1996年、経営学部への貢献と教養科目との融合に尽力する人材として採用されたと言えます。先生は、大学在学中は商学部で学士を取得し、アメリカの大学院で教育学博士を取得されました。異文化ビジネスコミュニケーション研究の経歴も考慮されての採用でした。
 紹介すれば、日本学術会議の2012年に出された「大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準(経営学分野)」では、「社会洞察の一部としての経営学は単に専門科目としてのみならず一般教養科目としても位置づけられる」とし、また「経営学は教養科目の一つでもある」とさえ述べています。ここでは、「専門教育科目」と「一般教育科目」の区別を超克し、その統合を提案しているのです。

4)こうした「教育の質」の確保が喫緊の課題であるにもかかわらず、1)で述べたような実質的審議にも入らないで恣意的な「門前払い」(排除)の事態が生じたのです。このことは当該の経営学部長、教務主任および学部執行部による「権限の逸脱あるいは乱用」であると言わざるを得ません。

5)また、この事態を李先生は大学内のハラスメント委員会に訴えましたが、「各学部の教育課程の編成に関わる重要事項であり、各学部教授会において審議決定がなされる事項である」として申し立ては却下されました。李先生は、この結果に異議申し立てを行いましたが、監査委員会においても同様な結論になり、学長名での通知が李先生に対して行われました。「教授会の自治」の名によって、こうした「門前払い」(排除)の事態が容認されることは、大学の運営責任者としての学長のあり方も問わざるをえません。

6)李先生は学内での解決の道は閉ざされ、今回、やむなく提訴に踏み切られました。この事案は、旧態依然とした上記の「壁」を固定化するにとどまらず、より強固にしようとするものであります。そして、このことは学生の学習権の保障にとっても重大な「障害」となっています。冒頭で述べた学生の要望に応える意味でも、現行の学部教学のあり方(「壁」と「障害」)およびこの件についての大学執行部の関わり方は見直していかなければならないと李先生は考えられ、今回、提訴に踏み切られたのです。

 以上のことは李先生お一人の問題にとどまらず、高等教育の「教育の質」の確保にもつながる課題であると同時に、現在の日本の大学をめぐる諸問題に危惧をいだいている市民の関心事でもあると考えます。わたしたちが、李洙任先生支援の全国連絡会の結成を呼びかけるのは、このような理由からであります。多くの方々にご参加をお願いする次第です。

2.訴状より(一部抜粋)―被告行為の違法性―

4 被告の行為の違法性
(1)教授会執行部として適正な審理・手続をとるべき義務の違反
ア 教授会の運営においては、民主的・合理的な審議、手続が行われなければならないことは当然の条理である。したがって、教授会執行部が、教授会の構成員に対し、民主的・合理的な審議、手続を確保せず、一方的な決定を行うに至った場合は、教授会執行部の教授会運営、決定自体が、適正な審理・手続をとるべき義務に違反したものとして、違法であると評価される。
             ・・・・・・略・・・・・・
イ 本件においては、先に述べたとおり、被告教務主任による原告に専攻演習を開講させないことの理由説明は、内容を変遷させており、最初から原告に専攻演習を開講させないという結論ありきにて不合理な説明に終始したものといえる。
このように、理由の説明内容が変遷していること自体が、ありきの結論を導くために、本来考慮すべきでない点を後付にて考慮して結論を出そうとした他事考慮や、教授会審理における前提事実の重大な事実誤認を裏付けているといえる。
また、被告教務主任がこのような不合理な説明に終始してまで原告の要望をまともに審議しようとしなかったことからは、原告を学部内コースの専攻演習から排除し、かつ重大問題であるはずの未ゼミ問題を放置しようとする、不当目的があったことを推認することができる。
そして、被告前学部長・現学部長は、教授会の運営を取り仕切る学部長の立場にあったにもかかわらず、被告教務主任の不合理な説明内容を糺すことなく、むしろ被告教務主任の態度に同調し、未ゼミ問題解決のための原告からの提案・要望を教授会内でまともに審議しようとしなかった。
したがって、このような被告大学経営学部の教授会執行部の立場にあった被告教務主任及び被告前学部長・現学部長の行為は、教授会の運営において適正な審理・手続をとるべき義務に違反しており、違法である。
・・・・・・略・・・・・・
5 被告大学の不法行為・債務不履行責任
(1)使用者責任(民法715条1項)
被告大学は、被告教務主任及び被告前学部長・現学部長との間で労働契約を締結している使用者である。
したがって、被告大学は、上記述べた被告教務主任及び被告前学部長・現学部長の教授会執行部として適正な審理・手続をとるべき義務違反及びハラスメントによる違法行為に関し、使用者責任を負う。
  (2)就業環境配慮義務違反
また、被告大学は、労働契約に付随する使用者の義務として、雇用する労働者に対し就業環境配慮義務を負う。その具体的内容として、被告大学の職場内にて違法行為やハラスメントが起きないように配慮すること、違法行為、ハラスメントが起きてしまった場合にそれが再発しないよう対策をとることの責任がある。
しかし、被告大学においては、現に被告教務主任及び被告前学部長・現学部長による原告に対する違法行為、ハラスメントが発生している。原告は、その点について被告大学に対し異議申立を行っているが、被告大学は未だ適切な対処を行っていない。
したがって、被告大学は、原告に対する就業環境配慮義務違反による債務不履行責任も生じている。

3.会の取り組み内容

1)裁判の内容を注視し、李先生の裁判を物心両面から支援する。
2)より多くの方々と問題の共有を行なうとともに問題解決に資する取り組みを行なう。
3)主な活動として、会合の適宜開催、裁判の傍聴、「会報」発行等の広報活動に取り組む。

4.呼びかけ人名簿(50音順)
 
2019年2月10日現在

<呼びかけ人>
青木雅生(三重大学人文学部准教授)、青水司(原発ゼロの会・摂津、千里丘<吹田>事務局長、元大阪経済大学教授)、浅野健一(同志社大学大学院教授<地位確認訴訟中>)、足立辰雄(元近畿大学教授)、姉崎洋一(北海道大学名誉教授)、石川康宏(神戸女学院大学教授)、伊地知紀子(大阪市立大学教授)、井手啓二(長崎大学名誉教授)、伊藤大一(大阪経済大学経済学部准教授)、井上千一(大阪人間科学大学教授)、井原聰(東北大学名誉教授)、上中良子(元京都橘大学教授)、碓井敏正(京都橘大学名誉教授)、岡崎昭彦(高西霊園管理委員会委員、NPO法人京都社会文化センター監事)、岡田直紀(京都大学准教授)、岡野八代(同志社大学教授)、岡山茂(早稲田大学政治経済学術院教授、大学評価学会代表理事)、片山一義(札幌学院大学教授)、角岡賢一(龍谷大学経営学部教授)、川口洋誉(愛知工業大学准教授)、桔川純子(明治大学兼任講師)、木戸衛一(大阪大学教員)、絹川浩敏(立命館大学経営学部教授)、清眞人(元近畿大学文芸学部教授)、後藤道夫(都留文科大学名誉教授)、國島弘行(創価大学経営学部教授)、黒田兼一(明治大学経営学部教授)、小林清治(大阪大学大学院人間科学研究科准教授)、駒込武(京都大学教授)、小山昌宏(筑紫女学園大学教授)、近藤宏一(立命館大学経営学部教授)、Sarah Kashani (京都大学助教)、齋藤敦(徳島文理大学教授)、桜井徹(国士舘大学経営学部教授)、重本直利(市民科学研究所事務局長、大学評価学会顧問)、篠原三郎(元日本福祉大学教授)、高木博史(岐阜経済大学教授)、高橋勉(岐阜経済大学教授)、竹内章郎(岐阜大学地域科学部教授)、田島朋子(大阪府立大学准教授)、田中仁(京都府立大学非常勤講師、京都歴史教育者協議会)、谷野隆(アジェンダ・プロジェクト)、津田道明(日本福祉大学教職員組合書記)、鄭雅英(立命館大学経営学部教授)、照井日出喜(奈良県立医科大学非常勤講師)、戸塚悦朗(弁護士)、殿平善彦(一乗寺住職)、富田道男(元京都府立大学教授)、永井康代(元大阪薫英女子短期大学講師)、中川秀一(明治大学教授)、中川慎二(関西学院大学教授)、中屋信彦(名古屋大学准教授)、中田光信(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会)、中西新太郎(関東学院大学経営学部教授、横浜市立大学名誉教授)、中村共一(岐阜経済大学教授)、中村尚志(NPO法人JIPPO専務理事)、浪本勝年(立正大学名誉教授)、西垣順子(大学評価学会副代表理事)、馬頭忠治(鹿児島国際大学教授)、日永龍彦(山梨大学教授)、百田義治(駒澤大学教授)、平田厚志(龍谷大学名誉教授)、藤井幸之助(猪飼野セッパラム文庫主宰)、藤原隆信(筑紫女学園大学教授)、細井克彦(大阪市立大学名誉教授)、細川孝(龍谷大学教授)、堀雅晴(立命館大学教授)、眞島正臣(新分野マーケティング戦略研究所所長)、松尾匡(立命館大学経済学部教授)、三島倫八(龍谷大学名誉教授)、水野邦彦(北海学園大学教授)、三宅正伸(大阪経済法科大学客員教授)、光本滋(北海道大学准教授<教育学>)、宮崎昭(元九州国際大学教授)、村越雅雄(北海商科大学名誉教授)、村上了太(沖縄国際大学教授)、望月太郎(大阪大学大学院文学研究科教授)、守屋貴司(立命館大学教授)、由井浩(元龍谷大学経営学部教授)、米津直希(稚内北星学園大学准教授)、寄川条路(明治学院大学教授)、李順連(NPO法人丹波マンガン記念館事務局長)、渡部昭男(神戸大学教授)、渡辺峻(立命館大学名誉教授)。

以上84名


|