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2019年03月04日

明治学院大学事件、日本の大学界の病弊を象徴する大事件

日本の大学界の病弊を象徴する大事件

日本の大学界の病弊を象徴する大事件
――「明治学院大学事件」の裁判記録――

寄川条路

寄川条路編、小林節・丹羽徹・志田陽子・太期宗平著
『大学における〈学問・教育・表現の自由〉を問う』A5判・96頁・926円、法律文化社、978-4-589-03977-4

 大学当局が教授に無断で授業を録音し、無断録音を告発した教授を解雇した「明治学院大学事件」。東京地裁による解雇無効判決にいたるまでの、事件の概要、裁判所への法学者による意見書、判決文およびその解説を収めた全実録が刊行された。「日本の大学界の病弊を象徴する大事件」(小林節氏談)とも呼ばれ、学問の自由、教育の自由、表現の自由の根幹を揺るがした裁判の記録である。
 裁判の結果が報じられたとき、本件は、「リベラルな大学」での特異な出来事と受け止められたが、実際のところは、現在の日本の大学界に広く蔓延している病状の一例にすぎない。明治学院大学のように授業の盗聴や録音を無断で行っている大学もあれば、授業の撮影や録画を行っている大学もある。このような日本の大学の現状を知ってもらうために、裁判記録を公刊することにした。
 本書には、裁判所に提出された法学者の意見書と、それを受けて裁判所が下した判決書が収められている。
 まず、憲法学の大御所である小林節は、「学問の自由」という観点からその理念を歴史的に概観し、つぎに、教育法の権威である丹羽徹は、「教育の自由」という観点から強固な法理論を構築し、そして、表現法について第一線で活躍している志田陽子は、「表現の自由」という観点から事件を緻密に検証している。さらに、判決文は、裁判所の承諾を得たうえで公表し、担当弁護士の太期宗平が的確な解説を加えている。
 本書は、「明治学院大学事件」の裁判記録であるが、日本の大学界全体の教訓として必要不可欠なものであるとの指摘を受けて公刊された。編者としては、この本によって日本の大学の現状を知ってもらい、「学問・教育・表見の自由」を考えるきっかけにしてもらえればと思っている。
 なお、本書は、シリーズ「学問の自由」の第1号である。「明治学院大学事件」の裁判記録である本号に続いて、第2号として、法学者・教育学者・倫理学者など、大学関係者による論説集が予定されている。(よりかわ・じょうじ=明治学院大学教授、哲学・倫理学専攻)
★こばやし・せつ=慶應義塾大学名誉教授・弁護士、憲法学専攻。
★にわ・とおる=龍谷大学法学部教授、憲法学・教育法専攻。
★しだ・ようこ=武蔵野美術大学造形学部教授、憲法学・言論法専攻。
★だいご・そうへい=ベリーベスト法律事務所パートナー弁護士。


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