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2019年08月07日

早稲田大学教員公募事件

■労働組合東京ユニオン早稲田大学支部
 ∟●早稲田大学教員公募事件

早稲田大学教員公募事件

 明治大学教員の石井知章氏と労働組合東京ユニオンは、早稲田大学における教員の公募の問題をめぐってこの6月に東京地裁に提訴しました。

 国立大学ばかりでなく私立大学でも、教員採用のさいに公募がよく行われるようになりました。より公正で透明な採用をおこなうという趣旨から、文科省がそれを推奨しているという背景があります。しかし2016年に早稲田大学アジア太平洋研究科で行われた公募では、その選考の経過に疑念をいだいた応募者(原告となった石井氏自身)が、研究科の科長に事実確認を求めるという事態が発生しました。研究科の科長が回答することを拒否したため、応募者は大学当局にも訴えましたが、それも拒否されました。

 もとより大学教員の採用にあっては、採用する側が選考の経過を明らかにすることはありません。しかしこの件にかんしては、内規違反の可能性があるという情報を落選した本人がつかんでいました。大学教員の採用はそれぞれの大学の学部や研究科が独自に行いますが、そのさいには定められたプロセスに従います。そこに問題がなければ何も言えません。しかしそこに疑念がある場合、それを晴らそうとすることは応募した者の権利であると思います。公募とはいってもあまりにも恣意的な選考が行われており、しかも応募者は採用してもらうという弱い立場にあるため、声も上げられずにいるのが日本の大学の実情です。

 今回原告となった本人は明治大学の専任教員であり、早稲田大学政治経済学部で非常勤講師をしているということもあって、あえてこの問題を追及することにしました。そしてそのために東京ユニオンに加盟し、早稲田大学支部を立ち上げました。大学側とは2回団体交渉をおこないましたが、大学側は非常勤講師の労働条件などについては議論に応じたものの、公募の問題については団交事項ではないとして交渉を拒否しました。裁判に訴えることになったのはそのためです。

 私たちの主張は公募をやりなおせというのではありません。すでに選ばれた候補者が優秀であることを疑うものでもありません。ただし、①大学は公募をやるからには公正と透明性を保障すべきである、②大学はこの問題にかんして団交に応じるべきである、ということを裁判でも主張していきたいと思います。

 この問題には二つの背景があります。一つは、日本の私立大学が大学としての自律性を失ってしまっているということ、もう一つは、文科省自体も政策を誤っているということです。

 国立大学法人ばかりでなく学校法人(私立大学)においても、文科省への「忖度」は働きます。文科省は「大学自治」を理由に公募を推奨するだけにとどめていますが、国の私学助成費を少しでも多くもらうためには、その意向に沿うのが一番です。それゆえ形だけの公募をおこなう私立大学が増えています。また文科省は90年代中頃から任期制もおし進めていますが、任期切れであらたな職を探さないといけない教員・研究者も増えています。

 全国の「教員市場」を真の意味で「流動化」させるためには、私立大学を含めたすべての大学に公募を義務づけるとともに、公募の公正と透明性を確保するための全国的な仕組みが必要です。バランスを欠いた文科省の「ガバナンス」によって苦しめられているのは、テニュア(終身)職のないすべてのポスドク、非常勤講師、教員、研究者です。応募のたびに膨大な資料を作成する時間と労力を要求され、論文のコピーや面接の移動に多額の出費を強いられ、ふつうは落選してしまいます。多くの研究者の時間、労力、意欲を無駄にし、疲弊させているのがいまの公募の実態なのです。

8月22日の東京地裁での第一回裁判期日への傍聴をよろしくお願いします。
2019年8月22日(木)13時15分 東京地裁709号法廷
連絡先:労働組合東京ユニオン 電話03-5354-6251 FAX03-5354-6252

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