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2019年09月11日

下関市立大、揺れる専攻科新設計画 理事長、市長の要望受け担当教員採用

■毎日新聞
 ∟●下関市立大、揺れる専攻科新設計画 理事長、市長の要望受け担当教員採用(2019年9月11日)

 山口県下関市の市立大学(川波洋一学長)が、特別支援教育の専攻科を新設する計画を巡って揺れている。計画は、同大設置者である市の前田晋太郎市長の要望を受け、山村重彰理事長ら大学経営側が教授らの審議を経ずに約1カ月で方針を決め、担当教員の採用を内定した。専門家は、学内に新しい組織を作る際は、既にいる教授らの意見を聴きながら進めるべきだと指摘している。【佐藤緑平】

教研審経ずに計画進行

 前田市長は6月4日、山村理事長宛ての文書で、大卒者らを対象とするインクルーシブ教育(障害児と健常児が共に学ぶ教育法)の専攻科設置などに取り組むよう要請した。

 同大の定款は教員人事や、教育課程の編成に関する事項は、教育研究審議会(教研審)で教授らの意見を聴くよう定めている。関係者によると大学側は今回、教研審を開いていない段階で教員に対し、専攻科の組織概要を説明し、担当教授として「採用を想定している」とし、特定の研究者の名を挙げたという。同20日の教授会では山村理事長が「市長の意を介して、私も意志を持って(計画を)実行している」などと話したとされる。

 大学側は同25、26両日、専攻科設置などの議題で教研審開催を呼び掛けたが、反対する教授らの欠席で流会。欠席した1人は「市長が意向を示し、理事長が実行するのは学則に違反する。そのことについて議論はできなかった」と話す。

 大学側は欠席を事実上の権利放棄と判断し、同26日の経営審議会で、2021年度に専攻科を開設するなどの方針を決めた。同28日には担当の教授、准教授、講師として、名前を挙げていた研究者ら3人に採用内定を通知。関係者によると、内定した教授は事前に前田市長が大学側に推薦していた研究者で、5月30日に市長応接室で山村理事長らに対し「(研究者と)ぜひ会ってほしい。下関の何か役に立ってくれる方になりそうだ」などと話していたという。

教員9割が撤回求める

 毎日新聞の取材に前田市長は「(内定した教授は)情熱的で頭が良く、改革志向で前進しようという気持ちが強い。下関で発達障害の子に対応する良い仕組みを取り入れたかった」と発言を認めた。「個人的な利益誘導や、誰かの思いでやっていることではない」とし「大学が少子化に立ち向かうため、変化を求めて良くしていかないと維持できない危機感がある」と話した。

 計画を巡っては、同大教授会の9割を超える教員51人が撤回を求めて文書に署名し、7月に大学側に提出している。


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