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2020年03月12日

関西私大教連、「関西外大ストライキ権判決に対する声明」

声明

2020年1月29日(水曜日),13時10分,大阪地方裁判所809号法廷(裁判長 中山誠一,裁判官 大寄悦加・溝口達)で,学校法人関西外国語大学のストライキ権行使に対する懲戒処分無効を求める裁判の判決が下された。判決主文は「原告らの請求をいずれも棄却する」という不当なものであった。

■ストライキ権を著しく狭く限定

判決では憲法で保障されたストライキ権について,「団体交渉における労働者の立場を強化し,あるいは団体交渉における交渉の行き詰まりを打開するなど,団体交渉を機能させる趣旨のものと解される。そして,団体交渉を通じた労使間の合意形成を促進する目的あるいは態様で行われなければならないものと解される」と著しく狭く限定している。その上で,関西外国語大学21世紀教職員組合のストライキが6コマを超える部分でのストライキとなっており,これが「基準6コマを超えて,8コマを押し付けるな」という組合要求と合致していることから,「当該義務の不存在確認という目的自体は,争議行為によって,団体交渉を経ずして達成されることになる」とし,「当該争議行為は,労使間の合意形成を促進するという目的を離れ,労働組合による使用者の人事権行使となる側面がある」としている。そのため,「常に正当なものということはできず,団体交渉を通じた労使間の合意形成を促進する目的が失われたものと評価できる場合には,当該時点から正当性を有しない」と断定している。

■団体交渉での理事会対応で事実誤認

 一方,団体交渉については,「原告組合の要求通りの合意を強制されるものではなく,誠実交渉義務の内容として,原告組合の主張や要求の具体性や追及の程度に応じて,自らの主張や回答をし,必要に応じて論拠や資料を提示するなどして相手方の説得に努めることをもって必要かつ十分なもの」とし,学校法人関西外国語大学理事会が「誠実交渉義務を尽くしていた」と判断している。これはまったく荒唐無稽というべき事実誤認である。
 学校法人関西外国語大学理事会は関西外国語大学21世紀教職員組合が結成以来掲げてきた「基準6コマを超えて,8コマ以上を押し付けるな」という要求に対して,まったく妥協的な対案も示さず,「入職時の8コマ合意」を繰り返すだけで,それを根拠づける資料も一切提示しなかったのである。今回の裁判が始まって,初めて裁判所に理事会内の決裁書を示したが,これは50回を超える団体交渉を通じて頑なに開示を拒否してきたものである。組合は,理事会が論拠も示さず資料も提示せず,一切の妥協を拒み続けたことから,やむを得ず6コマを超えるコマ数についてストライキ権を行使するに至ったのである。さらに組合はストライキ権を行使しながら団体交渉を継続してきたが,それでも理事会は一切の妥協を拒み,組合を説得するための資料も提示しなかった。判決では「被告が,平成28年7月4日,原告組合に対し,団体交渉が平行線をたどって行き詰まりの状態にあって,原告組合から提案がない限りは,交渉に応じる義務がない旨を伝えてもなお,団体交渉は進展をみなかった」としているが,組合からの提案を一貫して無視し,平行線をたどらせたのは理事会の頑なな姿勢に他ならない。
 判決は,以上の事実すべてを無視し,理事会が誠実な交渉を行っている一方,組合は対案も示さず,交渉が行き詰まりになっているにもかかわらずストライキを続けていたと決めつけ,「本件懲戒処分の対象行為がなされた時点においては,もはや当該事項についての団体交渉が進展する状況にはなく,団体交渉を通じた労使間の合意形成を促進する目的が失われたものと評価でき,本件争議行為は,正当性を有しないと解される」と,理事会側の主張を鵜呑みにした結論を導き出している。

■理事会の不当労働行為体質を全く考慮しない

 また本件争議行為は,組合員に対して行った不利益取り扱いや,団体交渉拒否,不誠実団交に対抗するものであったと訴状・準備書面で主張しており,理事会も認否・反論している。それにも関わらず,裁判所はこれらの主張を「時期に遅れた攻撃防御方法の提出」として恣意的に却下した。その結果、ストライキ権行使に対する組合員の懲戒処分通知を学内に張り出した行為を、組合に対する重大な支配介入と見ず、規程に照らし合理的と判断するなど、理事会の不当労働行為体質は全く考慮されていない。

■控訴し、たたかいを継続する

 結局、今回のストライキ権行使に対する処分が理事会による組合つぶしの一環であるという点について全く判断を行わないまま,一方的で偏った間違った事実認定に基づいた,きわめて不当で結論ありきの薄っぺらな判決となっている。
 関西地区私立大学教職員組合連合(関西私大教連)は今回の不当な判決を許さず,教育・研究の質を担保しようとする労働者の権利を守り,教職員の声が生かされる関西外国語大学をつくるため,大阪高等裁判所に控訴し,たたかいを継続するものである。

2020年2月18日
関西地区私立大学教職員組合連合


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