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2021年04月05日

下関市大・飯塚靖先生の理事解任に抗議し撤回を求める 「大学自治」の恢復を求める会が声明

■長周新聞
 ∟●下関市大・飯塚靖先生の理事解任に抗議し撤回を求める 「大学自治」の恢復を求める会が声明(2021年4月4日)

 下関市立大学の学部長を務め理事でもあった飯塚靖教授が、昨年秋におこなわれた大分でのシンポジウム「大学の権力的支配を許すな!」のなかで同大学の現状をのべ、大学運営の在り方について憲法や法律に照らして疑義があると指摘した後、同大学から理事を解任されたことをめぐって、3月25日に『「大学自治」の恢復(かいふく)を求める会』が全国の大学関係者65人の連名で抗議声明を発表した。以下、その内容を紹介する。

◇-----声明-----◇

 昨年10月18日、「大学の権力的支配を許すな!」(主催「大分大学のガバナンスを考える市民の会」)のテーマで、シンポジウムが行われました。このテーマは、一昨年大分大学でおきた学長の不当な権限行使が、現在問題となっている学術会議会員の任命拒否とも通じることがらであり、大学のあり方として見過ごすことができない、との認識から設定されたものです。そして、今、全国の大学で学長権限が強化され、大学が強権的に支配されつつある現状を、大学の自治・学問の自由の点から考えることとし、全国的な状況と大分大学の事例及び下関市立大学(以下、「同大学」という)の事例の報告をメインに討議がなされました。

 ところが、このシンポジウムで同大学の事例を報告された飯塚先生が、その後ほどなくして、理事を解任されました。解任の理由は、「地方独立行政法人法」第一七条二項の「役員たるに適しないと認めるとき」に該当するとのことです。しかし、飯塚先生の報告は、同大学で起きた事態や同大学の規程が、法律や文科省の通知に照らして疑問があることを、教員・研究者として学問的見地から報告されたものです。この報告について、理事としての資格を理由に、「役員たるに適しない」とされる理由は全くありません。

 既に、飯塚先生は、それまで同大学で起きている事態の問題点を学内で指摘されていました。そもそも、大学の運営に憲法や法律に照らして疑義がある場合に、それを是正するために発言することは、教員・研究者そして理事としても当然の行動です。まして、理事の忠実義務に違反するものでないことはいうまでもありません。仮に、理事長が法律や重要な法慣行に抵触することを行っている場合や、行おうとする場合に、それを諫めずに、ただ従順に理事長に従うとすれば、むしろそのような態度こそが理事の忠実義務に違反するものというべきです。

 また、公的機関である大学の運営に関し、理事として問題点を指摘することは、大学の運営に携わる者として当然の責任であり、忠実義務の核心をなすものです。言葉を変えれば、理事長の方針に反対の立場を表明した理事を理事長が解任することは、イエスマンだけの理事からなる理事会にすることであり、多様な意見を出し合って妥当な結論を導き出すという合議体本来のあり方を損ない、理事長独裁体制になることを意味します。

 言うまでもなく、大学は、学問研究の場として自由な討論が保障されなければなりません。そのことは大学の管理運営についても同様であり、憲法が保障する学問の自由として、「大学の自治」が制度的に保障される趣旨が及ぶものといえます。その意味で、今回、飯塚先生の理事解任は、理事長の権力的な支配を強化する象徴的な出来事であり、同大学のこのような措置は憲法上の問題としても重大なものです。

 加えて、今回は、「理事」としての行動ではなく、休日における「個人」としての学外の市民団体の集会での発言が問題にされています。勤務時間外の学外での個人的な言動をもって、「役員たるに適しない」として責任を問うことは、憲法で保障された、思想・表現の自由の侵害であり、この点も厳しく批判しなければなりません。

 さらに、同大学で生じている事態は、現在、全国の大学においてガバナンスが強化されている状況において、大学本来の使命を無視した権力者によって大学が支配されれば、大学がどのように破壊されていくかを示す最先端の事例としてとらえることができ、このような大学当局の姿勢を厳しく批判し、同様のことが起こらないようにしなければなりません。

 以上のことから、私どもは、飯塚先生の理事解任に強く抗議し、撤回を求めます。以上

2021年3月25日
「大学の自治」の恢復を求める会


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