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2021年08月31日

大学のフリーアドレス化で「研究に支障」 教員ら提訴へ

■朝日新聞(2021年8月29日)

 決まった席や部屋がない「フリーアドレス」の職場になったことで研究活動に支障が出ているとして、梅光学院大学(山口県下関市)の専任教員や元専任教員ら9人が大学側を相手取り、計約1200万円の損害賠償を求める訴訟を30日にも山口地裁下関支部に起こす。「教員が研究室を利用する権利を侵害している」などと主張している。

 教員らの代理人弁護士などによると、同大では2019年春に地上3階建ての新校舎が完成。それまであった個室タイプの研究室は廃止され、広い空間に並ぶ机や椅子を自由に使うフリーアドレスとなった。教員には、一部だけ鍵がかかる書架が一つずつ与えられている。

 教員ら9人はこうした運用について、書籍や資料を保管するスペースが足りず、学生や学外の人も行き交う中で仕事をするため研究成果が盗用されるおそれがあると指摘。プライバシーが守れないため学生の質問や進路相談にも対応できず、試験問題の作成や成績をつける作業も困難だとしている。

 子ども学部の田中俊明教授(54)は「これまでは学生が研究室に来れば教員やゼミの仲間と話せたが、フリーアドレスでは周囲を気にして話がしにくい。授業時間にとらわれない学生の主体的な学びの拠点がなくなり、非常にやりづらくなった」と話している。

 梅光学院大には文学部と子ども学部、大学院があり、5月1日現在で学生は約1300人、教授や准教授など専任教員46人が在籍。ホームページでは、フリーアドレスの導入について「教職員間や学生との間でのコミュニケーションを重視する」と説明している。大学側は取材に「訴訟の中身を把握していないので、コメントは控える」と答えた。

 文部科学省の大学設置基準は、研究室について「専任の教員に対しては必ず備えるものとする」と定めている。ただ、面積などの基準や目安はなく、個室である必要も示されていない。研究に専念できる環境であることや、学生からの相談に適切に対応できることなどを求めており、7年以内に一度行う実地調査の中で研究室の状況をチェックすることもあるという。

 フリーアドレス制は近年、企業のオフィスなどで導入が進んでいる。


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