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2019年02月06日

京都弁護士会人権救済委員会宛「上申書」、龍谷大学経営学部「未ゼミ生問題」に関する投稿

京都弁護士会人権救済委員会宛「上申書」

 細川孝(龍谷大学経営学部教員、大学オンブズマン代表理事)から2月4日の投稿(「学生たちと李洙任教授の思いを受け止めて-龍谷大学経営学部「未ゼミ生問題」に関わる裁判に寄せて-」)に関連して以下の投稿がありました。ここに掲載します。

2018年5月15日

京都弁護士会人権擁護委員会御中

大学生の学ぶ権利(学習権)を考える龍谷大学有志の会
龍谷大学 経営学部 教授  細川 孝

上申書

 わたしは「大学生の学ぶ権利(学習権)を考える龍谷大学有志の会」の一員として、貴委員会に人権救済の申し立てを行っております。本件に関しましては、貴委員会におかれまして本調査を進めていただいておりますことを承知しております。このようなことを踏まえ、龍谷大学経営学部(以下、本学部)における状況について、わたしの認識をお示しすることはそれなりに意味のあることと考えて、本書面を提出させていただく次第です
 わたしは、労働組合(龍谷大学教職員組合、京滋地区私立大学教職員組合連合、労働組合法人全国大学人ユニオン)やNPO(大学オンブズマンなど)の活動を通じて、教職員や学生の権利擁護に取り組んでまいりました(鹿児島国際大学や常葉大学短期大学部などの解雇事件や、平安女学院大学を相手取った就学権確認訴訟など)。同時に、学協会の活動を通じて学術の発展ならびに学問の自由・大学の自治の発展に力を尽くしています。
 そのような者にとって、一見して教学事項に関する問題を「学外に持ち出すこと」に対しては、慎重であるべきということも十分認識しています。しかし、本事案は極めて特異な性格を有していると考え、権利侵害の被害者である学生とともに申し立てを行った次第です。
 権利侵害の背景にある本学部の状況について、以下に記させていただきます。

1.求められているのは「多様な意見を尊重」し、教育・研究条件を改善すること
 この間、本学部では教員採用(補充)が滞っており、演習のみならず学部の運営に関しても問題を生じさせています。研究出張に関する制約や諸委員の負担の増大などです。「『カリキュラム改革』が終わってから採用人事を進める」ということを錦の御旗にして、教員採用を求める声を押さえてきましたが、その被害の矛先が学生(の学習権)に向かったということです。
 現在の龍谷大学においては、財政的な事情から教員採用を抑制せざるを得ない事情はありません。そして、「学術の中心として」(学校教育法)の大学においては、多様な意見を尊重することは、その存立基盤に係わることであり、多様な意見を排除することは自殺行為でしかありません。

2.特定のメンバーによって「多様な意見を排除する」仕組み
 学部における審議決定機関は教授会であり、龍谷大学においては教授会の自治が尊重されています。この教授会(における教学事項)の審議に際しては、事前に教務委員会という会議体において提案(審議)事項の調整が行われます。この教務委員会は、審議決定機関ということではなく、学部執行部の一員である教務主任と、その他数名の教務委員から構成するスタッフ的な機関です。
 しかし、この教務委員会のメンバーを数年にわたって、(実質的に)固定化したうえで、教務委員会で検討された事項(=教授会に審議事項として提案される事項)を絶対化することが続いています。「教務委員会での審議結果を尊重せよ」ということで、教授会の審議を骨抜きにすることが強行されているのです。

3.すみやかな(積極的)教員採用の実施を求める声は根強く出されてきた
 2013年度初めに学部長に就任された野間圭介教授(現学部長)がすみやかな教員採用の実施を提案したにも拘らず、数名の教員が反対を表明し、この意見を学部長が受け入れたことが本事案の発端であります。その後、ことあるごとに(毎年度ごとに)積極的に教員採用を進めることが教授会構成員から求められましたが、1.に示したような「『カリキュラム改革』が終わってから採用人事を進める」という強引な主張によって、構成員の声は葬り去られ続けてきたということです。

4.「『カリキュラム改革』が終わってから採用人事を進める」は虚偽だった
 2017年度内に教授会に報告されるはずであった「カリキュラム改革」の答申は、2018年度に入ってから教授会で報告されました。日付こそは(年度内の)2018年3月31日付でありましたが、教授会に対する責任としては、少なくとも2017年度内最後の教授会において報告されるのが、龍谷大学ならびに本学部の暗黙のルールであります。
 しかも答申の内容からは、採用人事をすみやかに進めることを拒むものではなかったことが明らかになりました。「講義系科目の改革は2008年度からのカリキュラム改革で終えている」ということが口頭で説明されました。今回の答申は、カリキュラム改革が主要なテーマではなかったとしたら、採用人事は何ら妨げられるものではなかったはずです。
 なぜ、このようなことになったのでしょうか。それは、1.に示したように「多様な意見を尊重」することとは真逆の、積極的に教授会で発言する(定年退職前の)教員の意見を排除するためのものでありました。実際、この教員の退職(2017年度末)をまって、答申が提出されました。

5.学問の自由・大学の自治の担い手の責任が問われている
 以上1.~4.のように述べつつも、当事者としてわたし自身の責任を深く自覚せざるを得ません。わたしを含め学問の自由や大学の自治の担い手である教授会構成員が社会的な負託に応えていないということです。
 このような深い反省から、「大学生の学ぶ権利(学習権)を考える龍谷大学有志の会」の一員として、貴委員会に人権救済の申し立てを行った次第です。

以上

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