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2020年10月18日

追手門学院大量職員退職強要(腐ったミカン)事件、大阪地裁宛「原告意見陳述」

 職員研修で「腐ったミカンは置いておけない」などと暴言を吐き,執拗に退職を迫ったのは違法だとして,学校法人「追手門学院」の職員3人が,2020年8月24日,川原俊明理事長,職員研修を受け負った東京のコンサルタント会社「ブレインアカデミー」及び研修を実施した講師に対して,損害賠償,退職強要等の差し止めを求めて大阪地裁に提訴したのが,この事件。パワハラ研修を請け負った「ブレインアカデミー」の男性講師・西條浩が、20代~50代の事務職員18人に対し、退職を迫ったという。そして研修を受講した18人のうち10人が退職し,2人が休職,1人が休職期間満了による解雇となった(追手門学院退職強要職員研修等事件原告一同「追手門学院退職強要職員研修等事件にあたっての声明」2020年8月24日より)。
 因みに,このブレインアカデミーと西條浩は,2015年,学校法人梅光学院においても,同様のパワハラ研修と退職強要事件を起こしている。
 この裁判,10月16日に,第1回口頭弁論が開かれた。原告の1人が「意見陳述書」を提出した。以下が,その全文である。
 なお,これまで同大学において発生した不当配転,不当解雇を含めた事件のすべては,こちらに掲載。

原告意見陳述

原 告 意 見 陳 述

令和2年10月15日

大阪地方裁判所第5民事部合議4A係御中

    住    所

    氏    名      印


原告の※※※です。私は,平成20年から学校法人追手門学院の専任事務職員として働いてきました。業務については真面目に取り組んでおり,上司からも安心して見ていられると評価されてきました。


9年目の平成28年7月,理事長や常務理事らによる執行部面談で,突然,学院が求めている職員像に達していないとして平成29年末で退職していただくと言われました。そして研修の参加を命じられ,改善しなければ退職勧奨を受け入れるようにと言われました。「退職」という言葉に「まさか自分が」と戸惑いましたが,退職するわけにはいきませんでしたので,心して研修に臨みました。
研修は18名が集められ,学院関係者が周りに座って監視される中,5日間計40時間にわたって行われました。研修の冒頭,学院から全権を委任されていたという西條講師から,事前の執行部の打ち合わせで再三確認している事項として,18名全員が平成29年末で学院から退いていただきたいと言われました。研修で頑張れば,という当初の思いはすぐに崩れ,もう逃げられないという気持ちになりました。その後も,西條講師は,「退職は,学院のパワーを持った意思 決定であり,その決定は覆せない」などと繰り返しました。
研修では,私は他の受講者の面前で「あなたにはもうチャンスがない」などと 罵倒されました。また他の受講生への普段耳にすることがないような暴言を延々と聞かされました。自分が言われている以上に他の方が目の前で貶められていることも堪え難いものでした。受講者は真っ青な顔をしていた方,なかには泣き出す方もいました。次第に気が遠くなり,ここで起こっていることは現実なのだろうかと思いました。


私はこれまで担当した業務を一生懸命担ってきたという自負があり,またもちろん生活のこともありましたので,研修中や研修後にも「退職しない」と何度も表明し,指摘された点の改善について自分なりの考えを伝えてきました。しかし,一向に受け入れられず,何度も学院執行部に取り囲まれる面談が続き,退職するよう迫られました。川原理事長からは,解雇もあり得るとまで言われました。退職期限の平成29年3月末には「退職勧告書」を読み上げられ渡されました。


私の心身に異変が出始めたのは研修中からでした。研修期間中ほとんど食べられず,眠れませんでした。心配や不安にさせることを思うと,家族にもなかなか話せませんでした。私の様子があまりにおかしいと感じた妻から「心療内科の予約を取ったから」と受診を勧められ,受診したところ,抑うつ状態と診断されました。
診断後も生活の基盤を失うかもしれない不安から,通院しながら我慢して勤務を続けましたが,どんなに仕事をしても「これでよいのか」と不安を常に感じ,ミスをすれば解雇されるのではという恐怖から,行動の一つ一つに時間がかかるようになりました。休日も何もやる気が起きず,ただ横になっていることが多くなりました。妻から「険しい表情をしている」と何度も指摘されました。
その後も退職を迫られる執行部面談が続きました。いつまた呼び出されるか, 解雇と言われるかビクビクするようになりました。平成30年1月,起き上がることができなくなり,以後休職せざるを得なくなりました。
研修から4年以上経った今も回復の兆しが見えません。時折,研修や面談を思い出して,夜中に何度も目が覚め、その後眠れなくなります。なぜ,こんな自分 になってしまったのかと情けなくなり,家族にも申し訳ない気持ちです。いま一 番不安なのは,1年後,また10年後,自分は一体どうなっているだろうか,元の自分に戻れるのだろうか,一生このままなんだろうか,ということです。


追手門学院は,未だ私たち被害者に謝罪していません。それどころか,学院のホームページでは,研修は「人材育成のために行ったもの」で,講師の発言は,「受講生の消極的な態度を指導したもの」と正当化しています。学院の答弁書でも,学院は全く悪くない,問題があったのは私たちの方だと言われています。私たちへの人格攻撃はいまも続いているのです。
追手門学院は教育機関であり,理事長は弁護士です。なぜ一生懸命職員として 働いてきた私たちが,ここまでされなければならないのでしょうか。私が裁判に 踏み切ったのは,たとえ回復して職場に戻ってもこのまま学院が何も変わらないままだと同じことが繰り返されるのではないかと恐怖を覚えたからです。
この裁判によって,退職強要によって失われた心と時間を取り戻し,職場に復帰するきっかけをつかみたいと思っています。

以 上

なお,追手門学院職員退職強要(腐ったミカン)事件に関する各種マスコミ報道は,以下のサイトで見られる。

●2019年度のまとめ
https://drive.google.com/file/d/1tzH7X5gAiUuyO33PPtg3r25C8YMbYLIC/view?usp=sharing

●2020年8月20日 朝日新聞朝刊
https://drive.google.com/file/d/1rt70eUAjFfBnOAFAQwMYz4-zVyQ6QrKh/view?usp=sharing

●2020年8月21日 羽鳥慎一モーニングショー(テレビ朝日系列)
https://drive.google.com/file/d/1GcJfxfqpRS0uEEgzJYwO7_h86msLrSXU/view?usp=sharing

●2020年8月24日 MBS News(TBS系列)
https://drive.google.com/file/d/1OoQ_WQxOtvmXp335b8cduRKQqDF_sP8a/view?usp=sharing

●2020年8月24日 TVO News(テレビ大阪)
https://drive.google.com/file/d/1y8dHSDrmw6A6peQBOC38eF18yRQWLjOZ/view?usp=sharing

●2020年8月24日 長周新聞
https://drive.google.com/file/d/1w9KotsttzqYeL0M-qq3mp5uLXcWK1tuE/view?usp=sharing

●2020年8月25日 毎日新聞朝刊
https://drive.google.com/file/d/1WSh79CRQvGkIW4KrMqYg3KEUuVC08rbq/view?usp=sharing

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