全国
 カテゴリー (私)追手門学院大学

2021年05月30日

追手門学院大学教授不当解雇事件の勝利的和解にあたっての弁護団声明

追手門学院大学教授不当解雇事件の勝利的和解にあたっての弁護団声明(全文PDF)

追手門学院大学教授不当解雇事件の勝利的和解にあたっての弁護団声明

2021年5月12日

追手門学院大学教授不当解雇事件弁護団

 学校法人追手門学院(以下、「法人」といいます。)が2015年10月25日付で落合正行心理学部教授(以下、「落合氏」といいます。)及び田中耕二郎経営学部教授(以下、「田中氏」といいます。)を懲戒解雇したことは無効であるとして、両名が地位確認等を求めていた訴訟について、2021年3月24日、大阪高等裁判所第6民事部において、①法人は落合氏及び田中氏に対する懲戒解雇及び2019年3月13日到達の予備的普通解雇の意思表示を撤回する、②法人は、落合氏が2019年3月31日付けで定年退職するまで追手門学院大学心理学部教授の地位を有していたこと、③同じく、田中氏が2020年3月31日付けで定年退職するまで追手門学院大学経営学部教授の地位を有していたことを確認する、などを内容とする全面勝利和解が成立しました。
……(以下,PDFを参照のこと)

2021年04月11日

追手門学院大学・元学長ら2教授懲戒解雇事件、控訴審で原告「勝利和解」!

大阪高裁での「和解」について(2021年4月3日「田中君を支える会からのお礼と報告」を一部抜粋・加筆)

大阪高裁での「和解」について
(2021年4月3日「田中君を支える会からのお礼と報告」を一部抜粋・加筆)

 田中君は落合正行さんとともに 2015 年 10 月 25 日に追手門学院大学を懲戒解雇されました。2015 年 12 月 28 日に大阪地裁に懲戒解雇撤回を求める裁判を提起し、2020年 3 月 25 日の一審判決での勝利ののち大阪高裁で控訴審が続いていましたが、2021 年3 月 24 日に和解が成立し、5 年半に及ぶ裁判が終結しました。
 田中君は控訴審でも断固とした勝利判決を得て被告に真摯な謝罪を求めたいと考えていたことから、謝罪表明がなされずに和解することに「主観的には納得のいくものではなく、苦渋の決断であり、断腸の思いです」と語っていますが、客観的には完全な「勝利和解」と言える内容でした。
 懲戒解雇が撤回され、定年退職まで教授職の地位が確認されたことなど、まさに勝利であり、みなさまと共に喜びたいと思います。
 なお、和解にあたって下記(1)~(4)以外は「正当な理由なく、第三者に口外しない」とされたことにより、詳しくご報告できないとのことです。

(1)1審原告落合正行及び 1 審原告田中耕二郎に対する懲戒解雇及び普通解雇の意思表示が撤回されたこと。
(2)1審原告落合が、平成 31 年 3 月 31 日をもって定年退職したこと、及び、同退職時点において追手門学院大学心理学部教授の地位を有していたこと。
(3)1審原告田中が、令和 2 年 3 月 31 日をもって定年退職したこと、及び、同退職時点において追手門学院大学経営学部教授の地位を有していたこと。
(4)本件訴訟が訴訟上の和解により終局したこと。


2021年01月30日

資料「学校法人追手門学院(懲戒解雇)事件

労働判例(2021年2月1日号)
http://university.main.jp/blog/bunsyo/20210201.pdf

2020年10月18日

追手門学院大、パワハラ研修退職強要事件 壮絶な実態をテレビ放映

追手門学院大学の職員3人が,川原俊明追手門学院理事長,コンサルタント会社「ブレインアカデミー」及び研修を実施した講師・西條浩に対して,損害賠償,退職強要の差し止めを求めた追手門学院職員退職強要事件裁判の第1回口頭弁論が,10月16日大阪地裁で開催された。

この事件については,多くのマスコミが取りあげた。そのうち,テレビ朝日系列「羽鳥慎一モーニングショー」(2020年8月21日)は,退職を強要するパワハラ研修の実態について,下記のような壮絶な実際の音声を入れた動画を約16分間放映した。「腐ったミカン」と恫喝する講師が,ブレインアカデミーの西條浩と思われる。

追手門学院大量職員退職強要(腐ったミカン)事件、大阪地裁宛「原告意見陳述」

 職員研修で「腐ったミカンは置いておけない」などと暴言を吐き,執拗に退職を迫ったのは違法だとして,学校法人「追手門学院」の職員3人が,2020年8月24日,川原俊明理事長,職員研修を受け負った東京のコンサルタント会社「ブレインアカデミー」及び研修を実施した講師に対して,損害賠償,退職強要等の差し止めを求めて大阪地裁に提訴したのが,この事件。パワハラ研修を請け負った「ブレインアカデミー」の男性講師・西條浩が、20代~50代の事務職員18人に対し、退職を迫ったという。そして研修を受講した18人のうち10人が退職し,2人が休職,1人が休職期間満了による解雇となった(追手門学院退職強要職員研修等事件原告一同「追手門学院退職強要職員研修等事件にあたっての声明」2020年8月24日より)。
 因みに,このブレインアカデミーと西條浩は,2015年,学校法人梅光学院においても,同様のパワハラ研修と退職強要事件を起こしている。
 この裁判,10月16日に,第1回口頭弁論が開かれた。原告の1人が「意見陳述書」を提出した。以下が,その全文である。
 なお,これまで同大学において発生した不当配転,不当解雇を含めた事件のすべては,こちらに掲載。

原告意見陳述

原 告 意 見 陳 述

令和2年10月15日

大阪地方裁判所第5民事部合議4A係御中

    住    所

    氏    名      印


原告の※※※です。私は,平成20年から学校法人追手門学院の専任事務職員として働いてきました。業務については真面目に取り組んでおり,上司からも安心して見ていられると評価されてきました。


9年目の平成28年7月,理事長や常務理事らによる執行部面談で,突然,学院が求めている職員像に達していないとして平成29年末で退職していただくと言われました。そして研修の参加を命じられ,改善しなければ退職勧奨を受け入れるようにと言われました。「退職」という言葉に「まさか自分が」と戸惑いましたが,退職するわけにはいきませんでしたので,心して研修に臨みました。
研修は18名が集められ,学院関係者が周りに座って監視される中,5日間計40時間にわたって行われました。研修の冒頭,学院から全権を委任されていたという西條講師から,事前の執行部の打ち合わせで再三確認している事項として,18名全員が平成29年末で学院から退いていただきたいと言われました。研修で頑張れば,という当初の思いはすぐに崩れ,もう逃げられないという気持ちになりました。その後も,西條講師は,「退職は,学院のパワーを持った意思 決定であり,その決定は覆せない」などと繰り返しました。
研修では,私は他の受講者の面前で「あなたにはもうチャンスがない」などと 罵倒されました。また他の受講生への普段耳にすることがないような暴言を延々と聞かされました。自分が言われている以上に他の方が目の前で貶められていることも堪え難いものでした。受講者は真っ青な顔をしていた方,なかには泣き出す方もいました。次第に気が遠くなり,ここで起こっていることは現実なのだろうかと思いました。


私はこれまで担当した業務を一生懸命担ってきたという自負があり,またもちろん生活のこともありましたので,研修中や研修後にも「退職しない」と何度も表明し,指摘された点の改善について自分なりの考えを伝えてきました。しかし,一向に受け入れられず,何度も学院執行部に取り囲まれる面談が続き,退職するよう迫られました。川原理事長からは,解雇もあり得るとまで言われました。退職期限の平成29年3月末には「退職勧告書」を読み上げられ渡されました。


私の心身に異変が出始めたのは研修中からでした。研修期間中ほとんど食べられず,眠れませんでした。心配や不安にさせることを思うと,家族にもなかなか話せませんでした。私の様子があまりにおかしいと感じた妻から「心療内科の予約を取ったから」と受診を勧められ,受診したところ,抑うつ状態と診断されました。
診断後も生活の基盤を失うかもしれない不安から,通院しながら我慢して勤務を続けましたが,どんなに仕事をしても「これでよいのか」と不安を常に感じ,ミスをすれば解雇されるのではという恐怖から,行動の一つ一つに時間がかかるようになりました。休日も何もやる気が起きず,ただ横になっていることが多くなりました。妻から「険しい表情をしている」と何度も指摘されました。
その後も退職を迫られる執行部面談が続きました。いつまた呼び出されるか, 解雇と言われるかビクビクするようになりました。平成30年1月,起き上がることができなくなり,以後休職せざるを得なくなりました。
研修から4年以上経った今も回復の兆しが見えません。時折,研修や面談を思い出して,夜中に何度も目が覚め、その後眠れなくなります。なぜ,こんな自分 になってしまったのかと情けなくなり,家族にも申し訳ない気持ちです。いま一 番不安なのは,1年後,また10年後,自分は一体どうなっているだろうか,元の自分に戻れるのだろうか,一生このままなんだろうか,ということです。


追手門学院は,未だ私たち被害者に謝罪していません。それどころか,学院のホームページでは,研修は「人材育成のために行ったもの」で,講師の発言は,「受講生の消極的な態度を指導したもの」と正当化しています。学院の答弁書でも,学院は全く悪くない,問題があったのは私たちの方だと言われています。私たちへの人格攻撃はいまも続いているのです。
追手門学院は教育機関であり,理事長は弁護士です。なぜ一生懸命職員として 働いてきた私たちが,ここまでされなければならないのでしょうか。私が裁判に 踏み切ったのは,たとえ回復して職場に戻ってもこのまま学院が何も変わらないままだと同じことが繰り返されるのではないかと恐怖を覚えたからです。
この裁判によって,退職強要によって失われた心と時間を取り戻し,職場に復帰するきっかけをつかみたいと思っています。

以 上

なお,追手門学院職員退職強要(腐ったミカン)事件に関する各種マスコミ報道は,以下のサイトで見られる。

●2019年度のまとめ
https://drive.google.com/file/d/1tzH7X5gAiUuyO33PPtg3r25C8YMbYLIC/view?usp=sharing

●2020年8月20日 朝日新聞朝刊
https://drive.google.com/file/d/1rt70eUAjFfBnOAFAQwMYz4-zVyQ6QrKh/view?usp=sharing

●2020年8月21日 羽鳥慎一モーニングショー(テレビ朝日系列)
https://drive.google.com/file/d/1GcJfxfqpRS0uEEgzJYwO7_h86msLrSXU/view?usp=sharing

●2020年8月24日 MBS News(TBS系列)
https://drive.google.com/file/d/1OoQ_WQxOtvmXp335b8cduRKQqDF_sP8a/view?usp=sharing

●2020年8月24日 TVO News(テレビ大阪)
https://drive.google.com/file/d/1y8dHSDrmw6A6peQBOC38eF18yRQWLjOZ/view?usp=sharing

●2020年8月24日 長周新聞
https://drive.google.com/file/d/1w9KotsttzqYeL0M-qq3mp5uLXcWK1tuE/view?usp=sharing

●2020年8月25日 毎日新聞朝刊
https://drive.google.com/file/d/1WSh79CRQvGkIW4KrMqYg3KEUuVC08rbq/view?usp=sharing

2020年10月01日

「パワハラ退職強要」コンサル、ブレインアカデミーと西條浩氏

フリージャーナリスト・田中圭太郎氏の記事(ZAITEN2020年11月号に掲載)。
追手門学院大学の事務職員18名に,「研修」という名の「退職強要」。それを請け負うコンサルタント会社・ブレイン社(ブレインアカデミー)と専門講師。追手門学院は,この研修に最大3000万円を用意したという。「退職強要」の研修を受けた受講者は18人,このうち7人が退職し,うち1人が再就職のあっせんを受けた。田中圭太郎氏が入手した請求書には約700万円の成功報酬の支払いが確認されたという。

ZAITEN20201001.jpg

2020年09月25日

追手門学院の職員研修が裁判に-「無能な社員はいらないから」…企業の「ブラック研修」がヤバすぎる

2020/9/24(木)
現代ビジネス

「無能な社員はいらないから」…企業の「ブラック研修」がヤバすぎる

追手門学院の職員研修が裁判に

 学校法人追手門学院で行われていた「ブラック研修」が話題となっている。

 報道によれば、学校法人追手門学院は、2016年8月22日~26日、追手門学院大学の事務職員など18人を大阪市内のビルに集め、「自律的キャリア形成研修」を開催した。その研修の場で、外部の講師が「腐ったミカンは(職場に)置いておけない」といった人格否定の言葉を、受講者に向けて繰り返し発したという。

 被害者の証言によれば、「5日間40時間にわたる研修で『パワハラ言葉』のシャワーを浴びせられ、精神が削り取られるようだった」(朝日新聞2020年8月20日)という。結局、この男性はその後出勤できなくなり、うつ病と診断され休職した。

 このような「ブラック研修」は、職員たちのスキルアップを目的とするものではなく、精神的に追い詰めて退職させるためのものであると考えられる。実際に、講師は受講者の退職を前提にしていて、「(今から頑張ろうと思っても)時すでに遅し」と繰り返したという。

 被害者たちは今年8月、損害賠償や職員の地位確認などを求めて大学側を提訴した。

 私は労働問題を扱うNPO法人POSSEの代表として、年間1500件以上の労働相談に関わり、これまでに「ブラック研修」に関する相談も多数受けてきた。そうした実務経験から、今回の追手門学院の事件は「氷山の一角」にすぎないと断言できる。

 さらに、世の中に存在する「ブラック研修」は「辞めさせるための研修」だけではないということも指摘したい。社員を従わせて、違法・過酷な労働に従事させるための「洗脳研修」も多くの企業で行われているからだ。

 なぜ企業は、不合理で血も涙もない「ブラック研修」を繰り返しているのだろうか? 「ブラック研修」の実態や企業側の論理について紹介し、対処法についても解説していきたい。

「ブラック研修」の悲惨な実例

 追手門学院の事例のような「辞めさせるため」のブラック研修は、以前から「ブラック企業」の手口として問題になってきた。ブラック企業では若い社員を大量に採用し、選別のため競争を強いる。その中で脱落した者に対しては、容赦なく圧迫が加えられ、「自己都合退職」へと追いやられるのである。

 例えば、私が相談を受けた増田順一さん(仮名・当時24歳)が勤めていた大手IT企業は毎年200人以上の社員を採用するが、半数以上が自己都合退職していった。会社が一度採用した社員を競わせて「選別」することで、有能な人材や、サービス残業をいとわない社員だけを残すと同時に、社員同士が生き残りを賭けて激しく競争する企業風土を維持するためだった。

 この「選別」の結果、使えないと判断された社員を追い出すために、会社はまず「社員の仕事を干す」ところから始める。都内の支社に配属された増田さんはある日、顧客の元へ出向こうとした。ところが上司から「おまえはもう顧客のところへ行かなくて良いよ。本社に出社しろ」と命じられた。

 言われた通り本社に出社すると、人事部の人間から「おまえはなぜ働いていない? 何のためにこの会社にいるのか?」と詰問された。この段階で、社内に居づらく感じた多くの社員が自己都合退職するのだが、増田さんのようにそれでも残る社員に対しては、「研修」が課されることになる。

 これも「辞めさせるための研修」であるため、何をどれだけ頑張っても評価されない。出席した増田さんは、追手門学院の事例のように発言も態度もすべてを「否定」された。そのような「研修」を受けていくうちに、受講者たちは精神疾患に陥り、「自己都合退職」していく。

 さらに、この「研修」をも耐え抜いた増田さんは「カウンセリング」を受けることになった。「カウンセリング」の前には、「おまえはどこに行っても通用しない」「まともな会社員になるためには、生まれ変わるためのカウンセリングを受けるしかない」と通告されたという。

 しかしそれでも、会社に残りたいと思う増田さんたち社員は、「藁にもすがる」思いで「カウンセリング」に望みを託す。しかしこの「カウンセリング」も、治療ではなく「辞めさせる」ことが目的だ。受診した増田さんは、ひたすら「生まれてからこれまでの人生」を振り返り、「いかに自分が使えない人間であるのか」を考えて、それを文章に書くよう強要されたという。

 「私は子供の頃から親に甘えてばかりいて、今でもまったく使えない人間です」

 「私は昔から怠け癖のある人間で、大学受験に失敗しています。だから今でも全く会社に貢献できません…」

 自分の人生を思い返し、このような文章を書くよう指示されたという。

 この作業を繰り返す中で、精神疾患を患い、結局増田さんは自己都合退職に追い込まれてしまった。

プロが関与しているケースも

 精神的に追い詰めて自ら退職させるというこうした「労務管理の技術」は、今や若者を対象としたものだけにとどまらず、どの年齢の社員も対象になりうる。いわゆる「追い出し部屋」に求められていた機能だ。

 中には弁護士や社会保険労務士など専門家が関与していたり、外部の人材会社が研修を請け負い、計画的に圧迫していくケースも珍しくはない。数年前には、社会保険労務士の「モンスター社員を解雇せよ!  すご腕社労士の首切りブログ」というブログが社会問題になった。

 そこでは、「社員をうつ病に罹患させる方法」として、「適切にして強烈な合法パワハラ与え」るために、「失敗や他人へ迷惑をかけたと思っていること、不快に感じたこと、悲しかったことなどを思い出せるだけ・・・自分に非があるように関連付けて考えて書いていくことを繰り返」えさせることで、うつ病に追い込むよう指南している。

 さらに、「万が一本人が自殺した場合に備えて、うつの原因と死亡の結果の相当因果関係を否定する証拠を作っておくこと」までアドバイスしている(ブログはすでに削除されており、厚生労働省はこの社会保険労務士を処分した)。

 この社労士のブログの内容は、私が紹介した増田さんの事例や、今回の追手門大学の方法とまったく同じだ。社員に「自己否定」を繰り返させ、自分から辞めさせる。このような「辞めさせる技術」については、弁護士や社会保険労務士による「指南書」も多数出版されている。

 今や「ブラック研修」は、「使えないと判断された社員に退職を強要する」手段となっているのだ。今回の増田さんのような無慈悲な「追い出し」は、多くの企業で行われている。もしご自身、あるいは身近な人や同僚がこのような仕打ちで苦しんでいたら、迷わず私が代表を務める「POSSE」や、個人加盟の労働組合、あるいは労働側の弁護士団体(日本労働弁護団、ブラック企業被害対策弁護団)に相談してほしい。

----------
参考文献
今野晴貴『ブラック企業2 「虐待型管理」の真相』文春新書
『POSSE』vo24 「特集:ブラック研修」
----------

今野 晴貴(NPO法人「POSSE」代表理事)


2020年08月28日

追手門学院大学退職強要事件、「拷問だった」大学を訴えた職員らが明かす「人格否定研修」の中身

Friday Digital(2020年8月27日)

「拷問だった」大学を訴えた職員らが明かす「人格否定研修」の中身

「4年前のきょうは、退職強要研修の真っ最中でした。私は『あなたは腐ったミカンです』『戦力外です』と言われ続けたことで、パニックになりました。長時間にわたって、参加者全員に人格否定の言葉が浴びせられるのを聞くのはつらかった。はっきり言って、あれは拷問です」

学院を訴えた3人

こう話すのは大阪府の学校法人「追手門学院」に勤務していた40代の元職員。8月24日、この元職員と休職中の職員2人が、違法な退職強要を受けたなどとして、追手門学院と学院の川原俊明理事長、コンサル会社のブレインアカデミーなどを相手取り、慰謝料など約2200万円の損害賠償を求める訴えを大阪地方裁判所に起こした。

問題の経緯はこうだ。2016年6月、学院の総務室長から専任事務職員に対し、「面談と指名研修を行う」という通知があった。そこには「学校経営は極めて厳しい時代となっています。(中略)『求められる職員像』に達していない方には、今後の職のあり方もご検討頂かなければなりません」と書かれていた。

翌月、18人を対象に学院が面談を実施。「2017年3月末までにやめていただきたい」と、退職勧奨が始まったのだ。

「2019年春に新キャンパスをオープンすることもあり、大学側は人件費を削減し、財政の安定化を進めたかったのでしょう。18人のなかには複数の管理職経験者や、昇進したばかりの人も含まれていました」(大学関係者)

面談が行われた後、この18人に対して追手門学院は「研修」を実施する。その際、自分たちの手で進めるのではなく、この研修を外部に委託。請け負ったのが、「ブレインアカデミー」という教育系のコンサル会社だ。

今回、追手門学院とブレインアカデミーを提訴した3人は「この研修によって体調を壊し、休職を余儀なくされた、と主張する。3人は提訴後、匿名を条件にメディアの取材に応じた。裁判所に提出された訴状に記されたのは、追手門学院とブレインアカデミーによる執拗な「退職強要」と彼らが受けたという、耳を疑うような「研修内容」についてだった。

訴状によると、始まりは4年前の2016年8月22日のこと。対象となった18人が「研修」を受けるために大阪市内のビルの一室に集められた。「研修」とは名ばかりで、その内容は「5日間計40時間にわたって退職を繰り返し強要する」ものだった、とのことだ。

学院から委託を受けたブレインアカデミー所属の講師は、参加した職員に対して業務とは関係ない人格否定を繰り返した、という。

「あなたのような腐ったミカンを追手門の中に置いておくわけにはいかない」
「戦力外なんだよ」「老兵として去ってほしい」「虫唾が走る」
「賞味期限切れちゃったかな」

暗幕で外の光を遮断した部屋では、このような講師の怒鳴り声が響き、水を飲むことも、トイレに行くこともはばかられる雰囲気。参加者の多くは頭痛や吐き気を起こすなど、体調に異常をきたした。なかには泣き出す職員もいたが、同席していた学院執行部は止めるわけでもなく、「ただ監視していただけ」(関係者)だったという。

その研修の末に原告の1人が受け取った「退職勧告書」には、「物事の本質を理解する能力が欠落している」「思考が浅く幼い」など、誹謗中傷ともいえる言葉が並んでいる。

退職を強要された18人のうち9人が心療内科などにかかり、うつ病などと診断された。その後、2017年3月末で10人が退職することに。冒頭の元職員も休職に追い込まれ、今月、追手門学院から休職期間が満了したとして解雇された。

「あの研修がきっかけでうつ病になりました。いまでも当時のことを思い出すと、体が動かなくなります。何とか職場に戻ろうと思っていましたが、バッサリ切られて、悔しいし、悲しいです」

裁判は、退職強要が社会常識的に逸脱したものであるかどうか、また違法性が認められるかどうかが争点となるだろう。原告の弁護団は「悪質で違法性が高い」とその問題点を指摘している。原告3人は現在労基署に労災を申請中だ。

一方、追手門学院は筆者の取材に対して「本件につきましては訴状が届き次第、内容を確認して、対応してまいります。多くの皆様方にご心配とご不快な思いをさせましたことをお詫び申し上げます」と述べるに留まった。これまでの経緯から、全面的に争うことが予想される。

しかし、そもそも学校法人が外部講師を雇って退職を強要すること自体、問題があるのではないだろうか。関係者の証言によると、この時の研修費用は最大で約3000万円になることが、学院内で承認されていたという。「受講者に自律的キャリア形成への変化が認められた場合」、1名につき税込みで108万円支払う契約が結ばれていた…とのことだ。

言葉は選んでいるが、簡潔に言えば「一人退職させれば、約100万円が報酬として支払われる」契約だった可能性が高い、ということだ。筆者が入手した資料などから判断すると、2016年の年末までにブレインアカデミーに少なくとも700万円が支払らわれた可能性がある。

どのような理由があったにせよ、このような「研修」が行われていたのなら、問題アリといわざるを得ない。同大学は理念の一つに「自他の人格を尊重」すると記しているが、こうした訴訟が起こされるということは、その理念を忘れたのではないか、と疑われても仕方がないだろう。

取材・文:田中圭太郎

追手門学院退職強要職員研修等事件にあたっての声明

2020年8月24日

追手門学院退職強要職員研修等事件にあたっての声明

追手門学院退職強要職員研修等事件原告一同

 本日,私たちは,学校法人追手門学院,同学院川原俊明理事長及び株式会社ブレインアカデミー並びに同社が受託し実施した研修の講師であった西條浩氏に対し,損害賠償及び退職強要等の差し止めを求めて大阪地方裁判所に提訴いたしました。

 提訴の理由は,追手門学院が2016年8月に実施した研修において,私たちに退職ないし退職した上での特定事務職員への変更を強要または勧奨する言動や名誉を毀損する言動により精神的圧迫を受けたことに対してです。

 私たちは,5日間40時間にわたる研修を業務命令として拒否できない形式で受講させられました。研修は「自律的キャリア形成研修」と名付けられ、暗幕が引かれた部屋で「腐ったみかん」「あんたはいらない」「虫唾が走る」などの人格否定の言葉のシャワーを浴びさせらました。研修終了後も追手門学院の執行部による退職強要とも言える面談を繰り返し行われたことによって精神疾患を発症し,休職せざるを得ない状況となっています。
 このため,私たちはそれぞれ茨木労働基準監督署に対し労災申請を行っています。

 研修を受講した18名のうち10名が退職しました。現在,2名が休職,1名が休職期間満了による解雇となっています。

 受講した職員のなかには,未だ殺された心を取り戻せずに苦しみ,研修が行われた新大阪や追手門学院の大学や各学校がある茨木周辺には近づけない者もいます。大きな声での会話でさえ動悸がして身体がこわばり,当時の恐怖感がぬぐえず,動けなくなる人もいます。

 追手門学院は,研修は大学設置基準第42条の3に基づきSD(スタッフ・ディベロップメント)として実施したと言っています。しかし,その内容は,退職強要そのものであり,同基準が求める,職員に必要な知識及び技能を習得させ、その能力及び資質を向上させるための研修ではありませんでした。言い換えれば,追手門学院がブレインアカデミーと手を組み,退職を強要するハラスメント研修を企画し実行したのです。

 私たちが,この裁判でめざすところは,退職強要によって失われた心と時間を取り戻し,職場に復帰するきっかけをつかむことにあるとともに,追手門学院が教育基本法の前文である「個人の尊厳を重んじ,真理と正義を希求し,公共の精神を尊び,豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに,伝統を継承し,新しい文化の創造を目指す教育を推進する」を踏まえた正常な教育機関に戻ること,追手門学院で学ぶ園児,児童,生徒,学生の育成に全力で取り組むことを望んでいます。


2020年08月26日

追手門学院理事長が「腐ったミカンは置いておけない」と発言 職員らが約2200万円の賠償を求め提訴

読売テレビ(8月24日)

  職員研修で「腐ったミカンは置いておけない」などと暴言を吐き、執拗に退職を迫ったのは違法だとして、学校法人「追手門学院」の職員ら3人が24日、学院理事長らに損害賠償を求める訴えを起こした。

「あなたのように腐ったミカンを追手門(学院)の中に置いておくわけにはいかない。まだ少しは可能性があって頑張ろうとしているミカンも腐ってしまう」「老兵として去ってほしいんです」

 職員に浴びせられた暴言の数々。訴えによると、学校法人「追手門学院」が、4年前に行った職員研修の音声データだ。研修を請け負った東京のコンサルタント会社の男性講師が、20代~50代の事務職員18人に対し、退職を迫ったとされている。

 訴えによると、職員研修は貸会議室の一室で行われたという。黒い幕が張られた日の光が入らない部屋で、人事課の職員が見守る中、一日8時間の5日間連続で行われたという。

 研修の冒頭、男性講師は…。

「原則として今回の18名全員が今年度末、来年(2017年)の3月末の段階で残念ながら学院を退いていただきたい。例外なくです。18人全員がね」

 研修は、受講者全員が「私の自己改革テーマ」というタイトルで発表を行い、講師がコメントする形で進められたという。

「もう必要ないよ、戦力外通告されたわけでしょ、この度」「30前で、もう要らんと言われたんだよ、あなた。ノーサンキューと言われたんですよ」「あなたのように腐ったミカンを追手門の中においとくわけにはいかない。まだ少しは可能性があって頑張ろうとしているミカンも腐ってしまう」

 さらに研修終了後、退職に応じなかった職員らは学院幹部との面談で何度も退職を迫られ、中には理事長から退職勧告書を読み上げられた職員もいたという。

理事長とみられる男性「学院からの退職勧告をします。思考が浅く幼いと見え、向上心が見受けられない。外部による研修を受講させ、気づきの機会を与えたが、研修講師からの評価も芳しくなく…」

 研修や面談の結果、うつ病を発症するなどして、受講した職員18人のうち10人が退職。現在も2人が休職しているという。

 そして、きょう。大阪地裁。男性職員ら3人は、人格を否定する言葉で執拗に退職を迫ったのは違法だとして、理事長や研修を請け負ったコンサルタント会社に対し、合わせて約2200万円の損害賠償を求める訴えを起こした。

 会見で、原告は…。

「パワハラ言葉のシャワー」「本当にこれは現実なのかなと」「泣き出す方もいらっしゃいましたし」「自分以外の人が攻め立てられているのを見させられているのが非常につらかった」「(研修の)5日間通して(大学の)人事課員はいたんですけど、一回もこうした発言に対して止めに入ったことはなかった」

 原告の代理人の谷真介弁護士「我々も退職勧奨・強要などの事案をよく取り扱っていますが、ここまでの事例は本当に聞いたことがない」「これが本当に教育機関の中で行われているのかと、初めて聞いたときは信じられなかった」

 追手門学院は「訴状が届き次第、内容を確認し、対応してまいります。多くの皆様にご不快な思いをさせましたことをお詫び申しげます」とコメントしている。


2020年08月25日

研修で「腐ったミカン置いておけない」、解雇の職員ら追手門学院などを提訴

読売新聞(8月25日)

 職員研修で「腐ったミカン」などと言われて退職を迫られ、精神的苦痛を受けたとして、学校法人「追手門(おうてもん)学院」(大阪市)の男性職員ら3人(いずれも40歳代)が24日、学院や研修を行ったコンサルタント会社「ブレインアカデミー」(東京都千代田区)などに計約2200万円の損害賠償などを求め、大阪地裁に提訴した。

 訴状によると、3人は2016年8月にあった研修で、同社から派遣された講師に「あなたのように腐ったミカンを置いておけない。頑張ろうとしているミカンも腐ってしまう」などと罵倒され、退職を求められたという。3人は学院幹部からも退職を迫られ、うつ病などを発症して休職。うち1人は解雇された。

 原告側によると、研修内容は学院と同社が話し合って決め、研修を受けた18人のうち約10人が退職したといい、「人格否定を伴う退職強要だ」と主張している。

 学院は昨年7月、研修の責任者だった理事を厳重注意にしている。

 学院と同社は「訴状が届き次第、対応していく」としている。

追手門学院 “退職強要”で提訴

NHK関西News(08月24日)

大阪の学校法人、追手門学院の事務職員3人が事実上、退職を迫る研修で外部の講師から「腐ったミカンをおいておくわけにはいかない」などと人格を否定される発言を繰り返されたとして、学院側に賠償などを求める訴えを起こしました。

大阪地方裁判所に訴えを起こしたのは、追手門学院の大学などで事務職員として働いていた40代の男性3人です。
訴えなどによりますと、原告は4年前、キャリア形成を名目に学院が行った研修で、外部講師から「あなたのような腐ったミカンをおいておくわけにはいかない」「老兵として去ってほしい」などと参加者全員の前で人格を否定する発言を繰り返され退職を迫られたということです。
研修は暗幕が張られた部屋で5日間連続で行われ、受講した18人のうち10人が退職したほか、原告の3人は休職を余儀なくされ、このうち1人は休職期間が満了したとして解雇されたということです。
原告は違法な退職の強要だと主張して、学院と理事長、講師らにあわせて2200万円の賠償などを求めています。
提訴後に会見を開いた男性らは、「教育機関として許されないことで、早く正常な学院に戻ってほしい」と話していました。
一方、追手門学院は、「訴状が届きしだい、内容を確認し対応します。多くの皆さまにご心配、ご不快な思いをさせたことをおわび申し上げます」とコメントしています。


2020年08月21日

「腐ったミカン」発言 追手門学院の職員ら、提訴へ

朝日新聞(8月20日)

 職員研修で「腐ったミカンは置いておけない」などと人格を否定する言葉で執拗(しつよう)に退職を迫ったのは違法だとして、学校法人追手門学院(大阪)の男性職員ら3人が近く、学院理事長や研修を請け負ったコンサルタント会社などに総額約2200万円の損害賠償などを求める訴えを起こす。

「腐ったミカン置けない」 追手門学院、外部講師が発言

 原告代理人の谷真介弁護士によると、3人が求めるのは、それぞれ慰謝料500万円を含む1人564万~998万円の損害賠償など。うち1人は「休職期間満了で解雇されたのは不当」として、職員の地位確認も求める。

 原告側の訴えによると、学院は2016年8月、「求められる職員像に達していない」として、3人を含む18人に「自律的キャリア形成研修」(5日間、計40時間)を受講させた。

 研修はコンサル会社・ブレインアカデミー(東京)が請け負ったが、学院側は研修の冒頭、「ブレインアカデミーとの間で研修内容を精査した」と説明。そのうえで、ブレインアカデミーの講師が「17年3月末で学院から退いていただきたい」と述べたとされる。

 講師はさらに、「あなたのように腐ったミカンを追手門の中に置いておくわけにはいかない。まだ少しは可能性があって頑張ろうとしているミカンも腐ってしまう」「あなたにはもうチャンスがない」などと人間性を否定する言動で繰り返し退職を迫った、という。

追手門学院、「不適切」の認識 「腐ったミカン」発言

 その後も3人は学院幹部との面談で退職を迫られ、うつ病などを発症、悪化させ、休職を余儀なくされたと主張。うち1人は川原俊明理事長同席の面談で「退職勧奨をやめていただきたい」と言うと、川原理事長から「とことん変わってくれへんかったらいらんよ」「もう今後、退職勧奨をやめてください? あほなこと言わんといてくれ」と告げられたという。

 男性はその後の面談で、「視野が狭い」「思考が浅く幼い」などと書かれた「退職勧告書」を読み上げられた。

 19年6月、研修がパワーハラスメントにあたる可能性があると朝日新聞が報じた後、学院はホームページに「外部講師の発言とはいえ、報道された不適切な発言は決してあってはならないと認識し、研修を委託した本学院の責任を強く感じております」と掲載した。

「腐ったミカン」発言、監督者を厳重注意 追手門学院

 学院は今回の取材に、「厳粛に受け止め、二度とこのような事態が起こらぬよう努め、学校運営全般についても問題点がないか厳しく点検して進んでまいります」と文書で回答。後日、川原理事長の発言に関する取材には、「個別の案件については、係争の可能性があることから回答は差し控えさせていただきます」と文書で回答を寄せた。

 ブレインアカデミーは文書で「コメントを差し控えさせていただきます」と答えた。
「パワハラ言葉」のシャワー浴びせられた

 「人を育てる教育機関のあり方として許せない」。原告となる3人は学院の研修後に体調を崩し、4年たった今も、不眠や抑うつ状態などで苦しんでいる。


2020年04月09日

追手門学院大学不当懲戒解雇事件、3月25日大阪地裁原告勝訴の判決!

■支援する会ニュース第24号より

3月25日 大阪地裁 原告勝訴の判決!

判決主文

1 本件訴えのうち,原告田中耕二郎が,被告に対し,本判決確定後の金員の支払を求める部分を却下する。
2 原告田中耕二郎が,被告に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。
3 被告は,原告落合正行に対し.平成27 年11月21 日から平成31 年3 月31 日まで,毎月21 日限り73 万0800 円及びこれらに対する各
支払期日の翌日から支払済みまで年5分の都
合による金員を支払え。
4 被告は.原告田中耕二郎に対し,平成27 年11月21 日から本判決確定の日まで,毎月21 日限り72 万0800 円及びこれらに対する各支払
期日の翌日から支払済みまで年5 分の割合による金員を支払え。
5 被告は,原告落合正行に対し、1521 万7700 円及び別紙1 の「金額」欄記載の金員に対する同別紙の「支給日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年5 分の割合による金員を支払え
6 被告は,原告田中耕二郎に対し,1500 万2700円及び別紙2 の「金額」欄記載の金員に対する同別紙の「支給日」欄記載の日の翌日から支払済みまで年5 分の割合による金員を支払
え。
7 原告らのその余の請求をいずれも棄却する
8 訴訟費用は被告の負担とする。
9 この判決は,主文3 項ないし6 項に限り.仮に執行することができる。

報告集会での弁護団の報告(要旨)

 今回の判決は「原告の請求のほとんどについて認める。」という内容で、「訴訟費用は被告の法人側がすべて負担せよ。」という点をみても裁判所の判断が端的に表れています。裁判所の判決文では詳細な記述をしていますが、結論的に言いますと、お二人のこれまで長い間の追手門学院における貢献に対して、「一部メールの内容を外部に流した事実もあるが、それは懲戒解雇の事由にはならない」という判断です。賞与に関してもこちらの求めた内容を認めておりますので、結論的に言えば大きな勝利であると考えております。

 田中さんは定年ではありませんので、契約上の地位も認めております。法人側がお二人に対して重大な懲戒解雇という処分をしたことは客観的・社会的相当性を欠くという結論です。

 さらに「記者レク」問題、コーチの方が田中先生と落合先生に煽り唆されて「あやつり人形としてやらされた」ということについては「そうではない」と裁判所は判断しており、さらに田中先生がコーチの起こした訴訟の費用を立て替えたという問題に関しても「そのこと(立て替え)をもって自ら訴訟を主導してやろうとしたということはできない」と判断しています。

 さらに「記者会見を画策した」ということですが、「記者会見で事実を明らかにしないといけない」といったメールのやり取りがあったわけですが、判決は実際、記者会見は行われていませんし報道もされていません。これによって法人側の不利益は発生していない。こうした点から「お二人の懲戒処分の事由には当たらない」と裁判所は判断しています。

 落合先生については、「理事会の内容を外部に漏洩した」「調査委員会の内容を漏洩した」とされていますが、これが「懲戒解雇事由にはあたらない」というのが裁判所の判断です。田中先生に関しては「落合先生から提供された資料などを他の人に提供した」ということですが、これも「懲戒事由には当たらない」とされました。

 合先生、田中先生に関して「追手門学院大学に採用され、長年にわたって勤務しこの間特段の懲戒処分もなかったことも考えると懲戒処分は正当性を失する。懲戒権の乱用である」と指摘しています。

 最終段階で被告・法人側は「懲戒解雇にあたらなくても普通解雇ができる」との主張をしてきましたが、これも「普通解雇事由には当たらない」としています。

 さらに落合先生はすでに定年退職されていますが、田中先生はこの3月で退職となります。お二人の退職金についても法人側がどのような対応でくるのか不明ですが、この点についても今後訴訟になる事も考えられます。

 相手側は当然控訴してくるでしょうから、これからも十分な準備をして控訴審に対する十分な準備をするとともに一層の支援の態勢が望まれます。


2020年03月27日

「追手門学院大学懲戒解雇」大阪地裁判決に対する声明文

「追手門学院大学懲戒解雇」大阪地裁判決に対する声明文

2020年3月25日

「追手門学院大学懲戒解雇」大阪地裁判決に対する声明文

 追手門学院現理事長で弁護士でもある川原俊明氏が、原告落合と田中に行った懲戒解雇を無効と判じた大阪地裁の判断は、誠に合理的であり,社会的に意味のある判断だと考えます 。

 判決において、現理事長等が原告等を大学から排除する強い意志を持って、合理的事由がないにもかかわらず、本来証拠と出来ない内心をも懲戒事由とし、学院では懲戒解雇時には弁護士など専門家の意見を聞く慣例の手続きも経ず、遵守すべき事実、論理、倫理、人権をも軽んじる権力行使を行い、排除したい者を独断的に懲戒解雇できる統治のあり方が明らかにされました。そして,この統治のあり方が,「腐ったミカンはいらない 」とするターゲットとした教職員の人権をも無視する酷い手法で辞めさせることを目的に行った研修へとつながったのです。

 事の始まりは、前理事長が追手門学院大学において幹部職員(当時事務 No.2) による複数学生とチアクラブコーチとに対する深刻なセクハラ行為(大学設置調査委員会で認定)をコーチから相談された事務局長(当時)が結果として隠蔽したという事務職最高幹部二人の起こした悪質な事案であります。クラブコーチは原告田中に相談し、学長であった原告落合を長とする大学ハラスメント委員会に訴えました。そして、大学調査委員会によりセクハラが認定され、隠蔽には厳しく重い付言がつけられましたが、法人懲戒委員会では理事長一任となり、その結果、理事長が加害職員に厳重注意と謝罪文の提出を求めたのみで、自己都合による退職(退職後 、直ちに他の学校法人の常務理事に就任)を承認し、事務局長に対しても口頭による厳重注意のみで、事実上不問に付しました。事務局長と理事長の2度にわたる隠蔽でこの事案を無かったことにした学院中枢の極めて重大な事案です。特に前理事長は厳正な処分と同時になすべき被害学生等への十分な心身のケア、そして学院としての再発防止策の策定など教育機関としてのあるべき姿を全く示すことをしませんでした。

 学院のこのようなあり方に対して,クラブコーチが提訴し、原告等は自浄作用が機能しない法人では大学の機能を損なう事になると考え 、勇気ある行動を支援しました。

 これに対して、前理事長は、原告落合を自ら辞めるように、学長就任前から非協力的姿勢をあらわにし、学長就任後には合理的理由がないにもかかわらず学長辞任勧告を10ヶ月にわたり行いました。さらに学長辞任後には、現理事長等が原告落合に対して3年にわたり3度の配転を行い、研究者総覧や教員名簿、大学院の受験生用パンフレットから名前を消す、強引な統治や懲戒解雇を履行しやすくするため必ずしもデュープロセスを経ないで一方的に懲戒手続きをはじめ様々な学内規程を都合のよい内容に変更してきました。

 一方、クラブコーチは裁判の過程で訴訟を唐突に担当弁護士にも相談せずに取下げ、裁判支援のためのグループ内での情報・意見交換のメールを全て被告側に提供しました。その上クラブコーチは、自身の相談を真摯に受け止め、支えてきた原告田中を貶める多数の事実に反する発言を学院の証人として行いました。原告としては、このような理事会執行部とクラブコーチの行為を厳しく問いたいところです。

 鑑みれば、現理事長等の敗訴濃厚な落合の配転判決の直前の2015年10月25日に突如懲戒解雇され 、爾来4年5ヶ月が経過しました。懲戒解雇の結果、私達は大学教授としての教育・研究の機会を奪われ、給与も支給されない状況に置かれ,取り返しのつかない負の影響を長期間にわたり止むなく受けざるを得なくされたことは、決して許すことの出来ないことです。

 もとより、私学といえども大学は教育機関として社会の公器であります。最高学府にある大学の現理事長で、弁護士でもある川原氏は、大学が大切にしている事実に基づき、論理に沿った理性的判断、倫理と人権の尊重という学問と教育に大切な価値を全く尊重せず、従って妥当性も、適切性も認められない権力の行使を行い、自身に都合の悪い原告や教職員を学院から追放した事、自身の学院にとどまらず中京大学や名古屋芸術大学、さらには梅光学園など他の教育機関にまでもその手法を波及させていることは、追手門学院の役職はもとより、社会的な役職を自ら辞するに十分値する振る舞いであると考えます。

 最後に、本判決を得る事が出来ましたのも、提訴から4年5ヶ月余にも及び私達を支えてくださいました弁護士の先生方のおかげであり、深く感謝致します。さらに、はじめから一貫して私達の裁判を支援してくださいましたさまざまな大学の教員をはじめ、追手門学院の卒業生の皆様を含む多くの方々の支援の賜であり、皆様方に深く感謝いたします 。


田中耕二郎 ・落合正行

2020年03月26日

追手門学院大学元学長らの懲戒解雇は「不当」判決

ABCテレビ3/25(水)

大阪府茨木市の追手門学院大学を事実無根の理由で解雇されたとして、元学長ら2人が大学を運営する法人を訴えていた裁判で大阪地裁は懲戒解雇を「不当な解雇」だと認めました。

訴えを起こしていたのは、追手門学院大学の元学長Aさん(71)と、元教授のBさん(70)です。訴状によりますと2人は、セクハラ被害を訴えていた運動部の女性コーチに訴訟を起こすよう促した上、提訴にあわせて記者会見を開き学校の名誉を毀損しようとしたなどの理由で2015年に懲戒解雇されました。Aさんらは「そのような事実は一切なく、不当な解雇だ」と主張し、解雇された後の給料やボーナスの支払いを求めて同年に訴えを起こしていました。25日の判決で大阪地裁は、セクハラ被害の訴えについて「女性コーチは自らの意思で訴訟を起こしている」として、2人が提訴を促したという解雇理由を否定しました。さらに記者会見については「実際には記者会見は開かれておらず名誉を毀損されたとは認められない」とした上でAさんとBさんへの懲戒解雇は「合理的な理由を欠き、権利を濫用したもの」と無効だと認め、追手門学院にあわせて1億円あまりの支払いを命じました。追手門学院は「懲戒解雇は正当な手続きだった」として控訴することを表明しています。


2019年07月10日

追手門学院、理事を厳重注意 「腐ったミカン」問題

%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%97%E3%83%81%E3%83%A320190710.JPG

2019年06月23日

追手門学院、外部講師が発言 「腐ったミカン」「よどんでいる」「負のオーラ」「要らない」

朝日新聞(2019年6月23日)

 大阪府内で大学などを運営する学校法人追手門学院が2016年に開いた職員研修で、外部の講師が「腐ったミカンは置いておけない」などの厳しい言葉を各受講者にかけていたことがわかった。学院側は、研修中やその後、受講者に退職を勧めており、翌年度にかけて少なくとも数人が退職したり休職したりした。

 複数の受講者の証言などによると、学院は16年8月22~26日、追手門学院大学(大阪府茨木市)などの事務職員18人を大阪市内のビルに集め、「自律的キャリア形成研修」を開催。講師は東京都内のコンサルタント会社が担い、学院幹部らが入れ替わり立ち会った。

 研修の中で学院側は、内容を講師と事前に精査し、「全権委任している」と説明。講師は「自己改革」などをテーマに1人ずつ、受講者全員の前で発表させ、その場で講評した。

 その際、受講者の一人に「腐ったミカンを置いておくわけにはいかない。まだ少しは可能性があって頑張ろうとしているミカンも腐ってしまう」と発言。ほかの受講者にもそれぞれ「あなたが一番、参加する意欲、姿勢が曇っている。よどんでいる」「負のオーラばっかりだ」「あなたは要らない」などと言った。

 研修で講師は、受講者を選んだ理由について「28歳以上59歳未満」「前年度評価で降格」など5条件のどれかか複数に該当すると説明。(1)退職(2)年俸制など(3)関連会社への出向転籍(4)関連会社への転籍後に退職(5)再生・現状維持、の選択肢から選ぶよう求めた。

 受講者の一人は取材に「全員の前で人格否定されるのを聞かされ、心を閉ざさないと精神をやられると思った。辞めさせるための研修だと感じた」。別の受講者は「要らないと繰り返し言われ、ショックで寝られなくなって通院した」と話した。

 研修後も講師や学院幹部に数回呼ばれ、「現状維持」を訴えても「退職勧告書」を渡された人もいた。

 学院は取材に、「腐ったミカン」などの発言を認めた上で、「消極的な受講姿勢を指導した発言。改善後、講師は称賛のフォローをしている」と回答。研修後のリポートで「多くの学びが得られ、参加してよかった」との感想が述べられたとしている。今回の研修について「違法性はない」との見解を示し、「教職員本位から学生・生徒等学習者本位へといち早く転換し、教職員挙げて教育の質の向上、質保証にまい進している。本研修はその一環で実施した」と回答した。コンサルタント会社は取材に「クライアントの情報は一切開示しない」としている。

 同僚の前での叱責(しっせき)や侮辱は厚生労働省の有識者会議がまとめたパワーハラスメント類型の一つに含まれるとされる。過去の裁判ではパワハラを伴った執拗(しつよう)な退職勧奨の違法性が問われ、不法行為と認められたケースもある。(小若理恵、石川智也)

 ■外部の人使った、学院のパワハラ

 労働問題に詳しい萬井隆令(よろいたかよし)・龍谷大名誉教授の話 「腐ったミカン」などの発言は人格否定で侮辱、パワハラにあたる。それを伴った退職勧奨ならば民法上の不法行為だ。学院が内容を講師と精査したと断っている点から、外部の人を使った学院のパワハラだと言えるのではないか。


2016年03月03日

追手門学院大学不当配転事件、控訴審 学園側控訴取下 落合氏の勝訴確定

祝 勝訴

追手門学院大学不当配転事件控訴審(大阪高裁)において,3月1日,学園側は控訴を取り下げました。
これにより,昨年11月18日の大阪地裁判決が確定し,落合正行氏の勝訴も確定しました。

大阪地裁判決(抄)(2015年11月18日)


2016年01月05日

追手門学院大学不当解雇事件、原告側が大阪地裁に訴状を提出

追手門学院大学不当解雇事件、原告側が大阪地裁に訴状を以下のPDFファイルにて公開する。

追手門学院大学不当解雇事件訴状(平成27 年12 月28 日)

2015年11月26日

追手門学院大学不当配転訴訟、原告「一審判決についての声明」

「不当配転訴訟」一審判決についての声明

以下の声明は「支援する会」から資料提供されました。

2015年11月18日

「不当配転訴訟」一審判決についての声明

原告 落合正行

 本日の大阪地裁における判決は、今回の私への配置転換が法的な根拠がないことを認めるきわめて合理的判断であり、大学に関わる裁判の今後のよき判例となると考えます。

 顧みますと、私は、2 0 1 2 年7 月2 8 日に合理的な理由もなく、私の意に反して心理学部教授から教育研究所教授に配置転換をされました。その後も今日に至るまで、毎年、次々と新たな部署に配置転換をされ、教育・研究上理不尽な扱いを受けました。

 もとより、私学といえども大学は教育・研究機関であり、社会の公器です。大学の教員は研究の専門によりカリキュラム上必要な科目を学部学科に所属して担当しますので、一般の企業の従業員とは雇用のあり方が異なります。これは、大学の研究と教育という社会的機能を保証するために必要なあり方です。従って、理事長が教員の専門性を無視して自由に配置転換出来ないことが認められたことは、大学の独自性を考慮した大変重要な判断だと考えます。理事長が、その後も大学を自分の意のままに運営するために大学の自由と自治を踏みにじり続けることは、大学の社会的存在を無にする行為です。

 配置転換の結果、私は心理学部教授として担当していた業務を遂行できなくなりました。ゼミの募集が突然中止されて学生が登録出来なくなり、また私の担当の数科目が数年にわたり開講されず、心理学部の開講科目として学生との約束事を履行せず、学生に対する心理学教育に重大な不利益を与える結果となっております。

 最後に、本判決が得られましたのも、提訴から2 年7 ヶ月余にも及び私を支えてくださいました弁護士の先生方のおかげであります。また、自らのことを顧みず、はじめから一貫して私の裁判を支援してくださいました大学の同僚の教員をはじめ、大学関係者、卒業生の皆様を含む多くの方々の支援の賜であり、皆様方に、感謝いたします。


2015年11月19日

追手門学院大学地位確認訴訟、11月18日大阪地裁 原告落合前学長の完全勝訴

【裁判速報】

祝 勝訴!

追手門学院大学落合前学長の地位保全確認訴訟の判決が、11月18日大阪地裁であった。
結果はほぼ完全勝訴であった。

判決内容は以下の通り。
①落合前学長の心理学部教授としての地位を確認する(学長辞職後における本人の合意のない研究所への配転命令は無効である)。
②被告理事会は賠償金50万円を支払わねばならない。


2015年11月17日

追手門学院大学不当解雇事件、「懲戒解雇に対する声明」

懲戒解雇に対する声明

懲戒解雇に対する声明

 2015 年10 月25 日(日)、私たちに川原俊明理事長名で「懲戒解雇に処す」という通知書が配達証明で郵送されてきました。本学院の現在の「教職員懲戒手続規程」は、懲戒委員会の決定に対して不服申し立ての機会が一切認められていないため、これにより、即日、私たちは懲戒解雇され、以後、許可なく学内に立ち入ることをはじめ、担当授業の遂行、研究室の使用、公費で購入した物品等の使用、図書館や情報システムの利用など、専任教員としてのすべての行動が禁止、もしくは著しく制限されることになりました。

 今回の懲戒は、昨年9 月に川原理事長が懲戒委員会に付議してから1年以上の期間があったにもかかわらず、年度途中において、担当授業が遂行できなくなり、受講学生に多大の迷惑をかけることを承知で遂行されたものであり、まずもってこのことに強い怒りを覚えます。おそらく、来る11 月18 日に予定されている、落合の不当配転取消訴訟の一審判決に備えて、法人側が敗訴しても、落合を解雇することによって心理学部教授に復帰させなくしようという悪質な狙いがあるものと思われます。

 あわせて、懲戒解雇は永年にわたる勤務に伴う退職金の給付や、私学共済の医療費給付などの権利を剥奪するものであり、経済的にも計り知れない損失となります。個人的なことになりますが、現在、田中の妻は、重大疾病で療養中であり、多額の医療費を必要としています。自らの余命に対する不安に加えて、経済的不安を新たに抱えなければならなくなった妻が可哀想であるとともに、言いようのない申し訳なさを感じています。

 そもそも、今回の懲戒解雇の理由は、「学院等を被告とする損害賠償請求訴訟等の提起を教唆し、その遂行に深く関わり、マスコミを通じてその事実を公表すれば学院の評価が低下することを認識しながら、学内を混乱させて理事者に対する責任を追及できると考えてあえて記者会見を画策し、もって学院の名誉及び信用を毀損する行為を行った、また、学院等を被告とする前記訴訟の遂行にあたり、本来の原告の意思を超えて荷担し、職務上知り得た秘密を他に漏らした、または、それに準ずる行為を行った」というもので、これらが「追手門学院大学就業規則」第30条第1項第1号、第3号、第4号、及び第7号(いずれも事案発生当時の就業規則、現在は条数が第34条に変更されている。)に該当するというものです。

 ここで言う「学院等を被告とする損害賠償請求訴訟等」とは、具体的には、本学の卒業生が2010年7月に申し立てたセクハラ事案について、キャンパス・ハラスメント防止委員会(当時)では申し立てのほとんどが事実として認定されたにもかかわらず、処分について当時の懲戒委員会では結論を出すことができず、最終的に大木理事長(当時)の判断により、学院の幹部職員による複数学生に対する極めて重大な出来事であったにもかかわらず、一片の謝罪文の提出を求めたのみで、それ以上の処分を行わなかったことから、これを不服として、卒業生が2011年6月に大阪地裁に提訴し、併せて大阪弁護士会に人権救済の申し立てを行ったことを指します。この提訴と申し立ては、結局、翌2012年8月に取り下げられましたが、その後、川原理事長は事実を捻じ曲げ、虚偽のストーリーを描いて、2014年9月に私たちを懲戒委員会に付議したものです。

 また、その間、川原理事長は、当該訴訟等の原告代理人を引き受けた弁護士を、訴訟を煽動した、訴訟を学内抗争の助長に利用したなどの理由を挙げて、大阪弁護士会に懲戒請求を申し立てましたが、大阪弁護士会は、これらの懲戒理由は認められないとして、この請求を却下しました。しかし、これに納得しない川原理事長は、日本弁護士連合会に対して異議申し立てまで行ったのですが、日本弁護士連合会も大阪弁護士会の判断に誤りはないとして、川原理事長の異議申し立てを却下したのです。このように、川原理事長の描いたストーリーは、法律の専門家団体ではまったく認められなかったものであり、それにもかかわらず、私たちを懲戒すべく、学院の懲戒委員会に付議したのです。

 そもそも、本学院の現在の「教職員懲戒手続規程」は、2013年7月に従来の「懲戒委員会規程」を大幅に改悪したものであり、①懲戒の付議が理事長の専決とされたこと、また「部局による調査」を経ることなく、直接、理事長が付議することもできるようにしたこと、②懲戒委員会の構成人数が削減され、理事長の意思が反映されやすい者によって事実上構成されるようになったこと、③第三者の役割が期待される弁護士についても、「理事長によって指名された」委員長が指名するとされ、第三者としての客観性・公平性が必ずしも担保されないこと、④懲戒委員会の開催定足数や決議定足数が引き下げられ、決議しやすくなったこと、⑤不服申し立てを認めず、懲戒委員会の決議をもって、理事長が即時に懲戒を発令することが可能となったこと、⑥「改定後の規程は、当該改定以前に発生した懲戒事由についても適用する」として、手続規定であるとはいえ、立法の「不遡及の原則」を無視し、遡って容易に懲戒できるようにしたこと、など多くの重大な問題を含んだものであり、労働契約法第10条の要件を充たさない無効の規程です。

 実際、今回の懲戒において、唯一第三者であることが期待されて懲戒委員会に加わった弁護士も、かつて川原理事長の弁護士事務所に所属していた経歴があり、結局、懲戒委員会の客観性・公平性は何ら保障されていなかったのです。また、川原理事長が描いたストーリーは、2010年7月から2012年8月までの間の出来事であり、これをその後の2013年7月に「迅速な決定が必要になったから」という理由を挙げて改悪した懲戒委員会に付議し、およそ「迅速」とは言えない1年以上もの時間をかけて、今回の懲戒解雇を強行したわけです。

 私たちは、内容的には事実を捻じ曲げたものであり、手続的にも、正当性のかけらが一片もないこのような懲戒処分を受け入れることは断じてできません。不服申し立ての機会が認められていない以上、本学院で起こった事実を外部に提示することになり不本意ですが、司法の判断を求めて断固闘うつもりです。心ある皆さま方のご支援をよろしくお願い致します。

2015年10月27日
落合正行/田中耕二郎