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2018年02月13日

富大・学経済学部長選考問題 教授会が学長に質問状

■富山新聞(2018年2月11日)
http://university.main.jp/blog/bunsyo/20180211_toyamashinbun.pdf

2018年02月10日

富山大学経済学部教授会、学長宛「質問状」

 同記事においては,富山大学危機管理室からの依頼により,一部の掲載資料と個人の名前について,削除しました。


学長宛「質問状」
当該問題の新聞記事1
当該問題の新聞記事2

平成30年2月8日

富山大学長
遠 藤 俊 郎 殿
経 済 学 部 教 授 会

質問状(平成30年2月8日)

 平成30年1月25日付で経済学部長宛に依頼がありました「経済学部長候補者の推薦について(依頼)」に関して,1月31日に開催された経済学部臨時教授会にて数多くの疑問点が出されました.つきましては下記の疑問点についてご回答いただきたく,お願い申し上げます.
 なお,疑問点の内容については詳細を別紙(2枚目以降)に記載しましたので,別紙の記載内容に対応する形で個々具体的にご回答ください.


1 依頼文書の趣旨 
 富山大学学部長候補者選考規則第2条第5項に基づき,再度学部長候補者2人の推薦を依頼する旨,記載がありましたが,その趣旨について.
2 根拠規定
 今回,依頼があった再推薦は,「富山大学学部長選考規則」や「学部長等の選考プロセスについて」に沿ったものであるかどうかについて.
3 判断の具体的理由(1) 
 経済学部教授会より推薦した2名の候補者のうち,1名が「適任でない」とされた具体的な理由と根拠について.
4 判断の具体的理由(2) 
 経済学部教授会が推薦した候補者2名のうち,「適任であるとまでは判断できない」とされた1名につき,「適任であるとまでは判断できない」という表現の意味およびそこに至った具体的な理由と根拠について.

 経済学部教授会は,学部長候補者推薦にあたって,選出方法や選挙の実施手順等について検討を重ね,構成員の意思を適切に反映するとともに,公正かつ厳正な過程を経た候補者の選出に取り組んできました.それだけに,「富山大学学部長選考規則」や「学部長等の選考プロセスについて」とは相容れないように思われる今回の再推薦依頼は極めて遺憾であります.丁寧かつ誠実な説明と回答を求めます.
以上

別紙

1 1月25日付け経済学部長宛て文書(以下、「通知書」という。)の文意について

(1)通知書には、候補につき、「学部長として適任であるとまでは判断できませんでした」と記されている。この記述を文面どおりに読むなら、■■候補について、少なくとも「適任でない」(学部長選考規則2条5項)とは判断していないことになり、判断保留(最終決定に至っていない)の意と解することもできる。いずれにせよ、通知書のこの部分の記述からは、経済学部教授会が推薦した候補者2人のうち、1人は依然として学部長候補者たる地位を失っていないと解するほかないが、他方で通知書は、「2人」の再推薦を求めるとしている。通知書のかような記述の趣旨を説明されたい。

(2)上記(1)の点に関して、学長は、1月19日及び同25日に経済学部長を訪ね、同学部長に対して、「堂谷候補が不適任(不適格?)であるため、複数の候補者の中から選考することができない状態になった。ついては、3人目の推薦を求める。」旨、述べている。また、25日には、「■■候補については候補者として残してよい」旨の発言も行なっている。学長からかかる発言ないしは要求があったことについては、31日に開催された臨時教授会において学部長から報告・説明がなされたところである。この発言の趣旨と、上記(1)の通知書の文意との関係、整合性(同じかどうか)を説明されたい。

 付言すると、教授会が推薦した複数の候補者の中から選ぶという現行制度の前提が満たされなくなった云々との上記発言は、2人のうちの1人を「学部長候補者」として不適格(失格、選考対象外)と判断したため、という趣旨のようにも聞こえる。しかし、学部長選考規則(以下、「選考規則」という。)上、教授会が推薦した学部長候補者について、学長が「学部長候補者として」「適格か、不適格か」という判断をする権限や手続きは存在しない。選考規則上学長に認められているのは、教授会が推薦した候補者について、「学部長として」「適任か、適任でないか」を判断する権限のみである。学長の上記発言が、通知書の文言どおり、堂谷候補は「学部長として」「適任でない」という趣旨であるならば、候補者が1人になったのは、正に■■・■■という複数の候補者について選考し、適任かどうかを判断した結果にほかならず、■■候補が外れたことを以て「複数の候補者から選考することができなくなった」とする学長の上記発言は矛盾しているというほかない。

2 選考規則の解釈・適用について

 通知書は、「2人」の再推薦を求める学内規則上の根拠として、選考規則2条5項を挙げている。しかし、文面上明らかなように、同項は、学部教授会が推薦した候補者(2人又は3人)が「学部長として適任でないと判断した場合」に関する規定である。選考の結果、「候補者が1人だけになった」とか、「候補者が適任かどうか判断しがたい」といった理由で学長が教授会に候補者の追加ないしは再推薦を求めることは認められていない。すなわち同項は、選考の結果、学部教授会が推薦した候補者が全員不適任(適任者が誰もいない)と判断した場合に再推薦を求めることを定めたものであり、ある候補者について適任でないと判断したとしても、不適任ではない候補者がほかにいるのであれば、学長には、その候補者を学部長に選ぶ以外の選択肢は認められていない。この趣旨は、現行の学部長選考手続きへの選考規則の改正を審議し了承した平成27年3月19日の教育研究評議会においても確認されている。

 選考規則2条5項に関する如上の文理解釈および立法趣旨からすると、通知書記載の事由が、同項を適用することができる場合に該当しないことは明白である。上述のとおり、通知書には、■■候補を「学部長として適任でないと判断した」とは記されていない。そうとすれば、2条5項が定める再推薦要求を行なうための要件は満たされておらず、■■候補を学部長に指名する以外の選択肢はないということになる。

 また、選考規則以外の学内規則にも、学長にそのような権限を認める規定は見当たらず、学長の要求には学内規則上の根拠が存在しない。

 以上のとおりであるから、学長の再推薦要求には根拠規定が無く、再推薦要求は無効であると判断せざるを得ない。
 この点について、見解を明らかにされたい。

3「判断」の理由、根拠等について

(1) 選考規則2条5項が定める学長の「判断」は、<学部長候補者たる地位(換言すれば、学部長に任命されうる地位)>という個人の法的利益に関わる判断(決定)であり、裁判上の地位確認訴訟の対象となりうるものである。この学長の「判断」は、学部長として「適任でない」という不利益決定であるから、明文規定の有無にかかわらず、法理上、理由や根拠を具体的に明らかにすることが必要である。そしてもし理由や根拠が合理性を欠いていたり、判断に至る手続きに重大な瑕疵があったりすると、その判断は誤りだということになる。

 しかるに「判断」の理由に関する通知書の記述は、以下のとおり極めて簡略、曖昧であり、判断の理由や根拠が明確に示されているとは到底言えない。また判断の理由や根拠には、明らかに不合理と考えざるを得ない点がある。

 以上のことを踏まえた上で、以下に指摘したひとつひとつの点に対して回答を求める。

①■■候補については、「不適任」と判断した理由として、「所信を確認する限り、経済学部長の選考の基準を満たしておらず適任ではないと判断」したと記されているのみであり、所信がいかなる点・いかなる意味において「選考の基準を満たしていない」(ママ)のか、3つの選考基準(以下、「基準」という。)それぞれの観点から所信をどのように評価したのかについての具体的な説明がない。「基準を満たしていない」とは、所信の形式・体裁のことなのか、実質・内容のことなのかも不分明である。

 仮に、形式・体裁、すなわち所信の文章の記述の仕方が選考基準に沿っていないことを指しているのだとすると、そうした形式的な理由だけで直ちに「不適任」と判断するのは、上述の候補者の法的利益に関する権限行使の在り方として不適切であり、当該判断は、重大な手続き的瑕疵につき違法・無効と言わざるを得ない。適正手続きの観点からは、まずは所信の書き直し・再提出を求めるのが適切な対応である。また、所信のみを判断材料とせず、面接を実施したうえで判断することも検討すべきであり、面接不要とするならば、相応の理由を示すべきである。以上の手順で選考を行った上で、学長は、判断の理由・根拠を具体的に明らかにする義務を負う。

 他方、「基準を満たしていない」のが所信の内容面のことであるのならば、所信記述内容のどのような点を以て基準を満たしていないというのか(逆に言えば、どのような記述内容であれば満たしていることになるのか)を、3つの基準に即して具体的に示さなければならない。

② ■■候補については、「適任であるとまでは判断でき」なかった理由として、「在職期間内に学部改革及び大学院改革を進めるという点に関して、経済学部長の選考の基準第3項を満たしていることが確認でき」なかったとだけ書かれている。他の2つの基準に関して■■候補がどのような評価であったのかについては全く説明が無い。そして、「基準第3項を満たしていると確認でき」なかったとする理由は、専ら「在職期間」、すなわち、学部長として在職可能な期間が定年までの2年間であることに求められており、この点が、結果として「適任であるとまでは判断できなかった」唯一かつ決定的な理由とされている(学長も、同趣旨の発言を学部長および■■候補に対して行っている)。
 しかし、以下の理由から、かかる説明は到底是認できるものではない。
 第1に、適任とまでは判断できないという「判断」は、選考規則上認められておらず、同規則2条5項の定める、学長が再推薦を要求するための要件にも該当しない。(上述)。
 第2に、在職可能な期間が2年間であることを以て、改革を「進める」(完成する、ではなく)ことができないかのような捉え方になぜなるのか、その点の説明が無い。在職期間が2年間であるからといって、改革を「進める」ことができないとは常識的に考えられない。学部長に関してそのような理屈が通るのであれば、在職期間が残り1年だけとなった学長に関してはなおのこと同じことが言えるということになるはずである。
 第3に、定年までの期間という動かしようのない形式的条件を持ち出して、基準第3項を満たしているかいないかの決定的な判断材料とするということは、最低2期4年以上の在職が可能であることが、初めから教授会が学部長候補者を選出・推薦する際の要件(正しく、選考する以前の、候補者としての適格性、資格要件)、あるいは少なくとも考慮すべき重要事項だと言っているに等しい。これはすなわち、選考規則や、学部長の推薦に関する各学部の規則に存在しないルールを、学長の一存によって事後的に、新たに付け加えたのと同じである。このような越権行為、権限の濫用が許されないことは当然の理である。
 第4に、実際的な観点からも、定年までの期間という形式的な事柄を、「基準」の充足如何や、学部長として適任かどうかを判断する決定的な材料とすることに合理性があるとは言い難い。各学部におけるこれまでの候補者推薦の結果をみても、学識、見識、経験、人望といった要素の方が、学部長の職責(改革を「進める」ことも含まれる)を担う上で重要だというのが多くの教員の認識であることは明らかである。

(2)選考の「基準」およびそれに基づく「判断」という制度にも問題がある。
 学長が示した選考基準自体が抽象的かつ曖昧であり、それゆえ基準に対する所信の記述も、基準の充足如何の評価も、多分に主観的なものにならざるをえない。そうした抽象的で曖昧な選考基準とそれに対する「所信」によって判断しようとすれば、恣意的な判断、権限行使を許すことになりかねない。
 このような恣意的判断、恣意的な権限行使がなされることのないようにするには、選考基準に対する「所信」の評価は参考程度の扱いとして、それに依拠した「判断」は極力避けることとし、教授会の客観的な意志、すなわち教授会が推薦した候補者の順位や得票数を尊重する(再優先の判断基準とする)ことを大原則とする以外にない。かかる恣意的判断や権限濫用防止の観点からの選考規則の解釈・運用の在り方について、前出平成27年3月評議会において学長が行なった発言をも踏まえつつ、見解を示されたい。

4 再推薦要求による学部業務への影響

 実際上の問題として、如上の曖昧かつ根拠不明の再推薦要求が、学部の業務に対して深刻な影響を発生させていることも看過できない。学長が候補者の再推薦を要求したことによって、既に経済学部では、次年度からの各種役職者の決定に大きな遅れが生じている。仮に再推薦をするとした場合、経済学部は厳格な候補者推薦手続きを定めており、手続きに時間を要するから、なおのこと他の人事の決定に大きな遅れが出ることになる。また、年度末のこの時期は、入試業務、卒論指導、卒業判定等のために、教員も事務職員も1年のうちで最も重要かつ多忙な時期であることは周知のとおりであり、再推薦の手続きを実施することは、ただでさえ多忙な教員及び事務職員に対して過大な負担を強いることになることは明らかである。

 そのような時期に曖昧かつ根拠不明の再推薦要求を安易に出したことの適否、そこから生じる影響に対する責任をどのようにお考えか、説明を求める。

以上

2018年02月05日

富山大・経済学部長選考 異例の事態

富山新聞(2018年2月2日)
http://university.main.jp/blog/bunsyo/20180202toyama.pdf

富山新聞(2018年2月3日)
http://university.main.jp/blog/bunsyo/20180203toyama.pdf

2016年12月05日

富山大学懲戒解雇事件、懲戒解雇撤回の和解についての原告および「支援する会」世話人一 同のコメント

竹内潔氏のコメント
「竹内潔氏の復職を支援する会」・世話人一同のコメント
「シュレッダーから甦った書類ー富山大学懲戒解雇事件を考える」

竹内潔氏のコメント

2016年11月29日

■裁判では無根拠で不適正な手続きによる処分であることを主張

 懲戒解雇処分では、教授昇任人事応募、研究費申請、大学院設置申請の際の書類に、私が「架空」、「虚偽」の著書や論文を記載したとされました。
 裁判では、教授昇任人事の際に提出した書類は、応募者の教育研究従事年数と論文・著書の「点数」が教授資格を満たしているかを確認する予備選考の段階で提出したものであり、富山大学が「架空」の記載とした論文は、ページ数や雑誌名を誤記しただけで実物があり、1点としてカウントされたことに間違いはないこと、富山大学がやはり「架空」とした著書の記載については、出版社等と刊行契約があり原稿もあったので「刊行予定」等と記載しましたが、これは文系の業績の記載慣行に照らしてなんら「虚偽」ではないことを立証しました。また、富山大学が、私が「刊行予定」等と記載した著書を「点数」としてカウントしたかどうか明らかにしていないことなども立証しました。さらに、誤記した論文と「刊行予定」等と記載した著書を除いても、私には教授資格の基準点数の2倍の点数の業績があったので、わざわざ「虚偽」を記載する動機がないことも明らかにしました。
 なお、私は教授に昇任していませんが、これは、業績記載とは関係のない所属学部内の事情によるものです。
 また、研究費申請書類については、たとえば、「架空」、「虚偽」の記載によって、富山大学の「学長裁量経費」1490万円(研究費)を私一人が不正に取得したという富山大学の主張に対して、刊行契約があった著書の記載が「虚偽」ではないことを主張するとともに、実際は私を含めて18名の教員が共同で申請した応募書類には応募者全員の多数の業績が記載されており、審査をおこなった富山大学自身が、私の1,2点の記載が経費の獲得に影響があったかどうか分からないとしていることも立証しました。なお、獲得した経費は、申請者全員でほぼ均等配分しており、私一人が1490万円全額を受領したという事実はありません。
 大学院設置申請の際の書類については、事務で書式の点検を受けるために出した準備段階の書類に、記載の指示にしたがって刊行予定の著書を記載しましたが、文部科学省に提出した正本(署名・捺印した書類)には刊行が遅れた著書の記載を削除していて瑕疵がないこと、富山大学が懲戒処分の対象とした準備段階の書類は扱った事務職員が不要書類として廃棄したことなどを明らかにしました。裁判において、富山大学は、この準備段階書類をどこから入手したのか、最後まで明らかにしませんでした。
 以上のように、裁判では、私が「架空」、「虚偽」の業績記載をおこなったという富山大学の主張は、文系の記載慣行や多種多様な書類の性格や審査状況を度外視して、廃棄された書類までかき集めて恣意的に「不正」の例数だけを積み上げた根拠が無いものであることを立証しました。

 懲戒処分に至る経緯では、私が病院で検診を受けるために届けを出して欠席した教授会で、あたかも私が虚偽の記載をしたことを認めたかのような報告がなされて、私は懲戒の審査にかけられることになりました。また、富山大学の内部規則になんの規程もない「疑義調査会」という組織が設置されて、組織の懲戒の審査との関連やメンバーシップを私に知らせず、秘密裡に図書館員に業務を装わせて出版社や他大学に問い合わせをさせるといった不公正な手続きがとられました。さらに、懲戒処分を審査する「懲戒委員会」の構成が理系の教員に偏っており、私の発言が理解されず何度も嘲笑を浴びたことを私が抗議したところ、同会の委員長からかえって処分を重くするという回答がありました。私は、富山大学内では公平な審査は期待できないと判断し、2013年1月に富山地裁に処分差し止めの仮処分命令を申し立てました。
 富山大学は、この申立のために事務負担が倍加したという理由で、懲戒解雇処分の量定に加えましたが、裁判では、これは、憲法が基本的人権として保障している「裁判を受ける権利」を富山大学が否定したものと主張しました。また、富山大学は、私の「虚偽」、「架空」の記載のために、富山大学の教員が、日本学術振興会の科学研究費を獲得する割合が低下するとして、やはり量定に加えましたが、私は、日本学術振興会は私の記載を「虚偽」とはしていないことや税金が原資の科学研究費の審査において連帯責任制のような不当審査がおこなわれるはずがないことを主張しました。さらに、上記の不公正な手続きや審査がおこなわれた背景には、私がおこなった内部通報が関連していると指摘しました。

■和解を受け入れた事情

 私は、以上の立証と主張によって、そもそも私の事案は懲戒処分の対象になるものではなかったことを明らかにしようとしました。したがって、出勤停止処分への変更という今回の和解は、懲戒権の濫用を富山大学が認めたという点では成果があったと考えますが、懲戒解雇によって、長く研究と家計の経済的基盤を奪われ、家族までが社会的な差別を受けることになった私にとって、十分に満足のいくものではありません。また、私は16年の富山大学在職中に、およそ170名の学生を指導して社会に送り出しましたが、富山大学には真摯に学問を学ぼうとする学生が多く、もう一度彼らの教育を継続したいという思いも強くあります。
 しかし、申立の裁判に勝訴しても、富山大学が異議申立や本裁判を求めると、さらに最低でも3年、裁判が続くことになります。申立の裁判に約2年かかったため、家計の逼迫の度合いが増して家族の将来が危ういこと、また、最終的に勝訴が確定したとしても、その頃には、定年間際になってしまうことを考えて、和解の道を選ぶことにしました。また、富山大学は、この2年の間の裁判書面に、私の人格を否定する罵倒句をこれでもかというほど書き続けました。もはや、富山大学には、私の戻る場所はありません。新しい場所を探して、処分で喪った3年の間にできたことを少しでもとりもどしたいと思います。
 このような次第で、私は和解を受け入れましたが、今後、富山大学で、不公正かつ恣意的な手続きや審査による処分がおこなわれて、教員の研究や教育の途が閉ざされる事態が二度と生じないよう、強く希望します。

「竹内潔氏の復職を支援する会」・世話人一同のコメント

2016年11月29日

■全国の大学に例をみない異常で杜撰な処分で竹内潔氏の社会的生命が奪われたこと
 
 竹内潔氏に対する懲戒解雇処分は、文系研究者の常識から見て、きわめて異例で、異常なものでした。たとえば人事の場合、文系では、公刊され内容が確定している著書は研究業績として認められ審査対象となりますが、研究業績リスト等に「刊行予定」等と記載された未公刊の著書は実際に公刊されるまで内容が確定しませんから、研究業績として認めるかどうかは、個々の人事選考を担当する委員会の責任と裁量に任されます。委員会では、一切認めない場合もありますし、研究業績として認める基準(原稿、出版証明書、ゲラの提出など)を設定する場合もあります。研究業績リストに記した著書が設定された基準から外れた場合、記載したことが咎められるということは生じません。たんに、その著書が審査対象から外されるだけです。
 つまり、応募者は、研究業績リストに記載した未公刊の著書の取り扱いを審査側に委ねるのが文系の慣行です。まして、竹内氏の人事や学長裁量経費の場合では、審査側から、研究業績として認める基準が示されることさえなかったのですから、同氏の記載が問題になるはずはありません。実際、私たちが知るかぎり、全国の文系学部で、研究業績リスト等の業績記載で、懲戒解雇はおろか、軽度の懲戒処分を受けたという事例もありません。富山大学は、学術雑誌に受理された時点で論文の記述内容が確定するために厳密な基準が設定できる理系の基準を援用して、強引に竹内氏の記載を「虚偽」・「架空」と断じ、さらに研究者にとっては目次にすぎない研究業績リストの記載を「経歴の詐称」とみなすという著しい拡大解釈をおこなったのです。
 このように、竹内潔氏に対する懲戒解雇処分は、異例かつ異常なものと言わざるをえないのですが、富山大学自身が不要として破棄した書類の記載までが問題となったことや竹内氏のために富山大学教員の科学研究費の採択率が低下するという主張、竹内氏が処分差し止めの申立をおこなったことについての憲法を無視した罪状の付加などにいたっては、常軌を逸しているとしか表現できません。この種の理由がまかりとおるのであれば、どの大学のどの教員もいつ懲戒処分を受けても不思議ではないと言っても過言ではありません。
 懲戒解雇は、再就職が困難なため、「労働者に対する死刑宣告」と呼ばれますが、社会的信用が重視される大学教員の場合は、社会的生命を完全に断たれるのに等しい処分です。さらに、竹内潔氏の場合は、ご家族にまで、誹謗や友人関係の断交という苦痛がもたらされました。とりわけ慎重であるべき大学における懲戒解雇が、大学人の常識からかけはなれた杜撰な理由でおこなわれたのが、富山大学が竹内潔氏におこなった処分なのです。

■国立大学法人2例目の懲戒解雇取り消しの和解は実質的に勝訴であること■

 和解については、国際的に評価を得ている研究の総括の時期に入っていた竹内氏が懲戒解雇処分や長期化した裁判のために研究が継続できなくなっていることやご家族の逼迫した事情を考慮すると、竹内氏の復職を願っていた私たちとしては残念ではありますが、受諾が現実的な選択肢だと考えています。
 ただし、私たちは、今回の和解で懲戒解雇処分が取り消されたことについては、富山大学による懲戒権の濫用が認められた実質的な勝訴であると、一定の評価を下しています。巨大な大学組織を相手とする裁判は個人にとってはきわめて困難なものです。国立大学の法人化以降の12年間で、今回の竹内氏の件以外で、国立大学がおこなった懲戒解雇処分が取り消された例は、2011年3月の那覇地裁における琉球大学教員の事例(停職10ヶ月への変更)だけです。今回の和解での懲戒解雇取り消しは、この例に次ぐ2例目となりますが、この点でも評価しうると言えます。
 私たちは、2004年の国立大学の独立行政法人化以降、学内行政が管理側による恣意的な「支配」に変わりつつあるという危惧を持っていますが、竹内氏の懲戒解雇は、このような変容がもたらした突出した事例だと考えています。竹内氏の懲戒解雇問題は、裁判では和解で終結しましたが、この処分は大学の民主的で創造的なあり方を考える際の多数の問題を含んでおり、今後、多くの大学人によるより詳細な検討が必要だと考えています。

懲戒解雇取り消し、富大と元准教授が和解

毎日新聞(2016年11月30日)地方版

 富山大から懲戒解雇された元准教授の竹内潔さん(60)が処分取り消しを求めた仮処分は29日、富山地裁で和解が成立した。竹内さん側によると、地裁の和解案を受け入れ、大学側が懲戒解雇処分を取り消し、60日間の出勤停止に変更することなどで合意した。

 竹内さんは富山大人文学部准教授だった2013年6月、文部科学省の科学研究費補助金や民間団体の助成金などを申請する際、架空の業績や刊行予定のない論文の出版時期などを記載し、研究業績の虚偽申告をしたとされ、懲戒解雇処分を受けた。しかし、「契約もしており、論文は刊行予定だった。虚偽ではない」と反論し、翌14年12月、懲戒解雇の取り消しを求めて仮処分を申し立てた。

 竹内さん側によると和解内容は他に、▽竹内さんは13年9月に自己都合で退職したとする▽富山大は退職手当の残額約500万円と解決金255万円を支払う--などとしている。

 竹内さんは「大学教員は社会的信用で成り立っており、解雇は死刑のようなもの。大学は二度と同じ過ちを起こさないでほしい」と話した。

 富山大は「大学側の主張通り、業績の虚偽記載は認定され、復職も認められなかった」との見解を発表した。

富山大元准教授、懲戒解雇処分変更で大学と和解

読売新聞(2016年12月02日)

 虚偽の業績を書類に記載したとして富山大に懲戒解雇された元准教授の竹内潔氏(60)が、富山地裁に地位保全の仮処分命令を申し立てていた問題で、竹内氏側は29日、富山大と和解が成立したと発表した。

 和解では、富山大が退職手当と解決金計757万4690円を竹内氏に支払い、処分を懲戒解雇から60日間の出勤停止に変更して自己都合退職とする。

 富山大人文学部の准教授だった竹内氏は2013年6月、2000~12年度に教授昇任選考書類などに虚偽の業績を延べ37回記載したとして懲戒解雇された。竹内氏は処分を不服として14年12月、富山地裁に地位保全の仮処分命令を申し立てた。富山地裁は今月9日、和解条項案を提示し、両者が受け入れた。

 竹内氏は「懲戒権の濫用を富山大が認めたという成果があったと考えるが、十分に満足いくものではない。今後、不公正かつ恣意的な手続きや審査による処分で教員の研究や教育の途が閉ざされる事態が二度と生じないよう強く希望する」との談話を出した。

 富山大は、和解に応じたことを認め、「60日間の出勤停止は懲戒処分。業績の虚偽記載を行ったことは裁判所で認定され、復職も認められなかったと考えている」とコメントしている。


2014年07月30日

再選任期を4年に拡大 富山大学長選、意向調査の扱いも変更

北国新聞(7月29日)

 富大が現在2年としている学長の再選任期を、1期目と同じ4年とすることが28日、 富大への取材で分かった。どの候補が学長にふさわしいか教職員が投票する意向調査の扱 いも変更するほか、非公開だった学長候補適任者の推薦人の氏名も公開する。9月1~5 日に候補適任者の推薦を受け付け、11月10日に選考会議で次期学長が決まる。

 富大によると、学長の任期は2期までで、従来は1期目4年、再選2年だったが、1期 目も再選も4年となる。学長選考会議の学外委員から「2年と4年では学長としてできる 仕事が異なり、条件に差が出るため、候補者が同じ土俵で競争できない懸念がある」との 意見が出ていたという。

 前回の学長選考では、教職員対象の意向調査の結果を数値化し、選考会議内で実施した 投票と同等に扱って次期学長を決めたが、今回は意向調査と書類審査、公開討論会、面接 を同列の判断基準として扱い、選考会議で議論する。

 前々回の学長選で意向調査で最下位だった候補者が選考会議の結果、学長に選ばれ、教 職員の一部から「納得できない」との声が出たことから、前回は意向調査の結果を選考会 議内の投票と同等に扱った。今回は選考会議委員から「本来の国立大学法人法の趣旨に基 づき、学長選考会議が責任を持って決めるべきだ」との意見が出たという。

 学長候補適任者の推薦人の氏名公表は「より責任を持って推薦してほしいという趣旨」 (富大)。推薦には、富大経営協議会の学外委員複数人か、富大の教授・准教授20人以 上の署名が必要となる。

 来年3月末の任期満了に伴う富大学長選は、10月17日に学長候補適任者による公開 討論会、同31日に教職員約1200人を対象とした意向調査を経て次期学長を決定する 。


2014年07月07日

富大教職組、未払い賃金請求訴訟第6回口頭弁論と報告集会が行われる!

全大教
 ∟●富大教職組「未払い賃金請求訴訟ニュースNO.6

未払い賃金請求訴訟第6回口頭弁論と報告集会が行われる!


 2014年7月2日(水)、真夏の日を思わせる晴天にめぐまれたなか、午後1時30分から1時50分まで、富山地方裁判所民事部第1号法廷にて、富山大学教職員55人を原告とし、国立大学法人富山大学を被告とする、「未払い賃金請求訴訟」の第6回口頭弁論が行われました。
 法廷では原告、富大教職員組合員、全大教(書記長)、および北陸地方国立大学教職員組合、富山県高等学校教職員組合(富山高教組)などからの支援者をあわせて、20 人が法廷の傍聴席を埋めました。
 今回の第 6 回口頭弁論は、先になされた原告の反論・主張(4 月 17 日付原告準備書面3)に対する、被告の反論(6月30日付被告準備書面5)を受けて行われたものですが、裁判長から、準備書面での被告の主張について、利益剰余金に現金の裏付けがあるのかどうか、剰余金の平成23年度と24年度との差額の使途は何かなどについて、原告の主張にそった質問が被告になされ、次回までに被告が回答することになりました。
 被告の準備書面5については、提出されてまもないことから、次回までに原告が反論を行うことになりましたが、幾つかの問題点が明らかになりました。まず、被告側は準備書面での主張の中で、予算の使い方について「人件費を優先しなければならないものではない」「被告の経営判断の基づき(…)分配した」などと、人件費について他の支出と同じ見方をしており、教職員の賃金は最大の経営努力をおこなって確保しなければならないものであり、不利益変更は基本的に避けなければならないという認識がないことが、あらためて明らかになりました。そのため、利益剰余金(目的積立金)、総人件費改革による人件費削減額と運営費交付金削減額の差額が生んだ予算上の余裕金などが存在し、経営努力をしさえすれば人件費に充てる余裕があったはずだという原告が主張に対して、被告は正面から答えていません。
 なお、次回、第7回口頭弁論は、10月1日(水)(富山大は開校記念日です)午後1時30分から、富山地方裁判所で行われることが決まりました。
 口頭弁論に引き続いて、午後2時から、裁判所近くの富山県弁護士会館にて、「第6回口頭弁論報告集会」が開かれ、弁護士、原告、組合員、支援者など17人が参加しました。
 集会では、広瀬富山大学教職員組合委員長から挨拶があり、次に全国大学高専教職員組合(全大教)の長山書記長から、全国で進められている未払い賃金訴訟の進行情況について説明がありました。それによると、先行する訴訟は順調に進んでおり、全国高専機構の訴訟では7月に証人尋問が行われ、その後 9~10 月に最終弁論がなされ、年内にも判決が出る見通してあることが紹介されました。他の単組の裁判でも年度内の判決も見込まれ、これらの進行状況と判決内容を見ながら、富山大の裁判も続けていくことになります。また、6月下旬に成立し た「学校教育法及び国立大学法人法」の改悪に対する全大教の取り組みが紹介されました。
 次に、坂林弁護士から、今回の口頭弁論の内容と今後の裁判の見通しについて解説がなされました。今後は、立証の段階に入り、これから陳述書を提出し、その後、年末から年明けくらいに証人尋問という段取りになるとのことです。陳述書については、賃金削減が生活に及ぼした影響について、具体的に原告(及びその家族も可)が書面を作成していくことになります。9月2日が陳述書提出の締め切りですが、出来るだけ多くの原告の参加をお願いします。
 報告集会では、最後に、今回傍聴に参加した、金沢大学、福井大学、富山高教組の代表からの連帯の挨拶があり、またそれぞれの現在の闘いの進行状況が報告されました。
 今後の裁判においても、傍聴席を埋めることで、本訴訟が社会的に注目を集めていることを裁判官に印象づける必要があります。すべての、教職員の皆様に、本訴訟への支援を訴えます。

2013年08月02日

懲戒解雇処分の元准教授 富山大学に再審査請求

チューリップテレビ(2013年08月02日)

 今年6月、富山大学の人事選考の書類に架空の業績を記載するなど不正な行為を繰り返したとして、大学から懲戒解雇処分を受けた元准教授の男性が、処分は不当であるとして大学に再審査を請求しました。

 富山大学は今年6月、人文学部の元准教授の男性が、人事選考の際に提出した報告書や研究助成金関係の申請書類に研究業績として架空の研究雑誌を記載するなど、不正行為を繰り返したとして懲戒解雇処分としました。

 元准教授によりますと、架空とされる研究雑誌は実際に刊行されているほか、単なる記載ミスを虚偽としている点など、大学側の指摘には多くの事実誤認があり、処分は不当で大学に再審査を請求したということです。

 これに対し、富山大学は「個別の案件には答えられない」とコメントしています。


2013年04月24日

富山大教職員 給与減額分支払い求め大学提訴

チューリップテレビ(2013年04月24日 18時05分)

富山大教職員 給与減額分支払い求め大学提訴

 国家公務員の給与引き下げにあわせて国立大学の教職員給与を減額したのは労働契約法違反にあたるとして、富山大学教職員組合に所属する教職員55人が24日、大学側を相手取り、減額された給与5か月分の総額およそ1190万円の支払いを求めて富山地裁に提訴しました。

 不払い賃金請求訴訟は国立大学では全国3例目で京都大学などでも提訴の準備を進めているということです。


2013年03月28日

「富山大の給与減違法」 教職員労組が提訴へ

■北日本新聞(2013年3月28日)

「富山大の給与減違法」 教職員労組が提訴へ

 国家公務員の賃下げに合わせて給与を減額されたのは不当だとして、富山大教職員組合(委員長・広瀬信同大人間発達科学部教授)が富山大に未払い給与の返還を求め、4月中旬に富山地裁に提訴する方針であることが27日、分かった。

 原告は教授や准教授、事務職員ら55人。同組合によると、昨年2月に成立した国家公務員の給与を平均で7・8%削減する臨時特例法に合わせ、同大でも7月から賃下げが実施された。

 同組合は、同大職員の給与水準は国家公務員を100%とした場合82・4%で、教員は同規模私立大の70%程度にとどまるとし「国家公務員ではないのに、さらに削減することは認められない。一方的な給与切り下げが違法であることを明らかにしたい」としている。

 富山大は「現段階ではコメントできない」としている。

 福岡教育大教職員組合、山形大職員組合などは既に同様の提訴をしている。京都大職員組合も提訴する方針。