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2014年06月30日

学長、自ら海外トップセールス 権限集中に反発の声も

朝日新聞(2014年6月29日)

 海外進出に乗り出す社長のようだった。19日、ミャンマーの首都ネピドーの教育省。名古屋大学の浜口道成総長(63)は切り出した。「政府の幹部のみなさんを博士課程に受け入れたい。そのための拠点をつくりたい」。相手の教育大臣は「我が国にも大きな助けになる」とうなずいた。

 聴衆に訴えかける名司会者でもある。ヤンゴン大学に名大が設置した日本法律研究センターの1周年記念行事では、軽妙なトークで笑いを誘いながら、名大が誇るノーベル物理学賞受賞者の益川敏英・特別教授との対談を盛り上げた。

 がん専門医の浜口総長が医学部長を経て総長に就いたのは2009年。すぐに「世界の名大」をめざす改革を打ち出した。18カ国を訪れ、約100の大学と研究や留学の協定を結んだ。

 「産業界はアジアで生きていける人材を求めているのに、大学は欧米を向いてきた。それを変えたかった」。秋には、モンゴル、カンボジア、ベトナムに博士課程の拠点を置き、教員も送り込む。「国内では東大や京大ほど注目されないが、アジアでは違う」

 学内では「急に計画が出てきて振り回されている」との声もあるが、調整と説明を重ねながら改革を進める手腕を文部科学省幹部は「戦略的なビジョンを持ち、学内外を巻き込むのがうまい」と評価する。

 学長のリーダーシップ強化は、国と財界の悲願だ。少子化や国際競争の時代に「大学力は国力そのもの。変わらなければ、日本も地盤沈下する」(下村博文・文科相)との危機感がある。世界で渡りあえる人材を養成するには、従来のやり方を改める迅速な判断が必要だとして、学長の権限を強める改正学校教育法が20日に成立したばかりだ。

 だが学長主導は、時に教員の激しい反発に遭う。

 「京大はたぶん、全国の大学で一番(意思決定が)遅い」。9月末で6年の任期を終える京都大学の松本紘総長(71)は今月、東京で記者たちにこぼした。

 教養教育のあり方をめぐる議論は、約15年が費やされた。全学生が受ける教養教育の拠点「国際高等教育院」が13年に開設されるまでに、研究や教育の自由が損なわれると心配した教員たちから総長辞任を求める運動も起きた。政財界では総長の手腕を評価する声は多いが、ある教授は「京大にトップダウンはなじまない」と言い切る。

 東京大学では、浜田純一総長(64)が自ら打ち出した「秋入学構想」を、学内外の慎重論を踏まえて先送りした。「突っ走れば実現できたが、判断は間違っていなかった」と浜田総長。文科省幹部は「総長に強い力が必要だった」と言うが、企業統治が専門の江川雅子・東大理事は、学内議論が尽くされた上での決定だったことを前向きにとらえている。「企業では報酬と人事権で上司に従わせるが、専門家集団の大学では、アメとムチは通用しない」

■学長VS.教授会

 学長と教授会の権限を巡る攻防は、既に始まっている。

 「教授が選ぶ学部長が最も信頼できる。なぜ今までの選考方法をやめるのか」

 キャンパスに雪の残る弘前大学のホールは熱気に包まれていた。3月下旬、約200人の教職員から、演壇の佐藤敬学長(64)に次々と質問が飛んだ。これまで教授会が決めた人選を学長が追認するだけだった学部長の人事を、学長が指名できるようにする改革の説明会だった。

 反発の声が大きかったものの、結局、6月から学長が学部長を指名できるようになった。学生に魅力的な学部組織にするためには、迅速な判断が求められる。佐藤学長は「強い権限を学長が持たなければ何も決まらずに時間ばかりたっていく。教授会にお任せでは進まない」と強調する。

 だが、教育学部の教授は「息のかかった学部長を選び、反発の声を黙らせようとしているのだろう」。一方、学長と教授会が対立していることを知る学生は少なく、「大学からの説明は何もない。学生は、かやの外だ」と不満をもらす教育学部3年の男性もいた。

 弘前大と同じように学長の権限をいち早く強化したのが、公立の横浜市立大学だ。

 2005年ごろ、横浜市では、大学運営のための年間200億円以上の財政負担が問題となっていた。そこで、理事長と学長に人事権を集め、予算と人材を「適材適所」に配置する経営健全化策が出された。まちづくりを学ぶコースの新設や、学生の海外実習への補助金制度といった改革が進んだという。

 新しい目玉ができたと同時に、消えたものもあった。教授会の役割は低下し、「哲学・古典語」「日本古典文学」といった伝統的学問を研究するゼミが消滅した。ある教員は「上意下達になり、現場の声が反映されにくい組織になってしまった」と話す。

 一方、学長に権限を集中させ、危機をくぐりぬけた大学もある。

 京都市の平安女学院大学の事務室の朝は、約40人の職員の唱和で始まる。「理事長のもとに、固く結束し……献身的に職務に精励します」。理事長とは、学長も兼ねる山岡景一郎氏(83)だ。経営コンサルタントを経て、赤字が年4億円超に膨れていた03年春に理事長に就いた。教職員組合の反発を抑え、給与を平均3割以上カットし、人事権も教授会から理事会に移した。

 学院経営はその年度から黒字に転じた。山岡理事長の財界人脈も活用し、卒業生の就職率は2年続けて100%。「ワンマン経営でなければ、難局は乗り切れなかった」。全国の学長らからの相談が絶えないという。

■英米、経営のプロ養成

 有能な学者が有能な学長になれるとは限らない。どうやってプロの経営者に育てるか。日本より一足先に取り組んでいるのが、英国だ。幹部教員らに大学経営やリーダーシップをたたき込む「学長養成」研修が行われている。

 「大学運営は今やビジネス。経営戦略の研修がとりわけ役に立った」。ロンドン郊外のグリニッジ大学。デービッド・マグワイア学長(55)はこう話す。別の大学の副学長だった09年、全国の大学が出資する高等教育リーダーシップ財団の研修で、財務や組織論を半年かけて学んだ。99年に始まった研修の修了者からは既に100人以上の学長が輩出している。

 マグワイア氏は研修後の11年にグリニッジ大に引き抜かれ、哲学など不人気科目の教員を減らし、3年で約180人の教職員をリストラした。英紙大学ランクで国内順位は11年の102位から70位に上がった。

 英国では90年代から大学が急増している。国の負担を減らそうと、現在のキャメロン政権が12年から学費の上限を約3倍の9千ポンド(約150万円)に引き上げたため、各大学とも値上げに踏み切った。学生は高い学費のリターンを求め、大学は不人気講座の見直しから寮や食堂の充実度にまで神経を使う。

 大学の希望に沿って学長選びを任されるヘッドハンティング会社もある。そのうちの一社、オジャーズベルンソン社は「候補者のプール」をつくり、3~5人の有力候補を大学に提示する。「しがらみのない学外人材の方が改革できる」と担当者は言い切る。

 とはいえ、学長には教職員を従わせる権限だけではなく、調整力も求められる。リーダーシップ財団の研修責任者ポール・ジェントル氏は「教員、学生、保護者など利害関係者の多い大学経営は企業よりも複雑で、『学長独裁』は結局、大学を荒廃させる。教職員と連携しないと大学運営はうまくいかない」。

 4500を超す大学がしのぎを削る米国でも、米国教育協議会やハーバード大などで幹部教職員らの研修が行われてきた。学長に最も求められる資質はカネ集めの能力だ。米大学事情に詳しい英オックスフォード大の苅谷剛彦教授は「外部資金をどれだけ集められるかで、大学がやれることが決まる」と説明する。

 08年のリーマン・ショックのあおりで、州立大は州政府の交付金カットの直撃を受け、私立大も寄付金が大幅に減った。米テンプル大学の幹部は、寄付者の心をわしづかみにして、財布のひもをゆるめてもらうためには、「学長のビジョンがますます重要になった」と指摘する。ある米国の学長経験者は、自嘲気味にこう言う。「米国の学長は、キャデラックに乗る物乞いのようなものです」


学部新設や定員増、審査厳しく 京都の大学、対応苦慮印刷用画面を開く

京都新聞( 2014年06月29日)

 大学の学部・学科新設や定員変更に対する国の審査が昨年から厳しくなり、京都の各大学も対応に苦慮している。大学は定員が満たせることを客観的な根拠で証明する必要性から高校生にアンケートをしているが、多大な手間やコストに負担を感じている。複数の大学から依頼を受ける高校側も「とても回答しきれない」と困惑を隠さない。

 「進学希望者が集まらない限り、文部科学省に定員増を申請できない。結果が出るまで不安で仕方なかった」。大谷大の岡田治之事務部長はそう振り返る。

 2015年春に社会学科の定員を100人から120人に増やす計画がある。文科省の審査をパスするには定員に見合う進学希望者がいることを示す必要があり、5月上旬から近畿を中心に315校の高校にアンケートを発送した。進学希望者の必要数は確保できたが、協力を断られることもたびたびあったという。

 京都学園大は、来春に京都太秦キャンパス(京都市右京区)を開設し、健康医療学部の新設や既存5学部の再編を予定する。必要な進学希望者は760人。アンケートは業者に委託したが、回収率を上げるため、内山隆夫学長を筆頭に教職員を動員し、昨年11~12月に近畿の高校202校を訪れて協力を求めた。

 石原祐次事務局長は「何とか定員分を集めたが、中規模の大学には厳しい作業だった」と打ち明ける。

 文科省大学設置室によると、学部・学科新設などの認可申請や届け出の手引きには以前から学生確保の見通しを説明する規定があった。ただ、客観的なデータとして高校生のアンケートを例示したのは昨春からという。

 同室は「アンケートを強制しているわけではない。客観的であれば、他のデータでもいい」とするが、「多くの大学がアンケートを選んでおり、実態としてそう受け止められていないのは事実」と認める。

 大学がアンケートに頼る背景には、審査の厳格化がある。18歳人口の減少で定員割れの大学が相次いでいることを受け、文科省の有識者会議が昨年2月、大学設置認可制度の見直しを提言した。これを受け、同省は学生確保の見通しを審査する専門組織を設け、チェック体制を強化した。京都学園大の石原事務局長は「説得力ではアンケートがベストの手法。根拠が弱いと言われた時に追加調査もしやすい」と話す。


2014年06月29日

弘大学長の権限集中化 学部長など直接選考

読売新聞(2014年06月28日)

 弘前大学の佐藤敬学長は27日、記者会見し、学部長や大学院研究科長、付属病院長、研究所長などの選考は学長が直接行うこととすると発表した。学長に権限を集中し、リーダーシップを発揮しやすくする改革の一環。

 学部長などの選考については、これまで各学部で決めていたことを考慮し、選考前に所属学部の教職員らの意見を聴取する。

 学長選考はこれまで通り、学長選考会議が決定するが、同会議が参考にしていた教職員らによる意向投票は廃止する。

 佐藤学長は「大学が法人化して10年を機に見直しを進めた。今後も改革を進めたい」と述べた。

 弘前大ではこれまでに、学長の補佐体制を強化する学部長室設置、理事でない副学長や理事を補佐する副理事の新設を決めている。


2014年06月28日

国立大交付金、重点配分へ…学力向上など基準に

読売新聞(2014年06月26日)

 政府は、全国86の国立大向けの「運営費交付金」について、学長のリーダーシップや学力向上などを評価の基準に使い、改革に積極的に取り組む大学に重点配分する。

 学生数など大学の規模で比例配分している現状を改めて、新基準を来年夏までに作る。大学同士の競争を促し、それぞれの専門性を生かした「脱・総合大学化」を進める。将来の大学再編につながる可能性もある。

 運営費交付金は、大学の業務費用の一部として年間約1・1兆円が配られている。2016年度予算から見直し、最大4割を重点配分に充て、残りは従来通りに配る。

 文部科学省と財務省が評価基準を協議しており、学長権限の強化や、年俸制の導入など優秀な研究者を集める努力などが考えられている。博士号取得後も助教などに就けずに生活基盤が不安定な「ポストドクター」の就業支援なども含まれる。


東京理科大全面移転の白紙撤回求め決議 久喜市議会「一方的」

埼玉新聞(2014年6月27日)

 久喜市議会は26日、「東京理科大学経営学部久喜キャンパスの全面移転の白紙撤回を求める決議」を全員賛成で原案可決した。

 決議文は全4会派の議員が共同で提出。同キャンパスは1993年4月の開校以来、21年にわたり市の知的基盤づくり、まちの魅力づくりに資する施設として重要な役割を果たしたとした上で、「市は土地取得費および校舎建設費に30億円の補助金を、周辺整備に10億円を支出することを決定し、市と市議会、市民が一体となり、全面的な協力と支援を行ってきた」と経緯を説明。

 その後、同大が「2016年4月より2年生以上を神楽坂キャンパスへ移転し、1年生のみを久喜キャンパスに残す」と提案し、市と市議会は撤回要求を行ったが、12年6月、同大理事会は決定した。

 さらに、同大常務理事会が経営学部を久喜キャンパスから全面撤退するとの決定について、「あまりにも一方的」と指摘し、「到底受け入れることはできず、強く白紙撤回を求める」としている。決議文は7月中にも手渡すことにしている。


京都大総長選挙で学内掲示板をビラが埋め尽くす、「山極教授に投票しないで!」と書いた意外な理由

Jcastニュース(2014/6/27)

 京都大学の敷地内にある掲示板のいたるところに、おびただしい数のビラが張られているのが2014年6月26日夜に見つかった。ビラには大きく「山極」という文字が描かれ、「投票しないで」となっている。
大学は今、次の総長選考の真っ最中で、このビラは山極壽一(やまぎわ じゅいち)理学研究科教授を総長に選ばないでほしい、と訴えているのだ。「ツイッター」にも同じ内容のつぶやきが多数出ている。ただし、誹謗中傷するものでもなく、京都大学もこのビラの撤去はしないと話している。いったい何が起こったのか。

ツイッターで「山極教授は愛されている」

現総長の松本紘氏が14年9月に任期を終えるため京都大学では後任となる総長の選考が進められている。今回は様々なドタバタ劇があった。まず、「学内民主主義の象徴」といわれていた学内投票を通じての総長選びを廃止しようという動きがあったほか、総長を国際公募する、などといった話が大手新聞各紙に取り上げられた。しかし「大学の自治のためには投票が必要」という意見が根強く、結局はこれまで通りに落ち着くことになる。
京大総長の選任までのプロセスは、まず教職員約5千人による「予備投票」で学内から10人程の候補を選出する。そして選考会議が推薦する学外者を入れて6人に絞り、講師以上の教員による「意向投票」を行う。その結果をふまえ、選考会議によって総長が決められる。現在その6人に残っているのが山極壽一理学研究科教授なのだ。
山極教授は研究者として教育者として、学生や京大職員からの評価が高いらしい。それならば総長に適任だと考えられるのに、「山極教授に投票しないで」と書かれたビラで京大中の掲示板が埋め尽くされてしまった。なぜかといえば、山極教授はニホンザルやゴリラの研究に40年以上取り組んできた「霊長類研究の宝」であり、総長になって研究職を退いてしまったら世界の霊長類学、ひいては京大にとって大きな損失になる、という理由からなのだという。だから総長にはならずにずっと研究に打ち込んでもらいたいし自分たちを指導し続けてもらいたいのだそうだ。
こうした展開にネットでは、
「山極教授愛されてるのねw」
「山極教授カッコイイなぁ。どんだけ信頼置かれてるんやろか」
「山極教授の研究凄すぎるもんな」
などと言った意見がツイッターに出ている。

京大の担当者「今回のビラは不問、撤去はしない」

では誰がこうした大量のビラを撒いたのだろうか。京都大学全学自治会同学会中央執行委員会のホームページを見ると、14年6月26日夜に文学研究科、理学研究科の学生有志の文責によるビラが、吉田南から農学部までの掲示板を埋め尽くすかたちで張り出された、と書かれている。京都大学理学研究科人類進化論研究室の赤いハンコも押してあり、切実さが伝わってくる。
 「特定の候補者に投票しない運動がこういう形で出るとは思っていませんでした。悪い人に(総長に)なってほしくない系で宣伝されるかと思っていたのですが・・・」といった感想も添えられている。
京大ではこうしたビラはどういった扱いになるのだろうか。総長選考選挙を担当する部署に話を聞いてみたところ、
 「個人を誹謗中傷したり貶めたりするものでない限りは問題ありません」ということでビラの撤去などは行わないという。新総長は7月初めにも決定するという。


2014年06月27日

改正学校教育法等衆議院文部科学委員会、池内 了氏の参考人質疑

改正学校教育法等衆議院文部科学委員会、池内 了氏の参考人質疑

衆議院文部科学委員会 参考人質疑(平成26年06月04日)

名古屋大学名誉教授 池内 了氏

○池内参考人 おはようございます。池内です。
 私は、ことしの三月まで大学に勤めておりまして、最後は総合研究大学院大学というところで理事をやっておりまして、幾つか、文部行政というのか、そういうことを直接扱う事柄が多くありました。かつ、私は、勝手に威張っておるわけですが、国立大学を五つ回ってきました。京大、北大、東大、阪大、名大と回ってきまして、いろいろな大学のいろいろなやり方、考え方、そういうのを経験してまいりました。その中で、大学というのはどうあるべきかということを常々考えてきたわけであります。
 私は、直接、今回提案されている学校教育法及び国立大学法人法を一部改正する法律案がこの委員会の主たる議案でありますから、それに対して、的を絞って私の思うところを述べさせていただきたいと思います。

 私は、今回の法律案、特に学長の役割の明確化ということですか、無論、そこに一応一番の焦点が当たるわけですが、ありていに言いまして、学長のリーダーシップとかガバナンス強化ということもいろいろ言われておりますが、要するに、学長の決定に少しでも影響を与えかねない教授会をおとなしくさせて、学長が今まで以上に思いどおりにできる、運営できる条件を整えようという意図が背後に隠れている、これはそういう印象が強いわけです。
 これまでの国会審議の速記録なんかを見ましても、学長に特別な権限を与えるわけではないとおっしゃっている。まさに私はそうであると思っております。権限を与えるのではなくて、周りの条件を、教授会が関与できる部分を縮小した結果として、学長の権限が自由に振る舞えるような条件づくりをやろう、そういうことでありますね。
 その結果としては、教授会がいろいろな問題に関与できなくなる、そして、教員は大学全体の運営に興味をなくして、個別化してばらばらになる、大学が一体として教育や研究あるいは地域貢献などを行う情熱を失ってしまう、その危険性が非常に高いと私は考えております。
 その結果として、本当に望まれている、知的基盤社会を構成し機能させる人材を養成するという、大学の非常に重要な社会的責務を全うできる条件がどんどん小さくなっていく、私はそのように非常に憂えております。
 大学は、そもそも知の共同体と言われております。インテリジェンスの共同体です。そこで自由な研究、教育、意見交換、それから自由な意見表明、これは不可欠なわけです。それが学問の自由あるいは大学の自治の根幹であり、現実に定着してきました。いろいろな形で、憲法にも「学問の自由」ということが明記されております。
 したがって、教育と研究にかかわる問題は、大学を構成する人間誰しもがいろいろな形で責任を持って、かつ、責任を持ってやるということにやりがいを感ずるものなんですね。まさにそこが、大学でいろいろ学び、あるいは教え、あるいは研究をし、それでいろいろな地域貢献を果たしていく、そういう、大学を構成する人間のやりがいがそこにあると思います。
 したがって、大学の自治というのは、大学を構成する人間、それは教員であれ、事務員であれ、院生であれ、学生であれ、それぞれの立場に応じた責任範囲で行うべきです。無論、いろいろな責任の幅があります。学長なら、学長というのは一番大きい幅が無論あるとは思います。
 教授会の自治というのも、当然ながら、非常に重要な側面をなしております。教授会の自治のみで全て決まるというふうなことは私は一言も申しませんし、教授会の自治が根幹をなすという意味で非常に重要であるというわけです。それは要するに、教授というのが教育研究の根幹にかかわることに主な責任を持っておるということです。それから、教育研究の内容をよく知っている、学生たちと日常的に接している、彼らの状況をよく把握しているというわけです。
 ということで、学生全体あるいは大学全体の事柄に関して最も状況を把握しやすい条件にあるのが教授である、その教授たちの自由な意見の交換こそが大学の自治を形づくっていく基本条件である、このように私は考えております。
 今回の教授会の役割の明確化という法案の中で、教授会が、学生の入学、卒業及び課程の修了、学位の授与、その他教育研究に関する重要事項で学長が教授会の意見を聞くことが必要であると認めるものについて、学長が決定を行うに当たり意見を述べることとするというふうに改正案がなっております。ここには、学生の身分にかかわること、それから教育課程の編成にかかわること、教員の研究業績等の審査もこの身分にかかわることであると思うんですが、そういう事柄に関しては一切規定されていないわけです。
 極論いたしますと、リーダーシップということをえらく頭に置いた学長さんが出たとしますと、教授会の意見を聞くことが必要であると認めなければ聞く必要がないわけです。あるいは、学長等の求めに応じて意見を述べることがある。求めがなければ教授会は意見を述べることができないわけです。
 ということは、極論しますと、教授会は、一年に一回、三月にだけやればよろしい、卒業と入学と学位の授与だけをやればよろしい、それ以外は、学長が求めに応じあるいは必要に応じということを認めなければ、教授会がたとえあったとしても、何ら意見を表明することはできないわけです、学長に対して。
 無論、そういう学長にはならないであろうとおっしゃるであろう。しかしながら、私自身が一番心配するのは、出発点においてはそうであったとしても、例えば、一人そういういわば変な学長があらわれましてそういう規定にしてしまったとすると、それを変えることは非常に難しくなる。それが当たり前のようになっていくというわけです。だから、私自身は、権限の濫用ではなくて、結果的に、学長が権限を強化していく状況が生まれていくというふうに思っております。
 私は、教授会の自治という言い方をいたしますと、教授会自身が、今の教育研究にかかわること、学生の身分にかかわること、教育課程の編成にかかわること等いろいろ、これは教育研究に密接に関連していることですから、当然、規定するならば規定すべきであると思っております。
 が、それ以外に、学長人事を含めて大学全体にかかわる人事、それから予算配分とか大学の運営方針、あるいは学部にかかわる部長、教授の人事、学部の授業等について審議し意見を交わすことが非常に重要な事柄であり、それが、大学運営全体に目配りして、特に教員や学生の立場からの視点を生かしていく、大学運営にそういう意見を生かしていく。私自身は、それを明文化しておかなければ、教授会の意見が聞かれなくなって、結果的には、教授がそういう意見を聞かれないあるいは意見が採用されないということは、狭い意味での教学事項の議論しかできなくなって、視野の狭い教員になってしまうというふうに思っております。
 その意味で、幅広い、まさに多様性と平野先生がおっしゃいましたが、多様性のある大学、それをいかにまとめ切ってガバナンスにつなげるか、リーダーシップを生かしていくかということが学長の腕の見せどころなんですよ。
 そういうことを全部排除していって、剥ぎ取って、学長さん、自由におやりなさい、それでは本当の大学の自治あるいは学問の自由というのは今後守られていくかどうか、私は非常に心配でありまして、この点に非常に大きな懸念を抱いております。
 以上であります。どうもありがとうございました。(拍手)


研究不正、東大の学内で議論へ 医学部、学生が要望

共同通信(2014/06/26)

 臨床研究に絡む不正などの指摘が相次ぐ東京大医学部が、学生の要望に応じ、教員と学生による研究倫理に関する会合の開催を検討していることが26日、分かった。「患者を救う真摯な医療ができるのか」と公開質問状を出した学生が、大学側を動かした形だ。

 医学部6年岡崎幸治さん(24)ら有志5人が23日、一連の研究不正について学生への説明を求める公開質問状を浜田純一学長らに宛てて出した。

 質問状は、報道が相次ぐ一方、学生に何の説明もなかったと指摘し「東大医学部で学んでいることに自信が持てなくなっている」「真摯な医療を国民の信用を得て実践できるのか」と訴えた。


2014年06月26日

全大教、【抗議声明】大学自治を否定し学長を介した大学への政治介入の道を開く学校教育法・国立大学法人法の改悪に抗議します

全大教
 ∟●大学自治を否定し学長を介した大学への政治介入の道を開く学校教育法・国立大学法人法の改悪に抗議します

大学自治を否定し学長を介した大学への政治介入の道を開く
学校教育法・国立大学法人法の改悪に抗議します

 
2014年6月25日
全国大学高専教職員組合中央執行委員会


 6月20日、参議院本会議において「学校教育法及び国立大学法人法の一部改正に関する法律案」が可決・成立しました。

 今回の法改正によって、教授会が諮問機関化され審議項目が制限されることによって、学長の専権体制が築かれます。そして、国立大学法人について、学長選考基準を定め公表することは、学長が教育研究部門と経営部門の両方の代表者であるという位置づけのうち、経営の論理が優越することにつながり、大学の教育と研究の力が弱まる結果を引き起こす懸念があります。経営協議会の学外委員の比率を過半数とすることも、学内の意向を軽んじた大学運営が横行することにつながります。

 全大教は、この法案のもととなった中央教育審議会大学分科会の『大学のガバナンス改革の推進について(審議まとめ)』(2014年2月12日)の撤回を求め、また法律案にも反対してきました。「学校教育法改正に反対するアピール署名をすすめる会」の事務局団体として署名活動を支え、7,252筆の署名を集め、国会議員等へ届けてきました。多くの大学教授会や教職員組合、その他有志の会などが法律案の廃案を求める決議や声明を発表しています。国会審議の中では、現行の学校教育法での「大学には、重要事項を審議するため、教授会を置かねばならない」(学校教育法第93条)をなぜ改正しなければならないのかについて、納得いく政府の答弁はありませんでした。

 大学自治は歴史的に培われ国際的に認められた大学のあり方そのものです。改正の方向性は、教授会の果たす役割に対する全くの無理解にもとづく、大学のあり方を根本から変え、大学を大学ではなくしてしまうものです。

 改正法が施行されれば、大学、とくに国立大学法人法の下に置かれた国立大学は、学長の専権体制の下、学長が示す大学運営の方向には異を唱えることはできず、教員集団の自由闊達な議論は阻害され、知の拠点としての活力は消え失せてしまうことが懸念されます。大学の学長はその大学の教育研究部門の長です。そのことが、これまで学長が学内の選挙によって選ばれてきた理由です。今回の改正で学長選考基準の策定と公表が求められているのは、成長戦略という国策に沿った大学経営を進める学長を選ぶという政府の意向の現れであり、政府による大学の教育と研究への介入が、これまで以上に容易に露骨に行なうことができるようになります。今回の法改正は、学問の自由の基盤となる大学自治の諸制度を否定する意図をもって行なわれました。この法改正の方向性にそった改革を進めることは、基本的人権として保障されている学問の自由を掘り崩す、日本国憲法に反するものです。

 これら改正法が与える影響は、あらゆる人が高等教育の場でそれぞれが求める教育を受ける権利を狭め、また学問の自由が保障されていることによって生まれる学術の成果を享受する権利を奪い去るものです。民主的な市民を育てる大学の重要な役割も発揮できなくなり、日本の社会が人類共通の価値とは逆行する結果を引き起こすものです。

 私たちは、多くの問題を含み非常に重大な結果をもたらす今回の法改正が、短時間の不十分な国会審議で成立させられたことに強く抗議します。

 私たちは、今後とも、社会の民主主義の発展とともに勝ち取られてきた重要な権利である学問の自由、大学自治を守るために力を尽くします。私たちは、これらの権利を押し広げ、活用することで、高等教育の活動がひろく社会に貢献するために力を尽くしていきます。


衆・参文部科学委員会「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」

PDF化したもの
衆議院「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」
参議院「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案に対する附帯決議」

衆議院

学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 憲法で保障されている学問の自由や大学の自治の理念を踏まえ、国立大学法人については、学長のリーダーシップにより全学的な取組ができるよう、学長選考会議、経営協議会、教育研究評議会等をそれぞれ適切に機能させることによって、大学の自主的・自律的な運営の確保に努めること。

 二 私立大学の自主性・自律性・多様性、学問分野や経営規模など各大学の実態に即した改革がなされるよう配慮すること。

 三 学校教育法第九十三条第二項第三号の規定により、学長が教授会の意見を聴くことが必要な事項を定める際には、教授会の意見を聴いて参酌するよう努めること。

 四 国立大学法人の経営協議会の委員の選任や会議の運営に当たっては、学内外の委員の多様な意見を適切に反映し、学長による大学運営の適正性を確保する役割を十分に果たすことができるよう、万全を期すこと。

 五 学長の業務執行状況のチェック機能を確保すること。

 六 教育の機会均等を保障するため、国立大学の配置は全国的に均衡のとれた配置を維持すること。

 七 国のGDPに比した高等教育への公的財政支出は、OECD諸国中最低水準であることに配慮し、高等教育に係る全体の予算拡充に努めること。

第186回国会 衆議院文部科学委員会(平成26年6月6日(金曜日))可決

参議院

学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

一、学校教育法第九十三条第二項第三号の規定により、学長が教授会の意見を聴くことが必要な事項を定める際には、教授会の意見を聴いて参酌するよう努めること。

二、憲法で保障されている学問の自由や大学の自治の理念を踏まえ、国立大学法人については、学長のリーダーシップにより全学的な取組ができるよう、学長選考会議、経営協議会、教育 研究評議会等をそれぞれ適切に機能させることによって、大学の自主的・自律的な運営の確保に努めること。

三、学長選考会議は、学長選考基準について、学内外の多様な意見に配慮しながら、主体性を持って策定すること。

四、監事の監査、学長選考組織による選考後の業務評価等学長の業務執行状況のチェック機能を確保すること。

五、国立大学法人の経営協議会の委員の選任や会議の運営に当たっては、学内外の委員の多様な意見を適切に反映し、学長による大学運営の適正性を確保する役割を十分に果たすことができるよう、万全を期すこと。

六、本法施行を受け、各大学等の学内規則の見直しと必要な改正が円滑に行われるよう、説明会の開催等関係者に改正の趣旨について周知に努めること。

七、私立大学の自主性・自律性・多様性、学問分野や経営規模など各大学の実態に即した改革がなされるよう配慮すること。

八、大学力を強化するため若手研究者や女性の登用が積極的に行われ、若手研究者等の意欲を高める雇用形態が整備されるよう、その環境の整備に努めること。

九、国のGDPに比した高等教育への公的財政支出は、OECD諸国中、最低水準であることに留意し、高等教育に係る予算の拡充に努めること。

第186回国会 参議院文教科学委員会(平成26年6月19日(木))可決

「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律」、衆議院文部科学委員会での審議経過(会議録)

平成26年5月23日
平成26年6月04日
平成26年6月06日  

2014年06月25日

日弁連、大学教授会の役割を教育研究の領域に限定する,学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案に対する意見書

日弁連
 ∟●大学教授会の役割を教育研究の領域に限定する,学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案に対する意見書

大学教授会の役割を教育研究の領域に限定する,学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案に対する意見書

2014年(平成26年)6月19日
日本弁護士連合会

第1 意見の趣旨
 当連合会は,今次国会(第186回)に提出された「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」について,大学における教授会の役割を教育研 究の領域に限定することは,憲法の保障する大学の自治を危うくし,大学の自主 性,自律性を損なうおそれが強いと言わざるを得ず,これに反対する。

第2 意見の理由
1 はじめに
 現在進められている大学改革は,2013年6月14日の閣議決定「日本再 興戦略-JAPAN is BACK-」において,「人材力の強化」のための具体策と位置 付けられ,「産業競争力強化の観点」から競争主義,成果主義等を導入して大学 間又は大学内部でのいわゆる「選択と集中」を進めるというものである。同閣 議決定では,そのための「基盤強化」の方策として,「教授会の役割を明確化す る」ための「法案を次期通常国会に提出する」としており,これが本意見書で 取り上げる法改正案に当たる。
教授会の役割が問題とされるのは,上記閣議決定に至る過程において,有識 者から,「大学の改革については,教授会の抵抗が予想される」(教育再生実行 会議(第7回)での八木秀次委員発言),「改革を否定しがちな教授会」(同(第 8回)での山内昌之委員発言)といった発言がなされているように,教授会が 現政権の進める大学改革の方向性に異を唱えるケースが見られるからである。 後述するとおり,教授会は,憲法が保障する大学の自治を担う主体として, 重要事項を審議するという役割を果たしてきたものであり,歴史的にも戦前の 滝川事件,天皇機関説事件などのような弾圧事件を通じて,その自治の重要性 についての広範な社会的合意が形成されてきた。この度の法改正案について, 憲法及び教育基本法等の理念並びに教授会の役割という観点から,問題点を指摘し,意見を述べるものである。

2 法改正案の概要
(1) 法律案の概要

 ① 政府は,2014年4月25日,「学校教育法及び国立大学法人法の一部 を改正する法律案」を国会に提出した(以下「本改正案」という。)。その 主な内容は,「大学には,重要な事項を審議するため,教授会を置かなけれ ばならない。」と定める学校教育法93条を改正し,「重要な事項」の「審 議」に代えて,教授会の役割を,以下のとおり,「教育研究に関する事項」 についての意見具申及び審議に限定するものである。

 ②本改正案では,学校教育法93条2項は1号で「学生の入学,卒業及び 課程の修了」について,2号で「学位の授与」について「学長が決定を行 うに当たり意見を述べる」ものとし,これら以外の事項については,「教育 研究に関する重要な事項」であって,「学長が教授会の意見を聴くことが必 要であると認めるもの」について,「学長が決定を行うに当たり意見を述べ る」ものとする(同項3号)。
 同条3項は,教授会は,前記2項に規定するほか,「学長及び学部長その 他の教授会が置かれる組織の長(以下「学長等」という。)」が「つかさど る教育研究に関する事項」について「審議」し,及び「学長等の求めに応 じ,意見を述べることができる」とする。
 すなわち,本改正案による改正後の93条2項では,教授会として,無 条件に,学長が「決定を行うに当たり意見を述べる」ことができる事項は「学生の入学,卒業及び課程の修了」及び「学位の授与」のみである。こ れ以外の事項で学長の決定にあたり意見を述べることができるのは「教育 研究に関する重要な事項」であって且つ「学長が教授会の意見を聴くこと が必要であると認めるもの」とされ,逆に,学長が意見を聴く必要を認め なければ,仮に「教育研究に関する重要な事項」であっても,学長の決定 に当たり意見を述べることすらできないことになる。また,同条3項では,「前項に規定するもの」以外で,学長等がつかさどる「教育研究に関する 事項」について(教授会は)「審議」することができるとされるものの,「意 見を述べることができる」のは「学長等の求めに応」じて,とされている。
 なお,参議院へ提出された本改正案の修正案では,政府案の同条2項3 号の「教育研究に関する重要な事項で,学長が教授会の意見を聴くことが 必要であると認めるもの」を,「教授会の意見を聴くことが必要なものとし て学長が定めるもの」に修正されているが,本意見書で指摘する問題が解決されるものではない。

③小括
 以上,要するに,本改正案によれば,教授会は「管理・運営に関する事項」について審議ができなくなり,審議できるのが「教育研究に関する事 項」のみになるという点が最大の問題である。さらに「教育研究に関する 事項」であっても,学長ないし学部長等の決定にあたり教授会として意見 を述べることができるのは,学校教育法93条2項の1号及び2号(学生 の入学等,学位の授与)を除き,学長等が必要と認め,又は,その求めが あった場合に限られることになる。

(2) 本改正案の根拠
 政府は,本改正案の提出理由について,「大学の組織及び運営体制を整備するため・・・教授会の役割を明確化する」と説明している。
 すなわち本改正案の前提となっている中央教育審議会大学分科会「大学のガバナンス改革の推進について(審議まとめ)」(2014年2月12日)(以 下「中教審まとめ」という。)は,教授会の役割について,「そもそも学校教 育法は,教学面を規定する法律であり,国立大学法人法や私立学校法等のよ うに経営面について規定するものではない。したがって,学校教育法に基づ いて設けられる機関である教授会の審議事項は,当然に,教育研究に関する ことに限られると解される」とした上で,現行の学校教育法93条に規定す る「重要な事項」について,「その内容が必ずしも明確でない」ため,「学部 教授会の審議事項が大学の経営に関する事項まで広範に及んでおり,学長の リーダーシップを阻害しているとの指摘がある」とする(27ページ)。
 すなわち,本改正案は,教授会の審議事項が教育研究のみならず大学運営 面にまで及んでいることが問題であるとする認識の下,その原因は学校教育 法93条の規定ぶりが不明確な点にあるので,法改正によってこれを明確に し,教授会の役割を教育研究の領域に限定しようとするものである。

3 本改正案の根拠に関する問題点
 しかし,本改正案の根拠として中教審まとめが述べている点については,以下のような疑問があると言わざるをえない。

(1) 現行法制定の際の附帯決議を無視していること
 中教審まとめは,教授会の役割を限定する本改正の必要性について「教授会の審議事項が大学の経営に関する事項にまで広範に及んでおり,学長のリ ーダーシップを阻害している」と指摘する。しかし,この点については,そもそも,現在の国立大学法人法の制定の際,大学における教授会の役割の重 要性に十分配慮するという前提のもとに,特に教育研究面に限るという限定 をすることなく「重要事項を審議する」役割の存在として,教授会に関する 学校教育法93条の規定が残されることになったのであり,少なくとも,教育研究面に関わる重要事項である以上それが管理運営面とも関連するもので あったとしても,これを「審議する」役割を教授会に与える趣旨であったことは,以下の現行法制定の際における附帯決議から明らかである。
 参議院文教科学委員会(2003年7月8日)は,国立大学法人法制定及 び学校教育法改正の際に,政府関係者に対し,教授会の役割の重要性に十分 配慮することを求めて次のように決議していた(衆議院文部科学委員会にお いても同年5月16日にほぼ同様の附帯決議がなされている)。
 「政府及び関係者は,国立大学等の法人化が,我が国の高等教育の在り方 に与える影響の大きさにかんがみ,本法の施行に当たっては,次の事項につ いて特段の配慮をすべきである。
 一,国立大学の法人化に当たっては,憲法で保障されている学問の自由や 大学の自治の理念を踏まえ,国立大学の教育研究の特性に十分配慮する とともに,その活性化が図られるよう,自主的・自律的な運営を確保す ること。
 二,国立大学法人の運営に当たっては,学長,役員会,経営協議会,教育 研究評議会等がそれぞれの役割・機能を十分に果たすとともに,全学的 な検討事項については,各組織での議論を踏まえた合意形成に努めるこ と。また,教授会の役割の重要性に十分配慮すること。
(以下,略)」。
 以上の経緯からすれば,前述の中教審まとめが学校教育法93条の重要事項を審議するとされる教授会の役割規定の改正の必要性として述べる「教授 会の審議事項が大学の経営に関する事項まで広範に及んでおり,学長のリー ダーシップを阻害している」との指摘は,学校教育法93条の「重要事項を 審議する」という教授会の規定をあえて残すことで少なくとも教育研究面に 関する重要事項である以上は管理運営面に関わるものでもこれを審議する教 授会の役割を認め,それにより大学における教授会の重要性を確認してきた 経緯を意図的に無視した立論であるといわざるを得ない。

(2) 本改正案の立法事実の検討
 中教審まとめは「教授会の審議事項が大学の経営に関する事項まで広範に及んでおり,学長のリーダーシップを阻害している」とし,それが今回の改 正案の根拠としているが,大学の自治の担い手である教授会の重要性に照ら し,そのような状況があるのかについては,慎重に検討する必要がある。
 例えば,羽田貴史「大学管理運営の動向」(広島大学高等教育研究開発セン ター編『大学の組織変容に関する調査研究(COE研究シリーズ27)』同セ ンター・2007年)によれば,国立大学及び私立大学の学長,部局長及び 学科長に対して,大学の管理運営の問題に関わって,「今後どの組織や機関の 権限を強めるのが望ましいでしょうか」と尋ねた質問への回答を見ると,確 かに,学長の権限を強めるのが望ましいとの回答は多い。したがって,学長 のリーダーシップの発揮を求める声の大きさは,これを肯定することができ そうである。
 しかし,それが同時に教授会の役割を制限すべきという意味であるかとい えば,必ずしもそうではない。学長のリーダーシップの発揮を求める声は, 同時に,教授会の権限強化を求める声でもある場合があるからである。すな わち,部局長や学科長のレベルでは,教授会の権限を「強めるべき」との回 答が7割前後にのぼっており,教授会の権限強化を求める声が強い。教授会 によってリーダーシップを阻害されていると指摘される学長レベルでさえも, 教授会の権限をもっと強めるべきと考える者は国立で18.8%,私立で3 7.1%であり,決して多いとはいえないとしても一定の割合に及んでいる。
 また,東京大学大学院教育学研究科大学経営・政策研究センター「大学に おける意思決定と運営に関する調査(教員編)」(2013年2月)によれば, 大学教員に対する質問の結果,「学部教授会の権限は縮小していく必要があ る」とは思っていない大学教員が8割以上に上ることが明らかにされている。 つまり,大学内における階層によって程度の違いはあるが,大学運営面にお いても,教授会の果たすべき役割への期待は総じて大きいということができ る。
 このように,教授会によって学長のリーダーシップが阻害されているから 教授会の役割を教育研究面に限定すべきとする本改正案の必要性に関する立 法事実の存在は十分に検証されているとは言い難い。
 そもそも大学は,個々の研究者がそれぞれ非常に異なった質の活動を行っ ているところに特徴がある。それゆえに,かかる多様性を反映した教授会と いう組織が,審議を尽くして一定の方向性を示すことにより,大学のガバナ ンスにおいて重要な役割を果たしうることは明かである。また,大学ごとに歴史的に築かれてきたガバナンスの多様性も存在するところ,法律によって 一律に大学のガバナンスのあり方を細かく法定することは,そのような大学 の個性,多様性をそぐことにもなりかねない。

4 憲法及び教育基本法等の下での大学の自治の保障と本改正案の問題点
(1) 大学の自治の保障

①憲法23条は「学問の自由は,これを保障する。」と定める。その内容と して,一般に,(ア)学問研究の自由,(イ)学問研究結果の発表の自由,(ウ)大学における教授の自由,(エ)大学の自治があげられている。思想・ 良心の自由(憲法19条)及び表現の自由(同21条)の保障の上にさら に明文で「学問の自由」を保障する趣旨は,学問研究が常に従来の考え方 を批判して,新しいものを生み出そうとする努力であることから,それに 対して特に強い程度の自由が要求されることによると解されている。
 特に大学は,歴史的に,時の権力・権威との衝突を繰り返し,往々にし て弾圧の対象となった。日本においても,戦前の滝川事件(1933年), 天皇機関説事件(1935年)などの大学に対する国家の介入の歴史があ る。それゆえ,大学における教育及び研究は,大学が国家権力その他の権 力や権威から独立し,組織体としての高度の自律性を保障されることによ ってはじめて可能であると考えられ,ここに大学の自治が保障されるゆえ んがある。
 教育基本法は,教育に対する不当な支配を禁止して,教育の政治的中立 性を確保するが,これに重ねて「大学については,自主性,自律性その他 の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない」(同法7 条2項)と定めているのも,「大学の自治に基づく配慮が必要である」との 趣旨によるものである(教育基本法改正時の2006年5月31日衆議院 における小坂憲次文部科学大臣答弁参照)。
 かかる大学の自治は,学問の自由を保障するためのいわゆる制度的保障 として捉えられることから,具体的な内容は法律によって定められること となるが,制度そのものを廃止したり,制度の核となる本質的な内容に及 ぶ制約を加えることは許されないと解されている。

②大学の自治の内容として,(ア)学長・教授その他の研究者の人事の自治,(イ)施設及び学生の管理の自治,(ウ)予算管理における自治(財政自治 権),(エ)研究・教育の内容と方法等に関する自治の4項目を挙げている(通説)。なかでも中心となるのは,(ア)の人事の自治である。最高裁判所も,「大学における学問の自由を保障するために,伝統的に大学の自治が 認められている。この自治は,特に大学の教授その他の研究者の人事に関 して認められ,大学の学長,教授その他の研究者が大学の自主的判断に基 づいて選任される。」(最高裁昭和38年5月22日大法廷判決)として, 学長の選任を含む人事の自治の重要性に言及している。
 大学の自治の主要な担い手は,自治の存在理由及び大学の目的が教育研 究にある(学校教育法83条1項)ことからも,教授その他の研究者の組 織であるべきであって,具体的には,教授会がその中心となる。学校教育 法93条の規定は,以上のような憲法,教育基本法及び学校教育法の趣旨 に基づき,教授会に「重要な事項を審議する」役割が認められることを明 らかにしたものであると解され,この意味で重要な事項を審議するための 存在という教授会の役割に関する学校教育法93条の規定は憲法による大 学の自治の保障の制度的核心を構成するものである。

(2) 現行法制度の下における教授会の役割
 これに対し,本改正案は,前記のとおり,教授会等による自治を教育研究面に限定されるものとして把握し,大学の管理運営面には及ばないこととす るものである。確かに現行法制度上,国立大学法人法の制定により,教学面 と管理運営面を区別して,組織的な分担関係を志向する規定が置かれている ことを指摘できる。しかし,中教審まとめも指摘するように,「大学の目的が 教育研究そのものにあることから,教育研究に関する事項と経営に関する事 項を明確に分けることは困難な面がある」(27ページ)のであり,大学運営 と教育研究を截然と切り離すことができるわけではない。したがって,現行 法制度上,教育研究面と管理運営面とが区別される中においてもなお,それ らにまたがる重要事項について審議する教授会としての役割の重要性が否定 されることにはならない。

(3) 本改正案の問題点
①基本的問題点
 本改正案は,このような教授会の役割を教育研究の領域に限定し,大学運営その他の全学的事項への関与を制限しようとするものである。しかし, これは,上述した憲法の保障する大学の自治と,その下で教育基本法及び 学校教育法が規定する大学の自主性,自律性並びに教授会の役割について の理解を誤ったものといわざるを得ない。また,教授会の役割の重要性に 対する十分な配慮を要求するなどした附帯決議にも矛盾するものである。
 教授会による自治は大学自治の制度的保障の核心をなすものであり,教 授会の役割は,少なくとも,教育研究と管理運営とにまたがる重要事項の 審議に及ぶものと解されることは明らかであるから,このことをもって現 行規定における教授会の役割が不明確との批判は当たらない。したがって, これを明確化するという立法趣旨のもと教授会の役割が「重要事項を審議」 することから,教育研究に関する事項について意見を述べることに限定さ れ,管理運営面には及ばないことに変更されるとすれば,それ自体が大学 の自治の保障の趣旨に反するものであり,大学の自主性・自律性を損なう おそれの強いものであるといわざるを得ない。

②具体的問題点
 実際,本改正案のような教授会の役割限定がされた場合には,例えば,学部長を始めとした学部人事,学部・学科の設置・廃止等の問題は,管理・ 運営に関する事項であるだけでなく,教育・研究に関する事項としての側 面を持つものであるが,前述の改正93条2項1号2号に当たらないとし て,学長等が教授会の意見を聴くことが必要と判断し(93条2項3号), ないし学長等が教授会に意見を「求め」ることにしない限り,決定にあた っての意見具申もできなくなってしまう。これでは,これらの問題に対す る当該学部の教授会の影響力が決定的に弱まることは明かである。これら は前述した大学の自治の内容のうちの,(ア)研究者の人事の自治,(エ) 研究・教育の内容と方法等に関する自治という重要な構成部分に関する事 項であり,大学の自治の担い手である教授会の関与にこのような重大な制 約を課することは,大学の自治を侵害する恐れがあるものと評価せざるを 得ない。
 さらには,教育研究及び管理運営の両面に関わる重要事項であり,上記(ア)の人事の自治の中心をなす学長の選考について,少なくとも,国立 大学のような学長選考会議による学長候補の申出制度のない私立大学の場 合,学長選考方法のあり方を決める上で教授会の意思が大きな影響力を持 ってきていた。しかるに,本改正案により教授会の役割が「教育研究に関 する事項」のうちのさらに限定された分野に限られることになれば,現在 教授会が大学の学長人事のあり方の面において有する影響力が失われ,こ の面でも本改正案による教授会の役割限定が大学の自治への制約をもたら す恐れは大きい。

(4)本改正案を含めた大学改革の基本的方向と教授会の役割

①本改正法案の目指す方向
 冒頭に掲げた閣議決定は,大学における教授会の役割の限定と学長のリ
ーダーシップの強化に関し,「産業競争力強化の観点」から競争主義,成果 主義等を導入して大学間又は大学内部でのいわゆる「選択と集中」を進め るとし,そのための「基盤強化」の方策として位置付けている。

②憲法が求める大学の役割と大学改革
 しかしそもそも,憲法は,全ての個人の尊厳と人権の尊重を理念としており,経済競争に勝ち抜く人材だけでなく,多様な能力や条件を有する全 ての国民が,相互に人権を尊重し,共に生きる社会を目指すものである。
全ての個人の尊厳と人権の尊重を図りうる社会を目指す観点から憲法は, 時々の政権の政策に左右されずに真理を探究することで社会に貢献できる ように学問の自由を保障するとともに,真理研究機関としての大学に大学 の自治を保障しているのである。
 また,憲法が上記のような,経済競争に勝ち抜く人材だけでなく,多様 な能力や条件を有する全ての国民が,相互に人権を尊重し,共に生きる社 会を理念としていることを踏まえ,当連合会は,2012年10月5日の 人権擁護大会において,「子どもの尊厳を尊重し,学習権を保障するため, 教育統制と競争主義的な教育の見直しを求める決議」を採択し,経済のグ ローバル化に伴って,社会において競争主義や市場原理が強まる中,教育 にも経済至上主義が持ち込まれ,グローバルな競争に適合する人材を育て るという名目の下に推進されてきた過度に競争主義的な教育が,上記の憲 法の理念を損なうことへの懸念を表明してきた。
 学術の中心として教育研究を行う大学においても,この理は妥当するか ら,行き過ぎた競争主義の導入や,経済至上主義に基づく資源再配分等の 改革には慎重である必要がある。

③憲法の要請のもとでの大学改革のあり方
 確かに大学改革においては多様な考慮要素に基づき多面的な検討が必要とされることは間違いない。中教審まとめが指摘するような,知識基盤 社会の到来,グローバル化の進展などによる社会を巡る環境の大きな変化 の中で,大学の現状に様々な問題点が生じているにも関わらず内部からこ れを改革しようとしない守旧的な傾向が生じていることも確かである。大 学が公教育を担うとともに,公的な財政的支援・税制面の優遇を受ける等 の高度の公共性を備えることからすれば,内部構成員による自治という側面だけでは十分ではなく,学外的な視点からの問題点のチェック体制が必 要であることも間違いない。
 こうした要請と憲法の要請する大学の自治の理念とを両立させる観点 からは,公権力的なコントロールとは異なる第三者的な立場からの大学の チェックの役割を担う存在として監事の役割と権限の強化が必要と思われ る。とりわけ大学の公共性やその運営の適正を確保する役割を担うにふさ わしい人材を広く学外に求めることが必要である。
 忘れてはならないのは,現行憲法のもとでは,大学での教育研究は,教 育機関としては第一義的には「人格の完成」を目指して(教育基本法1条), また,研究機関としては「深く真理を探究して新たな知見を創造」するこ とを目的として(教育基本法7条1項)行われるべきであって,社会の変 化に伴って大学改革の必要が生じたとしても,目指すべき改革はあくまで 憲法の規定する大原則に即したものである必要があるということである。 この意味で,大学改革の基本方向は,産業競争力強化に資する人材の育成 とは次元を区別する必要があり,大学と私企業の違いを無視するならば,「日本の大学・短大・専門学校は教育市場のみを基盤とする企業体へと転 換し,それぞれの公共的な使命と責任を喪失して『質』の低下の一途をた どる」(日本学術会議心理学・教育学委員会教育学の展望分科会「教育分野 の展望-「質」と「平等」を保障する教育の総合的研究-」2010年4月5 日)ことになろう。
 以上述べたような憲法の理念,本改正案の立法趣旨及び立法事実の問題 点も考慮すれば,大学の教授会の役割に根本的な変更を加えることになる 本改正案は,憲法の保障する大学の自治を危うくし,大学の自主性,自律 性を損なうおそれが強いと言わざるを得ず,当連合会はこれに反対するも のである。

以上


京滋私大教連、【抗議声明】大学の多様性、創造性を失いかねない 学校教育法「改正」法案の成立に強く抗議する

京滋私大教連
 ∟●大学の多様性、創造性を失いかねない 学校教育法「改正」法案の成立に強く抗議する

大学の多様性、創造性を失いかねない
学校教育法「改正」法案の成立に強く抗議する


 6月20日に開かれた参議院本会議で、現行学校教育法第 93 条を改廃して、教授会を学長が決定する事項に関して「意見を述べる」だけの諮問機関とし、学長に強大な権限を付与する学校教育法「改正」法案が可決・成立しました。
 本法律の成立によって、教員人事をはじめ、カリキュラムの編成や研究費の配分など、大学における重要事項に関しては、学長の判断による上意下達の大学運営が推し進められることが強く懸念されます。
 今回の「改正」法案に関しては、衆議院の参考人質疑の際、法案に賛成の立場を表明する参考人からも「学長トップダウンだけでは、大学運営はうまくいかない。理念をいかに大学構成員で共有できるかが大学においては重要であり、学長には合意形成をする上でのリーダーシップこそが求められている」(大阪大学・平野総長)、「教授会権限を弱め、学長権限を強化すれば改革がすすむとは限らない」(早稲田大学理事・田中愛治氏)といった見解が表明され、さらに改正法自体に解釈上、不明確な点が残されていることが明らかとなりました。
 私たちは、日本国憲法第 23 条で保障された「学問の自由」と「大学の自治」を礎として、大学における教育・研究の多様性と創造性を発展させるために、引き続き全ての教職員が力を合わせて大学の民主化に向けた取り組みに参加することを、強く呼びかけるものです。

2014 年 6 月 23 日
京滋地区私立大学教職員組合連合

「学校教育法改悪 大学の自治守る共同をさらに」

しんぶん赤旗(2014年6月24日)

主張

学校教育法改悪
大学の自治守る共同をさらに

 大学の自治を破壊する学校教育法・国立大学法人法の改悪法が、日本共産党などの反対、自民、公明の与党と民主、維新、みんななどの賛成多数で可決、成立しました。国会審議を通じ、「学長独裁」の運営を可能にし、大学の自治、学問の自由を脅かす悪法の重大な問題が明らかとなり、大学関係者の厳しい批判の声が広がりました。これを無視し、衆参合わせてわずか5日の委員会審議で打ち切り、国会最終日に強行した各党の責任が厳しく問われます。

教授会権限が焦点に

 日本共産党の宮本岳志衆院議員は、学校教育法の制定時に教授会が大学自治の中心的担い手とされたことに照らして、教授会の権限を弱めれば学長独裁の大学に変質する危険を追及しました。

 田村智子参院議員は、入試での合否判定を例に、教授会が教育研究の重要事項の実質的な決定権限をもつことを示しました。合否判定の教授会決定を学長が覆せば、恣意(しい)的判断が疑われ、大学の公正円滑な運営が阻害されます。

 審議を通じて、文科省は、ことさら学長に最終決定権があることを強調する答弁に終始しました。教授会が持つ実質的な権限を奪うことに、法改悪の狙いがあることが浮き彫りとなりました。

 政府は、改悪法の施行をうけて各大学が学内規則を見直す必要があるとし、そのためのガイドラインを策定することを明らかにしています。学内規則は「大学が主体的に決めるべきもの」と答弁しながら、実際には文科省主導で学内規則を変えさせるもので、大学への介入にほかなりません。

 法改悪に反対する大学関係者の共同は、国公私立の違いを超えて大きく広がりました。大学教職員、大学院生、非常勤講師、若手研究者、さらには教授会や学会など、さまざまな立場から反対声明が上がったことは画期的なことです。

 マスメディアも「この改革案は大学本来の強みを損ないかねない」「一律に学長主導を制度化しなくていい。右向け右は大学に最も似合わない」(「朝日」16日付)と批判する社説を掲げました。

 法施行にあたっては、政府による大学介入を許さず、教授会の意見を尊重する学内規則を維持するかどうかが焦点になります。関係者の共同をさらに広げ、各大学で民主的合意をつくることが期待されます。

 学長が教育研究の重要な事項を、教授会の意見を聞かずに決定することへの懸念に対して、参院文教科学委員会の付帯決議が「学長が教授会の意見を聴くことが必要な事項を定める際には、教授会の意見を聴いて参酌するよう努める」としたことは、今後に生かせるものです。

政府の介入を許さない

 各大学の学長選考会議が学長像などの選考「基準」を定めるにあたって、「政府は介入するな」との田村議員の追及に、「決定過程及び決定後を問わず、その内容について干渉するものではない」と答弁したことも重要です。

 学長が教学事項について教授会に委任することは「法律上禁止されない」ことも確認されました。

 政府による大学介入を監視するとともに、憲法の学問の自由と大学の自治の原則にそって、「学問の府」としての見識を踏まえた民主的な大学運営を守るために、日本共産党も力を尽くします。


東京大学職員組合、「軍事研究禁止要望書」を提出

東京大学職員組合
 ∟●要望書

東京大学総長 濱田純一殿

要望書

 2014年5月16日付産経新聞において ,本学における軍事研究の禁止等を確認する1969(昭和44)年3月5日付 『東京大学当局と東京大学職員組合との 確認書』(以下 ,「確認書」)に関する記事が掲載された 。記事の論調自体はここでことさらに取り上げる必要はないと認識している。

 ただし,上記確認書の内容は現在なお重要である 。また,上記記事中で ,本学本部広報課が産経新聞の取材に「確認書は現存していない 。当時,取り交わしがなされたかどうか分からないJ と回答したとされている点は,真偽は不明であるが,もし事実であるならば看過できない問題を含む。

 新制東京大学は ,第二次世界大戦の深刻な反省とともに出発し,日本国憲法 が掲げる平和主義を誠実に遵守するとの理念のもとに運営されてきた。上記確認書は,このような東京大学の確固とした原則 ,『軍事研究は行なわない,また軍からの研究援助は受けない。』という東京大学における慣行を堅持」することを,大学当局としてあらためて確認したものにほかならない。

 同確認書は,当時確かに東京大学当局と東京大学職員組合との間で取り交わされ,現在なお存在するものであることを指摘するとともに,当局は、引き続き、軍事研究を行わないとの基本原則 ・慣行を堅持し 、学術の平和的利用を旨として東京大学の管理運営にあたるよう強く要望する。

2014年6月18日

東京大学職員組合
執行委員長

佐藤 岩夫


添付資料 :
『東京大学当局と東京大学職員組合との確認書』(昭和44年3月5日付)

「東大医学部で学ぶ自信持てない」 不正巡り公開質問状

朝日新聞(2014年6月24日)

 東京大学医学部の学生有志が23日、東大がかかわる臨床研究で不正疑惑が相次いでいることについて浜田純一総長らに公開質問状を提出した。「このままでは東大医学部で学ぶことに自信が持てない」とし、学生に説明するよう求めた。

 質問状を出したのは、東大医学部医学科6年の岡﨑幸治さん(24)ら5人。アルツハイマー病研究「J―ADNI」のデータ改ざん疑惑や、患者情報が製薬会社ノバルティスに渡った白血病薬研究など、東大が関与する問題を質問状に例示し、「先生方のご説明がなければ、信じたくないことも信じざるを得ない」と主張。そしてこう訴えた。

 「東大医学部の先生方にご指導いただいている自分たちは、患者を救う真摯(しんし)な医療を将来国民の信用を得て実践できるのかという不安が拭えない。国民に信頼され得ると確信を持てる医学部においてこそ、将来患者さんに貢献できる医術を学べると信じております」

 岡﨑さんは「教授陣は危機感が薄い。学生が声を上げることで膿(うみ)を出しきり東大の信頼を回復する一助にしたい」。内外の署名を集めて情報公開を求めていく予定だ。東大は「対応は検討中」という。


2014年06月24日

改定学校教育法の施行と学長の人事権に関する「質問主意書」と安倍晋三の「答弁書」

■参議院
 ∟●学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案成立により改正される学校教育法の施行と学長の人事権に関する質問主意書(平成二十六年六月五日提出)
 ∟●答弁書(平成二十六年六月十三日)

平成二十六年六月五日提出
質問第一九八号

学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案成立により改正される学校教育法の施行と学長の人事権に関する質問主意書

提出者  大熊利昭

 今般、学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案(以下、「本改正案」)が国会に提出された。本改正案は、大学の意思決定の仕組みを根本的に変更するものであり、わが国の高等教育のあり方に多大な影響を与えかねないばかりか、憲法第二十三条が保障する「学問の自由」にも抵触しかねない重要な問題を包含している。
 右を踏まえ、質問する。
一 本改正案成立後の学校教育法(以下、「改正学校教育法」)の施行にあたっては、学長に広範な人事権、すなわち、新規採用教員の選考・任用、既存教員の解雇・配置転換を審議し、決定する権限(以下、「人事権」)を付与するか。

二 「付与する」というものとした場合、このことは、教授会に人事権の一部を引き続き認めることと矛盾するか。

三 「矛盾する」というものとした場合、私立学校法第一条が「私立学校の特性にかんがみ、その自主性を重んじ」云々と規定していることに鑑みれば、改正学校教育法の執行に際して、私立学校法に抵触するおそれはないか。

四 神戸地裁昭和五十四年十二月二十五日判決、前橋地裁昭和六十三年三月十一日判決、岐阜地裁平成十三年八月十四日判決等、裁判所は、教授会が教員の任免を審議することは、憲法二十三条の「学問の自由」およびそれから派生する「大学の自治」の要請であるとしている。この観点から、改正学校教育法が教授会の人事権を否定する場合、憲法違反のおそれはないか。

五 また、憲法違反ではないとしても、大学は毎年多額の国庫補助を受け入れており、専任教員の数がその算定の根拠のひとつとなっている。よって、国民の税金が適切かつ効果的に使われるためには、教員の任免は常に公平・公正に行われなければならず、人事権者の縁故情実に基づくようなことがあってはならない。本改正案が可決成立した場合、学長に与えられる広範な人事権が濫用されないことは、ガバナンスの観点から、どのように担保されるか。
 右質問する。

平成二十六年六月十三日受領 答弁第一九八号

内閣衆質一八六第一九八号
平成二十六年六月十三日

内閣総理大臣 安倍晋三

衆議院議長 伊吹文明 殿

衆議院議員大熊利昭君提出学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案成立により改正される学校教育法の施行と学長の人事権に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

衆議院議員大熊利昭君提出学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案成立により改正される学校教育法の施行と学長の人事権に関する質問に対する答弁書

一から五までについて

 平成二十六年四月二十五日に閣議決定し、今国会に提出した学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案は、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第九十二条第三項に規定する学長の職務を変更するものではなく、お尋ねの「広範な人事権」を学長に付与するものではない。また、同法案は教授会が教員の人事について審議することを否定するものではない。
 なお、現在、同法案は国会において審議されているところである。


大学自治破壊法、可決された法律案・修正案 参議院での各党別投票結果

参議院に提出された学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案
衆議院文部科学委員会の修正案(可決)
参議院本会議における投票結果

第一八六回 閣第八〇号
学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案

(学校教育法の一部改正)
第一条 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)の一部を次のように改正する。 第九十二条第四項中「の職務を助ける」を「を助け、命を受けて校務をつかさどる」に改める。 第九十三条第一項を次のように改める。
大学に、教授会を置く。 第九十三条第一項の次に次の二項を加える。
教授会は、学長が次に掲げる事項について決定を行うに当たり意見を述べるものとする。
一 学生の入学、卒業及び課程の修了
二 学位の授与
三 前二号に掲げるもののほか、教育研究に関する重要な事項で、学長が教授会の意 見を聴くことが必要であると認めるもの 教授会は、前項に規定するもののほか、学長及び学部長その他の教授会が置かれる織の長(以下この項において「学長等」という。)がつかさどる教育研究に関する 事項について審議し、及び学長等の求めに応じ、意見を述べることができる。

(国立大学法人法の一部改正)
第二条 国立大学法人法(平成十五年法律第百十二号)の一部を次のように改正する。 第十二条第七項中「うちから」の下に「、学長選考会議が定める基準により、」を加え、同条中第八項を第九項とし、第七項の次に次の一項を加える。
8 国立大学法人は、第二項に規定する学長の選考が行われたときは当該選考の結果そ の他文部科学省令で定める事項を、学長選考会議が前項に規定する基準を定め、又は 変更したときは当該基準を、それぞれ遅滞なく公表しなければならない。 第二十条第三項を次のように改める。
3 経営協議会の委員の過半数は、前項第三号の委員でなければならない。 第二十一条中第五項を第六項とし、第四項を第五項とし、第三項を第四項とし、第二項の次に次の一項を加える。
3 前項各号に掲げる者のほか、学校教育法第九十二条第二項の規定により副学長(同 条第四項の規定により教育研究に関する重要事項に関する校務をつかさどる者に限 る。)を置く場合には、当該副学長(当該副学長が二人以上の場合には、その副学長 のうちから学長が指名する者)を評議員とする。 第二十七条第三項を次のように改める。
3 経営協議会の委員の過半数は、前項第三号の委員でなければならない。

附 則
(施行期日)
1 この法律は、平成二十七年四月一日から施行する。
(検討)
2政府は、この法律の施行後適当な時期において、第二条の規定による改正後の国立大学法人法(以下「新国立大学法人法」という。)の施行の状況、国立大学法人(新国立 大学法人法第二条第一項に規定する国立大学法人をいう。以下同じ。)を取り巻く社会 経済情勢の変化等を勘案し、新国立大学法人法第十二条第二項に規定する学長選考会議 の構成その他国立大学法人の組織及び運営に関する制度について検討を加え、必要があ ると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

理 由 大学の組織及び運営体制を整備するため、副学長の職務内容を改めるとともに、教授会の役割を明確化するほか、国立大学法人の学長の選考に係る規定の整備を行う等の必要が ある。これが、この法律案を提出する理由である。

衆議院文部科学委員会の修正案(可決)

第186回国会閣第80号に対する修正案
第186回国会衆議院文部科学委員会可決

学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案に対する修正案
学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。
第一条のうち学校教育法第九十三条第一項の次に二項を加える改正規定のうち第二項第三号中「学長が」を削り、「必要であると認める」を「必要なものとして学長が定める」に改める。


2014年06月23日

参院本会議、学校教育法・国立大学法人法改悪 反対討論

しんぶん赤旗(2014年6月22日)

学校教育法・国立大学法人法改悪
田村議員の反対討論

 日本共産党の田村智子参院議員が20日の参院本会議で行った学校教育法・国立大学法人法改悪に対する反対討論(要旨)は以下のとおりです。

 第一に、教授会を実態として学長の諮問機関化することは、大学の自治、学問・研究の自由を侵すものです。

 教授会は、大学の自治の根幹を担う機関であり、多くの大学で、予算や教員人事に関わる事項を含め、教育・研究に関する重要な事項について実質的な審議・決定権を有しています。本法案は、こうした教授会の役割を認めず、「学長に意見を述べる」機関に矮小(わいしょう)化し、さらには審議事項も制限して、大学運営のあらゆる事項を学長個人の決定で行わせようとしています。

 審議の中で、例えば入試での合否判定は教授会が決定し、その決定を学長が執行することを可能としなければ大学運営に支障をきたすと指摘しましたが、これさえも「学長が決定する」と、教授会決定を学長がくつがえすことはありうるとの答弁に終始しました。

 学長が数千人、数万人の受験生の合否判定を行うなどありえず、教授会の決定を学長が変更することになれば、学長の恣意(しい)的な判断による不正入試さえ起こりえます。それでも、教授会の決定権限を断固として認めない、このような法案は、あまりに陳腐であり、むしろ大学の公正円滑な運営を阻害すると言わなければなりません。

 政府は、教授会が法律をふみこえて権限を持たないように、国公私立すべての大学で学則・内規の見直しが必要、そのガイドラインを有識者会議でつくることまで明言しました。このように、大学自治に政府が介入し、上意下達の組織へと改変することは許されません。

 第二に、学内の意思を民主的に反映させてきた学長選考意向投票制度を骨抜きにすることは重大です。

 学長選考基準として、大学改革をすすめる資質能力の評価があげられました。文科省は各大学に「ミッションの再定義」を策定させ、これにもとづく改革を強力に進めようとしています。この中には、「大学の強み」とされた研究分野に大学内の予算を集中させる、そのための学部学科再編の検討までもりこまれています。

 このような改革を学内の反対を押し切ってでもすすめることができる人物を学長にすえようという狙いは明らかです。

 本法案は、文科省が省令改正で行おうとしていたものを、経済同友会のメンバーなどが再三「法改正で」と文科大臣に要望したことから急きょ法案として提出されたものです。

 日本経団連は、昨年12月、「イノベーションの創出に向けた国立大学の改革について」との提言をまとめ、グローバル競争を企業が勝ち抜くために、産学連携の研究の強化、国立大学運営費交付金の基盤的経費を大胆に圧縮し、産業競争力につながる研究や人材育成への重点配分を政府に要求しています。

 短期間に成果を求められる研究環境、基盤的経費の圧縮による教員・研究者の非正規化は、すでに日本の大学に深刻な疲弊・停滞をもたらしています。このような改革に大学の未来はありません。

 教授会をはじめ大学内での民主的な討論、意思決定こそ、学問研究を発展させる力であることを指摘し、反対討論を終わります。


大学自治破壊法、参議院で可決。国会審議状況報告

■学校教育法等の改悪反対!メールニュース No.20

★「学校教育法改正に反対するアピール署名」は当面継続します!

◎「アピール署名をすすめる会」HP http://hp47.webnode.jp/

  英語版の署名サイト http://eigoban.webnode.jp/

※6月19日18時現在、署名数は7252名(非公表含む)です。多くのメッセージも寄せられています。法案は可決成立しましたが、当面の間、署名運動は継続します。

▼ 法案は19日参議院文教科学委員会で共産以外の賛成で可決

○17日の委員会に続き、民主・石橋議員、共産・田村議員が法案の問題を質しつつ、法案成立後に現場での濫用の歯止めになる答弁をさせるために追及を行いました。

 しかし下村大臣、吉田高等教育局長は、

*現行法でも最終決定権限は学長にある

*そうであるのに法解釈に幅があり、教授会が決定権限を有していることが問題

*今回の法改正は、学長と教授会の関係を明確にするもので、教授会の役割を制限するものではない

*法改正後は、学長が最終な決定権を持つこと、教授会の審議結果に学長の決定が拘束されないことが明確でない学内規則は法律違反

*学長の判断よりも教授会の判断が優先することは法の趣旨に反する

*学長選考、学部長選考についても同様

との答弁を繰り返しました。

これまでの審議では反発を招かないように曖昧にしていた法改正の狙いを土壇場で覗かせる答弁がなされました。

[答弁要旨]

*学長が権限を教授会に移譲することは法の趣旨に反する。学長の最終的な判断権が担保されていれば委任することは問題ない。

*入学や課程の修了、学位の授与についても、教授会で決定し学長が執行する運営は問題がある。

*入学や課程の修了、学位の授与について、学長が教授会の意見と異なる決定を行っても、法的には教授会に対し理由を説明する義務はない。ただし、教授会と適切な意思疎通を図ることが望ましい。

*学部長の選考については、学長の最終決定権が明示され、教授会の投票や推薦の結果に任命権者が拘束されないなど、任命権者の決定権が担保されていることが必要。

*法の趣旨に反する学内規程については、文科省からその問題点を指摘することがある。

*国立大学の学長選考会議が決定する学長選考基準については、その決定過程及び決定後に文科省が関与はしない。


2014年06月22日

龍谷大学教員有志、大学の自治、教授会自治を否定する学校教育法改正に反対し、廃案を求める緊急声明

龍谷大学教員有志、大学の自治、教授会自治を否定する学校教育法改正に反対し、廃案を求める緊急声明

大学の自治、教授会自治を否定する学校教育法改正に反対し、
廃案を求める緊急声明

                          
龍谷大学教員有志
2014年6月17日

 
 政府・文部科学省は、今国会に学校教育法の改正案を提出し、成立させようとしています。私たち龍谷大学教員は、以下の理由により、この改正案は大学の自治を危うくするものと考え、その廃案を求めます。
 日本国憲法23条に保障された「学問の自由」の具体的な支柱の一つが「大学の自治」であり、その法制度的な規定が現行の学校教育法93条1項です。そこでは、「大学には、重要事項を審議するために、教授会を置かなければならない。」と規定しています。この規定に基づいて、国公私立を問わず全国の大学には教授会が設置され、この教授会が入退学・卒業など学生の身分に関わる事項、学位授与、教育の基本理念や教育課程の編成とともに、教育研究と不可分な教員人事の審議・決定、学部・学科の設置・廃止、予算の審議(龍谷大学では評議会の審議・決定事項)、学部長の選出等を行うことによって、自律的な大学運営を行ってきました。このことが教授会自治の内容であり、それが学問の自由、教育の自由の制度的な保障であり、国民及び広く世界の人々から大学に付託された人類の福祉のための学術を発展させることを可能にしてきました。
 しかしながら、今回の学校教育法改正案は、93条を改定して、1項を「大学に教授会を置く。」とし、「必置義務」を緩和しています。また、2項では、教授会を「学長が決定を行うに当たり意見を述べる」機関とし、しかも、その対象を①「学生の入学、卒業及び課程の修了」、②「学位の授与」、そのほか「教育研究に関する重要な事項で、教授会の意見を聞くことが必要なものとして学長が定めるもの」(衆議院で修正)に権限を限定しています。これでは、その運用次第で教員人事や教育研究に関する重要事項に関する教授会の従来の権限が失われ、教授会は学長の単なる諮問機関と化し、大学トップの専断的な運営がもたらされる危険があります。これは、大学がその時々の政府や権力等から自立した教育と研究を遂行することを危うくし、大学の長期的な発展を困難にすると言わざるをえません。
 世界の主要国の大学では、その形こそ多少は異なるものの、アカデミックな事項については教員組織(教授団)の広範な権限が認められており、それが国際的に通用性ある大学として評価される大前提であることは、広く認められています。中世ヨーロッパに起源をもつヨーロッパの大学では、現代においても教授会自治は学問の自由、教育の自由の柱として堅持されています。米国でも、教育研究に関して専門的な能力を有するアドミニストレーターが教授団と大学執行部を支えるとともに、教員人事や教育研究の重要事項に関しては教授団の意思が尊重されており、理事会等が専断的に運営しているのではありません。
 グローバルで人類的な課題が山積する時代こそ、学術研究と教育を担う大学の自由で多様な発展が不可欠であり、それを実現し支えるのは教授会(教員団)自治であり、それを基盤とする広範な大学構成員の大学自治への多様な形の参加であることは、日本及び世界の大学の歴史が証明しています。このたびの学校教育法の改正案は、教授会自治を脅かし、大学がこの使命を遂行することを危うくするものです。
 以上の理由から、私たちは学校教育法の改正案に反対し、国会での徹底審議のうえ廃案にすることを求めます。また、これからも、大学の自治と学問の自由、教授会自治を発展させ、大学に課せられた人類的使命を果たすために努力することを誓うものです。

龍谷大学教員有志一同
呼びかけ人
丸山徳次(文)、村岡倫(文)、西垣泰幸(経済)、細田信輔(経済)、角岡賢一(経営)、
重本直利(経営)、夏目啓二(経営)、上垣豊(法)、高橋進(法)、脇田滋(法)、四ツ谷晶二(理工)、長上深雪(社会)、新田光子(社会)、嵩満也(国際文化)、Pauline Kent(国際)、奥野恒久(政策)、北川秀樹(政策)、白石克孝(政策)、加藤博史(短)、諸根貞夫(法科院)


大学ガバナンス改革へ改正法が成立 学長主導の改革促す

日経新聞(2014/6/21)

 大学のガバナンス(組織統治)を改革する改正学校教育法と改正国立大学法人法が20日、参院本会議で可決、成立した。大学運営への影響力が強い教授会の権限を限定することが柱で、来年4月から施行される。

 学校教育法の改正前の規定では、大学の教授会の役割は「重要な事項を審議する」と曖昧だったが、改正法は「学長に意見を述べる」に改め、学長の諮問機関としての位置付けを明確化した。審議事項も「学生の入学、卒業、修了、学位授与」などに限定した。

 学長主導による大学改革を促す狙いがあるが、大学教授らの一部は「学長の独裁につながる」と反発している。


教授会役割限定 改正学校教育法など成立

NHK(6月21日)

学長主導で大学改革を進めるため、多くの大学で事実上の意思決定機関となってきた「教授会」の役割を限定するなどとした改正学校教育法などが、20日の参議院本会議で可決・成立しました。

改正学校教育法と改正国立大学法人法は、急速なグローバル化が進むなかで、各大学が国際競争力を高めていくため、学長のリーダーシップの下で、それぞれの強みや特色を生かした運営ができるよう、大学の組織の規定や学長の選考の在り方を見直すものです。
このうち、改正学校教育法では、学長主導で大学改革を進めるため、多くの大学で事実上の意思決定機関となってきた「教授会」の役割を見直して、教育研究に関する事項を審議し、学長に意見を述べることなどに限定するとしています。また、改正国立大学法人法では、学長の選考の透明化を図るため、選考の基準や結果の公表を義務づけています。
改正学校教育法と改正国立大学法人法は、20日の参議院本会議で採決が行われ、自民・公明両党と、民主党、みんなの党、日本維新の会、結いの党、生活の党などの賛成多数で可決され、成立しました。改正学校教育法と改正国立大学法人法は、いずれも来年4月に施行されます。


2014年06月21日

大学学長の権限強化、改正学校教育法が成立-文科省

時事通信(2014年6月20日)

 大学学長の権限強化を柱とした改正学校教育法と改正国立大学法人法が20日、参院本会議で可決、成立した。来年4月に施行される。
 改正法は学長主導の大学改革を促すのが狙い。中央教育審議会の部会で、教授会が大学経営や予算まで審議し迅速な改革を妨げているなどの指摘が出たことを受け、教授会の役割を学長に意見を述べる諮問機関と明確化。教授会が受け持つ事項も学長が定めるとした。
 また、国立大の学長選考の基準や副学長の役割も規定。経営協議会の委員は過半数の外部登用を義務付け、幅広い意見を取り入れやすくした。

島根大学職員組合、大学自治の破壊 学校教育法と国立大学法人法の「改正」法案に反対する

島根大学職員組合
 ∟●大学自治の破壊 学校教育法と国立大学法人法の「改正」法案に反対する

大学自治の破壊
学校教育法と国立大学法人法の「改正」法案に反対する

2014 年 6 月 20 日
島根大学職員組合 中央執行委員会


 政府が今国会に提出した「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律」案は衆議院で採決され、参議院で審議されています。学校教育法「改正」法案は、教授会の審議事項を制限し、諮問機関化し,一方で学長の権限を強化しようと意図するものです。国立大学法人「改正」法案は、現状でも大学構成員の意向を反映させにくい学長選考会議に、学長選考基準策定権を与え、学長選考過程から大学構成員の意向をさらに排除しようとするものです。また、現行「二分の一以上」とされている経営協議会の学外委員を「過半数」とすることで、学内構成員の意向を軽視した大学運営を行いやすくするものです。このような法案は受け入れがたいものです。

 教授会は教育研究に関係する重要事項について広く審議し、その結論は学内で尊重されてきました。その意味で、教授会は大学において学問の自由を守る最大の審議機関といえます。
 今回政府・文部科学省は、大学自治を破壊し、政府の意向をくむ学長のガバナンスの強化を目指して、この「改正」法案を決めました。これにより大学の自治は壊れる可能性があります。そして大学で学び教育を受けた、次の世代を担う人材育成に大きな影響を与えるものといえます。

 この学校教育法・国立大学法人法の「改正」に断固反対し、法案がもつ問題点、危険性を広く構成員のみなさんと共有したいと考えます。また、その過程で、学問の自由が国民にとってかけがえのない権利であること、それを守るためには大学自治を根幹とする大学制度が必要であることを改めて認識したいと思います。「島根大学憲章」には「学問の自由と人権の尊重、社会の信頼に応える大学運営」とうたわれています。ここには大学の使命が明記されており、今回の学校教育法・国立大学法人法の「改正」は、これとは全く相反する内容です。以上の理由から学校教育法・国立大学法人法の「改正」には反対の意思を表明します。

以上

大学自治を掘り崩す 田村氏反対 改悪案が参院委可決

しんぶん赤旗(2014年6月20日)

 教授会の審議事項を「学生の入学・卒業」などに限定し、学長の諮問機関化する学校教育法と国立大学法人法の改悪案が19日の参院文教科学委員会で、自民、公明、民主、維新、結い、みんなの党の賛成多数で可決されました。日本共産党の田村智子議員は反対討論に立ち、「大学の自治、学問・研究の自由を脅かすものだ」と批判しました。

 田村氏は、教授会は大学自治の根幹を担う機関として教育課程の編成や予算、人事など重要事項の実質的な審議・決定権を有してきたと強調。「教授会の役割を否定し、学長の上意下達の大学運営を確立することは大学自治を掘り崩す」と述べました。

 法案が国立大学の学長選考基準を定めるとしていることについて田村氏は「学内の意思を民主的に反映させてきた学長選考意向投票制度を骨抜きにする」と指摘。文科省が運営費交付金の重点配分を圧力に学部学科再編などの改革を進めようとしていることをあげ、文科省主導の「改革」を押し切る学長を選考するのがねらいだと告発しました。

 田村氏は、大学の経営評議会の学外者委員を過半数に増加させることについて「産業界の意向に沿わせるものだ。産業競争力を重視するあまり、基礎的研究や教育が軽視される懸念がある」「大学内での民主的な討論、意思決定こそ大学発展の力だ」と主張しました。


新大学入試「達成度テスト」 21年度導入案提示

TBS(2014年6月20日)

 現在の大学入試センター試験に代わる新たなテストについて、文部科学省は新たな大学入試のあり方などを検討している文科省の審議会に対し、早ければ2021年度から導入する案を示しました。

 文部科学省の審議会に示されたのは、新たな大学入試「達成度テスト・発展レベル」と呼ばれるものについての案で、1回の試験を1日で終えることができるものを年に2回実施し、早ければ2021年度の大学入試から導入するというものです。

 新たなテストは、現在の大学入試センター試験が6教科29科目にまで細分化され過ぎた現状を改善することなどを目的に議論が行われていて、今のような「教科型」のテストではなく、「複数の教科にまたがった内容の『合科目型』や、教科の枠組みにとらわれない『総合型』の導入に向けても、専門的な検討を進めるべき」としています。

 文部科学省では、来月にもまとまる審議会の答申を受け、さらに具体的な制度を作成していく方針です。

センター試験に代わる新テスト、2021年から

読売新聞(2014年6月20日)

 中央教育審議会(中教審)の部会が20日開かれ、大学入試センター試験に代わる「達成度テスト・発展レベル(仮称)」について、早ければ2021年度入試から年2回実施するのが適当、とする提言が答申案に盛り込まれた。

 現在の小学6年生から新制度の対象となる見込み。中教審は7月下旬をめどにとりまとめ、文部科学相に答申する。

 試験内容については、複数教科にまたがった「合教科・科目型」、教科の枠にとらわれない「総合型」の問題を、従来の「教科型」に加えて実施することが適当とし、実施状況や学習指導要領の改定などを踏まえ、「合教科型」や「総合型」の出題の拡大を検討する。

 志願者に再挑戦の機会を与えるため導入を検討している、年複数回の実施については、運営側の負担を考慮し、「1回の試験を1日で終えることを前提に年2回が適当」とした。成績については、1点刻みの素点による成績表示は行わず、段階別表示など複数の表示方法を答申案で示した。また、記述式問題やコンピューターを使ったテストの導入などについては、今後1年以内をめどに結論を得るとした。


2014年06月18日

国会情勢・学校教育法・国立大学法人法改正問題、「13日の緊急院内集会には各地より40名の教職員が参加」

■学校教育法等の改悪反対!メールニュース No.18

13日の緊急院内集会には各地より40名の教職員が参加

○日本私大教連と全大教が共催した13日の緊急院内集会には、大学教職員40名が駆けつけ、共闘団体、国会議員・秘書、政党など含め50名超が参加しました。

○集会後に行った議員要請では、金曜の夕刻のため議員はほとんど不在でしたが、何人かの政策秘書には要請を行うことができました。こちら側からの「修正しても本質的問題はまったくかわらない」との訴えに対し、反論はひとつも出されませんでした。とある与党議員秘書からは、「会期末ぎりぎりになってこんな重要な法案を参議院に回して困ったものだ」との嘆息の声も聞かれました。

▼ 参議院の審議日程が決まりました

○6月17日(火) 13:00~16:30

 自民、民主、公明、維新・結い(共同会派)、みんな、共産が質疑を行います。

○6月19日(木) 時間未定 *明日の委員会後の理事懇で決まる見込み

※衆議院で民主党・維新の会と自民党との間で修正合意が成立したことで、参議院では所要時間を消化したのち、19日に採決、翌20日の本会議において可決・成立する動きになっています。与党の自公は委員会質疑の持ち時間の半分以上を返上するタイムテーブルとなっています。

 日本私大教連と全大教はぎりぎりまで徹底審議、廃案をもとめて議員への働きかけを行っています。

東北大学文科系教員有志87名、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」についての見解

東北大学文科系教員有志87名、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」についての見解

2014年6月16日

「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」についての見解

東北大学文科系教員有志87名

 現在、国会で「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の審議が行われている。この法案には看過することのできない問題が含まれており、廃案を強く求めるものである。

 現行の学校教育法93条は、「大学には、重要な事項を審議するために、教授会を置かなければならない」と定めている。ところが、法案は、教授会の役割を学長に対して単に「意見を述べる」ことに限定している。しかも、「意見を述べる」事項として明記されているのは、「学生の入学、卒業及び課程の修了」と「学位の授与」のみである。6月6日の衆議院文部科学委員会において、学長が教授会の意見を聴くことができる事項に教育課程の編成、教員の教育研究業績の審査等が含まれると修正されたが、これも法体系上、最も低位の「施行通知」に記載されたに過ぎない。
そもそも現行の93条に教授会が審議すべき「重要な事項」が詳細に規定されていないのは、それが各大学の裁量に委ねるべきものとされたからである。教授会の役割を明確化するという名目の下、審議すべき事項に制限を加えるのは、本末転倒といわざるをえない。

 このように今回の法案は、教授会の権限を縮減する一方で、学長・副学長の権限を強化し、さらに学長選考会議・経営協議会に梃子入れすることで大学運営に対する外部からの容喙を従来よりも一層強く行いうるようにしている。
 我々は、構成員が多様な意見をもって、自由闊達な活動を展開しているところに大学の知的活力を生み出す源泉があると考える。したがって、多様な意見をくみ上げ、まとめ上げることによってではなく、外部の力も借りたトップダウンによって大学運営を行うことは、結局、活力の枯渇と発信力の低下を結果するのではないかと危惧する。また、組織の健全な発展には、様々なレベルでチェック機能が働くことが不可欠である。そうした仕組みを失えば、大学という組織も荒廃を免れないのではなかろうか。

もとより我々もより良い大学を創生するための改革を否定したり、拒否したりするものではない。しかし、今回の「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」は、以上のようにあまりにも問題が多い。法案はすでに衆議院を通過し、審議の場を参議院に移したということである。参議院においては、国立大学法人法の国会付帯決議(2003年7月)、「国立大学の法人化に当たっては、憲法で保障されている学問の自由や大学の自治の理念を踏まえ、国立大学の教育研究の特性に十分配慮するとともに、その活性化が図られるよう、自主的・自律的な運営の確保に努めること」を踏まえ、「良識の府」にふさわしく、本法案を廃案とされるよう、強く求めるものである。

呼びかけ人(五十音順)
明日香壽川(東北アジア研究センター教授)
小田中直樹(経済学研究科教授)
川端 望 (経済学研究科教授)
木村敏明 (文学研究科教授)
黒瀬一弘 (経済学研究科准教授)
小林 隆 (文学研究科教授)
座小田豊 (文学研究科教授)
佐竹保子 (文学研究科教授)
佐藤勢紀子(高度教養教育・学生支援機構教授)
嶋崎 啓 (文学研究科教授)
鈴木岩弓 (文学研究科教授)
高橋 満 (教育学研究科教授)
永井 彰 (文学研究科教授)
長岡龍作 (文学研究科教授)
名嶋義直 (文学研究科教授)
長谷川公一(文学研究科教授)
柳原敏昭 (文学研究科教授)
柳田賢二 (東北アジア研究センター准教授)

*注:有志90名には、呼びかけ人を含む。また、訴えに賛同された理系教員若干名を含む。

中央大学全学教授会会員有志、声明「学校教育法及び国立大学法人法改正に反対する」

中央大学全学教授会会員有志、声明「学校教育法及び国立大学法人法改正に反対する」
                                

学校教育法及び国立大学法人法改正に反対する

中央大学全学教授会会員有志声明

 政府が今国会に提出した「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」が今まさに国会で審議されています。
 この法律案が成立した場合、解釈によっては、私たちが研究教育に関する重要事項について審議決定する権利を法的に失い、学長から求めがあった場合にしか意見を述べることができないことになる可能性があります。私たちはこの解釈をとりませんが、いずれにせよこの法律案は、学長が大学の研究教育に関し一元的に決定権を有するものとして法律に明文化することで、教授会の役割を大幅に縮小・限定しようとするものです。
 教授会は、人事を含め研究教育に関する重要事項について広く審議を行い、その結論は学内で尊重されてきました。教授会の審議結果を尊重することが、憲法第23条で定められている学問の自由を保障するための具体的方法だからです。それはまた19世紀以来、幾多の困難を経て歴史的に認められる慣行として形成され、大学における自由な研究教育の根幹とされてきました。明治時代に憲法作成に携わったお雇い外国人は「学問の自由は社会の発展に不可欠であり絶対に守られなければならない」と言っていました。
 私たち中央大学の教員は、これまで、研究者としては自らの良心に従って自由に研究活動を行い、その成果を社会や学生と共有し、公教育に携わる教育者としては、その責任感に基づいて、カリキュラムを作成し、学生を育て多くの卒業生を社会に送り出してきました。そのような私たちにとって法による外部からの強制的な規制は無用なものです。それよりもOECD諸国の平均より低い国内総生産に対する教育費支出割合を高め、私立学校振興費削減をやめ財政基盤を強化することの方が先決です。
 また私たちが責任を負っているこのような研究教育は、自由と多様性、批判精神が保障されて初めて豊かな実りを得ることができるのであり、決して一元的に上からのトップダウンによって得られるものではありません。実際の研究教育現場で最も大切なのは自由で生き生きとした議論ができる真の民主主義が機能することです。私たちは真の民主主義が機能するように努めていきます。真の改革はトップダウンによってはなされません。それはむしろ改革を阻害し教育現場の荒廃をもたらすだけです。
 実際の研究教育現場で起きている事態は多様なものです。他方、一個人の学識と経験の及ぶ範囲は極めて限られています。それ故、学長個人の見識がいかに優れたものであったとしても、一個人の判断に研究教育の未来のすべてを委ねてしまう体制を作り上げてしまうことは、非常に危険なことであると言わざるを得ません。
 以上の理由から、私たち中央大学全学教授会会員有志は、本法案に反対します。

2014年6月10日            
中央大学全学教授会会員有志
           

東京私大教連、声明「学校教育法改正案の衆議院採決に抗議し、参議院での徹底審議を通して同法案を廃案とするよう求めます」

東京私大教連
 ∟●声明「学校教育法改正案の衆議院採決に抗議し、参議院での徹底審議を通して同法案を廃案とするよう求めます」

《声明》
学校教育法改正案の衆議院採決に抗議し、参議院での徹底審議を通して
同法案を廃案とするよう求めます

2014年6月16日
東京私大教連中央執行委員会

1 6月10日、衆議院本会議は「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」を可決し、参議院に送付しました。同法案は、教育課程の編成、予算、採用・昇任等の教員人事、学部長の選考、学生の身分など、教育・研究に関する重要事項について実質的な審議・決定権を有してきた教授会を、「学長が決定するに当たり」「意見を述べる」だけの機関に変質させ、さらには学長が教授会の「意見」を聴かなければならない事項を「学生の入学、卒業及び課程の修了」「学位の授与」に限定し、その他の一切を学長の裁量に委ねることで、大学の教育・研究における教授会の役割を否定するものです。
衆議院文部科学委員会では、自民党、民主党、日本維新の会、みんなの党の4会派が提出した修正案にもとづき、政府案第93条第2項第3号「学長が教授会の意見を聴くことが必要であると認めるもの」が、「教授会の意見を聴くことが必要なものとして学長が定めるもの」と修正され、教授会が「意見を述べる」事項を学長のその都度の判断ではなく、あらかじめ定めることとなりました。しかし、教授会から審議・決定権を剥奪し、学長の権限を拡大させるという法案の本質は何ら変わっていません。
2 5月22日の衆議院本会議で同法案が審議入りした後、衆議院文部科学委員会ではわずか3回の審議しか行われませんでした。委員会の質疑では、法案が中教審大学分科会の「大学のガバナンス改革の推進について(審議まとめ)」よりもいっそう後退した内容となっていること、「教育研究に関する重要な事項」(第93条第2項第3号)と「教育研究に関する事項」(同条第3項)が各々想定する事項がまったく不分明なこと、学長の暴走を防止する仕組みが存在しないこと等、数多くの問題点が指摘されました。それにもかかわらず、政府はこれらの指摘に真摯に向き合わず、明らかにされなければならない問題が多く残っているなかで審議が打ち切られました。入学・卒業判定、学位の授与、学生の処分など、専門家集団である教授会が審議・決定すべき事項についても学長が「決定」することの重大な問題性は、ほとんど審議されていません。
  法案が成立すれば、2013年3月28日に文部科学大臣の解散命令を受けた創造学園大学(学校法人堀越学園)の事例に典型的に見られるような、一部私立大学における学長・理事長らの専断的な大学運営がいっそう拡大される事態になることは明らかです。しかし、私立大学の実態に即した審議は、まったく行われていません。
3 同法案は、教員集団の専門性と民主性を尊重し、真理の探究と社会の発展に寄与すべき大学の本来的なあり方を否定し、「大学の自治」を侵害する稀代の悪法というほかありません。私たちは、4月30日に「≪アピール≫学問の自由と大学の自治を破壊する学校教育法改悪に反対します」を発表し、院内集会・議員要請を行うなどました。しかし、大学のあり方を根底から変質させようとする法案の重大性を顧みず、あまりにも拙速な採決が衆議院で行われました。私たちはこのことに厳しく抗議するとともに、良識の府、熟議の府たる参議院での徹底した審議を通して同法案を廃案とするよう強く求めるものです。
以 上

関西圏大学非常勤講師組合、声明「学校教育法改正案に断固として反対します」

関西圏大学非常勤講師組合
 ∟●声明「学校教育法改正案に断固として反対します」

平成26年6月12日

学校教育法改正案に断固として反対します

関西圏大学非常勤講師組合 執行委員長 新屋敷健

 文教科学委員の皆さま。日頃より私たち国民のためにご尽力いただき、誠にありがとうございます。
 4月25日に「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」が閣議決定され国会に提出されたことを伺いました。しかしながらこの改正には大きな疑問があります。それは、現行学校教育法93条の「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」という規定を破棄し、教授会を「学長が決定するに当たり」「意見を述べる」だけの機関に変質させるということです。
 教授会は、憲法第23条が定める「学問の自由」から導き出される「大学の自治」を担う機関として、これまで教育・研究に関する重要な事項についての審議・決定権を有してきました。しかし法案は、教授会を実質的な諮問機関とし、学長によるトップダウンの大学運営を確立しようとしています。また経営協議会の学外委員を「二分の一以上」から「過半数」とし、学内の意向を軽視した大学運営を行おうとしています。
 かつて教授会は、教員ばかりでなく職員、一部では学生の代表も参加し意思決定を行っていました。しかし今日では教員は非常勤講師や任期教員・技術員等に分断され、実質的な教員の多くが教授会から疎外され、学問の自由や大学の自治からは遠い存在となりました。大学職員も近年はこの傾向が強まり、教員・職員・学生ら大学関係者の多くが大学の運営から排除され、この傾向は急速に拡大しました。その悪しき集大成が今回の学校教育法改正案と推測されます。この法案が成立すれば、大学の教育・研究に関する意思決定から、ほぼすべての実質的大学関係者が締め出されるという、異常な状況が国家によって強制されるのです。これは、見逃すことのできない憂慮すべき事態です。
 1997年、第29回ユネスコ総会において「高等教育教員の地位に関する勧告」が採択されましたが、そのⅢ基本原則の8において「高等教育教員を代表する組織は、教育の発展に大いに貢献することができる力並びに第三者及び他の利害関係を有する者と共に高等教育政策の決定に関与すべき力としてみなされ及び認められるべきである」と明記されています。しかし日本では、ほとんどの利害関係者がこの改正によって学内行政から実質的に排除されるのです。日本国憲法98条2項では、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」とありますが、それに違反しても構わないというのでしょうか。
 私たちは、この法案に断固反対いたします。ユネスコの勧告はいわば確立された国際法規であり、それが主張するように、高等教育教員を代表する組織は、高等教育政策の決定に関与すべき力として認められなければなりません。     
 教授会決定の実態の是非はともかく、話し合いと同意に基づく運営こそが民主主義の基本であり高等教育の理念です。憲法23条が内包する大学の自治がそれを意味することは、ユネスコの勧告が示す通りです。教授会の制限は民主主義の否定であり、強く反対し抗議します。多数の大学関係者による大学の自治・学問の自由を国家の干渉により一方的に制限し、特定の権力者の道具として利用するための法改正は、民主主義のいかなる手続き・正当性にも反するため、絶対に認めることはできません。
以上

鈴鹿医療科学大学教職員組合、「大学の自治を破壊する学校教育法改悪に反対する声明」

■鈴鹿医療科学大学教職員組合
 ∟●「大学の自治を破壊する学校教育法改悪に反対する声明」

大学の自治を破壊する学校教育法改悪に反対する声明

 4月25日,「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました.学校教育法改正案は,私大教連が危惧した通り,93 条を改悪し,教授会を事実上諮問機関化し,理事長・学長の専断体制を確立する内容です.
 教学権が確立している私立大学では,憲法23 条を活かし,旧国立大学教員における旧教育公務員特例法(旧教育公務員特例法4 条,5 条,6 条)の規定を準用する形で教員の身分を教授会の審議事項として保障してきました.また,カリキュラム編成権も保障してきました.この到達は,もちろん教職員組合の長年の民主化闘争の反映もあります.
 しかし,学校教育法が改悪されれば,私たちにとって看過できない問題が生じます.
 第1に,教授会は,学生の入学・卒業について「意見を述べる」だけとなり,教員人事,カリキュラム編成などに関われなくなります.これまでの学内民主化の到達点が掘り崩され,教員人事権,カリキュラム編成権などが剥奪されます.教授会は,諮問機関となります.
 第2に,私立大学民主化の法的拠り所がなくなります.理事長が学長を兼ね,理事長・学長の専断体制となっている私立大学においては,学内民主化の法的拠り所がなくなります.
 第3に,教員の人事に関わり,いざ訴訟となった時の法的拠り所がなくなります.私たちは,新年度が間近に迫った2 月に突然次年度から教員を職員とすると口頭で告げられた異職種配転事件を経験しました.教授会の頭ごなしの配転です.私たちは93 条をよりどころに,学内闘争を経て裁判にて勝利判決を得ることができました.93 条が正しいからこその勝利です.悪法がまかり通れば裁判での正義の実現は不可能となります.
 第4に,学生や事務職員の意見や声も届かなくなることです.教授会が諮問機関にされた大学では,学長による上意下達の強権的な大学運営となり,学生や事務職員の意見が反映されることは考えられません.
 私たちは,政府が,国会において徹底した審議を行い,「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」を廃案とするよう強く求めるものです.

以上

2014 年6月11 日
鈴鹿医療科学大学教職員組合執行委員会

(朝日新聞社説)大学改革 知の多様性を守れるか

朝日新聞(2014年6月16日)

 大学にトップダウンはなじむのか。この改革案は大学本来の強みを損ないかねない。

 大学でのものごとの決め方を改める法案が、国会で審議されている。これまで教授会は、重要事項を審議する役割を担ってきた。これを、学長が必要と思うときに意見を聴く諮問機関に位置づけを変える。

 大学は少子化で学生が減る危機に加え、新興国を含めた国際競争にもさらされる。安倍首相は「世界トップ100に10大学以上」を成長戦略に掲げた。

 生き残るには、特色が要る。

 お金と人を呼べる研究・教育への特化を進めたい。

 選択と集中によって短時間で成果を出せる大学にしたい。

 だから、各学部の発言力が強く、決定に時間もかかる仕組みをやめ、すいすいと結論を出せるようにしようというのだ。

 しかし大学というものは、ひとの気づかないことを提案するのが大切な仕事だ。みんなが考える余裕のないことを、引き受けて考える仕事ともいえる。

 それには、多彩な知のサンプルを取りそろえておく必要がある。今ここにある需要だけで学問の品ぞろえをしたら、間違える。長い目で見ると、かえって社会に貢献できなくなる。

 たとえば秋田大の伝統である鉱山学は長く斜陽だったが、都市鉱山や資源外交で再び注目され、国際資源学部の創設に発展した。商売にならないものは切るような大学だったら、再生の芽は摘まれていた。人文や社会科学にも、社会に“セカンドオピニオン”を提供するという、金額に直せない役割がある。

 世の中も学問も複雑になっている。どんなに優れたリーダーも、一人で全分野を見通して判断するのは容易でない。

 改革案は、かえって学長を孤立させかねない。発言力を奪われた教授陣は、全学の運営に関心を失う。学長は多角的な意見を拾えなくなる。そうして、判断を誤るリスクが高まる。

 学部タテ割りの弊害は改善すべきだが、今の制度でもできることだ。げんに、全学のテーマを討論する学部横断型の組織をつくっている大学は多い。

 責任と権限をはっきりさせる利点もなくはない。小さな単科大学が学長の強い統率力で成長した例もある。しかし、それが大きな総合大学に通用するかといえば、あつれきを生むだけに終わるかもしれない。

 大学の性質によって、それぞれ最適な意思決定の仕組みは違うはずだ。一律に学長主導を制度化しなくていい。右向け右は大学に最も似合わない。


2014年06月17日

大分大学教職員組合、不当労働行為の訴えが集結へ

大分大学教職員組合
 ∟●組合ニュース(2014年6月12日)

不当労働行為の訴えが集結へ

■これまでの経緯
 これまでご報告してきたとおり、組合は2013年1月に、大分大学を相手取って、大分県労働委員会に不当労働行為救済申立の訴えを起こしました。
 これは、大学が、現在の仮組合室(事務局棟隣のプレハブ)から新組合室(保健管理センター隣の男女共同参画推進本部棟)へ復帰させるとした約束を反故にし、復帰とは無関係な条件をいくっも後から持ち出して復帰を拒否していることについて、組合が不当労働行為として訴え、当初の約束どおり、組合室の復帰を求めていたものです。

■組合室復帰が実現
 その後、組合・大学双方からの証人に対する審問等を経て、昨日、大分県労働委員会において、大学は組合室への復帰を認めました。
 これまで組合が求めてきた組合室復帰が、ようやく実現することとなりました。
 組合は、大分県労働委員会の提案を受け、祖合室復帰を認めた大学と和解することとし、裏面の協定書を締結いたしました。

■今後は安定的な労使関係を
 振り返ると、岩切前理事の在任中に、大学が組合室復帰に関して新たな条件を持ち出してきたのが2010年6月でした。今日まで実に4年間にわたって、組合は大学に対して、団体交渉や不当労働行為救済申立の場で、約束どおり組合室を復帰させるよう求め続けてきました。
 そのなかで、今年4月になって新たな理事が就任し、その2ヶ月後に大学は組合室復帰を認め、不当労働行為の訴えは終結することとなりました。
 裏面の協定書にあるとおり、今後、組合と大学が安定的な労使関係を築くことができるように、組合も誠意をもって努力します。

■これまでのご支援に感謝いたします
 以上、組合員や賛助会員のみなさま、学外からご支援くださった多くのみなさまにご報告させていただくとともに、これまでのご協力・ご支援に厚く御礼申し上げます。


2014年06月16日

憲法9条にノーベル平和賞を、署名8万超 ノルウェー委員会が推薦受理

The Wall Street Journal(2014 年6月15日)

 集団的自衛権の行使容認をめぐり憲法解釈を変更する議論が進む中、戦争の放棄を定めた憲法9条にノーベル平和賞を受賞させようという動きが広がっている。神奈川県座間市に住む主婦らが中心となってノルウェーのノーベル賞委員会に提出した推薦状が今年4月、正式に受理された。集まった署名は6月8日時点で8万人分を超えた。

 活動の始まりは、主婦の鷹巣直美さん(37)の「9条の素晴らしさに光を当てることはできないか」との思いからだった。鷹巣さんは高校卒業後にオーストラリアに留学。アフガニスタンなどの難民と知り合う機会を持ち、戦争の悲惨さを実感したという。

 その後、米軍基地のある座間市や相模原市の主婦、幼稚園教諭らが集まり、昨年8月、「『憲法9条にノーベル平和賞を』実行委員会」を設立。インターネットや街頭で署名を募り、大学教授らの推薦文と2万4887人分の署名をノーベル賞委員会に送付した。受賞対象は個人と団体に限られるため、「9条を長年にわたり保持し続けた日本国民」が受賞候補となっている。

 実行委員会の共同代表の一人、保育園理事長の星野恒雄さん(80)は小学6年生のときに終戦を迎えた。「国のために死ぬのが生きがい」の軍国少年だったが、疎開先から戻ったときに見た東京の焼け野原の衝撃は大きく、親戚も兵隊として出征したまま戻ってこなかった。「命をつぶされることがどれほど残酷なことか。戦争は嫌だというのが骨身に染みた」

 ノーベル平和賞の発表は10月。星野さんは「受理は第一歩。これからが本番だ」と候補になった後も署名を集め続けている。「今年が無理でも、受賞するまで何度でも推薦する。続ければ、9条改憲を進める人たちに対する圧力になる。署名の集まりは国民の平和への期待の表れだから」と力を込める。 

[時事通信社]

奨学金返済問題でホットライン開設 きょう全国一斉

東京新聞(2014年6月15日)

 低収入で奨学金の返済に苦しむ人のため、弁護士らでつくる奨学金問題対策全国会議は十五日、全国一斉の電話相談ホットラインを開設する。学費高騰に加え、卒業後も非正規労働者となるなどで奨学金を返せない人が急増している。全国会議は「相談者の救済を図りながら制度改善に向けて活動したい」としている。
 全国会議によると、大学生の二人に一人は何らかの奨学金を利用し、三人に一人は日本学生支援機構の奨学金を利用。しかし、支援機構の返済延滞者は二〇一二年度末で約三十三万四千人、延滞額も約九百二十五億円に上った。これに伴い利用者が返済を迫られて裁判で訴えられたり、重い延滞金が課せられるなど社会問題となっている。
 ホットラインに寄せられた相談には弁護士、司法書士、支援団体職員らが対応する。電話番号はナビダイヤル(0570)000551。受付時間は十五日午前十時から午後五時まで。

2014年06月14日

研究者、4割以上が「任期あり」、正規のポスト増えず

Economic News(2014年06月13日)

 大学院の博士課程を出ても正規の大学教員になれない“高学歴ワーキングプア”が話題になって久しい。火付け役は、07年に出版された『高学歴ワーキングプア――「フリーター生産工場」としての大学院』(水月昭道著、光文社新書)。「コンビニのバイトと非常勤講師をかけもちし、月収15万円」といった「フリーター博士」の実態が明らかとなり、社会に衝撃を与えた。

 文部科学省の「平成25年度 学校基本調査」によると、博士課程を終えた人のうち、大学などの研究機関以外も含めて就職した人は66.8%。就職、進学もしていない人が18.5%、「不詳・死亡」が7%などとなっている。就職率は前年より改善したが、それでも就職できた人のうち正規雇用は52.5%にすぎない。

 正規雇用の割合が低いのはもちろん、「民間企業が博士課程修了者を雇おうとしないから」という理由だけではない。大学教員を目指す若者は「ポスドク」となり、非常勤講師や任期付きの研究員として研究を続けるケースが多いのだ。

 大学側は、こうした若者の「雇用の受け皿」をたくさん用意している。その多くは「任期付き」だ。「助教」「講師」「助手」といった、一見「このまま昇格すれば准教授か」と思われそうな肩書きでも、1~3年の任期付きの場合が多いのである。

 文部科学省が三菱UFJリサーチ&コンサルティングに委託して実施した「研究者の交流に関する調査」によると、大学などに籍を置く研究者のうち「任期あり」は37.4%、「ポスドク・特別研究員等」が7.3%となっている。今や大学等に在籍する研究者のうち、半数近くは不安定な身分だ。「講師」の73.1%、「助手」の70.2%、「助教」の57.5%が「任期あり」である。任期付きの研究者は、期間内に次の職を見つけられなければポストを追われることになる。

 政府は今年に入ってようやく、こうした不安定雇用の博士たちの支援策に乗り出したが、遅きに失すると言わざるをえない。(編集担当:北条かや)


2014年06月13日

高知大学教職員組合、「学校教育法と国立大学法人法の改正に反対します」

高知大学教職員組合
 ∟●こぶし、第10号(2014年6月10日)

学校教育法と国立大学法人法の改正に反対します。

高知大学教職員組合中央執行委員会


 「ミッションの再定義」にさいしては、高知大学も、国の政策にそって徹底的にひきずりまわされることになりました。「独立行政法人」の「独立」はもはや幻でさえなく、国の政策によって自由にひきずりまわされるための「独立」でしかなくなっています。
 ご存知のように、学校教育法と国立大学法人法の改正の審議が 5 月 22 日に衆議院で審議がスタートしました。教授会の権限の限定とひきかえに学長の権限を拡大させることが趣旨の改正です。国の政策によって自由にひきずりまわされている大学の現状を考えると、学長の権限の強化は、国が学長をとおしてさらに自由に大学をひきずりまわすための制度整備と言わないわけにゆきません。研究や教育の自由が失われたら大学は大学でなくなります。私たちは学校教育法と国立大学法人法の改正に反対します。

自由法曹団、『解釈改憲・立法改憲は「戦争」への道 安保法制懇報告書・批判』(意見書)を作成・発表

自由法曹団
 ∟●『解釈改憲・立法改憲は「戦争」への道 安保法制懇報告書・批判』(意見書)を作成・発表

 2014年6月12日、『解釈改憲・立法改憲は「戦争」への道 安保法制懇報告書・批判』(意見書)を作成・発表し、国会議員への要請をしました。

(意見書本文はこちら)


2014年06月12日

大学評価学会、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の廃案を求める

大学評価学会
 ∟●「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の廃案を求める

「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の廃案を求める

2014年6月11日 大学評価学会理事会


 今国会に提出されている「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の審議は、会期末を控えて大詰めを迎えている。この改正案の趣旨は「大学運営における学長のリーダーシップの確立等のガバナンス改革を促進するため、副学長・教授会等の職や組織の規定を見直すとともに、国立大学法人の学長選考の透明化等を図るための措置を講ずる」等とされている。

 本学会は、2004 年に設立された。設立大会で採択した「もう一つの『大学評価』宣言」において、「これまで狭い専門の領域に閉じこもりがちであった教育・研究者と事務職員、そして大学が、自らの主体性を確立し、学問の自由と大学の自治の現実的・具体的担い手となるために、大学評価に関する議論を行うことは避けて通れない課題となっている」とし、また、「高等教育機関は、政府や産業界など特定の者のためだけに存在するのではありません。公共的な存在として、すべての市民のために存在しているのです。学生たちの学びの成果は彼ら自身の成果であるだけでなく、社会全体の貴重な成果として認識されなければなりません。このような視点から、大学評価の基本に、学生の発達保障が明確に位置づけられる必要があるでしょう」と述べている。
 本学会は設立以来、大学が抱える諸問題を踏まえつつ大学評価の在り方に関する議論を積み重ねてきた。このような立場からすると、この改正案の内容は日本の大学が抱えている問題点や困難を改善することに資するものではなく、かえって大学の状況を悪くするものとなることを危惧する。

1. 大学は設置形態を問わず公の性格を有しており、学術の自由な発展と基本的人権である教育権(学習権)を保障するために存在している。大学関係者は、学問の自由と教育権(学習権)を保障し、一人一人の学生たちの発達保障を実現する任務を深く自覚し、社会的責任を果たさねばならない。
2. 一方、「国立大学改革プラン」「ミッションの再定義」「機能強化」に加えて、国公私立を問わず、種々の大学評価や強引な予算削減・予算誘導によって、グローバル化・イノベーション創出・学生の質保証などを強く迫る政策が展開されている。また経済界はこれらを強力に要求している。
3. 教職員は、研究業績づくり、大学評価や予算獲得のための書類づくり等に日々追われ、学生と向き合う時間や余裕を奪われている。教育権(学習権)保障や学生の発達保障に向けて、真剣かつ真摯に論議し合う意欲さえ失いつつある。今必要なことは、教授会の権限縮減ではなく、むしろ教授会が大学全体に責任を持つことを自覚しその機能を充実させることである。
4. 長引く不況と低賃金の下で、学生たちの家庭は生活が圧迫されている。学生たち自身もまた、高学費やローン型奨学金の下でアルバイトを余儀なくされ、成績評価値 GPA のアップなどのスペック(品質性能保証)競争に追い込まれている。学生たちが安心して学べる支援と、大学運営や授業改善に参画する営みが広がってほしい。
5. 大学は教職員だけでなく学生を含め全構成員によって(附属機関や非常勤雇用を含む)、教育・研究の発展が取り組まれるべき組織体である。そのトップである学長には、経営的手腕のみでなく、学内構成員の十分な合意形成を図ることができるリーダーシップと大学の在り方に関する深い見識、大学構成員からの厚い信頼が求められる。そのためにも、学長は大学構成員の総意に基づいて選任される手続きが必要なのである。
6. 以上のようなことから、大学には営利を目的とする私企業とは異なった、教育と研究の本質に基づく大学の運営と経営の原理が適用されなければならない。しかるに、「法律案」は、高等教育機関としての特質を顧みることなく、学長のもとに上意下達をすすめる組織として、大学のありようを劇的に変えてしまうとものである。こうした大学は政府と経済界が執拗に要求している姿である。

 他の学会や教授会などの声明でも、日本国憲法で保障される「学問の自由」や、ユネスコ「高等教育の教育職員の地位に関する勧告」に示された国際社会の認識の到達点からして、「法律案」が重大な問題点を有していることへの危惧が表明されている。本学会理事会はこれらの危惧に同意する。また、本学会の研究対象とする大学評価はよりよい大学をめざすものであり、この点からみて、本改正案は上記に示した問題点のあることを強く指摘しておきたい。
 大学評価学会理事会は、市民の教育権(学習権)並びに学生の発達保障を担うにふさわしい高等教育機関づくりをめざす立場から、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の廃案を求めここに声明する。

2014年度学費負担の大幅軽減と私大助成の増額をもとめる国会請願

北海道私大教連
 ∟●2014年度学費負担の大幅軽減と私大助成の増額をもとめる国会請願

2014年度 学費負担の大幅軽減と私大助成の増額をもとめる国会請願

【請願趣旨】
現在、私立大学・短大(以下、私立大学)には、大学生・大学院生全体の約75%にあたる約225万人が学んでいます。私立大学は我が国の大学進学率の向上を支え、全国各地で多様な教育・研究を担い、日本の高等教育において大きな役割を果たしています。
しかし政府は、30年以上にわたり私立大学への補助(以下、私大助成)を削減し、非常に低い水準に抑え込んできました。国の大学への予算を学生一人当たりに換算した額は、2013年度で国立大学が185万円であるのに対して、私立大学はわずか14万円、国立大学の13分の1でしかありません。私大助成があまりに低いために、私立大学の学費は国立大学の1.6倍と高額で、初年度納付金は平均132万円にものぼります。そのうえ公的な奨学金制度はすべて貸与制であるため、卒業後の返済困難者を大量に生み出すなど深刻な問題に直面しています。私立大学生と保護者にとって学費負担は非常に重く、学生の多くが学費や生活費を捻出するためのアルバイトに追われています。また私立大学では、教員一人当たりの学生数が国立大学の3倍近くにのぼるなど、教育環境の整備も遅れています。さらに、地方・中小規模の私立大学を中心に経営状況の悪化が広がっており、教育・研究を支える基盤そのものが揺らぎ始めています。
政府が私立大学の学費負担を学生と家庭に押し付け、同時に国立大学の予算も削減してきたために、我が国の高等教育費支出は国際的にみても極端に低く、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最低水準です。OECD加盟34ヵ国のうち32ヵ国が給付型奨学金制度を有しており、17ヵ国は大学授業料が無償です。授業料が有償で、公的奨学金がすべて貸与制という国は日本以外にありません。日本は世界で学費負担が最も重い国となっています。その結果、「教育を受ける権利」「教育の機会均等」が憲法で保障されているにもかかわらず、経済的理由で大学で学ぶことを断念せざるを得ない若者が後を絶ちません。
学費負担の軽減を求める世論の高まりの中で、政府は2012年、国際人権規約の「高等教育の漸進的無償化」条項を受け入れる決定を下しました。これにより政府は、大学の学費無償化に向けて段階的に学費負担を軽減するための具体的な施策を実施する責務を負うことになりました。
学生・保護者を含むすべての私大関係者は、私立大学の過重な学費負担が一刻も早く軽減されること、私立大学の教育・研究条件が改善・充実され質の高い学びが保障されることを切に願っています。以上のことから、次の各項の施策を実現することを請願します。

【請願事項】
1.私立高校生への学費助成と同様に、私立大学生への学費助成制度を新設してください。
2.大学生を対象とした給付型奨学金制度を創設してください。
3.無利子奨学金を希望者全員が受給できるようにするとともに、奨学金の返済額を卒業後の所得額に応じて決定する制度を創設してください。
4.すべての私立大学で、経済的に修学困難な学生に、授業料減免などの支援を実施できるよう補助を拡充してください。
5.私大助成は、私立学校振興助成法制定時の参議院附帯決議に従って、私立大学の経常的経費の2分の1を補助するよう速やかに増額してください。

以上


2014年06月11日

「大学のガバナンス改革」を推進する学校教育法・国立大学法人法の「改正」

法学館憲法研究所
 ∟●「大学のガバナンス改革」を推進する学校教育法・国立大学法人法の「改正」

「大学のガバナンス改革」を推進する学校教育法・国立大学法人法の「改正」

2014年6月9日

中嶋哲彦さん(名古屋大学教授)

■国策大学化への道
 政府は今国会に「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」を提出している。6月1日現在、衆議院で審議中だ。この法改正は、大学自治の基盤である教授会の権限縮小、学長の権限強化、大学運営に対する政府及び学外有力者の影響力強化などを内容とし、これによって「学長のリーダーシップ」を確立し「大学のガバナンス改革」を加速させるというものだ。
 しかし、教授会及びその構成員を大学の管理運営から排除し、学長に権限を集中することで大学改革を推進するとの発想は、大学というものへの無理解の告白に等しい。学長の学問的・社会的権威とリーダーシップは、大学における高度で総合的な教育研究を基盤とするもので、それは教授会メンバーそれぞれの学問研究とその成果としての教育活動の上に成り立っている。このため、学長のリーダーシップは教授会メンバーの学問研究を基盤とし、かつその自発的同意がなければ成立しないのだ。これを否定してかかったのでは、大学の活力の源泉である学問の自由を掘り崩し、大学における教育研究に取り返しのつかない打撃を与えかねない。
 また、「大学のガバナンス改革」は、「グローバル化の進展の中で国際的な大学間競争が激化しており、我が国の大学の国際競争力を高め、高度な教育研究を行い、グローバル人材を育成する拠点として世界の大学と伍していくためには、戦略性を持って大学をマネジメントする」(中教審)必要があるとの考えから出発している。これは、日本経済団体連合会「イノベーション創出に向けた国立大学の改革について」(2013年12月17日)や、経済同友会「大学評価制度の新段階-有為な人材の育成のために好循環サイクルの構築を-」(2013年4月3日)などの要求に即応するものだ。これでは、教育研究を通じて社会全体の利益に奉仕すべき大学を、特定の経済的利益に奉仕する国策大学におとしめてしまいかねない。

■教授会自治の否定
 学校教育法改正の問題点は第一に、大学自治の要である教授会の形骸化を企図していることだ。
 学校教育法第93条は、「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」と定め、大学の管理運営の重要事項の審議決定に関して、どのような事項が重要事項に該当するかを含めて、教授会には包括的な権限を付与している。
 ところが、政府は被用者である教授会構成員が大学の管理運営の中核的役割を担うことは適切ではないとして、教授会から重要事項の審議権、すなわち実質的な決定権を剥奪しようとしている。改正案では、学生の入学・卒業の決定や教育研究の重要事項に関して、学長・学部長が教授会の意見を聴く必要があると判断した事項についてのみ、教授会として審議し意見を述べることができるとしている。
 このため、改正案がそのまま可決成立すると、教授会は、学長・部局長・教員の採用・昇任、教育課程編、教育研究費配分などの重要事項に関与できなくなってしまう。これは歴史的に形成され、国際的に承認された大学自治の原理を否定するものである。

■学内の支持と信頼を欠いた学長の選考
 国立大学法人法改正案の目的は、第一に、教授会の意向に基づかずまた尊重することさえなく国立大学の学長を選考できるようにすることにある。
 このため、委員の半数を学外者で構成する学長選考会議に学長選考の基準を定める権 限を与え、その基準に則って学長を選考しなければならないとしている。現在、多くの国立大学で実施されている大学構成員の意向投票等を廃止し、学長選考会議主導で学長選考を行えるようにしようとするものである。
 政府は、この改正を「学長のリーダーシップ」を確立するためと説明しているが、学内の意向を無視して選考され、 学内の支持と信頼を欠いた学長にリーダーシップを期待することは困難である。

■政府・経済界による国立大学支配
 国立大学法人法改正の目的は第二に、国立大学法人に置かれている経営協議会の委員の過半数を学外委員にし、政府や経済界の意思に従順な国立大学法人を作ることにある。改正法案では、国立大学法人や大学共同利用機関法人の経営協議会について、その委員の過半数を学外者としなければならないとしている。
 これが法制化されれば、大企業の経営者や地元自治体の首長などが国立大学法人の経営 に関して主導権を握ることが予想される。教育研究を通じて広く国民全体の利益のために奉仕することを使命とする国立大学法人が、一部の利益に奉仕させられることになりかねない。
 中教審は時の政府の意向に従うことでのみ、国立大学法人は国民の意向に沿い、またその利益に奉仕できると主張する。しかし、大学は本来、時の政治権力の意向に追随することなく、学問の自由に基づき、教育研究の目的・内容を自ら自主的・主体的に探求することを通じてこそ、真に国民の利益に奉仕することができるはずだ。

◆中嶋哲彦(なかじま てつひこ)さんのプロフィール

 1955年、名古屋市生まれ。
 名古屋大学大学院教育発達科学研究科 教授。博士(教育学)。
 専門は教育行政学、教育法学。
 名古屋大学法学部卒業、同大学院教育学研究科博士・後期課程単位等認定退学。
 久留米大学講師・助教授を経て、1998年名古屋大学。
 2000年10月~2007年9月、犬山市教育委員。
 2009年7月から、全国大学高専教職員組合(全大教)中央執行委員長。
 2010年4月から、「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク世話人。
 関連する近著
 「首長主導と国家統制強化の教育委員会制度改革を問う」『現代思想』2014年4月号。
 「教育委員会廃止論を問う──首長主導型の教育改革がもたらすもの」『世界』No.854 (2014年3月号)。
 「『大学の大衆化』と高等教育政策のゆくえ?大学は多すぎる」論から考える?」『世界』No.840 (2013年3月号)。
 『教育の自由と自治の破壊は許しません。―大阪の「教育改革」を超え、どの子も排除しない教育をつくる?』 (かもがわブックレット191、2013年1月)。


大熊利昭衆議院議員(みんなの党)、学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案成立により改正される学校教育法の施行と学長の人事権に関する質問主意書

みんなの党
 ∟●学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案成立により改正される学校教育法の施行と学長の人事権に関する質問主意書
 ∟●質問主意書原本

学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案成立により改正される学校教育法の施行と学長の人事権に関する質問主意書

提出者: 大熊利昭提出日: 2014/06/05
質問主意書

今般、学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案(以下、「本改正案」)が国会に提出された。本改正案は、大学の意思決定の仕組みを根本的に変更するものであり、わが国の高等教育のあり方に多大な影響を与えかねないばかりか、憲法第二十三条が保障する「学問の自由」にも抵触しかねない重要な問題を包含している。
右を踏まえ、質問する。

一 本改正案成立後の学校教育法(以下、「改正学校教育法」)の施行にあたっては、学長に広範な人事権、すなわち、新規採用教員の選考・任用、既存教員の解雇・配置転換を審議し、決定する権限(以下、「人事権」)を付与するか。

二 「付与する」というものとした場合、このことは、教授会に人事権の一部を引き続き認めることと矛盾するか。

三 「矛盾する」というものとした場合、私立学校法第一条が「私立学校の特性にかんがみ、その自主性を重んじ」云々と規定していることに鑑みれば、改正学校教育法の執行に際して、私立学校法に抵触するおそれはないか。

四 神戸地裁昭和五十四年十二月二十五日判決、前橋地裁昭和六十三年三月十一日判決、岐阜地裁平成十三年八月十四日判決等、裁判所は、教授会が教員の任免を審議することは、憲法二十三条の「学問の自由」およびそれから派生する「大学の自治」の要請であるとしている。この観点から、改正学校教育法が教授会の人事権を否定する場合、憲法違反のおそれはないか。

五 また、憲法違反ではないとしても、大学は毎年多額の国庫補助を受け入れており、専任教員の数がその算定の根拠のひとつとなっている。よって、国民の税金が適切かつ効果的に使われるためには、教員の任免は常に公平・公正に行われなければならず、人事権者の縁故情実に基づくようなことがあってはならない。本改正案が可決成立した場合、学長に与えられる広範な人事権が濫用されないことは、ガバナンスの観点から、どのように担保されるか。

右質問する。


城西大学教職員組合、大学の自治を破壊する学校教育法改悪に反対する声明

大学の自治を破壊する学校教育法改悪に反対する声明

大学の自治を破壊する学校教育法改悪に反対する声明

2014年6月6日
城西大学教職員組合執行委員会

 4月25日、「学校教育法および国立大学法人の一部を改正する法律案」が閣議決定され、現在開催中の第186回国会で審議されています。この法案は、93条を改悪し、教授会を事実上、単なる諮問機関とし、学長の専断的体制を確立させる内容です。学問の自由・発展を支えている大学の自治を根本から突き崩すものです。私たちは、これを絶対に容認することができません。反対する根拠は3点にまとめられます。

1.現在の学校教育法第93条は、「大学の自治」の保障のために、国公私立の別なく「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」と規定しています。改正法案は、この学校教育法第 93条を全面的に書きかえています。すなわち、教授会は、「重要な事項審議をする」のではなく、学生の入学・卒業及び課程の修了、学位授与について意見を述べることができ、上記以外の教育課程の編成や教員人事などの重要事項は、原則意見を述べることできるだけの諮問機関となっています。ある大学では、教授会で承認された学生の復学を、学長が認めないということがすでにおきています。
 歴史的に、大学は学問の中心として、時の様々な権力から独立して、学問研究と高等教育を行うための自治権を保障されてきました。これは、大学の自治の欠如が、学問の発展につながらず、結局のところ、国民全体が学問の自由と高等教育を受ける権利を享受できなくなってしまうからです。日本国憲法が保障する学問の自由、またこれを担保する大学の自治を法律上確認してこそ、学問の発展を制度的に支え、期待できるのです。このような大学の自治は国際的にも大学制度の基礎として認められてきました。
 ところが今回の改正法案は、歴史的に積み上げられてきた教授会の自治を踏みにじり、学問の自由を保障する大学自治の原則、戦後わが国の大学が営々と築き上げてきた成果や経験を否定し、大学を権力の支配下に置こうとしています。このことが学問・研究・教育の発展を促進するどころか、逆に妨害・衰退につながるのは明らかです。

2.今回の改正法案は、教授会を諮問機関とすることで、学長権限を強化し、「学長のリーダーシップ」で大学改革が進むことを期待しています。しかし、学長のリーダーシップは本来、外在的に付与されるものではなく、大学構成員の教育・研究を基盤とし、かつ大学構成員からの自発的同意に支持されて成り立ち、その場合にだけ有効に作用するものです。大学の目的と組織原理は、利潤最大化を目的とする企業の組織原理とは決定的に異なります。この理解を欠いた「学長のリーダーシップ」は、まさに学長専権体制でしかありません。
このことは、とりわけ私立大学にとっては死活的に重大な問題を引き起こします。わが国の私立大学は、国公立大学に比して極めて乏しい国庫補助のもとで、学生・保護者の切実な高等教育要求に応えて、学校数の 80%、学生数の 75%を占めるほどに発展を遂げてきました。しかし、理事長による教授会を無視した専断的な運営が行われている大学では、多くの重大な不祥事がおきています。補助金が削減されたり、解散命令のだされた大学もあります。このような私立大学では学長の権限強化は理事長の権限強化につながり、大学の存続を危険にさらしています。

3.大学は「学術の中心」として「高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造」(教育基本法第7条)すること、「広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究」(学校教育法第 83 条)することを通じて、社会全体の発展、人類の福祉に寄与するという社会的使命をはたすことが求められています。こうした役割を十分に発揮するために、教育基本法第 7条2項は「大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない」と定めています。私たちは、この規程を尊重し、学校教育法改正法案は廃案にすべきと考えます。


桜花学園教職員組合、大学の自治を破壊する学校教育法改悪に反対する声明

大学の自治を破壊する学校教育法改悪に反対する声明

桜花学園教職員組合 執行委員会
大学の自治を破壊する学校教育法改悪に反対する声明

 本年4月25日、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。学校教育法改正案は93条を改悪し、教授会を事実上諮問機関化し、理事長・学長の専断体制を確立する内容です。
 教学権が確立している私立大学では、憲法23条を活かし、旧国立大学教員における旧教育公務員特例法(旧教育公務員特例法4条、5条、6条)の規定を準用する形で教員の身分を教授会の審議事項として保障してきました。また、カリキュラム編成権も保障してきました。この到達は、もちろん教職員組合の長年の民主化闘争の反映もあります。
 しかし、学校教育法が改悪されれば、私たちにとって看過できない問題が生じます。
 第1に、教授会は、学生の入学・卒業について「意見を述べる」だけとなり、教員人事、カリキュラム編成などに関われなくなります。これまでの学内民主化の到達点が掘り崩され、教員人事権、カリキュラム編成権などが剥奪されます。教授会は、諮問機関となります。
 第2に、私立大学民主化の法的拠り所がなくなります。理事長が学長を兼ね、理事長・学長の専断体制となっている私立大学においては、学内民主化の法的拠り所がなくなります。
 第3に、教員の人事に関わり、いざ訴訟となった時の法的拠り所がなくなります。第4に、学生や事務職員の意見や声も届かなくなることです。教授会が諮問機関にされた大学では、学長による上意下達の強権的な大学運営となり、学生や事務職員の意見が反映されることは考えられません。
 私たちは、政府が、国会において徹底した審議を行い、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」を廃案とするよう強く求めるものです。
 教授会自治を破壊し学長・理事長による専断的な大学運営を正当化する学校教育法の改悪に反対します。

以 上

2014年6月5日
桜花学園教職員組合執行委員会

学校教育法・国立大学法人法改悪案、大学自治破壊は財界の要求 競争力強化の人材育成

しんぶん赤旗
 ∟●大学自治破壊は財界の要求 競争力強化の人材育成

大学自治破壊は財界の要求
競争力強化の人材育成


 国会で審議中の学校教育法と国立大学法人法の改悪案。大学の自治を壊す法案が、だれの求めに応えて出てきたものなのか、改めてみてみると―。

 「当初は省令で明らかにすることを考えていたが、さまざまな意見をうかがうなかで、法律を改正することが最も重要であるとの認識に至った」

 下村博文文科相は6日の衆院文部科学委員会でこうのべ、法律改定を提案した経過について語りました。

 大学の運営について中央教育審議会の大学分科会では、教授会権限の制限を盛り込みましたが、省令と法律のどちらで行うかで意見が分かれました。まとめでは「所要の法令改正を行う」とするにとどまりました。

 それは、「自分で決めていくのが基本的な大学のあり方だ」「法律で教授会はこういう仕事以外はやってはいけないと書くことは、大学を大学でなくしてしまう」など法改正に反対する強い意見が相次いだからです。

 これに対して、法改定を強く求めたのが財界出身者らです。

教授会の役割

 経済同友会終身幹事の北城恪太郎・国際基督教大学理事長は「省令の改正でなく法律を変えて、教授会は決議機関ではないということを明確にしていただいた方が大きな意識改革になる」(昨年12月13日)と再三、主張。中教審とりまとめ案が示された同24日にも、「下村大臣の力で改正をぜひ実現していただきたい」と執ように法改定を求めました。

 北城氏は財界出身の私立大学理事長らと自民党の会合に出席し、法律改定を要求。こうした動きに押されて出された改定案には、大学の重要事項を審議する権限を教授会から奪い、学長の諮問機関に変質させることなどが盛り込まれました。

 この間、財界は競争力強化に貢献する「優秀な人材」を生み出すよう求め、教授会の弱体化と「学長独裁」を求めてきました。

 「教授会で議論する『重要事項』の範囲を学校教育法に限定的なかたちで明記」(経団連・2013年12月)「教授会は、教育・研究に関する学長の諮問機関とする」(経済同友会・12年3月)―。

 さらに経団連は、「世界最高の『研究重点型大学』を形成する必要がある」として「大学の数や規模を見直し、再編・統合を」と主張。「競争原理を導入」するとして運営費交付金の配分見直しや、授業料も上限規制を見直して自由化するよう求めています。

「学長独裁」も

 すでに安倍内閣は、国立大学の再編・統合を視野に入れた「機能別分化」や「年俸制導入」を押しつけています。今回の法案で「学長独裁」をつくり、政府・財界が示す方向に沿った「大学改革」を推進しようというのです。国民のための大学を政府・財界いいなりに変える危険なねらいです。(深山直人)


弘大、学長が学部長選考

東奥日報(2014年6月10日)

 学長のリーダーシップ強化など、ガバナンス(統治)改革に取り組んでいる弘前大学は、これまで教授会の選挙で選んでいた学部長を、学長が直接選考する改革案を決定していたことが9日、分かった。さらに、再任を含め最長6年としていた学長任期を「4年とする」とする一方、再任の制限を設けないよう変更したことも分かった。……

2014年06月10日

参議院の審議日程は17日・19日の見込み 日本私大教連「学校教育法改正案に対する国会の取り組みについて」(緊急要請)

■学校教育法等の改悪反対!メールニュース No.16

 学校教育法・国立大学法人法の改正案が、本日の委員会で93条第2項3号の修正案、それ以外の政府案が共産・社民以外の会派の賛成により可決されました。
(概況はメールニュースにて後ほど配信します。)

10日(火)に本会議採決、参議院に送付されます。

現段階での参議院の審議日程は、17日(火)・19日(木)と見込まれています。
以下、今後の取り組みについてご協力をお願いいたします。

<要請①> 緊急院内集会にご参加ください

 日本私大教連と全大教は、この間の国会情勢を踏まえ、参議院審議に向けて下記の通り緊急院内集会を開催することといたしました。
 授業等の業務の関係で参加は容易ではないかと存じますが、出来る限りのご参加をお願いいたします。

 【日時】 6月13日(金)15時~17時
       1時間ほど院内集会ののち議員要請を実施

 【場所】 参議院議員会館B103会議室(有楽町線「永田町駅」が最寄となります)
       *14時30分より議員会館入口で通行証を配布します。

<要請②> 各層から、声明や決議、意見、要望等をお出しください

 メールニュースでお伝えしているように、組合単位、教授会、有志、個人から声明や決議が出されています。現場のリアリティを国会議員に伝えることが、国会審議の内容を決する重要なカギになります。来週いっぱい時間がありますので、引き続きお取り組みのほどよろしくお願いいたします。

<要請③> 「緊急アピール賛同署名」の周知し協力を呼びかけてください。


学校教育法・国立大学法人法改正問題、主戦場は参議院 「参議院審議に向けて、緊急院内集会を開催します!ふるってご参加ください!」

■【日本私大教連】学校教育法等の改悪反対!メールニュースNo.16

参議院審議に向けて、緊急院内集会を開催します!ふるってご参加ください!

○主戦場が参議院に移るに当たり、参議院議員に法改正・法案の問題性を訴え、徹底審議を要請するために、緊急院内集会を開催します。多くのみなさんのご参加を呼びかけます!

【日時】 6月13日(金)15時~17時

      1時間ほど院内集会ののち議員要請をおこないます。

【場所】 参議院議員会館B103会議室(有楽町線「永田町駅」が最寄となります)

      14時30分より会館入口で通行証を配布します

自由法曹団、学校教育法及び国立大学法人法の改悪に反対する声明

自由法曹団
 ∟●学校教育法及び国立大学法人法の改悪に反対する声明(2014年6月9日)

学校教育法及び国立大学法人法の改悪に反対する声明

1 安倍内閣は、2014年4月25日、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」を国会に提出した。
 同改正案は、現行法では「重要な事項を審議するため」設置され(学校教育法93条)、広く教育研究や大学運営に関する審議権を持っている教授会の役割を、①学生の入学、卒業及び課程の修了、②学位の授与、③教育研究に関する重要な事項で、学長が教授会の意見を聴くことが必要であると認めるものについて「意見を述べる」ことに限定し、さらに、学長等がつかさどる教育研究に関する事項について審議し、及び学長等の求めに応じ、「意見を述べることができる」としている。
 また、副学長について「学長を助け、命を受けて校務をつかさどる」と定め、学長権限を委任されたものとして副学長の役割を強化している。
 さらに、国立大学の経営協議会についても「過半数」を学外者とすることを新たに規定した。
2 以上の通り、改正案は、大学運営と教育研究の両面で教授会が持っていた審議権を奪い、教育研究の領域で意見を述べるだけの諮問機関としての役割に限定するものである。
 このような改正案は、「大学の自治」を制約し、憲法の保障する「学問の自由」に抵触するものであり、許されない。
 そもそも、憲法23条が「学問の自由」を保障したのは、大学が、学術の中心として深く真理を探求することを本質とすることから、時の権力と衝突し、弾圧の対象となってきた歴史があるからである。そして、学問の自由を制度的に担保するために「大学の自治」を保障したのである。
  「大学の自治」の内容は、大学運営と教育研究のいずれにも関わるものであり、相互に密接不可分な関係にある。「大学の自治」の担い手であるべき教授会から大学運営に関する役割を奪うことは、大学の自治に対する制約であり、「学問の自由」に抵触し、許されない。
3 安倍政権は、①戦争をする国のための人材づくりと②世界で一番企業が活動しやすい国のための人材づくりを目指して、教育「改革」を推し進めており、既に、小学校・中学校・高等学校の教育に関しては、地方教育行政に文科相や首長という政治権力が介入することを容易にする地方教育行政法改正案を今国会に提出した。
  「大学の自治」を破壊する学校教育法等の改正案も、大学の教育に関して教育への国

2014年6月9日

自由法曹団
団長 篠原 義仁

学校教育法改悪の国会審議を傍聴に行きました

エルムの森だより
 ∟●学校教育法改悪の国会審議を傍聴に行きました(2014年6月9日)

学校教育法改悪の国会審議を傍聴に行きました

国会審議を傍聴に行った執行委員からの報告です

全大教の要請に応じて国会傍聴行動に参加してきました。

すでに報じられているように、衆議院の委員会では法案を可決し、週明けの本会議で採決、参院に送付する運びとなっています。参院の審議日程はギリギリですが、2日間の委員会審議で会期末までに可決成立されることはできる見通しだそうです。

それから、6日の委員会では、民主・自民・維新・みんなの党から共同提案された修正案が可決されました。この案は、中教審「審議まとめ」が挙げていた、教育課程編成、教員の業績審査の二つを、改正法案における教授会に意見を聞くべき「重要事項」に追加することを求めるものと説明されています。

しかし、条文に具体的な文言はなく、法案の成立後に文部科学省が出す施行通知の中で指示する方式をとることが明らかにされました。「重要事項」の内容を行政解釈に委ねることは望ましいとはいえません。

また、下村文科大臣は、施行通知の内容を検討するために法の成立後、ただちに有識者懇談会を召集するとも述べています。その結果、文科省の息のかかった人間による解釈の基準がつくられ、学長選考会議による学長の業績のチェックなど、法人法に規定のない権力的監視の体制がつくられていくおそれがあります。

それから、改正法案の条文の内容に関する政府参考人の説明にも不明確なところがありました。こうした点を追及していけば、論理的には参院で廃案に追い込むことも不可能ではないと思われます。が、今回、与野党から修正動議が共同提出されたことなどを見ると、法案成立の政治的合意ができている様子でした。


大学自治破壊法案を可決、宮本議員が反対討論

しんぶん赤旗
 ∟●大学自治破壊法案を可決 学校教育・ 国立大法人法 宮本議員が反対討論 衆院委(2014年6月7日)

大学自治破壊法案を可決
学校教育・ 国立大法人法 宮本議員が反対討論 衆院委

 学校教育法と国立大学法人法の改悪案が6日の衆院文部科学委員会で自民、公明、民主、維新、みんななどの賛成多数で可決されました。自民、民主、維新、みんな4党共同の修正案も可決されました。日本共産党の宮本岳志議員は反対討論で「大学自治の土台である教授会を骨抜きにし、学長独断の大学運営を許す大学自治破壊法案だ」「修正案も(教授会の)審議事項を学長が決めることに変わりはない」と批判しました。

 法案は、教授会の審議事項を「学生の入学・卒業」などに限定し、審議権を大きく制約するものです。

 反対討論で宮本氏は、基準を定めて国立大の学長を選考することについて「文科省の方針にそった人しか学長にさせないということだ」と指摘。財界が、産業競争力強化に貢献する人材育成や企業経営の論理を大学に導入することを求めてきたことを示し、「大学を政府と財界いいなりに変える狙いだ」と批判しました。その上で「国がなすべきは自治破壊ではなく、学問の自由を保障し、大学の多様な発展に必要な条件整備を行うことだ」と強調しました。

 採決に先立つ質疑で宮本氏は、経済同友会など財界が、学長のリーダーシップで大学改革を進め、教授会を“意見を聞くだけ”の諮問機関に変更するよう提案していたことを示し、「政府の意図は大学を財界に臨む方向に大改造することだ」と追及。下村博文文科相は「主体的に判断した」と開き直りました。

政府言いなりの学長選任の危険

 6日の衆院文部科学委員会で宮本岳志議員は、国立大学法人法改悪案により、大学で政府いいなりの学長が選任される危険をとりあげました。

 法案は、学外委員が半数を占める学長選考会議が「各大学のミッション(使命・任務)にそった学長像」などの「基準」を定めて学長を選考するとしています。

 宮本議員は、学長選考会議に学外者として文科省出身者が入ることによって、政府方針通りの大学改革を進める人物を学長に据える狙いがあることを追及。現在、学長選考会議に文科省出身者が31国立大学に33人も入っていることが明らかになりました。

 さらに、中央教育審議会(中教審)の安西祐一郎会長が、東北大学につづき、京都大学で学長選考会議の学外委員として、学長選挙廃止を策動していた問題を告発しました。

 安西氏は、昨年6月に京都大学の総長選考会議の議長となり、議事録を非公開にして総長選挙廃止の検討を先導してきました。昨年12月にこのことが明らかとなり、学内外から「大学の自治、民主主義を壊すものだ」と批判が広がり、今年4月に総長選挙の存続が決まりました。

 中教審大学分科会は今年2月に「大学ガバナンス改革の推進について」をとりまとめ、その中で学長選挙について「過度に学内の意見に偏るような選考方法は適切ではない」と敵視しています。

 宮本議員は、安西氏が、政府の方針を先取り的に京都大学に押し付けようとしたのは問題だと追及。これに対し、下村博文文部科学相は「京都大学が自主的に安西氏を総長選考会議の委員に選任したのであり、なんら問題はない」と開き直りました。

 質疑を通して、学長選考会議に入っている文科省出身者によって、政府の方針に沿って国立大学を運営する学長を選ぶように「基準」が定められる危険があることが明瞭となりました。

 (土井誠 党学術・文化委員会事務局次長)


社民党、6月6日文部科学委員会で学校教育法・国立大学法人法改正に反対

民主党衆議院議員・吉川はじめ
 ∟●学校教育法、国立大学法人法改正に反対

 本日の文部科学委員会で学校教育法、国立大学法人法改正案の採決が行われ、学校教育法改正案については修正、国立大学法人法改正案については原案が賛成多数で可決されました。社民党はいずれも反対しました。

 政府提出の学校教育法改正案は、教授会による過度な大学運営への関与が、大学改革を阻害していることを理由に、学長の権限強化を主な内容とするものです。しかし、委員会審議で明らかになったのは、教授会が過度に学校運営に関与しているという事実はなく、法改正をしなければならない立法事実が極めて希薄だということです。

 そもそも、教授会による大学運営への関与を制約する今回の改正案は、憲法23条が定める学問の自由を保障する大学の自治を脅かすものであり、「大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない」と定めた教育基本法第7条2項の精神とも相容れません。

 また、国立大学法人法の改正では、学長の選考にあたって、学内選挙の結果にのみ従って学長を選考している事例は皆無であるにもかかわらず、大学構成員の学長選考への関与を縮小させようとしています。さらに、経営協議会の学外委員が学内委員よりも必ず多くなければならないとした法改正も、大学運営に関して、大学構成員を軽視するものと言わざるを得ません。

 国立大学法人については、独立行政法人化から10年を迎え、大学運営交付金の額が当初よりも1割近く減少し、外部資金や競争的資金の獲得競争で大学間格差が拡大しています。また、大学の教職員は、評価書の作成等の膨大な事務作業に追われていると指摘されています。喫緊に取り組むべきは、学長の権限を高めるためのガバナンス改革ではなく、独法化以後の10年を検証し、大学間格差や教職員の多忙化の現状をどう解消していくかにあるのではないでしょうか。

 今回の法改正によって、権限を強められた学長が、目先の結果にとらわれ、利益のみを追求する企業や経営側が望む研究や教育分野に偏重することになれば、大学教育の多様性が失われ、結果として日本全体の学術研究のレベルを低下させることにつながりかねません。以上が、政府提出の2法案に反対する理由です。

 90年代半ばに、難問中の難問と言われたフェルマーの最終予想(※a^n+b^n=c^nでnが2より大きい自然数のとき、a、b、cは自然数解を持たない)を証明したアンドリュー・ワイルズ氏は数年にわたって秘密裏に研究を行い、その間、学会や国際会議にほとんど参加せず、論文も必要最小限しか発表しませんでした。その苦闘については『フェルマーの最終定理』(サイモン・シン著)に詳しく書かれていますが、こんな偉大な研究者は今回の改正でますます日本では生まれづらくなってしまいます。


2014年06月09日

「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」、6月6日衆議院文科委員会にて,一部修正のうえ可決。

衆議院TVインターネット審議中継 2014年6月6日 (金):文部科学委員会 (3時間16分)

自民党,民主党,公明党,みんなの党の4党による「共同修正案」が提出。この修正案が可決。

修正案
施行通知案

案件:
学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案(186国会閣80)

発言者一覧

説明・質疑者等(発言順): 開始時間 所要時間
 小渕優子(文部科学委員長)  9時 00分  01分
 笠浩史(民主党・無所属クラブ)  9時 00分  03分
 馳浩(自由民主党)  9時 03分  10分
 稲津久(公明党)  9時 13分  09分
 細野豪志(民主党・無所属クラブ)  9時 22分  20分
 鈴木望(日本維新の会)  9時 42分  19分
 柏倉祐司(みんなの党)  10時 01分  23分
 井出庸生(結いの党)  10時 24分  21分
 宮本岳志(日本共産党)  10時 45分  29分
 青木愛(生活の党)  11時 14分  18分
 吉川元(社会民主党・市民連合)  11時 32分  31分
 宮本岳志(日本共産党)  12時 03分  03分
 吉川元(社会民主党・市民連合)  12時 06分  04分
 笠浩史(民主党・無所属クラブ)  12時 10分  03分

答弁者等

議員(発言順):
 萩生田光一(自由民主党)
大臣等(建制順):
 下村博文(文部科学大臣 教育再生担当 東京オリンピック・パラリンピック担当)


東北大学職員組合、声明「学校教育法・国立大学法人法の一部改正案に反対します」

東北大学職員組合
 ∟●声明「学校教育法・国立大学法人法の一部改正案に反対します」

学校教育法・国立大学法人法の一部改正案に反対します

 私たち東北大学職員組合は、2014 年 4 月 25 日に閣議決定された「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律」案には、重大な問題点と危険性があると考えます。
 本法案は、「大学運営における学長のリーダーシップの確立等のガバナンス改革を促進する」ことを目的とし、教授会の審議事項を制限してこれを諮問機関化する等、学長の権限を著しく強化する内容となっています。
 教授会の役割については、学長が決定を行う際にもしくは学長の求めに応じて「意見を述べることができる」程度のものと位置づけられています。これは、これまで大学自治の主体としてその運営を担ってきた教授会の役割を著しく矮小化するものです。このことによって、教授会から教職員や研究科長・研究所長等の実質的人事権が完全に剥奪されることが想定され、到底受け入れられるものではありません。
 学長の選考方法については、学長選考会議が定める基準により行われるものとされ、大学構成員による意向投票は「あくまで参考」(中教審大学分科会・審議まとめ)という位置付けです。私たちは、民主的な選考プロセスを重視することが、創造的で円滑な大学運営にとって必要であると考えます。
 経営協議会の構成員については、学外委員を「過半数」とすることが明記されています。大学の運営・意思決定における学内構成員の意向を軽視するものであり、学長選考方法の問題と同様に、学内構成員が主体的に大学運営に関わることを排除しようとするものです。

 大学自治は、憲法に明記された学問の自由(第 23 条)を制度的に保障するものであり、大学の内部行政に関しては大学の自主的な決定に任せ、大学内の問題に外部勢力が干渉することを排除しようとするもので、伝統的に教授その他の研究者の組織(教授会ないし評議会)がこれを担い、学長・教授その他の研究者の人事の自治はその重要な内容とされています。
 教授会から人事権等を奪い、学長選考から構成員の意向を排除し、大学運営に学外者を多用する内容である本法案は、大学自治を実質的かつ完全に葬り去るものであると言わざるを得ません。学長および学長選考会議委員という極少数の者のみが学内行政の主体となり、それ以外の大学構成員を「被治者」としてしまう組織に「学問研究の自由」「研究成果発表の自由」「教授の自由」の守護者たることを期待することは到底不可能であり、これはもはや「大学の死」にほかなりません。

 2004 年の法人化以降、国立大学運営費交付金の削減が続き、本学においても各部局は恒常的な窮乏状態におかれていますが、一方で総長には権限が集中し、総長裁量経費も膨張しており、現在でさえ、各部局は総長に対してものが言えない状況に陥っています。極端なトップダウン体制は混乱と疲弊を激化させ、その皺寄せは現場の教職員と院生・学生に押し付けられます。研究教育においても大学運営においても、それぞれの組織と構成員が主体的に判断してこそ、大学は活性化し、学生主体の教育や自由な発想に基づく研究が展開されます。「大学運営における学長のリーダーシップ」はそれを支えるものであるべきです。
 私たち東北大学職員組合は、本法案に強く反対するとともに、大学が国民の共有財産であることを自覚し、東北大学が自主的に改革と研究の発展、教育の充実を進めていくために尽力することをあらためて表明します。

2014年6月6日

東北大学職員組合執行委員会

東海圏大学非常勤講師組合、学校教育法改正案に断固として反対します

東海圏大学非常勤講師組合

衆議院文教科学委員 各位

2014年5月17日
東海圏大学非常勤講師組合
執行委員会

学校教育法改正案に断固として反対します

 文部科学委員の皆さま。日頃より私たち国民のためにご尽力いただき、誠にありがとうございます。
 4月25日に「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」が閣議決定され国会に提出されたことをうかがいました。しかしながらこの改正には大きな疑問があります。それは、現行学校教育法93条の「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」という規定を破棄し、教授会を「学長が決定するに当たり」「意見を述べる」だけの機関に変質させるということです。
 教授会は、憲法第23条が定める「学問の自由」から導き出される「大学の自治」を担う機関として、これまで教育・研究に関する重要な事項についての審議・決定権を有してきました。しかし法案は、教授会を実質的な諮問機関とし、学長によるトップダウンの大学運営を確立しようとしています。また経営協議会の学外委員を「2分の1以上」から「過半数」とし、学内の意向を軽視した大学運営を行おうとしています。
 かつて教授会は、教員ばかりでなく職員、一部では学生の代表も参加し意思決定を行っていました。しかし今日では教員は非常勤講師や任期教員・技術員等に分断され、実質的な教員の多くが教授会から疎外され、学問の自由や大学の自治からは遠い存在となりました。大学職員も近年はこの傾向が強まり、教員・職員・学生ら大学関係者の多くが大学の運営から排除され、この傾向は急速に拡大しました。その悪しき集大成が今回の学校教育法改正案と推測されます。この法案が成立すれば、大学の教育・研究に関する意思決定から、ほぼすべての実質的大学関係者が締め出されるという、異常な状況が国家によって強制されるのです。これは、見逃すことのできない憂慮すべき事態です。
 1997年、第29回ユネスコ総会において「高等教育教員の地位に関する勧告」が採択されましたが、そのⅢ基本原則の8において「高等教育教員を代表する組織は、教育の発展に大いに貢献することができる力並びに第三者及び他の利害関係を有する者と共に高等教育政策の決定に関与すべき力としてみなされ及び認められるべきである」と明記されています。しかし日本では、ほとんどの利害関係者がこの改正によって学内行政から実質的に排除されるのです。日本国憲法98条2項では、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」とありますが、それに違反しても構わないというのでしょうか。
 私たちは、この法案の撤回を断固要求します。ユネスコの勧告はいわば確立された国際法規であり、それが主張するように、高等教育教員を代表する組織は、高等教育政策の決定に関与すべき力として認められなければなりません。
 教授会決定の実態の是非はともかく、話し合いと同意に基づく運営こそが民主主義の基本であり高等教育の理念です。憲法23条が内包する大学の自治がそれを意味することは、ユネスコの勧告が示す通りです。教授会の制限は民主主義の否定であり、強く反対し抗議します。多数の大学関係者による大学の自治・学問の自由を国家の干渉により一方的に制限し、特定の権力者の道具として利用するための法改正は、民主主義のいかなる手続き・正当性にも反するため、絶対に認めることはできません。

以上

「学校教育法の改正反対」 大分大でシンポジウム

大分合同新聞(2014年6月5日)

 衆議院で審議中の学校教育法の改正案に反対する大分大学教員の有志が4日、「高等教育に不可欠な学問の自由や大学の自治を奪いさる恐れがある」として、大分市の同大学付属図書館で問題を考えるシンポジウムを開いた。
 石井まこと経済学部教授(社会政策)らが呼び掛け、大学関係者ら52人が参加。経済学部の青野篤准教授(憲法学)が改正案について▽大学の教授会を審議決定機関から諮問機関に格下げする▽学長選考は選考会議に選考基準の策定権を与える―という内容を説明した。
 学長のリーダーシップを強めて大学改革を促すことなどが狙いとみられるが、青野准教授らが「教授会の弱体化が基本的な性格。大学運営は教職員らの意思によって、研究内容の決定などが自主的に行われることが国民の利益につながると国際的にも考え方が確立されている」と主張した。
 意見交換では「利益を生む研究や人材育成などを目指すのだろうが教育機関にその仕組みを持ち込めばひずみが生まれる」「学長が権力を乱用し始めたら歯止めがきかなくなる」などの意見が出た。
 最後に「大学『改革』の名のもとに高等教育の本質を崩壊させてしまう学校教育法改正案に反対の意思を強く表明する」とした声明を採択した。

2014年06月06日

サイト紹介、谷口教授を支援する会ブログ

■谷口教授を支援する会ブログ
http://taniguchishien.blog.fc2.com/

支援アピール

不当な教育支配を許さず、谷口教授の研究・教育への復帰を支援するアピール

 2011年来、「授業担当外し」「研究室からの締め出し」「業務命令で『漢字検定』を受検させる」「専門外の授業見学を命令する」など、名古屋女子大学・越原学園理事会は、同大教職員組合の副委員長である谷口教授に対する常軌を逸した嫌がらせをエスカレートさせてきました。
 そうした嫌がらせが「業務命令の濫用」であると名古屋地裁から指摘され、差し止め仮処分を命じられてもなお手を替え品を替えて嫌がらせを行うばかりか「教授から助手へ降格」そしてついに「解雇」の暴挙に出てきました。
 こうした越原学園理事会のなりふり構わぬ不当行為は、長年、名古屋の女子教育に携ってきた伝統ある名古屋女子大学の名を汚し、谷口教授のみならず、教育の場で働く人々、そしてそこで学ぶ人々全体に及ぶ問題であると考えます。私立学校経営者による恣意的かつ不当な教職員支配は、教育現場に働く人を萎縮させ、学校をゆがめ、教育をゆがめます。

 私たちは、越原学園理事会に対して
1.谷口教授を研究・教育の場に即刻復帰させること
2.教職員組合敵視の姿勢を改め、民主的な研究・教育・学びの場を築くこと

 この 2点を求めると共に、谷口教授を強く支援していきます。以上、アピールします

2012年10月26日
谷口教授を支援する会

支援アピール賛同依頼
支援アピール

支援アピールにご賛同いただける方は、
1.下の「アピール賛同書」をダウンロードして必要事項(お名前のフリガナもお願いします)をご記入のうえ、Faxで支援する会までお送りくださるか(Fax番号は「支援する会ニュース」に記載してあります)、
2.あるいは必要事項をメールにしてお送りください(アドレスは「支援する会ニュース」に記載してあります)。

アピール賛同書


6月4日衆院文部科学委員会、学校教育法と国立大学法人法の改定案について参考人質疑

しんぶん赤旗(2014年6月5日)

大学改悪法案 「学長の思い通りに」
衆院委 宮本氏質問に参考人

 衆院文部科学委員会は4日、学校教育法と国立大学法人法の改定案について参考人質疑を行いました。池内了名古屋大学名誉教授が「教授会をおとなしくさせ、学長の思い通りに運営できる条件を整える意図がある」と法案の狙いを指摘。日本共産党の宮本岳志議員が質問しました。

 意見陳述で、池内氏は、今回の法案で大学運営に関する教授会の関与を縮小すれば「教員はバラバラになり、大学一体で教育や研究、地域貢献する情熱を失う危険性が高い」と懸念を表明。教員や職員、学生、院生など大学を構成するすべての人が立場に応じた責任範囲で、大学の自治を担うことがやりがいをつくると訴えました。

 教授会の役割に関わる法案の規定について、「学長が求めなければ意見を述べることができなくなる」と指摘。多様な意見を排除することで学長の権限を強めるようでは、「大学の自治、学問の自由が守られるか心配だ」と述べました。

 宮本氏は、法案の背景にある大企業・財界の要望について質問。池内氏は、大学が専門学校化しているとし、「つくるべき人材を忘れ、手っ取り早く使える人間をつくる。これでは学問が死に絶える」と述べました。

 また、宮本氏が「本当に国際的に通用する大学には何が必要か」と尋ねたのに対し、池内氏は返還不要な奨学金などをあげ、「力が発揮できる条件が整えば、人が集まる」「アルバイトが必要な学生をつくるべきではない」と語りました。


名古屋女子大組合委員長不当解雇事件、次回口頭弁論は6月26日 裁判傍聴のお願い

谷口教授を支援する会ブログ
 ∟●谷口教授を支援する会ニュース 第22号(2014年6月5日)

裁判傍聴のお願い

 前回もお知らせいたしましたが、次回裁判日程(口頭弁論)は6月26日(木)午後2時から4時まで、名古屋地方裁判所1103法廷で行われます。これまで11回にわたる「弁論準備」で、双方が争点に関して主張をしてきましたが、次回の口頭弁論で人証尋問が行われ、もし最終弁論がなければそのまま結審になる予定です。 2012年9月の提訴から2年近い時間がかかりましたが、裁判もいよいよ大詰めを迎えています。
 その人証尋問ですが、学園側は誰も証人を立てなかったので、谷口教授に対する本人尋問だけが行われます。解雇にいたるまでの無形の損害(精神的苦痛)について、谷口教授側代理人による主尋問のために60分、学園側代理人による反対尋問のために30分か予定されています。
 当日は授業期間中の平日ということで、ご都合のつかない方が多いかとは存じますが、1人でも多くの方の傍聴をお願いいたします。口頭弁論は原則として法定内の出入りが自由ですので、開始時刻にまにあわない方、あるいは途中までしかいられない方でも傍聴が可能です。
 傍聴にご足労いただける方は、開始10分前までに名古屋地裁1階エレベーター前にお越しくだされば、1103法廷までご案内いたします。

支援する会ブログ開設のお知らせ
 谷口教授を支援する会では、長年の検討謀題であったインターネットでの情報公開を実現するために、ブログ (http://taniguchishien.blog.fc2.com/)を開設いたしました。最新情報の他に、支援アピール、マスコミ報道リンク、関連ニュースを掲載しております。過去に発行した「支援する会ニュース」のバックナンバーもダウンロード可能なように揃えております。またTwitterやFacebookとも連携しております。
 つきましてはブログをご利用くださいますよう、また周囲の方々にも拡散くださいますよう,お願い申し上げます。


京滋私大教連、緊急声明「憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に向けた検討を行なうことに断固抗議する」

京滋私大教連
 ∟●緊急声明「憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に向けた検討を行なうことに断固抗議する」

<緊急声明>
憲法解釈の変更による集団的自衛権の
行使容認に向けた検討を行なうことに断固抗議する

2014 年 5 月 30 日
京滋地区私立大学教職員組合


 5 月 15 日、安倍首相は自らの私的諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が提出した集団的自衛権の行使を容認する報告書を受けて、憲法解釈の変更を検討する考えを表明しました。
 集団的自衛権とは、自国が直接の武力攻撃を受けていなくても、緊密な関係にある他国が武力攻撃を受けた際、実力をもって阻止する権利のことですが、憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使容認をすることは、「海外での武力行使」を不可能としてきた憲法上の「歯止め」を取り払う極めて重大な問題です。
 現在憲法の第 9 条では、一切の戦力不保持を明確に規定していますが、歴代の政府は「自衛」のための「必要最小限度」の実力(自衛隊)を持つことは、憲法違反ではないとの考え方を取る一方、「集団的自衛権」の行使については、「憲法上、許されない」との立場を一貫して取ってきました。
 それは、これまでの政府見解で「集団的自衛権は権能としては保有しているが、それを行使することは『自衛のための必要最小限の範囲』を超えるものであって、憲法上許されない」(1981 年 5 月 29日政府答弁書)としている通り、「集団的自衛権」の行使は、憲法上認められないとの立場を堅持してきたのです。このような歴史的経緯の中で積み重ねられてきた憲法解釈を、一内閣の判断で性急に変更することなど到底認められるものではありません。
 安倍首相は、憲法 9 条の「改正」が難しいとみると、第 96 条の憲法改正手続きの「改正」を目論んだものの、それも難しいと考える中で今度は憲法解釈の変更という手段を持ち出しました。そして、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に対しても批判が高まる中で、それらの批判をかわすために「集団的自衛権の行使といっても、放置すれば日本の安全に重大な影響を及ぼす場合などに限定して行使する」とする「限定容認」論を持ち出しています。しかし、「日本の安全に重大な影響を及ぼす場合」を判断するのは時の政権であって、このようなまやかしの「限定容認」論を持ち出すこと自体、首相としての資質が問われる重大な問題です。
 このような安倍内閣の政治姿勢は、中国、韓国といった近隣諸国との関係を悪化させており、大学にも深刻な影響を及ぼしています。日本政府は、2020 年までに外国人留学生数と日本人の海外留学者数を倍増させる方針を打ち出していますが、日中関係、日韓関係の悪化によって、中国・韓国からの留学生が減少するとともに、日本人の学生も中国・韓国への留学を回避する動きが強まっています。
 そのため、ある大学では毎年実施されていた中国人学生との現地での交流プログラムに日本人学生の希望者が集まらず、プログラムの実施が取り止めになるなど、大学での学びにも重大な支障が生じる事態となっています。今、重要なことは近隣諸国との緊張関係を増幅させる主張や姿勢を強めることではなく、近隣諸国との相互信頼と共存関係の構築、日本国憲法の平和主義にもとづく主張と外交政策を考えていくことです。
 現行憲法の前文では、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」と規定されており、大学は、かつて積極的に学生を戦地に送り出していた痛苦の過去を反省し、「二度と学生を戦地に送り出さない。学生は二度とペンを銃に持ちかえない」という反戦・平和の誓いの下、日本社会の平和と民主主義の発展に寄与してきました。
 現行憲法の理念の下で育まれてきた平和と民主主義の礎を覆し、主権者である国民の意向を無視して、自らの判断で戦争行為に踏み出そうとする安倍内閣に強く抗議するとともに、私たちは日本社会の理性と良識を結集し、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認を許さない国民的な合意を形成していく取り組みを呼びかけるものです。

入学金、廃止します。 印西の東京基督教大 受験生の声反映

東京新聞(2014年6月5日)

 東京基督教大学(印西市)は三日、二〇一五年度から入学金を廃止すると発表した。初年度の学費負担が大きいという受験生の声を反映した。同大によると、首都圏では嘉悦大学(東京・小平市)が入学金を廃止しているが、全国的に珍しいという。
 廃止するのは、入学金二十六万円と入寮費十一万円の計三十七万円。初年度の授業料など必要な学費は九十五万円になる。
 ただ、新入生は授業料や施設費が値上げされるため、卒業までの四年間に必要な学費はほぼ同じになる。
 広報担当者は「初年度の学費が高いため、受験を諦めた人もいる。海外の大学では入学金そのものがないため、グローバル化への対応の一つ」と話している。
 同大は全寮制で、神学部(定員百六十人)のみの単科大学。学生は全員クリスチャンで、四人に一人が留学生という。受験の筆記試験には聖書の科目がある。 (三輪喜人)

2014年06月05日

高知大学教職員組合、未払い賃金請求訴訟第4回口頭弁論のご報告

高知大学教職員組合
 ∟●未払い賃金請求訴訟第4回口頭弁論のご報告

未払い賃金請求訴訟第4回口頭弁論のご報告

ご報告が遅れましたが5月23日(金)13:30から高知裁判所において未払い賃金請求訴訟第4回口頭弁論が開かれ、原告団7名を含む28名が傍聴に参加してくださいました。

4月から裁判官が代わったこともあり、原崎原告団長が改めて意見陳述を行いました。
「tinjyutu2014.5.23.pdf」をダウンロード
弁護士会館に場所を移しての報告会には21名に参加いただき、全大教中執からの全国情勢の報告や今後裁判を進めていくうえでの準備作業の確認を行いました。
次回口頭弁論は8月22日(金)13:30からです。
引き続きご支援をよろしくお願いします。


「論文盗用され自殺」と賠償提訴 教授の遺族、滋賀大などを

日経新聞(2014/6/4)

 滋賀大教育学部の元教授=諭旨解雇=に研究論文を盗用されたことが原因で自殺に追い込まれたとして、教育学部の女性教授の遺族が、元教授と大学に計約1億円の損害賠償を求める訴訟を京都地裁に起こしたことが4日、分かった。提訴は4月24日付。

 訴状によると、元教授は2009年ごろ、女性教授が出した論文を無断で複製して別の論文を発表。滋賀大の調査に「女性教授の同意があった」と虚偽の説明をした。女性教授は不正への対応に追われ、自律神経失調症を発症し、12年9月に自殺した。

 滋賀大は、女性教授の申し立てを受けて11年7月に調査委員会を設置。12年2月に改ざんや盗用があったとする調査結果を発表したが、遺族側は「元教授の不正行為で心理的負荷が発生していると知りながら、適切な対応を取らなかった」と主張している。

 滋賀大は「弁護士と対応を協議中」、元教授の代理人弁護士は「詳細は今後検討する」とコメントした。〔共同〕

滋賀大:論文盗用され自殺と大学など提訴 女性教授の遺族

毎日新聞(2014年06月04日)

 滋賀大教育学部の男性元教授=諭旨解雇=に研究論文を盗用され、大学の対応も不十分だったために自殺に追い込まれたとして、教育学部の女性教授(当時51歳)の遺族が元教授と大学に計約1億円の損害賠償を求める訴訟を京都地裁に起こしたことが分かった。提訴は4月24日付。

 訴状によると、元教授は2009年2月、女性教授が発表した論文を無断で複製して別の論文として公表。女性教授の申し立てを受け、大学側が調査委員会を設置した。当初、元教授は調査委に「女性教授の同意があった」と主張し、大学側も「元教授がうそをつくはずがない」などとしていた。最終的に大学は12年2月、元教授の盗用を認定する調査結果を発表し、同年5月に元教授を諭旨解雇処分にした。

 女性教授は長期にわたる心理的負担から自律神経失調症を発症し、同年9月に自殺した。自殺前の約1年半は問題の対応に追われ、1日の睡眠時間が3時間前後だったという。遺族側は「心理的負荷がかかる出来事が複数発生しているのに対応が取られず、心理的疲弊に追い込まれた」と訴えている。

 滋賀大広報室は「弁護士と対応を協議中」、元教授の代理人は「対応は今後検討する」としている。【村田拓也】

[同ニュース]
■女性教授自殺で提訴「論文盗用され対応不十分」
http://www.yomiuri.co.jp/national/20140604-OYT1T50097.html
■「論文盗用で自殺」滋賀大と元教授提訴 共同研究者の遺族
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20140604000076

2014年06月04日

「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」、国会審議情報 6月4日(水)の審議日程

■日本私大教連書記局、学校教育法等の改悪反対!メールニュース No.14(2014.6.2)

国会審議情報―6月4日(水)の審議日程が確定しました。

【参考人質疑】
9時~9時30分 参考人の意見陳述(各10分)
・平野 俊夫(国立大学法人大阪大学総長)
・田中 愛治(早稲田大学理事、早稲田大学政治経済学術院教授)
・池内 了 (名古屋大学名誉教授)


【参考人に対する質疑】参考人に対する質疑
神山佐市(自民) 9:30~ 9:45
菊田真紀子(民主) 9:45~10:00
三宅 博(維新) 10:00~10:15
稲津 久(公明) 10:15~10:30
柏倉祐司(みんな) 10:30~10:45
井出庸生(結い) 10:45~11:00
宮本岳志(共産) 11:00~11:15
青木 愛(生活) 11:15~11:30
吉川 元(社民) 11:30~11:45

【質疑】
宮内秀樹(自民) 13:00~13:20
中野洋昌(公明) 13:20~13:40
細野豪志(民主) 13:40~14:15
鈴木 望(維新) 14:15~14:50
柏倉祐司(みんな) 14:50~15:05
青木 愛(生活) 15:05~15:35
吉川 元(社民) 15:35~16:00


九州私大教連、教授会自治を否定する学校教育法改悪に反対します

■九州私大教連

教授会自治を否定する学校教育法改悪に反対します

2014年5月27日
九州私大教連執行委員会

1.政府・文部省は、産業競争力強化のために「大学のガバナンス改革を推進する」として、「大学の自治」の中心的な担い手である教授会機能を制限する学校教育法改正案を国会提出しました。しかし以下に見るように、この学校教育法改正法案は、日本国憲法が保障する「学問の自由」とこれを担保する「大学の自治」を根底から突き崩すものであるため、私たちは、これを絶対に容認することができません。

2.現在の学校教育法第93条は、「大学の自治」の保障のために、国公私立の別なく「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」と規定しています。改正法案は、この学校教育法第 93条を全面的に書き換えています。すなわち、教授会は、「重要な事項審議する」のではなく、学生の入学・卒業及び課程の修了、学位授与について意見を述べることができ、上記以外の教育課程の編成や教員人事などの重要事項は、原則意見を述べることできるだけの諮問機関となっています。
 歴史的に、大学は学問の中心として、時の様々な権力から独立して、学問研究と高等教育を行うための自治権を保障されてきました。これは、大学の自治の欠如が、学問の発展に決してつながらず、結局のところ、国民全体が学問の自由と高等教育を受ける権利を享受できなくなってしまうからにほかなりません。このことは、わが国の歴史的経験に照らして明らかです。学校教育法が大学に重要な事項を審議するために教授会を置くと定めているのは、日本国憲法が保障する学問の自由、またこれを担保する大学の自治を法律上確認し、このことを通じて学問の発展を制度的に支え、期待するものだといえます。また、このような大学の自治は国際的にも大学制度の基礎として認められてきました。
 ところが今回の改正法案は、歴史的に積み上げられてきた教授会の自治を踏みにじり、学問の自由を保障する大学自治の原則、戦後わが国の大学が営々と築き上げてきた成果や経験を否定し、大学を権力の支配下に置こうとしています。このことが学問・研究・教育の発展を促進するどころか、逆に衰退につながるのは明らかです。

3.今回の改正法案は、教授会権限を制限することで、学長権限を相対的に強化すし、「学長のリーダーシップ」で大学改革が進むこと期待しています。しかし、学長のリーダーシップは本来、外在的に付与されるものではなく、大学構成員の教育・研究を基盤とし、かつ大学構成員からの自発的同意に支持されて成り立ち、その場合にだけ有効に作用するものです。大学の目的と組織原理は、利潤最大化を目的とする企業の組織原理とは決定的に異なります。この理解を欠いた「学長のリーダーシップ」は大学にとっては学長専権体制の別名でしかありません。
このことは、とりわけ私立大学にとっては死活的に重大な問題を生起させることになります。わが国の私立大学は、国公立大学に比して極めて乏しい国庫補助のもとで、学生・保護者の切実な高等教育要求に応えて、学校数の 80%、学生数の 75%を占めるほどに発展を遂げてきました。しかしながら、一部の私立大学では、理事会による教授会を無視した専断的な運営が行われ、そのことに起因する不祥事が後を絶ちません。このような私立大学では学長の権限強化は理事長・理事会の権限強化につながらざるをえません。2013年 3月に文部科学大臣の解散命令を受けた群馬県の学校法人では、理事長・学長に権限を集中させて教授会を無視した専断的な大学運営・学校法人運営を続けてきたことにより、社会的信頼を失墜させ経営破たんに至ったことが明らかになっています。
私立大学における教育・研究の質を向上させるためには、教授会自治を尊重した民主的な大学運営の確立が不可欠です。教授会の権限を縮小させる学校教育法改正法案は、私立大学の専断的運営にいっそう拍車をかけ、私立大学の教育・研究の発展を阻害するものにほかなりません。

4.大学は「学術の中心」として「高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造」(教育基本法第7条)すること、「広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究」(学校教育法第 83 条)することを通じて、社会全体の発展、人類の福祉に寄与するという社会的使命を果たすことが求められています。こうした役割を十分に発揮するために、教育基本法第 7条2項は「大学については、自主性、自律性その他の大学における教育及び研究の特性が尊重されなければならない」と定めています。私たちは、この規程を尊重し、学校教育法改正法案は廃案すべきと考えます。


2014年06月03日

愛知学院大学教職員組合、大学の自治を破壊する学校教育法改悪に反対する声明

■愛知学院大学教職員組合

大学の自治を破壊する学校教育法改悪に反対する声明

 4月25日、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。学校教育法改正案は、私大教連が危惧した通り、93条を改悪し、教授会を事実上諮問機関化し、理事長・学長の専断体制を確立する内容です。
 この改悪案は、産業界の意向を反映したものであり、産業界における一部経営者によるトップダウン方式が教育・研究にも有効であるという認識に立ったものであるといえるでしょう。しかしながら、教育・研究という営みは、金銭的利潤の追求という単純な目的を持つ産業界における経営活動とは全く異なります。それは金銭を遙かに超えた、複雑かつ多様な価値を生み出す営みであり、そこには産業界の経営方式は通用しません。
 教育・研究という営みは、完成形や正解のないものであり、常に前段階の成果を検証しつつ、ときにはそれを否定して積み上げられていくものです。当然ながら、その営みは一部の者の考えや方法によって規制されるべきものではありませんし、また、そのような規制があれば潰えてしまうものです。従って、特定の価値観や意向をもつ経営者が、こうした常に変化する営みを専制的に運営し続けることは論理的に不可能であり、こうした強引な運営の結果生まれるものは、バイアスのかかった限定的な成果でしかないでしょう。こうした成果は、本来の教育・研究の成果と呼べるものではありません。
 つまり、今回の改悪による大学運営案は原理的に誤っているわけであり、教育・研究の「改革」をうたいながら、その実、それを「破壊」するものとなっていると言わざるを得ません。もし、政府が本当に力強く発展する日本を目指すのであれば、それは、教育・研究をゆがめるのではなく、自由に発展させることによってこそ実現できるものです。今回の改悪がなされれば、この自由という観点から、教育・研究にとって看過できない次のような具体的問題が生じます。
 第1に、教授会は、学生の入学・卒業について「意見を述べる」だけとなり、教員人事、カリキュラム編成などに関われなくなります。これまでの学内民主化の到達点が掘り崩され、教員人事権、カリキュラム編成権などが剥奪されます。教授会は、諮問機関となります。
 第2に、私立大学民主化の法的拠り所がなくなります。理事長が学長を兼ね、理事長・学長の専断体制となっている私立大学においては、学内民主化の法的拠り所がなくなります。
 第3に、教員の人事に関わり、いざ訴訟となった時の法的拠り所がなくなります。
 第4に、学生や事務職員の意見や声も届かなくなることです。教授会が諮問機関にされた大学では、学長による上意下達の強権的な大学運営となり、学生や事務職員の意見が反映されることは考えられません。
 以上の理由から、政府が、国会において徹底した審議を行い、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」を廃案とするよう強く求めます。

2014年5月29日
愛知学院大学教職員組合執行委員長
河野敏宏

東海地区私大教連、大学の自治を破壊する学校教育法改悪に反対する声明

東海地区私立大学教職員組合連
 ∟●未掲載

大学の自治を破壊する学校教育法改悪に反対する声明

 4月25日、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。学校教育法改正案は、私大教連が危惧した通り、93条を改悪し、教授会を事実上諮問機関化し、理事長・学長の専断体制を確立する内容です。
 教学権が確立している私立大学では、憲法23条を活かし、旧国立大学教員における旧教育公務員特例法(旧教育公務員特例法4条、5条、6条)の規定を準用する形で教員の身分を教授会の審議事項として保障してきました。また、カリキュラム編成権も保障してきました。この到達は、もちろん教職員組合の長年の民主化闘争の反映もあります。
 しかし、学校教育法が改悪されれば、私たちにとって看過できない問題が生じます。第1に、教授会は、学生の入学・卒業について「意見を述べる」だけとなり、教員人事、カリキュラム編成などに関われなくなります。これまでの学内民主化の到達点が掘り崩され、教員人事権、カリキュラム編成権などが剥奪されます。教授会は、諮問機関となります。
 第2に、私立大学民主化の法的拠り所がなくなります。理事長が学長を兼ね、理事長・学長の専断体制となっている私立大学においては、学内民主化の法的拠り所がなくなります。
 第3に、教員の人事に関わり、いざ訴訟となった時の法的拠り所がなくなります。 
 第4に、学生や事務職員の意見や声も届かなくなることです。教授会が諮問機関にされた大学では、学長による上意下達の強権的な大学運営となり、学生や事務職員の意見が反映されることは考えられません。
 私たちは、政府が、国会において徹底した審議を行い、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」を廃案とするよう強く求めるものです。

以上

2014年5月29日
東海地区私立大学教職員組合連合執行委員会

北海道大学教職員組合、声明「学校教育法及び国立大学法人法の改悪に反対する」

北海道大学教職員組合
 ∟●学校教育法及び国立大学法人法の改悪に反対する

学校教育法及び国立大学法人法の改悪に反対する


現在開催中の第 186 回国会に、去る 4 月 25 日「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」(内閣提出法案第 80 号。以下、改正案と称する)が提出され、現在審議中である。同改正案は、次の各点で現行の学校教育法及び国立大学法人法の改悪に当たると我々は判断する。すなわち、
 1.改正案は、現行の学校教育法第 93 条の改正として、学長の権限を大幅に強化する一方、教授会の権限を大幅に縮小しようとしている。この改正は、憲法第 23 条で保障されている学問の自由を実質あるものとするために不可欠なものである、大学の自治を、大幅に損ないかねない。
 2.改正案は、「学長選考会議が定める基準」という表現を使用して、学長選考に関する基準は学長選考会議が定めるのだと明文化することによって、学長選考に関して現在多くの大学で行なわれている意向投票等の民主的な慣行は学長選考において無視されてよい、ということへの法的な裏づけを与えようとするものであり、大学の自治との関連で重要な、大学における民主的な雰囲気を大きく損なうものである。
 3.改正案は、国立大学法人法第 20 条に従って設置されている経営評議会の委員の過半数が当該国立大学法人の役職員以外の者でなければならないとしており、大学経営における大学関係者・当事者の意向にそぐわない経営に道を開きかねない。
 そもそも今回の改正案は、具体的にどのような事情から法改正が必要とされるかという点(いわゆる立法事実)が学問的分析に基づいて明確にされることのないまま、もっぱら産業界からの要請・圧力に従った形で出てきており、科学性を欠いている。北海道大学の現状に照らしても、今回の改正が必要だとは考えられない。企業と同様にトップダウン方式の経営体制を強めることが、果たして大学という、本来的に多様な関心に基づいてそれぞれの部門が多様な動きを示すべき組織体にとって、適合的かどうかは、極めて不確かである。多くの場合、大学は、営利を旨とする企業が担えないことをこそ担うのが自らの使命であり、その場合、その組織原理が企業の組織原理と異ならざるをえないのは自明だからである。企業と異なるものである大学のあり方を真摯に考えた結果だとは到底言いがたい今回の改正案が、法律となって実施されることは、将来の日本社会に対して多大な禍根を残す可能性が否定できない。
 以上に鑑みて、我々は今回の改正案に反対する。

2014年5月28日
北海道大学教職員組合執行委員会

大学あり方考える、若手研究者シンポ

しんぶん赤旗(2014年6月2日)

 国会で審議中の学校教育法・国立大学法人法改悪案の問題点と大学改革のゆくえを考えるシンポジウム「これからの大学を考える」が5月31日、東京都内で開かれ、若手研究者・大学院生、市民120人が参加しました。主催は若手大学研究者らでつくる実行委員会など。

 同法改悪案の背景と問題点を報告した大河内泰樹一橋大学准教授は、大学改革と安倍政権の経済政策、財界の要請との強い関連性を指摘し、批判。「これを機に大学の自治、学問の自由とは何かをはじめ、民主主義社会を構成する市民を形成する場としての大学のあり方を考えることも必要」と語りました。

 國分功一郎高崎経済大学准教授と白井聡文化学園大学助教が対談。白井氏は「本当の知性の探求と大学が分離し始めている」とのべ、國分氏は「ガバナンス改革」が大学に押し付けられているとして「ガバナンスは本来、民主主義的な手続きがあったほうが効率よく進められる」と話しました。

 参加者からは「大学改革にあたっては、そもそもの大学の存在意義を考えるべきではないか」などの意見が出されました。


2014年06月02日

全国大学院生協議会、声明「学校教育法の改定案および国立大学法人法の改正案の廃案を要求する」

全国大学院生協議会
 ∟●まだネット上で未掲載

〈声明〉学校教育法の改定案および国立大学法人法の改正案の廃案を要求する


2014 年 5 月 31 日 全国大学院生協議会事務局


 安倍内閣は 4 月 25 日、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」を閣議決定し、国会に提出しました。法案は、現行学校教育法第 93 条の「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」という規定を破棄し、教授会を「学長が決定するにあたり」「意見を述べる」だけの諮問機関に変質させるものです。加えて、「意見を述べる事項」を「学生の入学、卒業及び課程の修了」と「学位の授与」に限定し、その他、教育研究費の配分、教員の業績評価・教員採用などの人事、学部長の選任、カリキュラムの編成や学部・学科の設置・廃止などについては、「教育研究に関する重要事項で、学長が教授会の意見を聴く必要があると認めるもの」として学長の裁量に一切を委ね、大学の教育・研究活動における教授会の役割を根底から覆そうとしています。

 国立大学法人法改定案では、学長決定権の全てをごく少数の者からなる学長選考会議に与えようとしています。かつての国立大学における学長選挙が改廃され、意向投票制度としてのみ残された現行の学長選考に対する大学構成員の権限が、学長選考に関する第 12 条7 項に「学長選考会議が定める基準により」という文言が付加されることでさらに縮小・消滅する方向へ改定されようとしています。さらに、第 20 条 3 項の「国立大学法人の経営に関する重要事項を審議する機関」たる経営協議会の委員における学外者の数が、現行の「二分の一以上」から「過半数」に変更されようとしています。これは「経営に関する重要事項」について、その帰趨を学外者に委ねるものです。

 本法案は教員集団の専門性と民主制を尊重し、真理の探究と社会の発展に寄与すべき大学の本来的なあり方を否定するものです。大学の教育・研究は、真理探究に向かう関心・熱意と研究・教育対象それ自身が提起する内発的課題に取り組む大学構成員の総体として成立します。したがって、教職員の信頼と活力を欠いたままでは、学長は真のリーダーシップを発揮することはできません。

 わが国においては戦後、憲法第 23 条に規定された「学問の自由」のもとで「大学の自治」を保障するために、学校教育法第 93 条の教授会規定が設けられました。大学の自治は、「大学の学長は教授そのほかの研究者が大学の自主的判断に基づいて選任される」ことを含むと最高裁によって判示されています。全院協は、教授自治はもちろんのこと、大学自治が教授自治のみならず、大学院生を含む全構成員自治の理想を追求すべきだと考えます。

 全院協は、法案に断固反対し、法案がもつ危険性、すなわち真理を学び・研究する権利を侵害すること、そして日本における私たち次世代の研究者・教育者育成に深刻な影響を与えるという危険性、を広く国民と共有し、国会審議を通じてこの法案を廃案にさせるために運動します。その過程において、大学の自治が全構成員自治の理想を追求すべきであること、学問の自由を守るためには大学自治を根幹とする大学制度が必要であることについて、改めて大学の内外で広く議論を深めるとともに、大学が国民の共有の財産であることを自覚し、そのために力を尽くすことをあわせて宣言します。


札幌学院大学教職員有志、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の廃案を求める声明

全国国公私立大学の事件情報
 ∟●札幌学院大学教職員有志声明

学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」の廃案を求める声明

札幌学院大学教職員有志
共同代表  経済学部教授 片山一義
同上    法学部教授 家田愛子
   同上    法学部教授 神谷章生
同上 社会情報学部教授 小内純子

 現在,「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」が国会に提出され,審議が進められている。私たち札幌学院大学教員有志は,本改正案が以下に述べる理由により,憲法が保障する「学問の自由」「大学の自治」を破壊するものと考え,廃案を求める。
 教育基本法改正案は,①92条4項で副学長の役割に,学長の「命を受け、校務をつかさどる」を追加したこと,②93条において,教授会を「必置」から単に「置く」にとどめ(同1項),教授会の役割を「重要な事項を審議する」から「学長が」「決定を行うに当たり意見を述べる」に変更する。そして意見を述べる「事項」については「一 学生の入学、卒業及び課程の修了 二 学位の授与 三 教育研究に関する重要な事項で、学長が教授会の意見を聴くことが必要であると認めるもの」の三項目に限定した(同2項)。
 これまで,わが国においては,国家権力及び私的経営者による「金銭の支配力」への対抗手段として「学問の自由」が憲法によって規定され,それを制度的に保障するものとして①設置者(学校法人の理事会などの機関)の解雇権からの自由,②研究・教育事項(何をいかなる方法で,どのように教えるかなど教育研究内容)に関する自主決定権(設置者・雇主の業務命令,職務命令からの自由),③大学,研究機関の財政自治権という3つ権利内容が重視された。すなわち「大学の自治」,その中心となる教授会自治の保障がそれである。現行学校教育法93条が,大学において教授会を必置機関とし,「重要な事項」を審議すべきと定めた理由もそこにある。そして,「重要な事項」の中には,当然ながら上記「学問の自由」を制度的に保障する教員の人事権,教育研究全般に関わる学校経営事項,予算の審議等の事項が含まれると解釈され,その結果,実際多くの大学でも,人事権を含むこの種の「重要」な事項が教授会審議事項と定められ,運用されてきた。
 今国会提出の学校教育法改正案は,教授会を「必置」機関から外し,単なる意見聴取機関に変容させるもので,学長の独断決定を可能とする大学運営の改変を狙いとする。このようなユネスコ「高等教育の教育職員の地位に関する勧告」にも反するような,教授会自治の破壊,「学問の自由」を完全否定する上記法案に対して,われわれは廃案を強く求めるものである。

2014年5月31日


日本科学者会議、声明「学校教育法等の「改正」に反対し、科学・技術の健全な発展と、大学の自治を保障する政策への転換を求める」

日本科学者会議
 ∟●学校教育法等の「改正」に反対し、科学・技術の健全な発展と、大学の自治を保障する政策への転換を求める

学校教育法等の「改正」に反対し、科学・技術の健全な発展と、
大学の自治を保障する政策への転換を求める


 日本の大学や研究機関は、1990 年代後半から政府・文部科学省が進めてきた高等教育政策・科学技術政策による資金の選択的重点投下によって、大きな格差とゆがみが生まれている。国立大学と国立研究機関は法人化によって、財政基盤はますます窮乏化している。私立大学においても、私立学校振興費の削減により教育・研究のみならず経営の継続が大きな困難に直面している。公立大学も、設置自治体における政争の具にされるなど、その教育研究基盤が危機にさらされている。

 設置形態を問わず、教員・研究者は過度の競争的環境に追い込まれ、外部資金や科研費等の競争的資金の獲得、外部および内部の評価、評価に対応した組織改編などの業務に忙殺され、教育・研究に必要な時間を確保できず、学生の教育や次代を担う若手研究者の養成に支障をきたしている。

 大学は、直ちに成果につながり、企業の要求に合致するような研究と人材供給に重点が置かれるようになってしまった。本来大学とは、すぐに成果につながらないような基礎的研究や、長期観測等を伴う研究をも継続できる機関である。そのために分野によって著しく異なる教育・研究の方法を十分把握して、実態に合わせた評価と組織運営が必要である。にもかかわらず、短期的成果だけを重視した画一的評価・運営が行われている。

 特に過酷な状況にあるのが若手研究者である。任期付きの不安定な雇用条件のもとで、多くは使い捨ての状態に置かれており、生活にも困難をきたし、長期的展望を持った研究や、独創的な研究を行うことが不可能な状況に追い込まれている。学部学生にとっても、受益者負担主義による世界最高水準の学費と給付奨学金制度の不在が、就学の重い負担となっている。

 研究の世界に過度の競争を持ち込み、研究者および研究機関を異常な業績主義に追い込んでいる現状は科学・技術の健全な発達とは相容れない状況であり、研究の世界に不正を持ち込む原因を作り出している。

 開会中の第 186 通常国会に提出された学校教育法及び国立大学法人法の「改正」法案は、教授会を諮問機関化し、教授会から人事権を剥奪し、学長の選任についても大学構成員の意見を排除しようとするものである。日本国憲法が定める「学問の自由」を保障するための「大学の自治」の根幹にかかわる重大な改悪である。政治権力による大学自治・大学運営への重大な介入で、決して許すことのできないものである。

 このような事態は、学術の総合的発展に大きな障害を招き、これまで培ってきた我が国の学術と教育の体制が根こそぎ破壊される恐れがある。大学・研究機関の外からのトップダウン的な「改革」の強行は、高等教育および学術研究体制を、壊滅的な状況に追いやることになろう。

 現在のような学術研究体制の悲惨な状況から抜け出すためには、基盤的経費の増額による財政的基盤の大幅な強化、人員制限の柔軟化などによる研究環境の向上、学術研究の本質を生かす方向への評価システムの改善、教育・研究における過度の競争の是正など、科学・技策を大きく転換する必要がある。日本科学者会議は、その実現を強く求めて行動する。

2014年5月25日
日本科学者会議第45回定期大会

2014年06月01日

徳島大学教職員労働組合、「大学から活力とイノベーティブな精神を奪う学校教育法改正に反対する声明」

徳島大学教職員労働組合

大学から活力とイノベーティブな精神を奪う学校教育法改正に反対する声明

 去る4 月25 日、政府は学校教育法並びに国立大学法人法改正案を閣議決定し、国会に提出しました。学校教育法改正のポイントは、大学運営に対する学長トップダウン体制を確立するため、教授会の審議事項を制限して学長の諮問機関化する点にあります。また、国立大学法人法改正のポイントは、学長選考会議に学長選考基準策定権を与える点、経営協議会の学外委員を「過半数」とすることで、学内構成員の意向を軽視した大学運営を行いやすくする点にあります。いずれの改正案も、研究教育に対する現場の教職員の意見を排除し、政府-学長による強権的な独裁体制に教職員を隷従させ、政府の意向に沿った教育と研究を強要することを目的としていると言わざるを得ません。

 政府が目指す「大学改革」のキーワードは「グローバル人材育成」と「イノベーション」です。これらは一見するとよいことのようですが、要するに「グローバル人材育成」とはグローバル企業の即戦力となる人材の育成であり、「イノベーション」とは、iPS 細胞など政府が重要だと考える分野での産業応用のための技術開発ということです。こうした狭い見地に縛られれば、大学における研究教育は多様性を失い衰退を余儀なくされることは間違いありませんが、そうした反対意見を封じることが結局のところ今回の法改正の目的ではないかと思われるのです。

 現在、大学では政府に言われるまでもなく、よりよい市民を育成し、科学研究を推進させるために真摯な取り組みを行っています。「グローバル化への対応」や「学問上のイノベーション」も取り組み課題の一つです。もちろんそうした取り組みに対して否定的な態度を取る教職員もおりますが、それは批判的精神の現れであり、さらには合意形成がまだ不十分であることを意味します。

 今回の改正案は、大学の自治を奪うことで、自主的自発的に真摯な努力を惜しまず働いている大学人を、「言われたことだけをする立場」に貶め、大学人から研究教育に対する主体的な取り組みへのモチベーションを奪うものです。その結果、大学の研究教育機能は大幅に低下し、政府が目指すグローバル化への対応もできず、イノベーションも起こせない大学になってしまうことが予想されます。

 学問におけるイノベーションは従来学説への批判から起こります。つまりそれは、「政府の命令に服従する姿勢」とは正反対の、批判的精神からのみ起こるのです。軍隊さながらのトップダウンによる組織運営を大学に持ち込もうとすることは、研究教育の実情を知らず人間精神の本性への洞察を欠く愚者の選択と言うほかありません。

 安倍晋三首相は5 月6 日、経済協力開発機構(OECD)閣僚理事会の基調演説で、大学について、「学術研究を深めるのではなく、もっと社会のニーズを見据えた、もっと実践的な、職業教育を行う。そうした新たな枠組みを、高等教育に取り込みたいと考えています」などと発言しました。

 これが首相の「大学観」なのでしょうが、さまざまな業種、企業に通用する実践的でかつ普遍的な「職業教育」などというものは存在しません。社会生活に役立つ能力として大学で育成することができ、また育成すべきことは、創造性につながる「批判的思考力」をおいて他にはありません。ある特定の業種、企業に必要な知識や技能は個別的なもので、その業種や企業でしか教育することのできないものですから、大学がそれらを一括して肩代わりすることなど不可能です。

 そもそも、民主主義国家が大学を税金で設置し教育を行うことの意義は、営利に向かないが人類の普遍的価値に寄与する学術研究を推進し、あるいは民主主義社会を構成する市民に必須の能力を育成することにあります。民主政治を衆愚政治に陥らせないためには、市民は、健全な批判的精神と対話的理性を持っていなくてはなりません。

 こうした目的を担う高等教育は、私企業の利益のために利用されるべきものではありません。私企業の利益のための教育は、私企業が自らのコストで行えばよく、またそうする以外のよい方法はないのです。これまで日本企業は従業員のリストラと非正規従業員への置き換えを進めてきた結果、人材育成能力を失いつつあります。しかしそれは企業運営の失敗であって、大学がその後始末をするいわれはありません。

 大学人や学生から主体性を奪い、命令に服従する人間を育てようとする今回の改正案が成立すれば、日本全体から活力とイノベーティブな精神が失われ、今後何十年にも及ぶ大きな禍根を残すことになります。教育本来の意義に立ち返り、主体的に思考する精神を育成するための自由で民主的な大学を取り戻さなくてはなりません。国会が今回の改正案を廃案とし、研究教育の実情と人間精神の本性への洞察にもとづく賢明な大学政策が実現されることを期待します。


学校教育法「改正」に反対する立命館教職員有志声明

■立命館大学教職員組合ニュース,No.26(2014年5月28日)

学校教育法「改正」に反対する立命館教職員有志声明
―反対署名へのご協力をお願いします―

 本年4月25日、大学学長のリーダーシップを強化するための学校教育法「改正」案が閣議決定され、今国会に提出されました。報道によれば、その内容は、学部長やその他の教員人事を含む大学の重要事項の決定権限が学長にあることを明記する一方で、現在「重要な事項を審議する」(学校教育法93条1項)ものとされている学部教授会は、「学生の入学、募集、卒業、修了、学位授与」について、その他大学学長が必要と認めた場合に「学長に意見を述べる」だけの学長の諮問機関とすることを規定しています。予算を含む大学経営には教授会の意向はほとんど反映されない内容になっています。

 既に「学校教育法改正に反対するアピール署名をすすめる会」をはじめとするいくつかの団体が反対声明で表明しているとおり、この「改正」案は、日本国憲法23条にいう「学問の自由」を制度的に保障する大学自治の根幹としての教授会自治を破壊するものです。大学は、「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする」(学校教育法83条1項)とされますが、まさにこの目的のために、大学は、国家権力や社会の諸勢力の圧力に抗して自律的に運営されなければなりません。この「改正」案が通れば、日本の学問研究の水準は後退を余儀なくされます。しかし、影響はそれだけにとどまりません。

 私たちが働く立命館大学は、「平和と民主主義」を教学理念として掲げ、教授会自治を中核としつつ、そこに学生や職員の参加の要素をも取り入れた「全構成員自治」による大学運営を発展させてきました。今日、立命館大学は、他に先駆けて様々な教育改革を成し遂げてきたことで知られますが、それは、教育の現場における諸課題を全学課題として明確に位置づけ、大学の全構成員を巻き込んだ旺盛な議論を積み重ねることによって初めて可能となったのです。つまり、立命館大学の改革は「全構成員自治」を基盤として初めて可能であったのです。しかし、近年、立命館大学の経営者は、「全構成員自治」の諸原則を踏みにじってトップダウン的に「改革」を断行してきました。その結果、立命館大学の教育改革は停滞を余儀なくされただけでなく、財政の健全性さえ危ぶまれています。

 私たち立命館大学の教職員にとって、教授会自治を根幹とする大学の自治は、教育改革を前進させるためにこそ必要なのです。ところが、今回の学校教育法「改正」案は、立命館大学における近年のトップダウン的「改革」にお墨付きを与えることになります。

 私たちは、「全構成員自治」を維持・発展させる立場から、今回の学校教育法「改正」案に断固反対し、「学校教育法改正に反対するアピール署名をすすめる会」による署名活動に全面的に協力します。

 事態は切迫しています。まだ署名をお済みでない方は、「学校教育法改正に反対するアピール署名をすすめる会」のサイト(http://hp47.webnode.jp/)にて早急に署名していただくよう切にお願いする次第です。


立命館教職員組合連合、「教授会の権限を無力化し、大学執行部の専断体制を強要する学校教育法改悪に反対する決議」

■立命館大学教職員組合ニュース,No.26(2014年5月28日)

立命館教職員組合連合 第39回定期大会 特別決議

教授会の権限を無力化し、大学執行部の専断体制を強要する、
学校教育法改悪に反対する決議

 安倍内閣は4月25日、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」を国会に提出しました。この法案に含まれる学校教育法の「改正」は端的に言って、大学の運営に関する教授会の権限を全く無力にして、大学における民主主義的意思決定を破壊しようとするものです。

 現行学校教育法93条は、「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない」と規定しており、大学の自治の中核的な要素として教授会を位置付けています。これに対し、「改正」案は、大学の意思決定権者が学長であることを前提にして、その「学長が決定するに当たり」「意見を述べる」だけの機関として教授会を位置付けています。しかも、「意見を述べる事項」を「学生の入学、卒業及び課程の修了」と「学位の授与」に限定し、その他については意見を聞くこと自体を学長の裁量に委ねています。法案はまた、現行法が「学長の職務を助ける」(92条4項)と定める副学長についても「学長を助け、命を受けて校務をつかさどる」として学長の下命権を明文化し、学長権限を強化しようとしています。

 教授会は、憲法23条が定める「学問の自由」を保障する「大学の自治」の根幹を担う機関として、教育課程の編成、予算、採用・昇任等の教員人事、学部長の選考、学生の身分等の教育・研究に関する重要な事項について、実質的な審議・決定権を有してきました。これに対し法案は、教授会を諮問機関に格下げし、教育・研究活動の現場における主体的な参加の権限と責任を奪うことによって、学長による上意下達の強権的な大学運営を確立しようとするものです。このような組織原理は、研究者の自由な研究や、それに基づく真理の探究と社会の発展に寄与する大学とは、無縁であるどころか、深刻に矛盾するものです。

 教授会の諮問機関化や学長・学部長選挙の廃止を強硬に主張してきたのは、経済同友会をはじめとする財界です。財界は、財界主導の「大学改革」が進んでいないいらだちから、その「敵」として、教授会をはじめとする大学の民主的な運営に照準を合わせています。今回の学校教育法「改正」案は、こうした財界の意向に追随して、教職員不在、学生不在、国民不在の「大学改革」を学長のトップダウンによって「迅速に」実行させるものにほかなりません。

 第39回立命館大学教職員組合連合大会は、以上のように大学の民主的組織原理を根本的に破壊する学校教育法「改正」に反対します。                                     

 以上


学校教育法改正案、「政府の意向を強要」 徳大労組が廃案訴え

■毎日新聞(2014年05月30日 地方版)

 大学学長の権限強化を柱とした学校教育法などの改正案が国会に提出されたことを受け、徳島大教職員労組(石田三千雄委員長)が29日、県庁で記者会見し、「現場の教職員の意見を排除し、政府の意向に沿った教育と研究を強要するものだ」などとする声明を出して廃案を訴えた。

 改正案は学長のリーダーシップを強めて大学改革を促すのが狙いで、教授会を学長の「諮問機関」的な位置付けにして役割を制限。国立大学法人法の改正案では、大学経営に関する重要事項を審議する「経営協議会」の学外委員を過半数に拡大するなどとしている。

 会見で石田氏(徳島大大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部教授)は「(改正されれば)大学から活力や創造性が奪われ、政府が目指すグローバル化への対応もできず、イノベーション(技術革新)も起こせなくなる」と訴えた。【阿部弘賢】


大学自治壊す学校教育法改悪案、若手研究者の将来奪う 廃案へ関係者らがアピール

しんぶん赤旗(2014年5月31日)

大学自治壊す学校教育法改悪案
若手研究者の将来奪う
廃案へ関係者らがアピール


 大学の研究に携わる准教授、助教、講師などの若手大学関係者有志は30日、学校教育法改悪案の廃案を求めるアピールを出しました。

 国会で審議中の学校教育法改悪案は、大学運営の権限を教授会から学長に集中するものです。さらに政府がすすめる大学「改革」で外国人研究者の雇用を優先する方向を打ち出しているため、若手研究者の雇用拡大につながらない問題が浮かび上がっています。

 アピールは、学長独断の大学運営にする改悪案を批判。改悪を通してすすめられる大学「改革」は「若手研究者に将来安定したポジションで多様な研究を行う希望を奪うものであり、日本における次世代の研究・教育者養成に深刻な影響を与えかねません」と表明しています。

 この日、東京都内で会見した呼びかけ人の一人、大河内泰樹一橋大学准教授は「12日間という短い期間で530人の賛同署名が集まりました。危機感のあらわれです」と発言。斉藤渉東京大学准教授は「学長の判断で、文科省や財界の要求が大学に直接入ってくる。現場は混乱する」とのべました。

 呼びかけ人はほかに、植上一希福岡大学准教授、白井聡文化学園大学助教など31人。

解説

安倍「改革」強行する体制に

 安倍政権の掲げる「大学改革」は、日本の若手研究者の将来に深刻な影響を与えます。

 文部科学省が昨年11月に発表した「国立大学改革プラン」では、「シニア教員から若手・外国人へのポスト振替等をすすめる」としています。しかし同「プラン」は、大学の国際ランキングを上げるために外国人教員比率の引き上げを目指しており、外国人教員の雇用が優先されます。若手のポストが増える保証はありません。

 また同「プラン」は大学教員の給与を年俸制にするとします。業績評価で毎年の給与額を決めるもので、いっそうの給与削減と激烈な成果主義競争に教員を追い込むものです。

 これらは、就職難と劣悪な待遇におかれている多くの若手研究者の行き場をさらに奪い、研究環境を悪化させます。

 学校教育法改悪案は、こうした「改革」を強行する体制をつくるものです。教授会の権限を取り上げて、文科省の方針に沿う人物を学長にすえる仕組みにし、学長が強権的に「改革」できる体制をつくります。法改悪で最も被害を受けるのは若手研究者だといっても過言ではありません。

 (党学術文化委員会事務局次長 土井誠)