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 カテゴリー 2018年02月

2018年02月28日

日大の「雇い止め」、労基法違反で申告

しんぶん赤旗(2018年2月27日)

日大の「雇い止め」 労基法違反で申告
労組が会見 非常勤講師の2人

 日本大学(本部・東京都千代田区)が非常勤講師を契約上限5年で雇い止めとする就業規則などをつくる際、正当な労働者過半数代表の意見聴取を行わなかったとして、日大に勤める非常勤講師2人は26日、渋谷労働基準監督署に労働基準法違反を申告しました。同日、厚生労働省内で会見しました。

 申告した井上悦男、眞砂(まなご)久晃両氏=首都圏大学非常勤講師組合組合員=は、日大三軒茶屋キャンパス(世田谷区)などで英語を教えています。

 日大では、労働者代表を選出するにあたって、複数人の立候補者がいる場合は、あらかじめ1人にしぼったうえで、通常の信任投票ではなく、不信任投票を行っています。組合側は、民主的な手続きではないと批判しています。

 首都圏大学非常勤講師組合の松村比奈子委員長は、「日大は労働契約法の無期転換ルールを逃れるため、大量の雇い止め通告を行っており、認めるわけにはいかない」と強調しました。

 井上氏は、「日大は、三軒茶屋キャンパスの新設学部で最低4年は授業を担当するよう義務づけながら、2年で英語担当の非常勤講師全員に雇い止めを通告している。契約違反だ」と訴えました。

 日大の労働者代表不正については、松村委員長ら非常勤講師組合有志3人が14日に刑事告発も行っています。


2018年02月25日

日本大学を労働基準法 90 条違反により刑事告発・申告

厚生労働省記者会(2018 年2月26日)

日本大学を労働基準法 90 条違反により刑事告発・申告

~非民主的な過半数代表選挙
に基づく非常勤講師の就業規則制定は無効~

内容 2 月14 日(水)、東京大学教職員組合委員長佐々木弾、首都圏大学非常勤講師組合委員長松村比奈子、同首都圏大学非常勤講師組合副委員長大野英士の三名は、連名で、日本大学を労働基準法 90条違反(労働基準法第120 条第1 号、同法第90 条第1 項及び同法第121 条第1 項に該当)として、東京中央労働基準監督署に刑事告発しました。また 26 日までに、当事者が同労働基準監督署に出向き、申告をします。その内容を 26 日の記者会見で公表し、これまでに入手した情報と概要を説明いたします。


山形大学を労基法違反で告発

NHK山形News Web(2018年2月23日)

 山形大学が就業規則を変更する際に一部の非正規職員を参加させずに職員の代表者と手続きを進めたのは労働基準法に違反しているとして労働組合の関係者が23日、山形労働基準監督署に告発しました。

 告発したのは東北地方の大学などの非正規の教職員でつくる労働組合の関係者です。

 労働基準法では就業規則を変更する際に労働者の過半数の代表者から意見を聴くよう定めていますが、告発状によりますと、山形大学では一部の非正規職員を参加させずに代表者が選ばれ、就業規則を変更したとして、労働基準法に違反していると主張しています。
 このため組合では、一部の非正規職員が5年を超えて契約することはできないと定められている就業規則も無効だとして、大学に対してこれらの非正規職員の雇い止めをやめるよう求めています。
 今回の告発について、山形大学の矢作清総務部長は、「内容を承知していないのでコメントすることはない」とした上で、「就業規則の変更について、労働者の代表を選ぶ際に、非常勤講師などが含まれていなかったのは事実で、今後、選び方の見直しも含めて検討したい」としています。


雇い止めで立命館トップを刑事告発へ 大学非常勤講師ら

京都新聞(2018年02月15日)

 学校法人立命館が非常勤講師と5年を超えて契約の更新を行わないとした就業規則は、労働者過半数の代表の意見を聴かずに定められ違法だとして、立命館大の非常勤講師らは15日、吉田美喜夫総長と森島朋三理事長を16日にも京都上労働基準監督署に刑事告発する、と発表した。

 告発するのは、労働組合「ユニオンぼちぼち」の執行委員を務める立命大非常勤講師の藤田悟さん(39)ら3人。

 労働基準法は、就業規則を変更する場合、労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならないと定めている。同組合は、非常勤講師の最長5年での雇い止めを記した就業規則に変更した2015年当時の代表者は、選挙の投票率が低く過半数の代表者とは見なせない、としている。

 13年の労働契約法改正によって今年4月以降は、5年を超えて契約を更新している有期雇用労働者は無期雇用への転換を求めることができる。各大学で5年の更新上限を設ける動きがあったが、反対の声を受けて早稲田大や東京大は5年ルールを撤回した。藤田さんは「全国の大学が次々と5年雇い止めを撤回する中、立命館は就業規則を変更してそれを維持している。規則そのものを撤回すべきだ」と訴えている。

 京都上労基署は過半数の代表の選出などについて立命館に対し是正勧告を行っているが、立命館は「就業規則がただちに無効になるとは考えていない」としている。


2018年02月24日

山形大を刑事告発、雇い止め就業規則は違法 組合の有志2人

■しんぶん赤旗(2018年2月24日)

 山形大学が労働組合との合意をほごにして非常勤教職員を5年で雇い止めにしようとしている問題で、東北非正規教職員組合と首都圏大学非常勤講師組合の有志2人は23日、同大学が労働者過半数代表選挙から非常勤を排除するという労働基準法違反の状態で、5年雇い止めの就業規則を作成したと山形労働基準監督署に刑事告発しました。

 文部科学省に対しては、山形大の労基法違反で残業を取り決めた三六協定も無効となり、25日の2次試験前期日程が適正に執行できないことを指摘。文科省の責任で受験生の権利・利益を守るよう要請しました。

 山形大は4月から始まる有期雇用労働者の無期雇用転換の対象を、国立大学運営費交付金で雇用している非常勤教職員に限定し、外部資金(プロジェクト型予算)で雇用されている人たちは一律で5年雇い止めにしようとしていました。

 昨年11月10日の両組合との団体交渉で、大学当局は「違法な雇い止めは行わない」「阻合を通じて申し入れた場合、誠実に協議し、解決をめざす」と、雇い止め撤回を含めた協議をすると合意したため、組合側は刑事告発を留保していました。

 告発状などによると、その後、大学側は「就業頬則に反する対応はできない」と合意を無視する態度をとり、5年を超える雇用更新を求める非常勤教職員の申し出を拒否しています。

2018年02月21日

明治学院、「いじめ対策せず」元高校女生徒に続き―大学でも「盗聴」に抗議する教授を懲戒解雇し提訴されていた

『アクセスジャーナル』(2018年2月20日)

「いじめ対策せず」元高校女生徒に続き―大学でも「盗聴」に抗議する教授を懲戒解雇し提訴されていた「明治学院」

山岡俊介

 「明治学院」(東京都港区)といえば、ヘボン式ローマ字で知られるアメリカ人宣教師ヘボン博士夫妻が開いた私塾が源流。150年以上の歴史を誇り、わが国最古のミッションスクール。

 そんな博愛精神を説く由緒正しい学校法人傘下の「明治学院東村山高等学校」(東京都東村山市)の女生徒(当時)が、いじめに会っていると訴えたにも拘わらずキチンと対策をしてくれなかったとして校長を相手取り、提訴したことは以前、本紙でお伝えしたが、同じく傘下の「明治学院大学」(東京都港区)でも、懲戒解雇された教授が、地位確認と約1372万円の慰謝料を求めて提訴していたことはわかったので報じる。

 この訴訟、大学側が教授の授業中に無断で教室に立ち入り"秘密録音"した内容を根拠に懲戒解雇しており、「大学自治」「学問の自由」「信教の自由」にも関わる重大な点が問われているのだが、なぜか大手マスコミではまったくというほど報じられていない。

 もっとも、すでに16年12月に提訴され、今年1月25日には証人尋問が行われ、いよいよ一審判決が迫っている。

 原告は愛知大学法学部教授を経て、10年4月から明治学院大学へ移籍、教養教育センターの教授として16年9月まで、教養科目の「倫理学」を教えていた寄川条路氏(56)。

 訴状などによれば、被告が懲戒の最大の理由にあげたのは、授業の無断録音の事実を知った原告が誰が録音したか、またその録音を聞かせて欲しいと要求したが拒否されたことから、止む無く授業で配るレポート用紙の欄外に情報提供を求める書き込みをした点。

 また、原告の授業は生徒に大人気だったところ、学校側が一方的に300名に履修制限したことから、その是非と理由を問う質問を、生徒向けの授業評価アンケートの質問内容に加えたこと。それから、授業で用いた原告の著書のなかに、キリスト教主義に批判的な内容が一部含まれていたことも懲戒理由としてあげられている。

 読者のなかには、原告が政治的発言を行う者だったからではないかと推測する方もいるかも知れないが、原告はそんなことはなく、上記のような行為をしたに過ぎない。

 ところが、被告側は授業の盗聴は今回に限らず、以前から大学組織を守るために「慣例」として認められていると、「違法行為」と抗議する原告に言い放っていたという。

 そして、盗聴に限らず、以前から大学の権威やキリスト教主義を批判しないように、授業で使う教科書を検閲したり、教材を事前に検閲し配布禁止にしたりしていた。また、原告に限らず、以前にも些細と思われる理由で懲戒解雇された事例があるそうだ。

 横に、会員制情報誌『ベルダ』に寄稿した慶應大名誉教授で弁護士の小林節氏の記事(17年10月号)を転載しておいたが、同氏もいうように、教授は大学と契約した授業に関して自由に研究や発言する「学問の自由」(憲法23条)が保障されている。そして、教授の使う教科書を「検閲」するのも、まして「盗聴」など論外というか「違法行為」のはずだ。

 実際、16年10月、寄川氏が労働審判の申し立てを東京地裁に行なったところ、同年12月、解雇は無効として地裁は寄川氏を復職させるように明治学院を説得。ところが拒否したことから本訴訟に移行している。

 かつては東大ポポロ事件のように、大学構内に警官を入れることさえ大学の「学問の自由」と「自治」を犯すとして大問題になったのに、いつしか警官導入は当たり前に。本来、大学側の「盗聴」行為と聞けば大学内外から大きな批判の声が起きて当然とも思うのだがそれもなく、報道もなく、原告がほとんど孤立している状況は世も末というべき。

 遅ればせながら、今後の判決など注視したい。

常葉大学不当解雇事件、最高裁「懲戒解雇処分の不当性」を認める

■静岡大学の職組ニュース,第5号(2018年新年号)

「懲戒解雇処分の不当性」
最高裁判所の判断にて勝ち取りました

 例えば、ある役職で補助金の不正取得の書類作成を強いられた時、皆さんはどうしますか?そして協力を拒否した後に、陰湿な脅し等のパワハラを受けるようになったらどうしますか?決して他人ごとではない誰もが経験するかもしれないケ スですが、教育研究にかかわるものとしてそういう現実と折り合って行くのは簡単なことでしょうか? 常葉学園のM先生は、補助金の不正行為に目をつぶることができず、そしてパワハラ等が内部告発阻止のために組織的に行われていると認識し大学側を訴えました。それは異常な行動でしょうか?常葉学園は大学を訴えたことをもってM先生が「学園の秩序を乱し、学園の名誉又は信用を害したとき」として懲戒解雇処分を行いましたが、それは大学の組織運営における当然の権利なのでしょうか?

 本年1月19日に最高裁判所は 、M先生に対する常葉学園の懲戒解雇処分が「解雇権の濫用であり無効である」との静岡地裁から東京高裁へと引き継がれた判決を維持する決定を下しましだ。2015年3月末の懲戒解雇処分以来、2016年1月の静岡地裁での地位保全を認める勝訴、2017年7月での静岡地裁判決を維持する東京高裁決定に続き、最高裁においても懲戒解雇は不当であるとの判断が下されたことでM先生の労働契約上の地位は最終的に確定することになりました。2015年12月にM先生から支援の訴えが私たち静岡大学教職員組合に寄せられたことをきっかけに、静岡県立大学と静岡英和学院大学の各教職員組合が国立 ・公立・私立の枠を超えて共同での支援が行われて来ましたが、ここに勝訴が最終的に確定したことに安堵し喜ぶとともに、皆様方の支援協力により感謝申し上げる次第です。

 今回の裁判の発舗は、常葉学園の補朗金不正取得に対するM先生の良心に基づく行動でした。公益通報に至るM先生の行動に対して様々な脅迫まがいの言動やパワハラが行われました。その行為に対して常葉学園を強要罪で訴えた訳ですが、脅迫・パワハラ行為が公益通報阻止を目的として行われたという証拠が不十分として不起訴となりました。これ が根拠の乏しい訴えで学園の名誉を傷つけたとして懲戒解雇事由とされたわけですが、裁判では 「本件懲戒解雇は、懲戒権の濫用であり、本件刑事告訴をその理由とするも、実質的には公益通報に対する報復措置である可能性がT否定できない」 と認めています。なぜならM先生の懲戒処分の検討は、刑事告訴の後ではなく、公益通報の直後に始まり、そのために必要な懲戒規定も事後的に作成されたからです。

 もちろん裁判においてそれぞれの主張があり、その主張が認められる揚合もあればそうでない場合もあります。そういう経緯はともかく最高裁という司法の最終的判断が下された揚合は、それを真摯に実行するのは最低限の責務と言えます。しかし今回の最高裁決定が下された後ち、常葉学園側はM先生の職場復帰に向けた行動を伺ら起こしていません。教育研究者として不正行為への協力を拒否し゛、良心に基づいて訴えたことを持って,組織への裏切り者の熔印を押して罰し続ける学園側の行動は異常であり、最高裁の決定も無視し続ける姿勢は教育機関の資格がないと言わざるを得ませ ん。
 

 1月29日に県庁記者クラブで弁護団西ヶ谷弁護士と支援教職員組合で共同記者会見を開催し、M先生の教育研究者としての職場復帰の速やかな実行を訴えました。地位保全は当然M先生の教育条件の回復を伴ったものでなければなりません。折しも、常葉大学も草薙キャンパスオープンで新たなスタートを切ろうとしていますが,常葉大学も本年4月以降M先生の教育研究者としての権利保証の具体的措置を取ることで過去の負の遺産を清算することが求められていると思います。良心と信念を貫いたM先生こそ教育者として大学の財産となるのではないでしょうか。最終的な解決まで皆様のご協力支援を引き続き心から訴えさせて頂きます。

(過半数代表者:前教職員組合委員長 鳥畑与一)


2018年02月15日

「札大雇い止め訴訟」一審は請求棄却 原告側控訴方針

リアルエコノミー
 ∟●「札大雇い止め訴訟」一審は請求棄却 原告側控訴方針(2019/02/14)

 札幌大学ロシア語専攻の有期雇用の特任准教授が、同大学から労働契約更新を期待させる合理的理由があったのに雇い止め(雇用契約終了)にされたとして2017年3月10日、同大学を札幌地方裁判所に訴えた「札大雇い止め訴訟」。その判決が13日、同地裁であった。武部知子裁判長は、原告の請求を「労働契約更新を期待する合理的な理由があったということはできない」と棄却した。原告側は、「この不当判決は、私と同じように不安定な有期雇用に苦しむ全国の非正規教職員・労働者の方々の希望を打ち砕く残酷で非人道的な判決」として控訴する方針。(写真は、札幌地裁)

 この特任准教授は2010年度から7年間、1年更新で継続的に雇用され、労働契約も5回更新してきた。大学側は14年2月に特任准教授ポストの雇用期間の上限をこれまでの5年から9年に延長する規定に改正。
 15年度の原告と大学側の契約更新時に、大学側は「17年度以降の雇用を保証できるものではない」としていた。しかし、18年4月の入学者募集案内に原告の名前が記載されたことや、理事が無期雇用の准教授に昇格できる可能性を示唆したことなど、契約更新を期待する合理的理由があったと主張。
 
 武部裁判長は判決で、「いずれも合理的理由となるものではない」と主張を退けた。その上で、「期間の定めのない教員としての雇用義務が大学側に生じる前の段階で、原告の雇用継続を打ち切ることは大学の採用の自由の範囲内に属する判断として尊重されるべき」とした。
 
 原告側は、合理的理由の基準が示されていないことや事実認定からカットされている原告側の主張もあるとして控訴する方針。札大雇い止め訴訟については、全国から6000人を超える署名が集まっており大学側と裁判所にそれぞれ提出されている。


2018年02月13日

富大・学経済学部長選考問題 教授会が学長に質問状

■富山新聞(2018年2月11日)
http://university.main.jp/blog/bunsyo/20180211_toyamashinbun.pdf

2018年02月10日

富山大学経済学部教授会、学長宛「質問状」

 同記事においては,富山大学危機管理室からの依頼により,一部の掲載資料と個人の名前について,削除しました。


学長宛「質問状」
当該問題の新聞記事1
当該問題の新聞記事2

平成30年2月8日

富山大学長
遠 藤 俊 郎 殿
経 済 学 部 教 授 会

質問状(平成30年2月8日)

 平成30年1月25日付で経済学部長宛に依頼がありました「経済学部長候補者の推薦について(依頼)」に関して,1月31日に開催された経済学部臨時教授会にて数多くの疑問点が出されました.つきましては下記の疑問点についてご回答いただきたく,お願い申し上げます.
 なお,疑問点の内容については詳細を別紙(2枚目以降)に記載しましたので,別紙の記載内容に対応する形で個々具体的にご回答ください.


1 依頼文書の趣旨 
 富山大学学部長候補者選考規則第2条第5項に基づき,再度学部長候補者2人の推薦を依頼する旨,記載がありましたが,その趣旨について.
2 根拠規定
 今回,依頼があった再推薦は,「富山大学学部長選考規則」や「学部長等の選考プロセスについて」に沿ったものであるかどうかについて.
3 判断の具体的理由(1) 
 経済学部教授会より推薦した2名の候補者のうち,1名が「適任でない」とされた具体的な理由と根拠について.
4 判断の具体的理由(2) 
 経済学部教授会が推薦した候補者2名のうち,「適任であるとまでは判断できない」とされた1名につき,「適任であるとまでは判断できない」という表現の意味およびそこに至った具体的な理由と根拠について.

 経済学部教授会は,学部長候補者推薦にあたって,選出方法や選挙の実施手順等について検討を重ね,構成員の意思を適切に反映するとともに,公正かつ厳正な過程を経た候補者の選出に取り組んできました.それだけに,「富山大学学部長選考規則」や「学部長等の選考プロセスについて」とは相容れないように思われる今回の再推薦依頼は極めて遺憾であります.丁寧かつ誠実な説明と回答を求めます.
以上

別紙

1 1月25日付け経済学部長宛て文書(以下、「通知書」という。)の文意について

(1)通知書には、候補につき、「学部長として適任であるとまでは判断できませんでした」と記されている。この記述を文面どおりに読むなら、■■候補について、少なくとも「適任でない」(学部長選考規則2条5項)とは判断していないことになり、判断保留(最終決定に至っていない)の意と解することもできる。いずれにせよ、通知書のこの部分の記述からは、経済学部教授会が推薦した候補者2人のうち、1人は依然として学部長候補者たる地位を失っていないと解するほかないが、他方で通知書は、「2人」の再推薦を求めるとしている。通知書のかような記述の趣旨を説明されたい。

(2)上記(1)の点に関して、学長は、1月19日及び同25日に経済学部長を訪ね、同学部長に対して、「堂谷候補が不適任(不適格?)であるため、複数の候補者の中から選考することができない状態になった。ついては、3人目の推薦を求める。」旨、述べている。また、25日には、「■■候補については候補者として残してよい」旨の発言も行なっている。学長からかかる発言ないしは要求があったことについては、31日に開催された臨時教授会において学部長から報告・説明がなされたところである。この発言の趣旨と、上記(1)の通知書の文意との関係、整合性(同じかどうか)を説明されたい。

 付言すると、教授会が推薦した複数の候補者の中から選ぶという現行制度の前提が満たされなくなった云々との上記発言は、2人のうちの1人を「学部長候補者」として不適格(失格、選考対象外)と判断したため、という趣旨のようにも聞こえる。しかし、学部長選考規則(以下、「選考規則」という。)上、教授会が推薦した学部長候補者について、学長が「学部長候補者として」「適格か、不適格か」という判断をする権限や手続きは存在しない。選考規則上学長に認められているのは、教授会が推薦した候補者について、「学部長として」「適任か、適任でないか」を判断する権限のみである。学長の上記発言が、通知書の文言どおり、堂谷候補は「学部長として」「適任でない」という趣旨であるならば、候補者が1人になったのは、正に■■・■■という複数の候補者について選考し、適任かどうかを判断した結果にほかならず、■■候補が外れたことを以て「複数の候補者から選考することができなくなった」とする学長の上記発言は矛盾しているというほかない。

2 選考規則の解釈・適用について

 通知書は、「2人」の再推薦を求める学内規則上の根拠として、選考規則2条5項を挙げている。しかし、文面上明らかなように、同項は、学部教授会が推薦した候補者(2人又は3人)が「学部長として適任でないと判断した場合」に関する規定である。選考の結果、「候補者が1人だけになった」とか、「候補者が適任かどうか判断しがたい」といった理由で学長が教授会に候補者の追加ないしは再推薦を求めることは認められていない。すなわち同項は、選考の結果、学部教授会が推薦した候補者が全員不適任(適任者が誰もいない)と判断した場合に再推薦を求めることを定めたものであり、ある候補者について適任でないと判断したとしても、不適任ではない候補者がほかにいるのであれば、学長には、その候補者を学部長に選ぶ以外の選択肢は認められていない。この趣旨は、現行の学部長選考手続きへの選考規則の改正を審議し了承した平成27年3月19日の教育研究評議会においても確認されている。

 選考規則2条5項に関する如上の文理解釈および立法趣旨からすると、通知書記載の事由が、同項を適用することができる場合に該当しないことは明白である。上述のとおり、通知書には、■■候補を「学部長として適任でないと判断した」とは記されていない。そうとすれば、2条5項が定める再推薦要求を行なうための要件は満たされておらず、■■候補を学部長に指名する以外の選択肢はないということになる。

 また、選考規則以外の学内規則にも、学長にそのような権限を認める規定は見当たらず、学長の要求には学内規則上の根拠が存在しない。

 以上のとおりであるから、学長の再推薦要求には根拠規定が無く、再推薦要求は無効であると判断せざるを得ない。
 この点について、見解を明らかにされたい。

3「判断」の理由、根拠等について

(1) 選考規則2条5項が定める学長の「判断」は、<学部長候補者たる地位(換言すれば、学部長に任命されうる地位)>という個人の法的利益に関わる判断(決定)であり、裁判上の地位確認訴訟の対象となりうるものである。この学長の「判断」は、学部長として「適任でない」という不利益決定であるから、明文規定の有無にかかわらず、法理上、理由や根拠を具体的に明らかにすることが必要である。そしてもし理由や根拠が合理性を欠いていたり、判断に至る手続きに重大な瑕疵があったりすると、その判断は誤りだということになる。

 しかるに「判断」の理由に関する通知書の記述は、以下のとおり極めて簡略、曖昧であり、判断の理由や根拠が明確に示されているとは到底言えない。また判断の理由や根拠には、明らかに不合理と考えざるを得ない点がある。

 以上のことを踏まえた上で、以下に指摘したひとつひとつの点に対して回答を求める。

①■■候補については、「不適任」と判断した理由として、「所信を確認する限り、経済学部長の選考の基準を満たしておらず適任ではないと判断」したと記されているのみであり、所信がいかなる点・いかなる意味において「選考の基準を満たしていない」(ママ)のか、3つの選考基準(以下、「基準」という。)それぞれの観点から所信をどのように評価したのかについての具体的な説明がない。「基準を満たしていない」とは、所信の形式・体裁のことなのか、実質・内容のことなのかも不分明である。

 仮に、形式・体裁、すなわち所信の文章の記述の仕方が選考基準に沿っていないことを指しているのだとすると、そうした形式的な理由だけで直ちに「不適任」と判断するのは、上述の候補者の法的利益に関する権限行使の在り方として不適切であり、当該判断は、重大な手続き的瑕疵につき違法・無効と言わざるを得ない。適正手続きの観点からは、まずは所信の書き直し・再提出を求めるのが適切な対応である。また、所信のみを判断材料とせず、面接を実施したうえで判断することも検討すべきであり、面接不要とするならば、相応の理由を示すべきである。以上の手順で選考を行った上で、学長は、判断の理由・根拠を具体的に明らかにする義務を負う。

 他方、「基準を満たしていない」のが所信の内容面のことであるのならば、所信記述内容のどのような点を以て基準を満たしていないというのか(逆に言えば、どのような記述内容であれば満たしていることになるのか)を、3つの基準に即して具体的に示さなければならない。

② ■■候補については、「適任であるとまでは判断でき」なかった理由として、「在職期間内に学部改革及び大学院改革を進めるという点に関して、経済学部長の選考の基準第3項を満たしていることが確認でき」なかったとだけ書かれている。他の2つの基準に関して■■候補がどのような評価であったのかについては全く説明が無い。そして、「基準第3項を満たしていると確認でき」なかったとする理由は、専ら「在職期間」、すなわち、学部長として在職可能な期間が定年までの2年間であることに求められており、この点が、結果として「適任であるとまでは判断できなかった」唯一かつ決定的な理由とされている(学長も、同趣旨の発言を学部長および■■候補に対して行っている)。
 しかし、以下の理由から、かかる説明は到底是認できるものではない。
 第1に、適任とまでは判断できないという「判断」は、選考規則上認められておらず、同規則2条5項の定める、学長が再推薦を要求するための要件にも該当しない。(上述)。
 第2に、在職可能な期間が2年間であることを以て、改革を「進める」(完成する、ではなく)ことができないかのような捉え方になぜなるのか、その点の説明が無い。在職期間が2年間であるからといって、改革を「進める」ことができないとは常識的に考えられない。学部長に関してそのような理屈が通るのであれば、在職期間が残り1年だけとなった学長に関してはなおのこと同じことが言えるということになるはずである。
 第3に、定年までの期間という動かしようのない形式的条件を持ち出して、基準第3項を満たしているかいないかの決定的な判断材料とするということは、最低2期4年以上の在職が可能であることが、初めから教授会が学部長候補者を選出・推薦する際の要件(正しく、選考する以前の、候補者としての適格性、資格要件)、あるいは少なくとも考慮すべき重要事項だと言っているに等しい。これはすなわち、選考規則や、学部長の推薦に関する各学部の規則に存在しないルールを、学長の一存によって事後的に、新たに付け加えたのと同じである。このような越権行為、権限の濫用が許されないことは当然の理である。
 第4に、実際的な観点からも、定年までの期間という形式的な事柄を、「基準」の充足如何や、学部長として適任かどうかを判断する決定的な材料とすることに合理性があるとは言い難い。各学部におけるこれまでの候補者推薦の結果をみても、学識、見識、経験、人望といった要素の方が、学部長の職責(改革を「進める」ことも含まれる)を担う上で重要だというのが多くの教員の認識であることは明らかである。

(2)選考の「基準」およびそれに基づく「判断」という制度にも問題がある。
 学長が示した選考基準自体が抽象的かつ曖昧であり、それゆえ基準に対する所信の記述も、基準の充足如何の評価も、多分に主観的なものにならざるをえない。そうした抽象的で曖昧な選考基準とそれに対する「所信」によって判断しようとすれば、恣意的な判断、権限行使を許すことになりかねない。
 このような恣意的判断、恣意的な権限行使がなされることのないようにするには、選考基準に対する「所信」の評価は参考程度の扱いとして、それに依拠した「判断」は極力避けることとし、教授会の客観的な意志、すなわち教授会が推薦した候補者の順位や得票数を尊重する(再優先の判断基準とする)ことを大原則とする以外にない。かかる恣意的判断や権限濫用防止の観点からの選考規則の解釈・運用の在り方について、前出平成27年3月評議会において学長が行なった発言をも踏まえつつ、見解を示されたい。

4 再推薦要求による学部業務への影響

 実際上の問題として、如上の曖昧かつ根拠不明の再推薦要求が、学部の業務に対して深刻な影響を発生させていることも看過できない。学長が候補者の再推薦を要求したことによって、既に経済学部では、次年度からの各種役職者の決定に大きな遅れが生じている。仮に再推薦をするとした場合、経済学部は厳格な候補者推薦手続きを定めており、手続きに時間を要するから、なおのこと他の人事の決定に大きな遅れが出ることになる。また、年度末のこの時期は、入試業務、卒論指導、卒業判定等のために、教員も事務職員も1年のうちで最も重要かつ多忙な時期であることは周知のとおりであり、再推薦の手続きを実施することは、ただでさえ多忙な教員及び事務職員に対して過大な負担を強いることになることは明らかである。

 そのような時期に曖昧かつ根拠不明の再推薦要求を安易に出したことの適否、そこから生じる影響に対する責任をどのようにお考えか、説明を求める。

以上

2018年02月09日

静岡大学教職員組合、非常勤無期雇用化啓発指導を申し入れ

■静岡新聞(2018年2月3日)

非常勤無期雇用化啓発指導を申し入れ 

 静岡大学教職員組合と、静岡県労働組合評議会は2日、同大が非常勤職員の無期雇用化について定めた条件が、有期契約労働者の雇用安定化を図った改正労働契約法の趣旨にそぐわないとして、静岡労働局に啓発指導を申し入れた。

 同大教職員組合によると、2013年4月に同法が施行され、有期契約労働者が同じ職場で通算5年を超えて働いた場合、本人が希望すれば無期雇用に転換できることが定められた。一方同大は17年3月に非常勤職員の労働条件に関する基準を改正し、無期雇用化の条件に「専門的資格等が必要」との規定を加えた。資格の例として調理師免許や秘書検定などをあげている。同組合は、「非常勤職員は事務職員や教員が中心。大学側から合理的な基準だという納得できる説明がない」としている。


2018年02月05日

富山大・経済学部長選考 異例の事態

富山新聞(2018年2月2日)
http://university.main.jp/blog/bunsyo/20180202toyama.pdf

富山新聞(2018年2月3日)
http://university.main.jp/blog/bunsyo/20180203toyama.pdf

2018年02月04日

常葉大学短大部元准教授「解雇無効」確定

■読売新聞(2018年1月30日)

祝 勝訴!

常葉大学短大部元准教授「解雇無効」確定
上告棄却 常葉 未払い給与等支払いも

常葉大学短大部の准教授だった男性(44)が、運営する常葉学園の理事長や職員らを刑事告訴したのち、懲戒処分を受けたのは不当だとして学園側に地位の確認と損害賠償を求めた訴訟で、最高裁判所は双方の上告を棄却した。解雇の無効を認め、未払い賃金約1400万円の支払いを命じた東京高裁の判決が確定した。決定は19日付。

判決などによると、男性は2012年8月、常葉学園が補助金を不正受給していると告発するのをやめるよう強要されたとして、理事長ら3名を静岡地検に告訴した。地検は13年1月に3人を不起訴処分とし、男性はその後15年2月常葉学園から懲戒解雇処分された。

 男性は29日「判決は確定したが、学園側から連絡はなく、未払い給与もまだ支払われていない。早く短大に復職し研究を続けたい」と話した。

 常葉大学側は、読売新聞の取材に対し「解雇処分が認められなかったのは「極めて残念」。判決に従って適切に対処していく」とコメントした。

常葉学園の教員 解雇無効が確定 
最高裁上告不受理

■朝日新聞(2018年1月30日)

 補助金の不正受給を内部告発し学校法人常葉学園に解雇されたとして、同学園の男性教員が職員としての地位保全を求めた訴訟で、最高裁判所は双方の上告を不受理とする決定を出した。19日付。29日に会見した男性の弁護士らが明らかにした。

 懲戒解雇は無効とする高裁判決が確定した。男性は2012年、学園の補助金不正受給について内部調査していた際、学園から通報しないように強要被害を受けたとして理事長らを静岡地検に刑事告訴、理事長らは不起訴処分になった。その後男性は、不正受給を内部告発。問題が報道されるなどした直後の15年、懲戒解雇が通知され、男性は無効を求めて提訴した。昨年7月、東京高裁は解雇は無効とする静岡地裁の1審判決を維持。原告と被告の双方が上告したが最高裁は不受理を決定した。

 学校法人常葉大学は「判決を前提に今後適切に対応していく」と述べた。