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2017年10月18日

有名私立大学が「学内で起きた職員の凄惨な自殺」を隠蔽…背景に雇用をめぐるトラブルか

Business Journal(2017.10.13)

 発見まで、自殺の決行から4日がたっていた。首吊りによる遺体は、相当に腐敗が進んでいた。研究室のドア近くで、その変わり果てた姿と対面した課長職の女性が、切り裂くような悲鳴を上げたのも当然だ。

 現場には、家族宛と学部長宛の遺書があった。

「人を人とも思わぬ非道を許せない。一死をもって抗議する」

 学部長に対しては、そのような激烈な怒りの言葉が綴られていた。

 これが複数の関係者から語られた、現場の状況である。さらに関係者たちの話を総合すると、N先生の死の背景には、雇用をめぐる大学側とのトラブルが浮かび上がってきた。

 N先生は、東京工科大学の特任講師だった。2015年6月12日、N先生が自殺を遂げたのは、同大学八王子キャンパス研究棟Cの自室研究室である。

 どんな企業や団体でも、構成員が死亡すれば訃報が公表されるのが当然である。だが東京工科大学では、N先生の訃報は公表されなかった。むしろ箝口令が敷かれ、N先生の死は隠蔽され続けている。そして今、彼が使っていた研究室では、何が起こったかまるで知らない新たな教員が仕事をしている。

 1947年に創立された創美学園が、東京工科大学の起源だ。東京都八王子市片倉町の八王子キャンパス、東京都大田区西蒲田の蒲田キャンパスがあり、工学部、コンピュータサイエンス学部、メディア学部、応用生物学部、デザイン学部、医療保健学部を擁している。

 ゲーム制作などを行うメディア学部は、日本で初めての設立だった。同学部の客員教授には、手塚治虫の息子でヴィジュアリストの手塚眞氏がいる。シンガーソングライターのダイスケは同学部出身だ。自由な校風で知られる同校で、なにゆえ凄惨な自殺が起こり、今に至るまで隠蔽されているのか。

突然「今年で辞めていただく」と告げられる

 N先生が東京工科大学に着任したのは、2012年10月。「特任教授募集」に応募したのだが、採用されてみると「特任講師」であった。N氏は講義を持たず、学生の就職指導を専門に行う講師を務めた。多かれ少なかれ、どこの大学でも就職率を気にするが、東京工科大学でもその傾向はあり、教員のボーナスにも影響するという。就職できそうもない学生にきつく当たったり、受かるところに無理矢理にでも就職させて、自分の研究室の就職率を上げている教員も少なくないという。

 N先生のもとに相談に来るのは、そうした研究室から弾き飛ばされかねない、就職力の弱い学生だ。そもそも就職する意思がなく「働きたくない」と口にする学生に対し、N先生は働くことの意義を一から説いた。昼食時間でも、学生が訪れれば相談に応じた。

 2014年11月12日、大学の最高議決機関である大学評議会で、N先生の雇用契約の延長が発議され、同年11月には雇用契約を2018年9月までとすることが承認された。

 だが、年が明けた1月、N先生は学部長から「今年で辞めていただく」と告げられた。N先生は、不当に雇い止めがあった場合に備えて、労働基準監督署への相談・申告、労働審判の件、弁護士への相談などの準備のため、その証拠保全に努めた。

 それが3月になると、学部長より「これからも、ずっとよろしくお願いします」と言われ、仕事が続けられ、家族を養っていくこともできるとN先生は安堵した。

 しかし6月12日、学部長より突然「9月で辞めていただく」と告げられた。普段は温厚なN先生が、あまりの理不尽さに怒鳴ったという。N先生が自分の研究室で自殺を遂げたのは、その夜だ。

 その日の夕方、夫人は「今日は大学の近くに泊まる」とN先生からの電話を受けていた。翌週になっても帰って来ず連絡もないために、夫人が大学に連絡したのが6月16日。午前9時過ぎ、N先生は変わり果てた姿で発見された。

 N先生の研究室のドアには、面談予約していた学生向けに「キャリアサポートセンターで相談に乗ります」とのみ記された紙が貼られた。

 学内広報に訃報は載らず、箝口令が敷かれ、N先生の死は隠蔽された。それから2年がたった今、N先生の存在そのものが無き者のようにされている。

口をつぐむ、不自然な大学の対応

 N先生と直接話をしていた当時の学部長から事情を聞くべく、筆者が東京工科大学に連絡をしたのは、今年7月14日の午後1時半頃だった。こちらが名乗ると受付スタッフは電話をつないでくれようとしたが、再び受付スタッフが電話口に出た。用件を尋ねられ、N先生の自殺の件であることを伝える。しばらくして受付スタッフが出て、「ただいま、席を外しております」と言った。1時間後に再び電話をすると、「本日は出張に出ていて、帰りません」とのことであった。

 週明けの7月18日に電話をすると、席を外しているとのこと。それなら学長と話したいと申し出ると、会議中と説明された。その日のうちに再び電話をすると、総務部のスタッフが出て、「(当時の学部長は)話をしたくないといっている」と言った。社会的説明責任のある問題であり、話したくないで済む話ではないと告げると、学長宛に文書を提出してほしいとのことであった。

・N先生の死に関して大学としてどのように総括しているのか?
・N先生の死を隠蔽しているのはなぜなのか? 

 取材によって把握した事実を記した上で、大学の見解を問う文書を7月21日に送付した。これに対し、8月9日付で東京工科大学の事務局長の名で送られてきた回答には、以下のように書かれていた。

 「本学でも●●特任講師の事故は把握しています。貴殿からの平成29年7月21日付書面の内容は、本学が把握している事実と大きく異なっていますが、●●特任講師のご遺族のプライバシーにもかかわることですのでお答えできません」(氏名への伏せ字は、筆者による)

 この前後の文章は、夏期休暇などに関する事務的な内容だ。全文を通じて、N先生への哀悼の意を表す言葉はひとつもない。起こった事態の印象を和らげるためか「事故」という言葉が使われている。遺書が残されていたこと、警察による検証から、N先生の身に起きたことは、事故ではなく自殺であることは明らかだ。国語的にも「自殺」は「事故」ではない。まして、社会的に使われる場合には、明確に区別される。結果として、大学の回答は、事実の根幹をなす部分において虚偽が書かれているといえる。

 ビルからの転落死や、溺死、薬物死、縊死などの場合、自殺なのか事故なのか、あるいは事件なのかが問われ、徹底した調査が行われる。もし、N先生に起きたことが、本当に自殺ではなく事故だと大学が考えているのなら、調査の結果を公表すべきだ。

 また、筆者がN先生に関して質したのは、職務上のことであってプライバシーに属することではない。筆者が把握した事実は、複数の関係者から確かめたものだ。プライバシーは、回答できない理由にはならない。事実に対して反論ができないというのが真相だろう。

 経緯を振り返ってみるならば、雇用に関する説明が二転三転することからくる不安が、N先生を自殺に追い込んだ可能性は大きい。取材によって、パワハラが行われていた疑いも浮上している。東京工科大学が真理を追究する学問の府であるならば、N先生の自殺を隠蔽することをやめ、事実関係を明らかにすべきだ。

(文=深笛義也/ライター)

2017年10月14日

名古屋芸大、教授に自宅待機命令 教職員組合と対立か

朝日新聞(2017年10月13日)

 名古屋芸術大学(愛知県北名古屋市)を運営する学校法人名古屋自由学院が9月、教職員組合の委員長と副委員長の教授2人に自宅待機命令を出し、教職員組合が「明確な理由がなく不当だ」と命令の撤回を求めていることがわかった。朝日新聞の取材に、法人の纐纈(こうけつ)正伸人事課長は「現在、審議中。それ以上申し上げられない」と答えている。

 組合関係者によると、9月22日、法人の川村大介理事長名で40日の自宅待機を命ずるメールが2人に届いた。後日、同じ内容の書面も郵送で届いた。理由として「職員の行為が懲戒に該当する。またはそのおそれがある」「職員が出勤することにより、正常な業務の遂行に支障をきたす。または他の職員に与える影響が大きい」などと記載されていた。組合が具体的な理由を問い合わせたが「個別の案件には回答しない」と書かれた文書が届いたという。

 一方、組合関係者によると、待機命令が出る前の9月7日、組合は「(法人の)理事会が評議会を廃止し、教授会規程を改正した」などとして、大学へ指導するよう文部科学省に陳情していた。組合の代理人の小島高志弁護士は「教育現場では労使が協力し合って、学習、学問、研究の環境を発展させるべきだ。一部の教職員や労組を敵視して大学を運営することは、学生の不利益につながり、教育機関に対する社会的要請にも反する」と話す。

 ログイン前の続きこの法人と組合は過去にも労働条件を巡って対立があり、愛知県労働委員会が2014年と16年にそれぞれあっせん案を示したほか、今年1月には組合が申し立てた不当労働行為の救済をめぐり、和解した経緯がある。

     ◇

 〈労働法に詳しい大阪市立大の西谷敏(さとし)名誉教授の話〉 具体的な理由なく自宅待機を命じ、一定期間であれ教授らの講義、研究の権利を制限するのは不当で、命令は無効だ。自宅待機命令の背景に組合活動があるとすれば、労働組合法にも抵触する。


2017年10月10日

「設置者変更」はリストラの打ち出の小槌か-私立大学の「公立大学化」から見えてくる問題-

『ねっとわーく京都』2017年10月号、11月号に連載したものを一部修正

「設置者変更」はリストラの打ち出の小槌か-私立大学の「公立大学化」から見えてくる問題-

細川孝(龍谷大学経営学部)

不払い賃金返還訴訟には隠れた争点がある

 8月3日、京都地裁で一つの裁判が始まった。この裁判の訴状は今年2月に奈良地裁に提出されたが、若干の経過があって京都地裁で審理が行われることとなったものである。裁判は「賃金等請求事件」であるが、この裁判の隠された争点は別の点にある。
 設置者変更、多くの読者には聞きなれない言葉であろうが、最近の報道では、京都に縁のある名前が出てくる。7月10日、苫小牧駒澤大学(北海道苫小牧市)の設置者が学校法人駒澤大学から学校法人京都育英館に変更されるのは違法だとして、苫小牧駒澤大学に学ぶ学生が、学校法人駒沢大学に計約245万円の損害賠償などを求めて東京地裁に提訴した。あわせて国が大学設置者の変更を認可しないよう仮差し止めも申し立てた。
 この小論では、「設置者変更」が大学(経営)の持続的発展という本来の趣旨から離れ、リストラクチャリング(事業の再構築)という営利企業の手法と化しているのではないかという問題提起を、具体的事例を踏まえつつ行うものである。

設置者と学校の関係-設置者が学校を設置する

 教育基本法、第6条は「法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる」と規定している。同様に、学校教育法でも、学校を設置できるのは、国(国立大学法人及び独立行政法人国立高等専門学校機構を含む)、地方公共団体(公立大学法人を含む)、学校法人の3者のみとしている(例外は、構造改革特別区域法にもとづく株式会社立の学校とNPO法人立の学校が規定されている)。
 ここで注目したいのは、設置者である国、地方公共団体、学校法人と、設置される学校は別のものとされていることである。例えば、複数の学校(教育階梯の異なるものを含む)を設置する学校法人を想定していただければイメージしやすいであろう。学校法人Aが設置するB大学、C大学、D高校、E中学校、F小学校といった具合である(最近、話題の加計学園には、岡山理科大学、倉敷芸術科学大学、千葉科学大学の三つの大学のほか、岡山理科大学付属高校や付属中学校校などがある)。
 このように設置者と学校は別のもとして位置づけられており、学校を設置する設置者も変更されることが可能となっている。

私立大学の「公立大学化」は設置者変更である

 先に述べた苫小牧駒澤大学に関する報道では、「経営譲渡」や「譲渡」という表現が用いられているが、その内実は「設置者変更」である。学校の設置者が別の設置者に変更されるということである。この設置者変更は、学校法人駒澤大学から学校法人京都育英館への事例のような学校法人(私立学校の設置者)同士の場合だけではない。
 近年相次いでいる私立大学の「公立大学化」は、学校法人から公立大学法人への設置者変更という手続きをとって行われている。2017年4月現在、89大学の公立大学のうち74大学が法人化されている。公立大学法人は地方独立行政法人の一つであり、地方公共団体の一部局としての公立大学とは異なっている。
 「公立大学」化と聞くと地方自治体(地方公共団体)が設置した大学という印象を与えるが、実態は「公立大学法人への設置者変更」なのである。以下では、京都府下での事例の検討を通じて、この問題の有する光と影について若干の考察を行いたい。

京都創成大学から成美大学へ

 2000年4月、京都短期大学の商経科を改組転換し、京都創成大学が開学した。設置者は、学校法人成美学苑(当時)であり、福知山市との公私協力方式がとられた。京都創成大学は北近畿で唯一の四年生大学、経営情報学部(経営情報学科)のみの単科大学としてスタートした。当初の入学定員は195名であった。
 その後、2007年に経営情報学科をビジネスデザイン学科に名称変更するとともに、医療福祉マネジメント学科を設置した。2010年からは大学名を成美大学に改称し、法人名も学校法人成美学園となった。
 この間、さまざまな取り組みにも拘らず入学定員を下回る状態が続いた。2009年度における大学全体の収容定員に対する在籍学生比率は0.36、翌年度は0.46であった。この背景には、大学および学校法人(設置者)の管理運営の問題があった(2008年以降3年間に理事長が4回交代し、2006年以降4年間に学長が3回入れ替わり、適切な運営を行うことができなかった)。
 2011年3月には、認証評価で「不適合」の判定を受けることとなった。評価結果には「評価の結果、貴大学は、『学生の受け入れ』『研究環境』『教員組織』『管理運営』『財務』『点検・評価』および『情報公開・説明責任』に関して重大な問題を有すると判断した結果、本協会の大学基準に適合していないと判定する」と記されている。
 認証評価は国公私立の設置形態を問わず全ての大学、短期大学、高等専門学校に義務付けられている。7年以内ごとに文部科学大臣が認証する評価機関の評価を受けるのである。  
 成美大学の認証評価の受審は、第一巡目(2004~2010年度)の最終年度であった。「大学基準に適合していない」ということをもって、当該の大学が法令違反となるわけではないが、大学としての内実が社会的に問われることになるのである。

成美大学の「公立大学化」に向けた議論が始まる

 京都創成大学(成美大学)は2007年度以降、入学定員の削減を繰り返すことになった(2007年度~:100人、2013年度~:80人、2014年度:60人、2015年度:50人)。カリキュラム変更も毎年のように行われた。先述の医療福祉マネジメント学科の設置以降も、「ウェルネス総合マネジメント」資格(2008年度)、「フィンランド教育」「地域」(2011年度)、「2012年度」(観光)と次々に新機軸を打ち出す。
 しかし、これらの「改革」は十分な裏付けのない「場当たり的」とも言える対応であった。理事長や学長の意向によって行われた「属人的」なものでもあった。大学の運営がトップダウン化し、教育の現場である教授会の意見は取り入れられることはなかった。
 大きな転機は、2013年12月の理事会体制の刷新であった。福知山市役所OBの理事長、副理事長が法人経営の実権を握ることとなった。背景には、金融機関からの融資を断られ学校法人が資金的に立ちいかなくなっていたことと、前経営陣が事実上経営を投げ出したことがある。福知山市主導で経営の再建が進められることになったのである。
 新しい理事会と大学の体制が確立されたもとで、「公立大学」化に向けた議論と福知山市(民)への理解を求める取り組みが進められることになった。

成美大学の「公立大学化」に向けた急速な動き

 2014年度に入ってからの経過を時系列的に示せば、次のようである
4月、市民主導の名のもとに「成美大学の公立化を求める市民の会」が結成される。
6月、「市民の会」が福知山市長に公立化を求める要望書を提出する。
8月、成美大学が「成美大学・短期大学部経営改善に関する報告書」を市に提出する。
 市議7名からなる「福知山市における四年制大学の在り方調査研究委員会」が発足する(12月に「四年制大学のあり方検討特別委員会」に名称を変更)。
9月、「市民の会」から市長に公立化を要請する署名(34,285人)を提出する。福知山市に「四年制大学のあり方に関する有識者会議」が設置される(委員長は後に学長となる井口和起氏。12月までに5回開催される)。
12月、有識者会議が「検討報告書」を市長に提出する。京工芸繊維大学が成美大学の隣接地(成美学園敷地)に北京都分校(福知山キャンパス)の設置を発表する。
1月、福知山市に「公立大学検討会議」が設置される(委員長は井口氏。3回の会議)。
2月、検討会議からの「公立大学検討会議報告書」の提出を受け、市長が公立大学の設立を表明する。
3月、福知山市が「教育のまち福知山『学びの拠点』基本構想」を発表する。
福知山市議会が「公立大学開設準備費を含む2015年度予算」を可決する。
「市民の会」が「成美大学の公立化を支援する会」に名称を変更する。
 このようにごく短期間で「公立大学化」に向けた動きが進み、決定をみたことがわかる。同時に、この一連の過程のなかで、成美大学の教職員は「市民の会」が取り組む署名に協力したり、集会への参加を実質的に強制されたりした。また、オープンキャンパスで「事例に学ぶ大学の公立化セミナー」を開催する(7月、9月、10月、11月)など、「公立大学化」実現の一翼を担った(担わされた)ことに留意する必要がある。

「設置者変更」に向けた取り組み

 2015年度に入ると「公立大学化」を実現するために、「設置者変更」の準備が進む。
 4月には、福知山市に「公立大学検討事務局」と「公立大学設置準備委員会」が設立され、成美大学との協議も行われるようになる。5月には、大学内で「新たな公立大学の設置に向けた教員アンケート」が実施される。また、公立化に向けた学内ワーキンググループが開催されるようになる。
 福知山市では7月に、「公立大教員候補者の選考会議」が設置された(教員採用をめぐる問題については後述する)。福知山市議会では9月、公立大学関連の5議案が可決される。
 この間、文部科学省に対しては、入学定員の変更(地域経営学科(ビジネスデザイン学科))を30名から40名に増員、医療福祉マネジメント学科を20名から10名に減員)を届け出ている(6月)。また、2016年4月1日より学部名称を経営情報学部から「地域経営学部」に、学科名称をビジネスデザイン学科から「地域経営学科」に変更することを届け出ている(8月)。
 10月に入ると、福知山市は京都府に対して公立大学法人の設立認可申請を行う。翌月(11月)、公立大学法人福知山公立大学の設立が認可される。これを受け、成美学園は「設置者変更」に係る申請を文部科学省に提出する。同時に、学長・理事長予定者として井口氏が発表される。
 12月には、副学長・理事予定者として富野暉一郎氏、理事・事務局長予定者として山本雄一氏(高知工科大学が公立化された時の事務局長)が発表される。福知山市は大学政策課を設置している。福知山市の公立大学設置準備委員会では、2016年度から6年間の中期目標・中期計画が検討される(福知山市長からの認可)。
 以上の動きから見えてくるのは、「設置者変更」を想定して、福知山市と成美大学とが一丸となって準備を進めたことである。大学に関してのノウハウを有しないことからして、このことは自然なことであろう。しかし、表面的には、スムーズに見えるかもしれない「公立大学化」は大きな問題を孕んでいた。

包括承継か特定承継か

 近年相次いでいる私立大学の「公立大学化」の事例において、福知山公立大学は特異なものとなっている。それは、設置者変更の際に「部分承継」という手法が採られたということである。具体的には、教職員の雇用(継続)の問題である。
 これまでの私立大学の「公立大学化」の際には、大学の保有する権利や義務は全て新しい設置者に引き継がれ、教職員の雇用関係も維持されたと筆者らは認識している。しかし、福知山公立大学の場合には違った。
 2015年度に成美大学に在職した教員のうち17名が福知山公立大学への「移行」を希望した。応募者は、2015年3月に調書、5月にアンケート、6月にエフォート(仕事の時間のうちでどれくらいを特定の用務に充てているか)を提出した。これらを踏まえ7月に、「選考会議」によって模擬授業(5分)と面接(25分)が行われた。8月に公表されたのは、9名のみの「採用」(=公立大学法人による雇用)であった。
 通常、大学が設置される場合には、設置準備委員会など開設予定の大学の機関が選考を行う。しかし、福知山公立大学は「設置者変更」であって、そのような場合とは異なる。また、学術とは無関係の人間が市民代表として選考会議に加わっていた。きわめて異例としかいいようがない。
 成美大学の教職員は「公立大学化」に協力を惜しまなかった。私立大学の「公立大学化」の先行事例を見て、自らの雇用関係が継続すると信じた者がほとんどだろう。福知山公立大学の2016年度のカリキュラムも、成美大学のカリキュラム(2015年度)とわずかしか変更されてない。教員の「入れ替え」を行う必要があるとはとうてい思えない。
 「設置者変更」を申請する際には、学校教育法施行規則では「教員組織」に関する事項も記載しなければならないこととされている。しかし、実際の手続きでは、教員の名簿を提出する必要はなく(文部科学省に照会)、申請時の学長の氏名を記載するのみとなっている。したがって、大学や学部の新設のような業績審査も行われていない。
 筆者らは「設置者変更」は大学の公共性と継続性(安定性)を保証するものであり、福知山公立大学のような事例は想定されていないと考えたい。2016年からは名称が「地域経営学部」となったが、カリキュラムはわずかししか変更されず、「学士(経営情報)」は元のままというのも不思議である。2017年度入学生からは、「学士(地域経営)」となったとはいえ、文部科学省はどのように対応したのであろうか……。
 率直に言えば、性善説に立った制度の趣旨と実態との齟齬があるのではないだろうか。

大学は誰のために存在するのか

 「設置者変更」によってスタートした福知山公立大学は、多くの受験生を集めている。2016年度入試では、50名の入学定員に対し1,660名の受験者、同じく2017年度は120名に対し926名である。この点では、「公立大学化」の効果はあったと言えよう(「公立大学化」の評価は、市財政への影響や、地域の経済や社会への貢献など多面的な観点から行われるべきであるが、ここでは言及しない)。
 しかし、雇用関係が継承されなかったことのほかにも、成美大学に在籍していた学生に対するケアに関わる問題もある。このような事態の背景には、成美大学が継続していくことが困難になったもとで、ごく短期間に「公立大学化」を進めざるをえなかったことを指摘できるのではないか。
 もともと存続するには困難な条件のもとで公私協力によって誕生した大学が、「公立大学化」によって新しい発展の可能性を得たことは評価されなければならない。同時に、開学以来、16年間にわたって存続し、教育や研究を通じて地域社会に貢献してきたことも正当に評価されなければならない。しかし、さまざまな関係者の責任は不問にして、教職員のみに責任を帰したという印象をぬぐえない。
 大学は公共財であり、特定の誰かのためのものではない。そこに学ぶ学生だけでなく社会にとってもかけがえのない存在である。教職員は「学術の中心」としての大学を中心的に担う存在である。このような点で「大学界」についての市民社会の理解が深まることが、(国公私の設置形態を問わず)大学を発展させていくために不可欠であることを最後に強調したい。

(本稿は、『ねっとわーく京都』2017年10月号、11月号に連載したものを一部修正のうえで転載している)


2016年04月12日

筑紫女学園、運営で対立 教職員の95%、解任要求 理事長「手続きに問題ない」

西日本新聞(2016年04月11日)

 福岡県内で大学や中学・高校、幼稚園を運営する学校法人「筑紫女学園」(同県太宰府市)を巡り、笠(りゅう)信曉理事長と教職員の対立が深刻化している。教職員らは笠理事長が学内手続きを無視し、突然理事を解任するなど「独善的な運営が目立つ」として早期辞任を要求。一方、笠理事長は西日本新聞の取材に対し「すべて理事会の承認、決定を得ており、手続きに問題はない」と説明する。双方の溝は埋まりそうになく、泥沼化の様相を呈している。

 笠氏は法林寺(同県糸島市)住職で、学校法人「法林学園」理事長などを経て2007年から筑紫女学園の理事長。現在3期目。

 教授会などによると、笠理事長は自身の解任が議題になった理事会を前に、決議に賛同していた理事を解任したり、理事に対して利用計画の具体的な説明がないままに約3億円で土地を取得したりしたとされる。

 こうした姿勢に教授会は「学園トップとして経営判断能力に欠けている」と主張。理事長に対する不信任決議は、中学・高校の教職員も含めて昨年11月から今年3月まで計4回に上り、学園教職員の95%が賛同しているという。

 また、現理事14人中8人も教職員に賛同。理事会開催を求めているが開会に必要な10人に満たず、開けない状態が続いている。

 3月25日には、学園敷地内で笠理事長が運転する車が大学教授に接触する事故も発生。この日は定例の理事会だったが、笠理事長が当初予算などの審議をせずに退席したため、車の前に立ちはだかった男性教授の左足に接触したという。

 笠理事長は「何も不正はなく、すべて理事会の決定に沿っており、間違ったことはしていない。なぜ問題にされるのか不思議だ」と話している。

 文部科学省は「私学の自主性を重んじているので、学園の運営について介入することはできないが、子どもたちや教育に支障がないように双方で話し合ってほしい」としている。


2016年04月04日

京都精華大、差別的書き込みで60代の男性教授処分

日刊スポーツ[2016年4月1日]

 自身のブログに民族差別とも受け取れる書き込みをしたとして、京都精華大は1日までに、マンガ学部の60代の男性教授をけん責の懲戒処分にした。

 処分は2月17日付。大学は教授の名前や書き込みの内容を明らかにしていない。

 京都精華大によると、教授は14年ごろ、学生も閲覧するブログに特定の民族を中傷するようなコメントを書き込んだ。指導を受けていた学生から連絡を受けた大学側が、教授に事実を確認。書き込みは現在削除され、教授は謝罪しているという。

 大学側は、ブログに書き込まれた内容が学生の就学環境を阻害するハラスメント行為に当たると判断。赤坂博理事長と竹宮恵子学長の連名で「一切のハラスメントや差別を許すつもりはない。教職員や学生に対して啓発活動を行いたい」とするコメントをホームページで公開している。(共同)


2013年05月06日

解雇訴訟 北海道内で増加、立場弱まる大学教職員

■北海道新聞(2013年5月6日)

立場弱まる大学教職員
解雇訴訟 道内で増加

 道内で、解雇処分などをめぐり大学と元教職員が対立し、訴訟に発展するケースが急増している。道私立大教職員組合連合(札幌市)によると、解雇無効を求め係争中の訴訟は現在、少なくとも5件。一方的な給与削減が不当労働行為に当たるとして道労働委員会に救済を申し立てた事例もある。背景には、学生減に伴う経営合理化や、大学の理事会の権限が法的に強化され教職員の立場が相対的に弱くなったことがある、との見方もある。(水野富仁)

理事会の権限強化 背景

 道私立大教職員組合連合によると、解雇処分をめぐる訴訟のうち、支援などを通じ把握できているのは、1996年を最後にしばらくなかったが、ここ1~2年で一気に増加し、現在5件ある。ただ、実際にはもっと多い可能性もあるという。
 千歳科学技術大の元准教授は、経営問題についてメールで学長を批判した後に解雇されたとして、解雇無効などを求めて4月上旬、同大を提訴した。

 訴状などによると、元准教授は学長の求めに応じ、退学者減のための提案をしたが、学長が消極的だったため「もっと責任感を持ってください」などと批判的なメールを送信。大学は「教育者・組織人として適格性に欠ける」として解雇した。

 元准教授側は「大学は自由な議論が保障されている場。理事会の権限強化以前には考えられない乱暴な解雇で、無効だ」と主張。大学側は「就業規則にのっとった、正当な解雇だ」と反論している。

 北大に通算8年半非正規雇用された後、雇い止めされた元契約職員は「機械的に人材を切り捨てる雇い止めは無効だ」として2011年6月、大学を相手取り、解雇無効などを求めて提訴した。北大は「係争中につき、コメントしかねる」としている。

 このほか、専修大学北海道短期大学(美唄市)など3私立大の元教職員が解雇無効などを求め提訴している。
 一方、札幌の私大の教職員組合は、大学側か十分な労使交渉を行わないまま、期末手当の削減や定期昇給の制限を行ったのは不当労働行為にあたるとして、道労働委員会に救済の申し立てを行った。

 別の札幌の教職員組合も団交拒否などがあったとして同委員会に救済を申し立てている。
 札幌学院大経済学部の片山一義教授は「不当に解雇されても泣き寝入りしている人も多い。大学側と対立した教職員を孤立させない組織や制度の整備が急務」と説明。その上で、安易な人員整理を防ぐため大学評価制度を抜本的に見直し、第三者機関が大学運営を十分に点検できるようにすべきだと強調する。

学生減で合理化優先も

 国は2004年、民間的な発想の経営手法を活用するため、国立大を独立行政法人に移行した。05年、改正私立学校法が施行され、私大などの業務決定機関は理事会であることを明文化。「収支計算書」など財務情報の公開も義務付けた。
 いずれも経営の迅速化や透明性を高めることを目指した大学改革の一環だったが、労働問題に詳しい札幌の佐藤博文弁護士は「少子化で経営環境が厳しくなる中、権限を強化された理事会が、短期的な利益を求め、安易な解雇や給与削減などを強行するケースが増えた」とみる。
 近年、法令に抵触する恐れのある長時間労働や不当解雇を強いる「フラック企業」が社会問題化している。全国の大学教員でつくる市民団体「大学オンブズマン」(事務局・京都市)は「大学でも不当解雇などが次々表面化しており,ブラック企業ならぬ『ブラック大学』が全国的に増えつつある」としている。

18日 札幌でシンポ

 解雇処分などをめぐる、道内の大学と元教職員の対立激化について考えるシンポジウムが18日午後l時30分から、札幌市北区の北大人文・社会科学総合教育研究棟(北10西7)で開かれる。
 道私立大教職員組合連合などでつくる実行委の主催。訴訟などに発展した事例報告のほか、専門家によるパネルディスカッションを行う。資料代500円。

 問い合わせは北海道合同法律事務所
011-231-1888へ。

2010年04月16日

関学の不当解雇に抗議

大阪教育合同労働組合
 ∟●教育合同,第458号

 関学は、3月末で障がい学生支援コーディネーターの雇止め解雇を強行しました。そこで4月1日、組合は抗議行動と就労闘争に取り組みました
 20数名の組合員・支援者に応援され、就業時間になると、組合員は職場である自立支援課に赴き、「今日の仕事の指示をして下さい」と就労を求めました。……