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 カテゴリー 雇い止め問題

2022年07月14日

日本学術会議幹事会声明「有期雇用研究者・大学教員等のいわゆる「雇止め」問題の解決を目指して」

日本学術会議幹事会声明

「有期雇用研究者・大学教員等のいわゆる「雇止め」問題の解決を目指して」

 令和5年(2023年)3月末をもって、大学及び研究開発法人などで有期労働契約により研究・教育等に従事する研究者・大学教員等(以下研究者等)、数千名に及ぶ多くの人びとの雇用期間が終了し、相当数の方々が契約更新や無期転換を認められずに失職する可能性が指摘されています。この問題の解決のため、政府、大学、研究機関、日本学術会議が協力することが必要だと考えます。
 これは、平成25年(2013年)4月1日の労働契約法改正によって、労働契約が5年を超えた場合に有期労働契約から無期労働契約への転換を求める権利が認められたのに対し、さらに翌年4月1日には「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律」(その後、「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律」に改正)が制定されて、研究者等について無期労働契約への転換をする期間が5年から10年に延長されたことによって生じた事態です。この改正に際しては、平成24年(2012年)5月31日付で、総合科学技術会議有識者議員からも、大学関係者からのヒアリングなどを踏まえ、いくつかの懸念が表明され、対応の方向性も示されていました(注1)が、来年3月末で10年が経過して、任期満了に達する研究者等が発生することになりました。
 この事態については、大学・研究機関等において個別的に対応が進められており、一律で無期契約への転換を認める事例がみられる一方で、無期転換の回避を目的に、労働契約の更新を認めない(いわゆる「雇止め」)可能性もあることが指摘されています。こうした対応の違いは、当該機関のミッション、財務能力や研究者との労働契約に関する考え方の違いなど様々の要因で生じているものと考えられますが、個々の機関の判断と努力のみに委ねた場合、研究というミッションに違いがないにもかかわらず機関間で取り扱いに極端な差が生じることも懸念され、そのために生じうる知的な損失は多大なものになりかねません。
 この事態の解決を考えるにあたりもっとも重要なことは、これが個々の研究者等の労働や生活に関わる重要な権利問題であるのにとどまらず、その抜本的な再建が急務となっている日本の研究力強化にとってきわめて深刻な事態であるとの認識を、政府、アカデミア、個々の大学・研究機関等が共有し、大局的観点から抜本的な解決策を見出すことにあります。すでに進行中の研究プロジェクトの担い手が失職することによる研究の停滞等の直接的な負の影響に加えて、そもそも研究職が将来展望を抱きにくいものとなり、才能豊かな有為の若い世代の人々が学問研究に魅力を感じず、高度な研究・教育の基盤たるべき人材の確保に多大の困難をもたらしかねないことを深く認識することが求められています。
 すでに文部科学大臣からは、無期労働契約への転換を回避するための「雇止め」が労働契約法の趣旨に照らして望ましくないとの判断が示されており(注2)、各大学及び研究機関などは、そうした基本的な認識に立ったいっそうの努力を求められています。同時に、本件は、研究者等の安定的雇用の保障と流動性の確保をはかるための適切なバランスの検討、機関間の協力により研究者等の雇用を維持するための制度の確立、そのための財源の確保、他の職種とは異なる研究者に固有の労働形態というものに見合った特例的な労働契約のあり方の検討など、立法も含めて、個別機関の対応では解決しえない次元を含んでいます。
 日本学術会議幹事会は、政府とアカデミアが一体となってこの深刻な事態を解決するための取り組みを早急に行う必要があると考えます。そのために、政府の関係府省庁、国立大学協会をはじめとした大学等関係団体、研究開発法人等の関係団体、個別の大学や研究機関などの間で情報を共有し、緊密な連携のもとで事態の是正をはかるための検討が進められなければなりません。加えて、これからの日本の学術を担う、研究者等(特に若手研究者)の働き方や処遇、キャリア形成のあり方について、広く合意形成を果たすことが求められています。日本学術会議でも関係諸機関・組織とも協力してどのような取り組みが可能か、検討を進める所存です。

(注1)文部科学省ホームページ
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu10/siryo/attach/1335760.htm
(注2)文部科学省ホームページ
https://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/mext_00255.html

令和4年7月12日 
日本学術会議幹事会
会長     梶田 隆章
副会長    望月 眞弓
副会長    菱田 公一
副会長    高村ゆかり
第一部部長  橋本 伸也
第一部副部長 溝端佐登史
第一部幹事  小林 傳司
第一部幹事  日比谷潤子
第二部部長  武田 洋幸
第二部副部長 丹下  健
第二部幹事  尾崎 紀夫
第二部幹事  神田 玲子
第三部部長  吉村  忍
第三部副部長 米田 雅子
第三部幹事  沖  大幹
第三部幹事  北川 尚美

2022年04月09日

理化学研究所は約600人の研究系職員の雇止めをやめてください!

■理研非正規雇用問題解決ネットワーク
 ∟●進捗状況のご報告と更なるご支援のお願い

2022年4月8日

進捗状況のご報告と更なるご支援のお願い

キャンペーンの進捗状況

ご賛同者の皆さま

3月7日、理化学研究所 松本 紘理事長宛てに、皆さまの署名(約20,000筆)と紙での署名(約10,000筆)をもって、以下の要請を致しました。
 1.2023年3月末の約600人の研究系職員の雇止めの撤回
 2.無期転換ルールの適用を意図的に避けるための雇用上限の撤廃

しかしながら、3月23日付け松本理事長からの回答は、要請には全く応じないというものでした。

そこで、3月25日午前に、末松信介文部科学大臣、後藤茂之厚生労働大臣に、理化学研究所に対して、
 1.約600人の研究系職員の雇止めの撤回、
 2.労働契約法の趣旨に則って雇用上限を撤廃すること
を求めるよう要請しました。

さらに、3月25日午後、上記の内容について記者会見を行い、このような雇止めが理化学研究所の研究開発力の低下を招き、日本の研究力低下に拍車をかけることになることを訴えました。
記者会見以後、多くの報道機関がこの問題を取り上げております。

このような状況下で、4月1日に、五神 真 氏が理化学研究所の新理事長に就任致しました。我々理研ネットでは3月7日以降に寄せられた署名を添え、4月11日に再度、五神理事長に対して雇止めの撤回を要請致します。

理化学研究所の研究開発力を低下させる約600人の研究系職員の雇止めと、雇用上限の撤廃を求めて、引き続き署名活動を継続いたします。

皆さまの、さらなるご支援をお願いいたします。

尚、進捗状況のご報告が遅れたこと、ご容赦ください。

2022年04月08日

理化学研究所は約600人の研究系職員の雇止めをやめてください! 研究の発展のために雇用上限の撤廃を求めます。

■理研非正規雇用問題解決ネットワーク
 ∟●理化学研究所は約600人の研究系職員の雇止めをやめてください!

理化学研究所は約600人の研究系職員の雇止めをやめてください!

研究の発展のために雇用上限の撤廃を求めます。

発信者:理研非正規雇用問題解決ネットワーク 宛先:理化学研究所理事長

理化学研究所は、2023年3月末に約600人の研究系職員の雇止めを強行しようとしています。

コロナ禍のもとで雇止め・解雇の嵐が吹き荒れる中で、公的研究機関が大量雇止めを強行するなど絶対に許されません。

2013年の労働契約法18条の改正などにより、研究者は有期契約が10年を超えた場合、労働者本人の申し出があれば無期雇用契約に転換することが使用者に義務付けられました(無期転換ルール)。2016年、理研は不当にも一方的に就業規則を変更して、無期転換権を与えないために10年の雇用上限を研究者に押し付ける不利益変更を強行しました。

このため2023年3月末に約300人の研究者が雇止めになります。また、そこに含まれる研究室・研究チームの責任者が雇止めになることで、研究室・研究チームそのものが廃止となり、そこで働く研究系職員も雇止めとなります。その結果、合計で約600人の研究系職員が雇止めとなります。

厚生労働省は「無期転換ルールの適用を意図的に避ける目的で雇止めを行うことは、労働契約法の趣旨に照らして望ましくない」と国会でくり返し答弁しています。また、就業規則で労働者に不利益変更をする場合には合理的な理由がない限り認められないことが、最高裁の判例などで原則となっています。

10年の雇用上限を理由とする約300名の雇止めは、労働契約法の趣旨に反する不利益変更によるものです。これを理由に雇止めする合理的な根拠はなく、雇止めは明白な違法行為です。

約4800人の理研職員の8分の1(約600人)が一度に職を失うことは、理研の研究活動に支障が出ることは明らかです。

理研で新元素113番「ニホニウム」を発見した森田浩介さんは「当時の理研がこのような雇用制度であったとしたら、理研の研究者は自由で創造的に長期的な研究テーマに全く取り組むことができずに、私はニホニウムを発見することが出来なかった」と語っています。

 私たち理研非正規雇用問題解決ネットワークは、理研の非正規雇用問題を解決するために集まった、理研本部のある和光市の市民、労働組合、理化学研究所労働組合の役員などによる有志グループです。

趣旨をご理解のうえ、署名活動にご協力お願いします。

【要請内容】

理化学研究所は、2023年3月末の約600人の研究系職員の雇止めを撤回してください。無期転換ルールの適用を意図的に避けるための雇用上限は撤廃してください。

以上

2022年04月05日

理研600人雇い止めがネットで話題、中国への相次ぐ人材流出に政府危機感 !?

SAKISIRU(2022年4月5日)

国立理化学研究所(理研)の研究者らの“雇い止め”がネットで話題になっている。きっかけは理化学研究所労働組合(理研労)からの問題提起。労組は3月25日、厚生労働省に要望書を提出するとともに記者会見を開催。2022年度末に600人の研究者が雇い止めになる可能性があると指摘した。

理研労はツイッターでも精力的に発信。会見に先立ってこの雇い止めの問題点を次々とツイートして注目を集めている。

労組「成果が出ていないから雇い止めではない」

「なぜこれほどの大量雇止めが起きようとしているか」と題したツイートでは、「予算がないから雇止めではない」「成果が出ていないから雇止めではない」「研究者は冷遇されても文句など言わない文化」「目先の研究費を獲得するためには、これまでの人材・成果を大切にするよりそのとき限りの人材を揃える方が都合が良い」などと、理研が抱える構造的な問題点を指摘した。

さらに、今回の雇い止めで失われるものとして、「大量の世界最先端の現存研究設備・施設」「多くの研究人材」「プライスレスの研究成果」を挙げ、結果的に「莫大なお金(税金)、研究成果、人材、時間のムダ使い」となってしまうなどとツイートした。

この件を報じたNHKによると、理研は「研究所の社会的な使命や役割を踏まえつつ、労働組合との協議を含め、職員との対話を重ねてまいります」とコメントしているという。

中国人技術者「中国は日本人研究者のおかげで大国」

理研の雇いい止めについては、3日にNEWSポストセブンが配信した記事がネット上で話題となり、多くの人の知るところとなった。

この記事では、俳人で著作家の日野百草氏が中国人ITエンジニアに、日本の研究者や技術者がおかれた環境をどう見ているのかをインタビューしてまとめた。記事で、中国人ITエンジニアは「中国は日本人研究者や技術者のおかげで大国です。本当にありがたい話です」と皮肉交じりに言い放っていた。

記事を執筆した日野氏は中国人技術者のこの言葉に、「これまでも自動車、精密機械、重電、通信、鉄道、鉄鋼、農業、エンタメ、ありとあらゆる技術や研究は中国に渡った」と振り返っている。

中国が日本人を引き抜いているというより、日本側の問題を指摘する見方もある。病理専門医で科学・医療ジャーナリストの榎木英介氏は「Yahoo!ニュース個人」で、中国に渡る日本人研究者が多い理由について、「高給により研究者が次々と中国に引き抜かれているといった理由より、日本側がむしろ積極的に追い出しているというのが実情だ」との見方を示している。

日本でも研究者の価値が見直されつつある?

ただ、理研も理研労が訴えているような有期雇用による弊害を認識していないわけではないようだ。理研が2018年に、2024年度までに任期なしの無期雇用研究者の割合を現状の1割から4割に高める方針を打ち出しているのがその証左だ。

また、この4月から東京大学元総長の五神真氏が理研の新理事長に就任した。五神氏は、若手教員の「無期雇用化促進制度」や「卓越研究員制度」などを打ち出し、総長就任前8年間で16ポイントも増えていた東大の有期雇用教員割合を減少に転じさせるなど、卓越した手腕を発揮した。五神氏を新理事長に据えたのも理研、ひいては日本政府の危機感の表れだと見ることができる。

そんな中、国内に11カ所の研究拠点を持ち、約2300名の研究者が所属する「国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)」が、すべての研究者を無期雇用に切り替えたことが分かった。現在、無期雇用の新たな研究者も募集している。これも、日本政府の危機感の表れだろう。

遅まきながら、日本でもようやく研究者の価値が見直されようとしつつあるのだろうか。まずは、600人に上る理研の雇い止め研究者が、どのような処遇となるのかを注目したい。

2022年03月26日

理研で雇い止め、1年後に600人 労組が撤回要求「日本の研究力低下」 研究チームの解散、神戸が4割

神戸新聞(2022年3月25日)

 理化学研究所(理研、本部・埼玉県和光市)の職員でつくる「理化学研究所労働組合」などは25日、約600人の研究系職員が2022年度末に雇い止めになるとして、理研に撤回を求めるよう文部科学相と厚生労働相宛てに要請書を提出した。同労組の金井保之執行委員長らが文科省で会見し「日本の研究力低下に拍車を掛ける」と訴えた。

 金井委員長らによると、理研は職員の8割が非正規雇用。研究系職員は10年の雇用上限が16年に導入され、13年4月1日までに入所した人は同日が起算日とされた。このため、約300人が22年度末に雇用上限を迎える。この中には研究室主宰者が60人以上含まれており、その下で働く職員約300人も雇い止めになる。500以上ある研究チームの12%が解散し、神戸市中央区の生命機能科学研究センターが約4割の24チームを占めるという。

 会見には、対象となる研究者3人もオンラインで参加。「十数年前に入所した時には、契約を更新して研究を続けられると信じていた」「積み重ねた研究が無駄になる」「大学や企業への転出も難しく、必死に探しているが行き場がない」などと語気を強めた。

 金井委員長らは「在職者への雇用上限導入は法的に無効で、雇い止め強行は違法」と主張。訴訟も視野に入れているという。

 理研は「会見の詳細は把握していないが、社会的な使命・役割を踏まえ、労組との協議を含め職員との対話を重ねていく」とコメントした。(永見将人)

2019年01月04日

慶應大学と中央大学、非常勤講師の労働契約で違法行為…5年での無期雇用転換を拒否

Business Journal
 ∟●慶應大学と中央大学、非常勤講師の労働契約で違法行為…5年での無期雇用転換を拒否

慶應大学と中央大学、非常勤講師の労働契約で違法行為…5年での無期雇用転換を拒否

文=田中圭太郎/ジャーナリスト

 非正規労働者が同じ職場で5年以上働いた場合、無期雇用への転換を申し込む権利を得られることになった改正労働契約法が2013年4月に施行され、5年以上が経過した。

 多くの非正規教職員が働く大学では、無期雇用への転換を妨げようと雇い止めが起きていることは、以前の記事でも触れた(『日大、不当な講師一斉雇い止めで労基法違反の疑い』)。

 その後、無期転換を認める大学は増えてきたが、一方で法律を誤解しているのか、無期転換権は10年以上働かないと生じないと主張する大学が一定数ある。なかでも慶應義塾大学など一部の名門・有名大学が、強硬に主張している。何が食い違っているのか、検証してみたい。

大学関係者から届いた「無期転換は10年」のメール

 筆者が改正労働契約法の無期転換請求権について、本格的に取材を始めたのは2017年の春。多くの非常勤教職員が18年以降無期転換の権利を得る前に、雇い止めをしようとする動きが、多くの大学に見られたからだ。

 この頃、最も大きな影響が出ると懸念されたのが、8000人の非常勤教職員が働く東京大学だった。東大は、改正労働契約法に関係なく、非常勤教職員を5年で解雇できるとする独自の「東大ルール」を盾に、無期転換を回避しようとしていた。しかし教職員組合に反対され、17年12月に「東大ルール」を撤回。大量の雇い止めは回避された。

 東大の判断によって、改正労働契約法の趣旨も正しく伝わるようになり、全国の大学にも雇い止めを撤回する動きが広まった。ところが、筆者が東大を取材し、原稿を発表している頃、ある大学関係者からメールが入った。筆者の改正労働契約法に関する原稿が「誤った情報」と指摘する内容だった。

「非常勤職員の常勤職転換の権利が生じるのは5年ですが、これはあくまで一般の事務職や技術系職員に対して適用される規則です。一方、大学の研究職の職員に対しては10年とすることに変更されています。(中略)

 研究職とは大学の教員であり、研究に携わっている博士研究員などの職員のことなので、2018年にただちに雇用問題が生じるわけではありません」

 このメールには、2点の誤りがあった。1つは「常勤職転換」の部分。改正労働契約法で定めたのは無期転換を申し込む権利であり、無期転換になっても、常勤職員になるわけではない。同じ非常勤の立場と待遇のまま、無期雇用に転換できるにすぎない。

 もう1つは大学の研究職、すなわち教員に権利が生じるのは10年という部分。実際は、いわゆる非常勤講師は5年で無期転換を申し込める。しかし、10年と誤解する人がいるのは、改正労働契約法施行後につくられた特例のためだった。

「10年以上で無期転換」の誤解

 改正労働契約法が施行されたのは2013年4月。その年の12月には、大学などで科学技術に関する研究やその関連業務を行う人に限定して、無期転換請求権が発生する期間を5年以上から10年以上に延長する特例措置を設けた法律が成立した。

 これが「研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律及び大学の教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律」。いわゆる「研究開発力強化法」と「任期法」だ。

 前者の「研究開発力強化法」が成立した背景には、改正労働契約法施行の2カ月前、ノーベル賞受賞者に対する衆参議院の奉祝行事で講話をした、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長の発言がある。

 山中所長は改正労働契約法によって研究者を非常勤で5年間雇用した後、無期で雇用しなければならなくなると、大学としては5年を超えて雇用することが難しくなる、という主旨の発言をした。その結果、優秀な人材が集まらなくなるという。そうした大学側の要望を受けて法律は成立した。

 ただし、無期転換請求権の発生が10年以上に延長されるケースは限られる。専門的な知識や能力を必要とする研究開発業務に携わる職員にしか適用されない。つまり、一般の非常勤講師は対象にならないのだ。

 後者の「任期法」は、私立大学の経営者団体の要請を受けて改正された。もともとは専任教員が対象だったものを、特例として非常勤講師にまで広げたかたちだ。しかし、この法律でも、対象となる人は、多様な人材の確保が特に求められる教育研究組織に属する人、助教、プロジェクトに参加する人のいずれかに限られている。さらに、本人の明確な同意が必要になる。本来なら5年以上働けば無期転換請求権が得られる権利を剥奪することになり、契約の不利益変更になることから、大学はあらかじめ規則を定め、本人に説明して、同意書をとらなければならないのだ。

 前述のメールを送ってきた大学関係者だけでなく、多くの大学関係者がこの2つの法律を理解していない現状が続いてきたのだ。

慶応義塾大、中央大、東海大は「10年ルール」撤回拒否

 改正労働契約法施行から、すでに5年以上が経過した。ところが現在になっても、「研究開発力強化法」と「任期法」をよく理解しないまま適用し、「非常勤講師の無期転換請求権は10年以上働いてから」と主張している大学が数多くあることがわかった。

 非常勤講師の無期転換について多くの大学と交渉している首都圏大学非常勤講師組合によると、無期転換請求権は10年以上働いてからとする「10年ルール」を適用した首都圏の大学は、18年春の時点で約40大学あったという。そのうち半数近くの大学は交渉などによって「10年ルール」を撤回。5年以上の勤務で無期転換することを認めた。

 しかし、20以上の大学がいまも「10年ルール」を適用している。そのなかでも特に「10年ルール」は撤回しないと強硬に主張しているのが、慶應義塾大学、中央大学、東海大学の3大学。いずれも名門・有名大学だ。これらの大学は、法律を誤解し、必要な手続きもとっていないと非常勤講師組合の志田昇書記長は指摘する。有名大学が強硬な姿勢に出ることで、さらに誤解が広がる恐れもあるとして、組合では現在も交渉を続けている。

 「10年ルールを非常勤講師に適用している大学は、研究開発力強化法と任期法を正しく認識していません。なぜ5年での無期転換ができないのか、根拠となる見解も持っていないまま適用しています。また任期法によって10年ルールを主張している大学のほとんどが、労働基準法に則った就業規則の変更を行っていないとみられています。任期法の適用のためには就業規則の改正が必要ですが、そのために必要な過半数代表選挙に非常勤講師がほとんど参加していません。また、10年ルールによる不利益変更も充分に説明されておらず、合意書もとっていないのに、非常勤講師に任期法を適用することは違法性がありますので、すみやかに改めるべきです」(首都圏大学非常勤講師組合・志田昇書記長)

 非正規で働く人の権利を守るために改正された法律が、非常勤講師が多く働く大学では歪められ、誤って運用されている。特例措置などの法律が問題をさらに複雑にしているとはいえるが、原因は大学の人事担当者の誤解によるところが多い。過ちはすぐに正すべきではないだろうか。

(文=田中圭太郎/ジャーナリスト)


2018年12月21日

[社説]非常勤講師の切実な叫び、大学は無視するな

ハンキョレ(2018年12月20日)

「講師法」(改正高等教育法)の国会可決による大学の大量解雇の動きに対抗して、非常勤講師たちがストライキに入った。現在、韓国非正規教授労働組合の釜山大分会だけがストライキを宣言した状態だが、大々的な「構造調整」を準備する大学が多く、ストが複数の大学に広がる可能性も少なくない。すぐにも期末試験や成績処理など学事行政に支障が生じ、学生たちが被害を受けはしないか心配する声が出ている。しかし、身分保障と処遇の改善を期待したのに、逆に生存権の危機に追い込まれた非常勤講師らを責めることではない。

 講師法の主要な内容は、1年以上の任用、休み中の賃金と退職金の支給、職場の健康保険への加入などだ。国立と私立の大学は、来年8月に法が施行されれば年間3500億ウォン(約350億円)の追加費用が発生し、深刻な財政難に直面するとし、講師の大量解雇の不可避性を主張している。しかし、大学は国会、講師代表とともに6カ月にわたって講師法の具体的な内容を調整した「大学講師制度改善協議会」の当事者であった。無理に法案に同意させられたのではないため、最初から大量解雇を念頭に置いていたのではないかという疑念を抱かせる内容だ。

 講師法の施行による大学の追加費用と財政状態も綿密に追及する必要がある。国会と大学、非常勤講師側が推定する追加費用はまちまちだ。非正規教授労組は、大学の推計がすでに支給されている雇用保険料、労災保険料を重複計算するなど、2倍前後に水増しされていると主張する。大学の積立金総額が7兆ウォン(約7千億円)を超え、翌年に繰り越される未使用予算も6600億ウォン(約660億円)にものぼるなど、財政状態も悪くないと指摘する。にもかかわらず、国立大学や主な私立大学など財政的に余裕のある大学ほど、講師解雇の動きが活発なのは大きな問題だ。

 講師の大量解雇が大学教育の質を下げるだろうという懸念も持ち上がっている。各大学は、非常勤講師の数を減らすため、講義科目を統廃合したり教養科目を大幅に減らす代わりに、専任教授の講義時限数やサイバー講義を大幅に増やす案を推進しているという。学生の教育権を深刻に侵害することだ。非常勤講師らは大学の講義の70%を担当しながらも、学者や生活者として最低限の待遇も受けられなかった。大学は講師法の合意の精神を尊重し、教育機関として本来の使命に立ち返ることを望む。


2018年05月22日

大学教員、半数は非常勤 常勤も4分の1が任期付き 朝日新聞社・河合塾調査

朝日新聞(2018年5月20日)

 全国の大学の教員のうち約半数は非常勤で、常勤の専任教員も約4分の1が「特任」「特命」などの形で任期付き雇用となっていることが、朝日新聞と河合塾の共同調査「ひらく 日本の大学」で分かった。一般企業と同様、非正規や有期雇用が増えている形で、教育や研究の安定とともに、こうした教員の処遇が今後の課題となりログイン前の続きそうだ。▼34面=非常勤頼みの授業

 調査は昨年、国公私立大751校を対象に実施した。この質問に回答した659校の教員をみると、本務者(専任教員)は16万9458人、兼務者(非常勤教員)は延べ16万9164人でほぼ同数。ただ、非常勤教員は複数の大学をかけ持ちしている例もあり、延べ人数となる。また、専任教員のうち、任期付きは4万4401人だった。任期なしの専任教員は12万5057人で、全体に占める割合は約36・9%だった。

 非常勤教員の割合を国公私立別にみると、国立が34・1%、公立50・7%、私立56・8%で、私立大で特に高い。地域別にも東北36・7%、北海道40・4%、中国・四国40・9%に対し、関東甲信越56・1%と差がある。一方、任期付き専任教員は国立30・4%、公立27・4%、私立23・3%で、逆に国立が高い。競争的研究資金の支給期間に合わせ、任期を定めて雇用されるケースが国立大で特に多いためとみられる。

 文部科学省も学校基本調査で専任教員と非常勤教員の人数を調べている。その結果によると、非常勤(延べ人数)が全体に占める割合は1987年には41・2%だったが、2005年に初めて専任教員を上回り、昨年は51・5%だった。

 文科省の担当者は「少人数授業の導入や実務家教員の登用が進んだほか、専任からの差し替えなど様々な理由がある」とみる。任期付き教員の数は学校基本調査の項目に含まれていない。


2018年03月23日

東北18国公立大の無期雇用転換ルール、東北大のみ実施せず

河北新報(2018年03月22日)

 通算5年を超えて働く有期雇用者が4月以降、労働契約法に基づき無期雇用に転換を申し込めるルールについて、東北の18国公立大のうち、実質的に実施しないのは東北大だけであることが21日、河北新報社の調べで分かった。東北大は有期職員を対象とした新人事制度を新年度に導入するが、国は「無期転換とは別問題」との見解を示しており、東北大の突出ぶりが浮き彫りになった。
 18国公立大の回答は表の通り。3月末で通算5年を超えて働く有期職員がいる大学は12あり、このうち東北大を除く全11大学が無期転換の権利を認めている。現在、5年超の有期職員がいない山形大と福島大も「要件を満たせば5年を超えられ、無期転換を申し込める」などとしている。
 回答からは、各大学が雇用年数の上限を厳格に認識している姿勢もうかがえる。秋田公立美術大は上限の5年を超えて有期職員を雇用しない。弘前大や岩手大は上限5年を超えた場合は無期転換とする。岩手県立大は2014年度、上限3年を超えていた有期職員の希望者全員を無期転換した。
 東北大は雇用上限を5年と定めているが、実際には5年超の有期職員が約1000人いる。雇用継続の期待を持たせる一方、無期転換ルールは実質的に実施しない。職務などを制限する「限定正職員制度」を4月に始める予定で、勤続3年以上の有期職員669人を採用試験で合格とした。
 同制度に関し、国は昨年11月の衆院厚生労働委員会で「無期転換ルールとは別途のもの」との認識を示した。その上で「有期労働契約の乱用的な利用を抑制する」という労働契約法の趣旨を踏まえるよう求めた。
 調査は2~3月に実施。東北の全18国公立大のうち17大学から回答を得た。無回答の東北大については、これまでの取材からデータを算出した。

2018年03月11日

全国国公私立大学における有期雇用者雇い止め規定撤廃,無期転換権の確立状況一覧 

全国国公私立大学における有期雇用者雇い止め規定撤廃,無期転換権の確立状況一覧 (2018年3月11日現在)
情報をお寄せ下さい。

北海道・東北地方

北海道大(全て×)
北海道教育大(全て×)
室蘭工業大(全て無期転換権○)
小樽商科大(非常勤講師○)
帯広畜産大(全て無期転換権○)
旭川医大(全て無期転換権○)
北見工業大(△)
札幌医科大(×)
北海学園大(全て無期転換権○)
酪農学園大(全て無期転換権○)
札幌学院大(一部を除き無期転換権○)
天使大(無期転換権○)
東北大(×)
山形大(×)
弘前大(×)
宮城大学(×)

宮城教育大(無期転換権○)
秋田大(無期転換権○)

東海・北陸地区

名古屋大(×)
金沢大(事務補佐員の無期転換○)
三重大(全て無期転換権○)
愛知教育大(全て無期転換権○)
浜松医科大(全て無期転換権○)
名城大(非常勤講師○,職員×)
愛知大(非常勤講師○,職員×)
日本福祉大
(全て無期転換権○
大同大
(全て無期転換権○
愛知学院大(嘱託,臨時職員○)
桜花学園(非常勤講師○)

関西・九州地方

神戸大(非常勤講師△)
大阪大(非常勤講師10年無期転換)
大阪教育大(非常勤講師無期転換○)
奈良女子大(非常勤講師無期転換○)
京都教育大(全て無期転換権○
奈良教育大学 (無期転換権○
広島大(×)

徳島大(全て無期転換権○
神戸市外国語大(非常勤講師で10年無期転換)
立命館大(×)
龍谷大(非常勤講師無期転換○)
京都産業大(非常勤講師10年で無期転換)
神戸女子大(×)
大阪工業大(5年で無期転換○)
関西学院大(非常勤講師10年で無期転換)
京都精華大学 (5年で無期転換○)
高知大(△)
長崎県立大(雇い止め撤廃)

弘前大、雇い止め 57人 団交は平行線

毎日新聞(2018年3月11日)

雇い止め 弘前大、57人 「無期転換」来月運用 団交は平行線

 非正規労働者が5年を超えて勤務した場合、希望すれば無期契約ができる「無期転換ルール」の運用が4月から始まるのを前に、弘前大で働く非正規職員57人が今月末で雇い止めとなる。職員組合は「法の趣旨に反する」として9日、大学側と団体交渉を行ったが、話し合いは平行線に終わった。

 団交後に記者会見した組合の宮永崇史執行委員長は、「雇用期間の無期転換を求め、就業規則の見直しなどを引き続き交渉していく」と決意を語り、「雇い止めとなる職員の支援も行う」と述べた。

 一方、同大人事課のの庄司聡課長は取材に対し、「青森労働局から法的問題はないと言われた。指導があった場合は対応を検討する」と説明。「限られた予算では(雇用継続は)困難」と話した。

 弘前大の職員就業規則は、非正規職員の雇用期間を最大5年と定めている。しかし昨年10月の「学長裁定」で資格や高度な技術を持つ職員の無期雇用契約が認められた。

 同課によると、勤務期間が5年となる非正規職員は現在92人。大学側はこのうち、看護助手や臨床工学技士など35人は「学長裁定」の対象として雇用を続ける一方、残る57人は今月末で契約を終了する方針。

2018年02月09日

静岡大学教職員組合、非常勤無期雇用化啓発指導を申し入れ

■静岡新聞(2018年2月3日)

非常勤無期雇用化啓発指導を申し入れ 

 静岡大学教職員組合と、静岡県労働組合評議会は2日、同大が非常勤職員の無期雇用化について定めた条件が、有期契約労働者の雇用安定化を図った改正労働契約法の趣旨にそぐわないとして、静岡労働局に啓発指導を申し入れた。

 同大教職員組合によると、2013年4月に同法が施行され、有期契約労働者が同じ職場で通算5年を超えて働いた場合、本人が希望すれば無期雇用に転換できることが定められた。一方同大は17年3月に非常勤職員の労働条件に関する基準を改正し、無期雇用化の条件に「専門的資格等が必要」との規定を加えた。資格の例として調理師免許や秘書検定などをあげている。同組合は、「非常勤職員は事務職員や教員が中心。大学側から合理的な基準だという納得できる説明がない」としている。


2016年10月21日

東北大学、5年上限就業規則強行で非正規職員3200人以上に雇止め宣告 「私たちは解雇に慣れてない」

MY News Japan(10/19 2016)

東北大学、5年上限就業規則強行で非正規職員3200人以上に雇止め宣告 「私たちは解雇に慣れてない」

林 克明

 東北大学の非正規職員の無期転換方針にいての概要。労働契約法では、雇用期間が5年に達した有期労働者が無期転換を申し込めば自動的に無期契約になる。しかし、同大学は様々な条件を課して、無期転換のハードルを高くしている。

 東北大学が揺れている。大学側が、雇用安定を目的とした改正労働契約法の趣旨に反して、今年2月から4月にかけての説明会等で、5771名の非正規職員のうち3243人を、2018年3月から数年間で雇止めする、とあらためて宣告したからだ。背景には、短期契約を繰り返す有期契約労働者の雇用安定を図るために13年4月に施行された改正労働契約法がある。有期雇用労働者の雇用期間が通算5年に達すれば、本人が希望すれば期限のない無期契約に転換できるものだ。ところが東北大学は、非正規職員の無期転換を阻止するため、当事者の意見も聴かず5年で雇い止めとする就業規則を成立させた。同じ目的で5年雇止め規則を作った早稲田大学は刑事告訴・告発され、5年上限を撤回。多くの大学も5年上限を次々に取り下げている。また、65%の企業が5年以内の無期転換を決定、という調査もあるなかで、同大学は孤立を深めている。非正職員ら約1200名が、雇い止め反対の署名を里見進総長あてに提出するなど、反撃が始まった。


2016年06月01日

東北大、非正規教員3200人「雇い止め」? 非常勤講師労組がブログで告発

Jcastニュース(2016/6/1)

東北大学が実に3000人を超える非正規教職員を2年後に「雇い止め」しようとしている――。非常勤講師らで作る労働組合「首都圏大学非常勤講師組合」(本部:東京都豊島区)のそんな告発が、話題を集めている。

背景にあるのは、2013年4月に施行された改正労働契約法の「無期転換ルール」だ。最初の有期雇用契約から満5年経過後は、任期の定めのない無期雇用への転換を望んだ労働者は無期雇用としなければならないことを定めている。これが有期雇用の非正規雇用を大量に抱える大学法人にとって深刻な問題となり、非常勤講師などの働ける期間を最長5年に定める大学が相次いでいた。

大学当局「現在検討中です」

首都圏大学非常勤講師組合の「告発」は、2016年5月31日のブログに掲載された。それによると、東北大学は2018年以降、その時点で6年以上勤務する非正規教職員を、順次雇い止めする方針を固めたのだという。予想される対象人数は、およそ3200人。J-CASTニュースが取材した首都圏大学非常勤講師組合の関係者によると、無期雇用への転換となるのは04年の独立行政法人化のときから働いている教職員などで、各教職員にはすでに自身の雇い止め期日を知らせる文書も配られているらしい。

関係者によると、対象の非正規教職員は16年4月の学内説明会で2年後の雇い止めを通告された。ただ、説明会で配布された文書には「無期転換候補」となれる「選考基準」も示されており、それには正規職員と「同等、あるいは同等以上の成果を出すと見込まれるものであること」と記されているという。改正労働契約法の「無期転換ルール」とは異なる基準とみられる。組合関係者は

「正規と同じ仕事をして欲しいなら、正規職員を雇えばいいじゃないですか。大学側は雇い止めの理由を『無期雇用を活用するため』と言っていますが、おかしな話ですよ」
と批判する。

 ちなみに、東北大学にコトの真偽を問い合わせたが、「本学における無期転換制度については、現在検討中です」としか答は返ってこなかった。

 大学教職員の「雇い止め」問題は「無期転換ルール」との兼ね合いで、以前から話題となっている。日本の大学は非常勤講師やTA(ティーチングアシスタント)といった非正規の教職員を多く抱えている。彼らのほとんどは大学と有期雇用契約を結び、1年ごとに契約を更新する。契約期間を過ぎれば契約を解除されてしまう不安定なポストだ。

そんな非正規教職員の数はここ数年右肩上がりだ。文部科学省が15年3月31日に発表した資料「大学教員の雇用状況に関する調査」によると、07年度から13年度の間に任期付きの教員が4000人も増えている。教員数全体に占める任期付き教員の割合は27%から39%に上昇。逆に、無期雇用の教員は約1400人減った。

3年前に「ブラック企業」特別賞を受賞

この傾向は若手教員の間で顕著だ。30歳以上35歳未満の教員の場合、任期付きは07年度の1618人から13年度には2493人に、35歳以上40歳未満は1650人から2899人に急増している。

大学は雇用の安定化を図るため、有期雇用の教職員を活用する方針に切り替え始めた。ところが、「無期転換ルール」によって大学側は逆に、大量の無期雇用を抱えるリスクを背負ってしまったわけだ。

無期雇用の急増は避けたい――。そう考えた多くの大学が、労働契約法が改正された13年頃から学内の就業規則を変えるなどして非正規教職員の雇用年数を最長5年に定め始めた。

早稲田大学など一部の大学では、これに反発する教職員労働組合が大規模な抗議活動を展開した。こうした活動も作用したのか、16年までに多くの大学で5年の上限は撤廃されている。早稲田大も15年11月に組合と和解し、撤回した。そんな中、突如持ちあがった東北大の通告。組合の関係者は

「こんなことやっていいのかと思います。時代に逆行していますよ」
と呆れ返る。

なお、今回の件と直接の関係はないが、東北大は13年6月27日発表の「第2回ブラック企業大賞」で、研究職員の過重労働を理由に、教育機関としては唯一「ブラック企業」特別賞を受賞している。


東北大学が非正規教職員3200名以上に雇止め通告

首都圏大学非常勤講師組合・速報
 ∟●東北大学が非正規教職員3200名以上に雇止め通告

東北大学が非正規教職員3200名以上に雇止め通告

改正労働契約法「無期転換」妨害のため「一律に5年上限」

東北大学は、3200名以上の非正規教職員に2年後以降、5年継続して勤務した非正規教職員を解雇することを通告しました。
その大半は恒常的業務に従事している職場で必要とされている人たちです。
以前は、3年上限が原則とされていましたが、実際には4年以上勤務する人が大半でした。

ところが、大学は、改正労働契約法が施行されると、このままでは非正規教職員が2年後には大量に無期契約に転換することを恐れ、2014年以降に「後出し」で就業規則を変えて、厳密な一律5年上限に労働条件を不利益に変更しました。
しかも、2013年4月1日から遡ってカウントして、以前からつとめていた非正規教職員の大半を雇い止めしようというものです。

東北大学当局は、「優秀さ」を基準にごく一部の職員を無期転換させ、残りの非正規職員は雇い止めにすると公言しています。

2016年2月16日の文書によれば、正規職員と「同等、あるいは同等以上の成果を出すと見込まれるものであること」が「無期転換候補者」の「選考の目安」としています。これは雇用の安定を目指す改正労働契約法の趣旨を全く無視した違法行為と言わざるを得ません。

これに対して、東北大学職組は「希望する人全員を無期雇用に」というポスターを作成しました。東北非正規教職員組合と首都圏大学非常勤講師組合は、共同で団体交渉を要求しています。

民間企業では大半が5年で無期転換を受け入れる意向で、前倒しで無期転換を進める例も増えています。
5年で雇い止めにするという悪質な企業は少数派になりつつあります。
国公私立大学でも、早稲田大学を初めとして大半の大学が非常勤講師に対する「5年上限」を撤回しています。また非正規職員に関しても徳島大学や信州大学では無期転換を認めることを表明しています。
国立高専(全国で52校)は2年後の非正規教職員の無期転換を就業規則に明記しています。

国公立大学は、法人化されたといっても、国家予算によって運営されている教育研究機関であり、誰よりも法令遵守が求められる立場にあります。
当然、改正労働契約法の趣旨を尊重し、2年後には恒常的業務についている希望者を全員無期転換すべではないでしょうか。

とりわけ、東北大学は、国大協の会長を出している代表的な大学であり、全国に大きな影響を与えるため、今後の展開が注目されます。


2016年03月15日

英和大 元職員らと和解

NHK甲府放送局(3月14日)

甲府市の山梨英和大学が非正規雇用の職員と講師の2人の雇用を一方的に打ち切ったのは不当労働行為だとして、2人が加入する労働組合が県の労働委員会に救済を申し立てていた問題で、大学側が解決金を支払うことなどで和解しました。

県の労働委員会に不当労働行為の申し立てを行っていたのは、山梨英和大学に勤務していたいずれも非正規雇用で30代の元職員と60代の元講師の2人が加入する労働組合です。
2人は去年3月末「一方的に雇用契約を打ち切られ雇い止めされた」として、労働組合が雇い止めの取り消しを求めていました。
これに対し大学側は雇い止めではなく契約に基づいたものだと主張していました。
労働委員会で調査や協議を続けた結果、大学側は、雇用契約は結ばないものの2人に解決金を支払うことなどで和解が成立したということです。
労働組合の河村厚夫執行委員長は「非正規労働者の雇い止めが問題となる中、双方が納得して和解が成立した点はよかった」と話しています。
山梨英和大学は「和解を受け入れたとしかお答えできません」とコメントしています。


2015年09月12日

安保法案、北星学園が批判する声明 広報に掲載

毎日新聞(2015年09月11日)

 北星学園大などを運営する学校法人北星学園(札幌市厚別区)が、安全保障関連法案について「日本国憲法の平和主義を理念上も実践上もないがしろにするもの」などと批判する声明を理事会で決定し、10日から配布した学園広報に掲載した。大学運営法人によるこのような声明は異例。

 声明は「戦後70年にあたって」と題し、本文で「立法手続きにおいては立憲主義を毀(こぼ)つもの」と法案の審議過程に疑問を呈した。さらに「戦後日本が立脚してきた憲法と民主主義が、大きな危機にさらされている」と懸念している。

 北星学園は戦後50年の1995年、「戦争で、アジアの人々に与えた多くの被害・苦しみを痛感し、その責めにこたえていく」とした平和宣言を発表。今回の声明では当時の「平和宣言にこめられた精神をあらためて確認する」とした。


2015年04月08日

組合活動した大学の外国人講師7人雇い止め、「ユニオンの排除が目的か」弁護士が批判

弁護士ドットコム4月7日

東京・豊洲などにキャンパスがある「芝浦工業大学」で英語を教えていたが、3月末に雇い止めになった外国人の元非常勤講師7人が4月7日、厚労省記者クラブで会見を開いた。元講師たちは、カリキュラムの変更を理由に雇用契約が更新されなかったのは無効だとして、雇用の継続を訴えた。

7人は労働組合を結成して、大学側と労働環境の改善に向けた交渉をしていた。7人を支援する弁護士は「ユニオンを排除するためにカリキュラムを変えたのではないか」と語っている。

記者会見を開いたのは、雇い止めになった外国人の元講師7人と、7人が所属する全国一般東京ゼネラルユニオンの顧問弁護士をつとめる指宿昭一弁護士ら。元講師のアムジッド・アラムさんは「私には妻と娘がいるが、この仕事がなくなるのは大きな打撃だ」と訴えた。

●「もう一度エントリーしても書類選考で落とされた」

会見での説明によると、7人は、1年ごとに契約を更新する非常勤講師として、同大学に勤務していた。彼らは、最近のニュースや、それぞれの講師が関心を持っている話題を英語で教える授業を週3コマほど受け持っていた。


授業を教える一方で、2013年に労働組合(ユニオン)を結成し、期間の定めのない雇用への切り替えや、授業のコマ数の増加といった要求を、ストライキやビラ配りなどによって大学側に訴えていた。

ところが、2014年の春、「あと1年で授業のカリキュラムが変わる。今後は、英語の文法を日本語で教える授業を増やす」と言い渡され、2015年3月31日付けで雇い止めをされたという。

雇い止めの理由について、指宿弁護士は「大学の主張としては、カリキュラムが変わったので辞めてもらうということだったが、外国人の非常勤講師で、組合員でない人の中には雇用を継続されている人もいる。ユニオンを排除するためにカリキュラムを変えたのではないか。もう一度大学で働きたいとエントリーしても、書類選考で落とされて、面接すらしてもらえなかった」と語り、大学の対応を批判した。

元講師のコーネリア・クルツさんは「私の授業が役に立ったと言ってくれる生徒もいた。芝浦工業大学で教えることが大好きだったので、ぜひまた働きたい」と語った。

2014年10月30日

金城学院大学雇止め裁判、控訴審と和解調停の報告

名城大学・金城学院大学 非常勤講師裁判 HP
 ∟●金城学院大学雇止め裁判(2014年(ネ)第255号地位確認等請求事件)  控訴審と和解調停の報告

2013年07月23日

私大連合は私大有期労働者の適用除外要望(文科大臣宛 6 月 26 日)を取り下げよ

首都圏大学非常勤講師組合
 ∟●第4号ビラ(早稲田大学は脱法行為・クーリング意向調査を中止すべきです) (2013.07.19)

私大連合は私大有期労働者の適用除外要望(文科大臣宛 6 月 26 日)を取り下げるべきです
早稲田大学は脱法行為(クーリング意向調査)を中止すべきです

早稲田大学法学部が実施したクーリング意向調査(7/3)は、違法・脱法行為です。

早稲田大学法学部は、7月3日、英語科目の担当講師を招集した会合で、「今後の授業計画に関するアンケート」を配布しました。最近の法改正に伴い「早稲田大学では勤続5年をもって非常勤講師との契約を更新しない方針を発表しました。ただし、一旦6か月の休職期間を置いたのち再契約を結ぶという方針が示されています。」と明記し、「上述の『5年』の限度について、どの学期においてカウントをリセットするための休職期間をお取りになりたいと思いますか」と尋ねています。クーリング期間経過後の再雇用を約束して、クーリング期間を申請させるこのようなやり方は、「雇止めを恐れる労働者に、労働契約法の無期転換申し込み権の放棄を強要する状況を招き」かねない行為であり、「法第18条の趣旨を没却するもので、…公序良俗に反し、無効と解されます」(労働契約法改正時の労働基準局長通達 基発0810第2号)。また、このアンケートは、クーリング期間の設定により、これまで継続してきた契約が終了し、期待権などの既得権が消失することを隠し、不利益変更を受忍させようとする悪質なものです。早稲田大学理事会は、「5年以内で半年間の空白期間を設けてローテーションを組んでいきたい。どういう順番で6か月の空白期間を作るか、教務主任会等で話し合いながら進めている」としており(早稲田大学教員組合広報紙 №.1377)、この脱法行為の責任は理事会にあります。早稲田大学は、クーリング意向調査を直ちに中止するとともに、改正労働契約法の趣旨に反するすべての行為を断念するべきです。

私大連合が、労働契約法適用除外=法の潜脱の合法化を要望(文部科学大臣宛6月26日文書)

日本私立大学団体連合会(私大連合)は、6月26日、文部科学大臣に対して、「私立大学における有期契約労働者については、無期労働契約への転換ルールの適用から除外するなど、弾力的な運用が可能となるよう強く要望する」文書を提出しました(「『労働契約法の一部を改訂する法律』に関する要望について」)。無期契約転換ルールの適用除外(労働契約法18条)以外を含む弾力的な運用を要望しており、19条、20条を含む適用除外に繋がりかねません。この要望は、早稲田大学などの私大経営者が、改正労働契約法の潜脱行為が社会的非難を浴びる中で、政府に法潜脱を認めさせようとしているものです。有期契約労働者の雇用安定化は、教育労働者にこそ必要とされています。労働契約法は、非常勤講師にも完全に適用されるべきです。


2013年07月15日

国連社会権規約委員会「日本に対する第3回総括所見」、改正労働契約法5年雇い止め問題に懸念と勧告

社会権規約委員会:日本に対する第 3 回総括所見
関西圏大学非常勤講師組合、『非常勤の声』2013.7.6 第36号

Committee on Economic, Social and Cultural Rights E/C.12/JPN/CO/3
Concluding observations on the third periodic report of Japan, adopted by the Committee at its fiftieth session (29 April-17 May 2013)

16. The Committee is concerned at abuse of fixed-term contracts by employers as well as at the vulnerability of workers with such contracts to unfavourable conditions of work, in spite of the incentives offered by the State party encouraging employers to use the same system evaluation and qualification for all employees irrespective of the nature of their contracts. The Committee is also concerned at cases where employers avoid the conversion of fixed-term contracts into open-ended contracts, as introduced under the revised Labour Contract Act, by not renewing them. (arts. 6, 7)

The Committee recommends that the State party take measures to prevent the abuse of fixed-term contracts, including by establishing clear criteria applicable to them. Referring to the State party’s obligation to ensure equal remuneration for work of equal value, the Committee also recommends that the State party monitor whether the system of financial incentives achieves the objective of preventing unequal treatment of workers with fixed-term contracts. Furthermore, the Committee calls on the State party to strengthen and monitor the enforcement of the Labour Contract Act so as to prevent that contracts of fixed-term workers are unfairly not renewed.

16.委員会は、契約の性質に関係なくすべての被用者について同一の評価・能力認定制度を活用するよう促す奨励策を締約国がとっているにも関わらず、使用者によって有期契約が濫用されており、かつ、有期契約労働者が不利な労働条件を課されやすい状態に置かれていることを懸念する。委員会はまた、使用者が、有期契約を更新しないことにより、改正労働契約法で導入された有期契約から無期契約への転換を回避していることを懸念する。(第 6 条、第 7 条)

委員会は、締約国が、有期契約に適用される明確な基準を定める等の手段により、有期契約の濫用を防止するための措置をとるよう勧告する。同一価値労働について平等な報酬を確保する締約国の義務を参照しながら、委員会はまた、締約国が、有期契約労働者の不平等な待遇を防止するという目的が奨励金制度によって達成されているか否かを監視するよう勧告する。さらに、委員会は、有期契約労働者の契約が不公正に更新されないことを防止するため、労働契約法の執行を強化しかつ監視するよう、締約国に対して求める。


2013年07月01日

解雇に脅える中国人非常勤講師たち、改正労働契約法の悪用

Record China 6月29日

 2013年6月27日、日本華字紙・中文導報によると、今年4月1日から施行された改正労働契約法により、日本の大学で働く中国人非常勤講師たちは大量解雇の危機に直面している。

 改正労働契約法によると、契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなど、期間が契約で決まっている「有期雇用」の労働者が同じ職場で5年を超えて働くと、希望すれば期間の定めがない「無期雇用」に転換が可能に。これに対抗する形で、日本の多くの大学が非常勤講師の雇用期間を「上限5年」に定めた。

 非常勤講師の雇用契約期間を「通算5年まで」とする就業規則を制定しようとした早稲田大学は、首都圏大学非常勤講師組合から告訴されている。早大には2012年の時点で、約4300人の非常勤の教員が存在。そのうち約3800人が非常勤講師だった。これに対して、教授、准教授などの専任は約2200人。つまり教員の3分の2が非常勤であり、就業規則の制定は大きな影響をもたらす。

 非常勤講師のいわゆる「5年切り」は、早稲田大学だけでなく、その他の国公私立大学にも拡大。このため、首都圏や各都市の大学非常勤講師組合、学識者、大学関係者などを集めて、改正労働契約法の悪用を阻止する動きも活発化している。日本の大学で働く非常勤講師のなかには中国人も多い。専門家の試算によると、日本全国にある大学740校のうち1校あたり平均で10人の中国人講師が存在することから、全体で7400人ほどの人数になるという。そのうちの半数以上が非常勤講師である場合、少なくとも4000人の中国人講師が「5年切り」の陰に脅えて生活しており、事態は深刻だ。(翻訳・編集/本郷)


2013年06月24日

大学、5年でクビ? 非常勤講師、雇い止めの動き

朝日新聞(2013年6月15日)

大学非常勤講師に「雇い止め」の動き

 【吉田拓史、牧内昇平】有力大学の間で、1年契約などを更新しながら働いてきた非常勤講師を、原則5年で雇い止めにする動きがあることがわかった。4月に労働契約法(労契法)が改正され、5年を超えて雇うと無期契約にする必要が出てきたからだ。

■無期契約 避ける狙い

 法改正は、有期契約から無期契約への切り替えを進め、雇用を安定させるためだ。だが講師たちは生活の危機にある。朝日新聞の取材で、国立の大阪大や神戸大、私立の早稲田大が規則を改めるなどして非常勤講師が働ける期間を最長で5年にしている。

 大阪大と神戸大は、その理由を「法改正への対応」と明言。無期への転換を避ける狙いだ。有期の雇用契約の更新を繰り返し、通算5年を超えた場合、働き手が希望すれば無期契約に切り替えなければならなくなったからだ。

 早大は、3千人以上の非常勤講師を徐々に減らす方針で、「長期雇用の期待をもたせられない」(清水敏副総長)。もともと非常勤講師以外の有期職員は上限が5年。これに合わせることも考えていたという。

 一方、国立の徳島大などは、労働組合や指導現場と協議して上限を設けなかった。「地方大学は、5年で一律に辞めさせたら講師が確保できない」(徳島大)という事情もある。首都圏大学非常勤講師組合(松村比奈子委員長)によると、多くの大学が当初、契約期間の上限設定を検討したが、講師らとの協議で、撤回する例が相次いだ。

 松村委員長は「解雇しにくいという理由で大学は無期転換をいやがる。だが、非常勤講師は特定の授業をするために雇われ、その授業がなくなれば解雇される。無期転換を拒む理由はない」と主張する。一方、大学側は「担当の授業がなくなっても雇用継続を主張する人も出てくる」(大阪大)と警戒する。

 こうした問題を受け、政府は成長戦略で、研究者などへの労契法適用に関する課題を検討することを決めた。労契法に特例を設けるのか、別の制度で対応するのか、文部科学省と厚生労働省で検討していく。


2013年03月30日

准教授に昇任できず…雇い止め不当 女性助教が京産大提訴

■産経(2013/03/29)1

 准教授への昇任の審査基準を満たしながら、助教としての契約が終了したとして雇用を打ち切られるのは不当として、京都産業大文化学部の女性助教(40)が28日、同大を相手取り、地位確認などを求めて京都地裁に提訴した。

 訴状によると、女性は平成20年に任期5年の同大の助教として採用された。同大は今年3月末の任期満了に伴い、女性に対し雇用契約を終了すると通知。

 女性側によると、学部内の規定に基づいた准教授への昇任基準を満たしているが、同大側は「(基準となる)論文の内容が昇任にふさわしくない」などとしているという。

 この日、京都市内で会見した女性は「恣(し)意(い)的(てき)な判断で昇任が認められない先例ができ、助教の雇用が不安定になる」と話した。

 同大学長室は「訴状が送達されておらず、詳細はコメントできない」としている。


2012年06月09日

雇い止め、九女短大の元女性講師、契約解除無効と地位保全を申し立て

■毎日新聞(2012年06月09日地方版)

 九州女子短大(八幡西区)に雇い止めされたとして、短大の元女性講師(36)=福岡市東区=が8日、運営先の学校法人福原学園(同区)を相手に、地位保全と給与支払いを求める仮処分を地裁小倉支部に申し立てた。

 申立書によると、女性は昨年4月から1年間の契約で子ども健康学科の講師に就任。短大側の要請で、我が子を夜間保育が可能な保育園に転園させるなどした。だが今年3月、「子育てで残業に対応できない」などの理由で3月末での契約終了を通知されたといい、職場復帰と4月以降の賃金の支払いを求めている。

 記者会見した女性の弁護団は「契約は1年間だが、同短大では3年間継続して雇用する慣例があった」と主張。福原学園の担当者は取材に対し「女性は契約期間の満了により退職したと認識している」と話した。


子供いて残業できない…大学の契約打ち切り 女性元講師が仮処分申し立て

■産経新聞(2012.6.8)

 北九州市で大学や短大などを運営する学校法人福原学園が雇用契約の更新を不当に打ち切ったとして、元講師の女性(36)=福岡市東区=が8日、地位回復と契約を打ち切った今年4月以降の賃金を学園に求める仮処分を、福岡地裁小倉支部に申し立てた。

 代理人の弁護士によると、女性は昨年4月から、学園が運営する九州女子短期大学=北九州市八幡西区=で講師として勤務していたが、2歳の子供がいて残業に対応できないことなどを理由に今年3月、契約終了を通告された。

 大学が学生に配布した4月からの時間割には女性の名前が掲載されていたという。申し立て後に北九州市内で記者会見した女性は「午後8時まで利用できる保育園を探し、残業する環境は整えていた。納得できない」と訴えた。

 学園は「内容を把握していないのでコメントできない」としている。

2012年03月07日

嶋田ミカさんの裁判支援のお礼と改めてのお願い

嶋田ミカさんの裁判支援のお礼と改めてのお願い

龍谷大学に働くみなさん
京滋地区の大学・短期大学に働くみなさん

 すでにご存知のことと思いますが、2011年12月22日、嶋田ミカさんが学校法人龍谷大学を相手に起こした地位確認等請求裁判の「和解」が成立しました。この裁判は、嶋田さんが、特別任用教員(助手)として採用される際「任用期間を3年とし、更新することができる。ただし、2期を超えることはできない」と示されていたにも拘らず、一方的に2010年3月末で雇用を打ち切られ、やむなく同年7月に京都地裁に提訴したものです。
 「嶋田ミカさんの雇用継続を求める会」は、龍谷大学教職員組合ならびに京滋地区私立大学教職員組合連合の協力をえながら1年9か月にわたって嶋田さんの支援に取り組んでまいりました。この度、学校法人の英断もあって、和解が成立しました。ご支援いただいたみなさんに、この場を借りて感謝の気持ちをお伝えいたします。この和解は、大学における有期雇用問題の解決に一石を投じたといえましょう。
 さて、嶋田さんの裁判は終わりました。嶋田さんは学内に戻って1年間ではありますが、新しい職場で勤務することとなります。嶋田さんは2010年4月以降、定職につくことはできませんでした。裁判を始めるにあたって、組合員である嶋田さんは龍谷大学教職員組合から「借入」という形で着手金の支援を受けましたが、これについては返済が必要です。また、弁護士に対して裁判費用を支払わなくてはなりません。嶋田さんはこの間、収入が途絶えていたのであり、簡単に資金をねん出することはできません。
 しかし、嶋田さんの裁判を支援した一般の方の多くは、非正規雇用や失業中の方々です。「求める会」はカンパを呼びかけず、もっぱら傍聴に力を入れてきました。その取り組みが功を奏し、傍聴席はいつも満席でした。
 裁判が和解という形で決着した今、原告である嶋田さんが一人で裁判費用を負担するのではなく、何とか組合員、教職員のみなさまのお力で嶋田さんを支援いただけないでしょうか。そのようなことから、龍谷大学教職員組合ならびに京滋地区私立大学教職員組合連合のご理解を得て、龍谷大学に働くみなさん、京滋地区の大学・短期大学に働くみなさんにカンパを呼びかけるものです。募金の振込先等については、別項に記載してございます。
 どうか趣旨をご理解いただきまして、ご協力いただきますようお願いいたします。

*発起人
田中宏(龍谷大学元特任教授、同大学元教職員組合員、
嶋田ミカさんの雇用継続を求める会代表)

*呼びかけ人
由井 浩(龍谷大学教職員組合委員長)
景井 充(京滋地区私立大学教職員組合連合委員長)
村岡 倫(龍谷大学文学部)
大林 稔(龍谷大学経済学部)
角岡賢一(龍谷大学経営学部)
石井幸三(龍谷大学法学部)
谷垣岳人(龍谷大学政策学部)
村澤真保呂(龍谷大学社会学部)
清水耕介(龍谷大学国際文化学部)
玉木興慈(龍谷大学短期大学部)
萩屋昌志(龍谷大学法務研究科)

【カンパの振込先等について】
 ・以下の郵便振替口座にご送金ください。
   口座名義  嶋田ミカさんの雇用継続を求める会
   口座番号  00970-5- 328243
 ・郵便振替用紙の受領書でもって領収書に代えさせていただきます。領収書がご入用な場合には、会の事務局までご連絡いただくか、郵便振替用紙にその旨をご記入ください。会の連絡先は、以下のとおりです。
   e-mail:s.koyokeizoku@gmail.com     
 ・カンパのご報告は、「嶋田ミカさんの雇用継続を求める会」のウェブサイトで行わせていただきます。URLは、以下のとおりです。
   http://skoyokeizoku.jimdo.com/
 ・恐縮ですが、2012年3月末までのカンパにご協力いただけるとありがたく存じます。


2011年12月23日

龍谷大雇い止め事件、和解成立

嶋田ミカさんの雇用継続を求める会

いつも嶋田さんの裁判をご支援いただき、ありがとうございます。

2011年12月22日、京都地裁で大学側との和解が成立したことをご報告します。100%の内容ではありませんが、嶋田さんが裁判で求めてきた「雇止め解雇撤回」と「職場復帰」を勝ち取ることができました。有期雇用に厳しい司法判断を考えると、大きな成果だと思います。

和解の詳細については、今月26日の記者会見の後、HPにアップしますので、ご覧ください。併せて京都在住の方は、27日の各紙京都版にもご注目ください。

今回の和解について、下記のように報告会を予定しています。また、報告会終了後、ささやかですが懇親会を開きます。報告会および懇親会にお越しください。

・「なんで有期雇用なん!?ネットワーク龍大支部集会 嶋田さん裁判報告会」

・日時:2012年1月16日(月)18時30分

・場所:龍谷大学大宮キャンパス 東黌(とうこう)101教室

http://www.ryukoku.ac.jp/about/campus_traffic/traffic/t_omiya.html

・懇親会:20時~興正寺会館(龍谷大学大宮キャンパス横、参加費無料)


2010年07月31日

サイト紹介、「嶋田ミカさんの雇用継続を求める会」

嶋田ミカさんの雇用継続を求める会
嶋田ミカの雇い止め日記

「嶋田ミカさんの雇用継続を求める会」賛同人のお願い

「嶋田ミカさんの雇用継続を求める会」
代表 田中 宏

 龍谷大学特別任用教員助手の嶋田ミカさんが、本年3月、「雇い止め」を通告されたことをご存知ですか。嶋田さんは2007年4月に経済学部サービス・ラーニング・センターに3年契約(1回更新可)の助手として採用されましたが、大学当局から何らの理由も明らかにされることなく、単に「期間終了」というのみで解雇されました。大学当局の行為は、とうてい納得のできるものではありません。
 嶋田さんは民際学の研究者としての業績だけでなく、インドネシアの貧困女性を対象にマイクロ・クレジットを供与するという地道な活動も続けています。嶋田さんのこうした研究業績や実践がサービス・ラーニング・センター助手の仕事にも生かされたことは、いうまでもありません。
 龍谷大学は、建学の精神(浄土真宗の精神)に基づく、すべての「いのち」が平等に生かされる「共生(ともいき)」の理念を掲げています。「人間のポイ捨て」に等しい今回の雇い止めは、この建学の精神に合致しているとは思えません。
 この間、嶋田さんは、龍谷大学教職員組合を通じて大学当局と交渉を続けてきましたが、大学当局の態度は全く変わりませんでした。嶋田さんは今回の雇い止めは、あまりに理不尽であると考え、やむなく、7月5日、京都地方裁判所に提訴することにしました。
 最近、多くの大学で所謂「高学歴ワーキングプア」と称される非正規の教員が増加し、理由なき有期雇用や「雇い止め」が横行しています。しかし、ほとんどの人が次の就職などを考え、泣き寝入りせざるを得ないという現状です。
 この流れを止めるためにも自分が声をあげなければという嶋田さんの堅い決意に対して、私たちは「嶋田ミカさんの雇用継続を求める会」を発足させて、全力で支援していこうと考えています。嶋田さんの闘いを支えるために、この会の賛同人になっていただきますようお願い申し上げます。賛同していただける方は、「賛同人申し込みフォーム」にご記入の上、メールかFAXで下記の事務局に送ってください。
 7月5日、皆様のご支援を得て、京都地裁への提訴を終え、

 裁判の日程も決まりました。 

 8月20日(金)午後1時20分


2010年07月27日

熊本大学における特定有期雇用職員の正職員化について

■「意見広告の会」ニュース488より

熊本大学における特定有期雇用職員の正職員化について

熊本大学教職員組合執行委員長 伊 藤 正 彦  7月17日

 熊本大学は,2010年3月30日の役員会において特定有期雇用職員制度を廃止することを決定し,同年4月1日に医学部附属病院の特定有期雇用職員390名の正職員化が実現した。特定有期雇用職員の雇用期限見直し・正職員化は,2008年度以来,熊本大学教職員組合が賃金切り下げ問題とならぶ最重要課題として取り組んできた問題であるが,この成果はけっして熊本大学内のみにとどまることのない大きな意義を有している。

 看護師だけでなく医療技術職員をふくめて正職員化し,特定有期雇用職員という医療職の非正規職員制度を廃止した(パート職員は除く。したがって,2010年度以降,熊本大学医学部附属病院で採用される医療職員は,パート職員を除いて全員が正職員となる)のは,全国の国立大学附属病院において初めてのことである。今回の正職員化は,390名という規模もさることながら,この意味においてこそ画期的な成果といえる。全国的にもマスコミ(共同通信社など)や組合組織(全労連など)から注目を受けたのは,そのためであろう。

 この画期的な成果は,どのようにして実現したのか。本報告では,実現に至るまでの取り組みと運動の特徴等を整理するとともに,今後の課題を確認することにしよう。

(以下は「新首都圏ネット事務局」記事をご覧下さい。www.shutoken-net.jp)  

2010年04月14日

熊本大学教職員組合、組合の取り組みの大きな成果 特定有期雇用職員の正職員化実現に多くの喜びの声

熊本大学教職員組合
 ∟●赤煉瓦、No.35

組合の取り組みの大きな成果、
特定有期雇用職員の正職員化実現に多くの喜びの声!!
「特定有期雇用職員の正規職員化に関する説明会」報告

 組合は、3月18日の経営協議会の審議結果を受けて「特定有期雇用職員の正職員化に関する説明会」を3月23日に開催しました。当日は、医療技術職員を中心に、特定有期雇用職員、正規職員、また、組合員、非組合員を問わず多くの方が参加されました。
 また、ご多忙中にも関わらず、猪俣附属病院長にご出席いただき、正規職員化は附属病院にとってもたいへん喜ばしい事であるとご挨拶をいただきました。
 説明会では、伊藤執行委員長が、実現までの経緯と今後の課題について報告しました。……


2010年04月05日

熊本大学教職員組合、画期的な成果 付属病院で特定有期雇用職員制度を廃止し全員正規職員へ

熊本大学教職員組合
 ∟●『赤煉瓦』No.30

画期的な成果!!
2010 年4 月から附属病院の
特定有期雇用職員を正職員化
― 2 月1 日団体交渉・
2 月4 日附属病院長交渉報告 ―

  3 月11 日の総合企画会議において、2010 年4 月から附属病院の特定有期雇用職員(2009 年7 月時点で335 名[看護師278 名、医療技術職員57 名])を正職員とする(特定有期雇用職員制度は廃止)ことが決定されました。最終的には、3 月18 日の経営協議会の審議を経て、3 月24 日の役員会で決定されます。
  組合は、特定有期雇用職員制度導入の当初から、待遇改善の必要性を訴え、とくに今年度は、2011年度末に雇用期限を迎える方もいることから、早急に雇用期限を撤廃すること、正職員化することを強く求めてきました。
  今回の決定は、これまでの組合活動の大きな成果です。当事者の方々はもちろん、関係する多くの方々にとっても、ようやく安心して働ける環境が整い、さぞ感慨深いものであることと思います。……


[新聞報道]
看護師ら390人、非正規を廃止 熊大付属病院
熊本大、短期看護師ら正職員化 大学病院の人材確保狙う