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2020年09月25日

追手門学院の職員研修が裁判に-「無能な社員はいらないから」…企業の「ブラック研修」がヤバすぎる

2020/9/24(木)
現代ビジネス

「無能な社員はいらないから」…企業の「ブラック研修」がヤバすぎる

追手門学院の職員研修が裁判に

 学校法人追手門学院で行われていた「ブラック研修」が話題となっている。

 報道によれば、学校法人追手門学院は、2016年8月22日~26日、追手門学院大学の事務職員など18人を大阪市内のビルに集め、「自律的キャリア形成研修」を開催した。その研修の場で、外部の講師が「腐ったミカンは(職場に)置いておけない」といった人格否定の言葉を、受講者に向けて繰り返し発したという。

 被害者の証言によれば、「5日間40時間にわたる研修で『パワハラ言葉』のシャワーを浴びせられ、精神が削り取られるようだった」(朝日新聞2020年8月20日)という。結局、この男性はその後出勤できなくなり、うつ病と診断され休職した。

 このような「ブラック研修」は、職員たちのスキルアップを目的とするものではなく、精神的に追い詰めて退職させるためのものであると考えられる。実際に、講師は受講者の退職を前提にしていて、「(今から頑張ろうと思っても)時すでに遅し」と繰り返したという。

 被害者たちは今年8月、損害賠償や職員の地位確認などを求めて大学側を提訴した。

 私は労働問題を扱うNPO法人POSSEの代表として、年間1500件以上の労働相談に関わり、これまでに「ブラック研修」に関する相談も多数受けてきた。そうした実務経験から、今回の追手門学院の事件は「氷山の一角」にすぎないと断言できる。

 さらに、世の中に存在する「ブラック研修」は「辞めさせるための研修」だけではないということも指摘したい。社員を従わせて、違法・過酷な労働に従事させるための「洗脳研修」も多くの企業で行われているからだ。

 なぜ企業は、不合理で血も涙もない「ブラック研修」を繰り返しているのだろうか? 「ブラック研修」の実態や企業側の論理について紹介し、対処法についても解説していきたい。

「ブラック研修」の悲惨な実例

 追手門学院の事例のような「辞めさせるため」のブラック研修は、以前から「ブラック企業」の手口として問題になってきた。ブラック企業では若い社員を大量に採用し、選別のため競争を強いる。その中で脱落した者に対しては、容赦なく圧迫が加えられ、「自己都合退職」へと追いやられるのである。

 例えば、私が相談を受けた増田順一さん(仮名・当時24歳)が勤めていた大手IT企業は毎年200人以上の社員を採用するが、半数以上が自己都合退職していった。会社が一度採用した社員を競わせて「選別」することで、有能な人材や、サービス残業をいとわない社員だけを残すと同時に、社員同士が生き残りを賭けて激しく競争する企業風土を維持するためだった。

 この「選別」の結果、使えないと判断された社員を追い出すために、会社はまず「社員の仕事を干す」ところから始める。都内の支社に配属された増田さんはある日、顧客の元へ出向こうとした。ところが上司から「おまえはもう顧客のところへ行かなくて良いよ。本社に出社しろ」と命じられた。

 言われた通り本社に出社すると、人事部の人間から「おまえはなぜ働いていない? 何のためにこの会社にいるのか?」と詰問された。この段階で、社内に居づらく感じた多くの社員が自己都合退職するのだが、増田さんのようにそれでも残る社員に対しては、「研修」が課されることになる。

 これも「辞めさせるための研修」であるため、何をどれだけ頑張っても評価されない。出席した増田さんは、追手門学院の事例のように発言も態度もすべてを「否定」された。そのような「研修」を受けていくうちに、受講者たちは精神疾患に陥り、「自己都合退職」していく。

 さらに、この「研修」をも耐え抜いた増田さんは「カウンセリング」を受けることになった。「カウンセリング」の前には、「おまえはどこに行っても通用しない」「まともな会社員になるためには、生まれ変わるためのカウンセリングを受けるしかない」と通告されたという。

 しかしそれでも、会社に残りたいと思う増田さんたち社員は、「藁にもすがる」思いで「カウンセリング」に望みを託す。しかしこの「カウンセリング」も、治療ではなく「辞めさせる」ことが目的だ。受診した増田さんは、ひたすら「生まれてからこれまでの人生」を振り返り、「いかに自分が使えない人間であるのか」を考えて、それを文章に書くよう強要されたという。

 「私は子供の頃から親に甘えてばかりいて、今でもまったく使えない人間です」

 「私は昔から怠け癖のある人間で、大学受験に失敗しています。だから今でも全く会社に貢献できません…」

 自分の人生を思い返し、このような文章を書くよう指示されたという。

 この作業を繰り返す中で、精神疾患を患い、結局増田さんは自己都合退職に追い込まれてしまった。

プロが関与しているケースも

 精神的に追い詰めて自ら退職させるというこうした「労務管理の技術」は、今や若者を対象としたものだけにとどまらず、どの年齢の社員も対象になりうる。いわゆる「追い出し部屋」に求められていた機能だ。

 中には弁護士や社会保険労務士など専門家が関与していたり、外部の人材会社が研修を請け負い、計画的に圧迫していくケースも珍しくはない。数年前には、社会保険労務士の「モンスター社員を解雇せよ!  すご腕社労士の首切りブログ」というブログが社会問題になった。

 そこでは、「社員をうつ病に罹患させる方法」として、「適切にして強烈な合法パワハラ与え」るために、「失敗や他人へ迷惑をかけたと思っていること、不快に感じたこと、悲しかったことなどを思い出せるだけ・・・自分に非があるように関連付けて考えて書いていくことを繰り返」えさせることで、うつ病に追い込むよう指南している。

 さらに、「万が一本人が自殺した場合に備えて、うつの原因と死亡の結果の相当因果関係を否定する証拠を作っておくこと」までアドバイスしている(ブログはすでに削除されており、厚生労働省はこの社会保険労務士を処分した)。

 この社労士のブログの内容は、私が紹介した増田さんの事例や、今回の追手門大学の方法とまったく同じだ。社員に「自己否定」を繰り返させ、自分から辞めさせる。このような「辞めさせる技術」については、弁護士や社会保険労務士による「指南書」も多数出版されている。

 今や「ブラック研修」は、「使えないと判断された社員に退職を強要する」手段となっているのだ。今回の増田さんのような無慈悲な「追い出し」は、多くの企業で行われている。もしご自身、あるいは身近な人や同僚がこのような仕打ちで苦しんでいたら、迷わず私が代表を務める「POSSE」や、個人加盟の労働組合、あるいは労働側の弁護士団体(日本労働弁護団、ブラック企業被害対策弁護団)に相談してほしい。

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参考文献
今野晴貴『ブラック企業2 「虐待型管理」の真相』文春新書
『POSSE』vo24 「特集:ブラック研修」
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今野 晴貴(NPO法人「POSSE」代表理事)


2020年09月20日

明治学院大学事件、日本倫理学会で取りあげられる!

https://sites.google.com/edogawa-u.ac.jp/jse

■日本倫理学会第71回大会
・日時:2020年10月4日(日)10時20分~11時00分
・会場:オンライン(ZOOM)https://sites.google.com/edogawa-u.ac.jp/jse
・テーマ:明治学院大学「授業盗聴」事件を倫理学的に考える
・発表者:寄川条路(yorikawa@gmail.com)

■発表要旨:
法律上の問題はクリアしていても倫理上の問題が残る場合がある。一例として大学当局が教員に無断で授業を盗聴し録音していた事件を検討する。

1.「明治学院大学事件」の概要
・授業の盗聴:授業を調査するため大学が教員に無断で授業を録音したところ、教員が大学の録音行為を不法行為として告発したため大学は同教員を懲戒解雇した。
・教科書の検閲:倫理学の教科書が大学の教育方針(キリスト教)に反し、倫理学の教員が私立大学の教員倫理に反するとして大学は同教員を普通解雇した。

2.裁判の結果
・地裁の判決:大学による解雇は客観的合理性と社会的相当性を欠き違法である。教員の地位と賃金を認める。ただし大学による録音は1回目の授業のガイダンス部分であるから授業の録音とはいえない。教員が使用していた教科書はキリスト教を批判していて倫理学の教科書として不適切とはいえない。
・高裁で和解:授業の無断録音について大学が教員に謝罪し5000万円を支払うことで和解が成立した。

3.法律上の問題
法律上の問題として本件を見ると、
・憲法学では「学問の自由の侵害」(小林節)となり、
・教育法では「教育の自由の侵害」「不当な支配」(丹羽徹)となり、
・表現法では「表現の自由の侵害」(志田陽子)となり、
・労働法では「労働者のプライバシーの侵害」(山田省三)となり、
・刑事法では「監督のための点検行為」(清野惇)となる。

4.思想上の問題
思想上の問題として本件を見ると、
・教育上は「教育者の人権侵害」(細井克彦、島崎隆)となり、
・哲学上は「理性の公共性の侵害」(福吉勝男、小川仁志)となり、
・宗教上は「宗教による学問の自由の否定」(幸津國生)となり、
・思想上は「集団思考による多様性の排除」(宇波彰)となり、
・学問上は「学問の自由以前と以後の問題」(末木文美士)となる。

5.倫理上の問題
倫理上の問題として発表者は本件を見ている。裁判所は、無断録音を「当・不当の問題」として法律判断の枠外においた。無断録音それ自体は違法行為ではないが、「良くないこと」であり、「褒められたものではない」から、「申し訳なかった」と大学側が謝罪するように提案した。発表者はこの提案を、法律上の問題(適法か違法かの判断)ではなく、倫理上の問題(善し悪しの判断)としてとらえ、事件の結末を倫理学的に考えるものである。

6.参考文献
・寄川条路編『大学における〈学問・教育・表現の自由〉を問う』(法律文化社、2018年)。
・寄川条路編『大学の危機と学問の自由』(法律文化社、2019年)。
・紀川しのろ『シノロ教授の大学事件』(世界書院、2019年)。
・寄川条路編『大学の自治と学問の自由』(晃洋書房、2020年)。
・寄川条路編『表現の自由と学問の自由』(近刊)。
・寄川条路編『実録「明治学院大学事件」』(近刊)。

2020年09月05日

悪徳研修(ブラック研修)会社・ブレインアカデミー,追手門学院大学と梅光学院大学で暗躍。

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university.main.jp/blog/bunsyo/20200902.pdf