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 カテゴリー 2016年02月

2016年02月27日

福岡教育大学の不当労働行為、寺尾氏 反省の色まったく無し! 櫻井氏も同罪!

福岡教育大学の学長選を考える会
 ∟●寺尾氏 反省の色まったく無し! 櫻井氏も同罪!

【寺尾氏、反省の色まったく無し!!! 櫻井氏も同罪!!!】

 福岡教育大学のホームページをみると、「中央労働委員会への再審査申立て 」に関して唖然とするコメントが出されていました。
 → http://www.fukuoka-edu.ac.jp/news/archives/421
 
 コメントは、つぎの通りです。
 
 「本学の教職員組合が,福岡県労働委員会に行っていた救済申立てに関して,平成28年2月10日に本学学長宛に命令書が送達されました。
 この命令書については,大学経営の自律性確保の観点から受け入れられる内容ではありません。
 ついては,この命令を取り消し,当初教職員組合から行われた救済申立てを棄却するとの命令を求めて,中央労働委員会への再審査申立ての手続きを行いましたことをお知らせいたします。」
 
 まったくもって非道いコメントです。すでにお伝えしているように、福岡県労働委員会は、寺尾氏の大学経営上の一連の悪行を「不当労働行為」と認定し、その不当性を断罪しました。寺尾氏は、「大学経営の自律性の観点から」これを不服として、東京にある国の中央労働委員会に再審査申立てをおこなったというのです。「大学経営の自律性」とは、本来、「何でもかんでも学長が大学を好き勝手にしてよい」ということではないはずです。寺尾氏は、この言葉の意味を完全にはきちがえており、反省の色まったく無しです。
 
 また、このように何の理もない中央労働委員会への再審査申立てには、公費が投入されます。寺尾氏が自らの主張や立場を押し通すために、またもや税金の無駄遣いをしようとしているわけです。
 
 さらに、今回の中央労働委員会への不服申立てについては、当然、次期学長予定者である櫻井氏も、関与しているはずです。その点をとっても、櫻井氏は、寺尾氏と同罪です。
 
 寺尾氏の学長即時辞任はもとより、櫻井氏の次期学長就任の辞退、さらには文科大臣による櫻井氏の次期学長任命拒否を求める運動を活発化させたいと思いますので、是非ともご協力下さい。
 ↓  ↓  ↓
「御意見・お問合せ 入力フォーム:文部科学省」https://www.inquiry.mext.go.jp/inquiry21/
 
 なお、直近の記事でも紹介しましたが、寺尾氏が引き起こした不当労働行為事件について、詳しくは、次のページをご覧下さい。
 ↓  ↓  ↓
☆全国大学高専教職員組合 ( http://zendaikyo.or.jp/ )
福教大教職組:「不当労働行為」に対して正義の審判が下りました!
http://zendaikyo.or.jp/index.php?action=pages_view_main&active_action=journal_view_main_detail&post_id=2466&comment_flag=1&block_id=3175#_3175
 
☆全国国公私立大学の事件情報( http://university.main.jp/blog/ )
http://university.main.jp/blog8/archives/cat96/
(考える会のページを取り上げてくださっていることに感謝します)

2016年02月24日

酪農学園大学長解任無効確認訴訟、第一回口頭弁論報告

酪農大はやっぱり素晴らしい!
 ∟●第一回口頭弁論 報告(2016.02.23)

第一回口頭弁論 報告


 2月22日 10:00~ 札幌地方裁判所7階 704号法廷で第一回口頭弁論があり、20席の傍聴席は干場前学長の支援者(新生した「酪農学園の建学の精神と教育を守る会」会員、酪農大OB・学生、一般市民等)で満席となりました。被告側からは、弁護士も含めて出席は無く、開廷後裁判長によって被告(学校法人酪農学園)から答弁書が提出されたこと、次回法廷を4月20日午前10時に調整したことが原告側に告げられ閉廷となりました。その間数分で唖然としましたが、民事裁判の一回目の口頭陳述は、その日程を原告側が設定するため、被告の都合がつかない場合には、今回のような被告側の出席ゼロによる開廷もあるとのことでした。それでも、沢山の傍聴人が出席したので、裁判長は常より丁寧な進行だったと市川守弘担当弁護士から説明を受けました。
 答弁書の内容は第一、学長解任に伴う損失所得の補償については①「原告の請求は棄却する。」②「訴訟費用は原告の負担とする。」、第二、解任の理由については①「次会期日までに主張する。」が原文で、肩すかしを食わされたような簡単なものでした。
 不完全燃焼の支援者は市川弁護士の配慮で1階の一室に集まり、「我が国の民事裁判はドイツの裁判方式を取り入れた書面のやり取りが主体で、尋問は証人喚問に限られている」こと等の裁判進行について説明を受けました。その後、市川弁護士から「全国的に大学の自治が侵されているが、これに対抗するための横の繋がりはあるのか」との質問が傍聴参加者に投げかけられ、議論となりました。また、前述した「守る会」の設立総会について幹事長から、守る会のこれからの取り組み計画が会長からそれぞれ紹介されました。
 横の繋がりについては、神沼北大名誉教授から全国の国立大、私大に対する自治侵害と反対闘争の状況が報告され、さらには、参加した酪農大学生、江別市民、酪農大OB生等の自己紹介や決意が熱く語られて、有意義な交流会となりました。とくに岡本酪農大名誉教授から経営優先の学校経営が教育、農場運営等に及ぼす危惧についての話題は示唆に富むもので、多くの参加者の共感を呼びました。また、同教授からは酪農大の教育環境は今が底で、これから上がるしかないこと、浜中農協のような経営体が組合長自らが先頭に立って学園理事者に反対表明をしていること等をあげ、十分に希望があることが語られました。
 以上のように第一回口頭弁論は支援者にとっては期待はずれのものでしたが、これを十分に埋めた交流会をもつことができました。
 次回(4月20日)は、被告(学園)側のスケジュールも確認して設定されており、必ず出席するとのことなので、改めて傍聴をお願いするところです。

青森、返還免除型奨学金を新設へ 1人最大100万円

朝日新聞(2016年2月23日)

 経済的事情で進学を諦める子どもをなくそうと、県は2016年度から返還免除型の奨学金制度を新設する。大学進学の際、最大で1人当たり100万円を無利子で貸与する。大学卒業後、1年以内に県内に居住・就業し、3年間経過すると返還を免除する。

 家庭福祉対策教育支援貸し付け事業費補助として1億1569万円を新年度予算案に計上した。貸し付けの対象は、生活保護世帯か市町村民税非課税世帯で、翌年に大学(短大、専門学校を除く)に進学を予定している現役の高等専門学校生か高校生。既卒者は含まれない。また、学校の成績が5段階評定で平均4・0以上(ひとり親、生活困窮者対象学習講習会参加者、児童養護施設入所者の場合は平均3・5以上)という条件もある。

 100人以内を予定し、応募者が多数の場合は、貸し付けの必要性を考慮して決める。貸与額は10万円単位で最大100万円、無利子。返還は、在学中は猶予され、卒業後2年目から最長8年間で分割する。返還免除については、公務員は除外。転勤したり勤めている会社が倒産したりするなど免除条件を満たせなくなった場合には、個別に対応するとしている。他の奨学金制度との併用も可能。窓口は県育英奨学会が担う予定だ。県こどもみらい課によると、返還免除型の奨学金で100万円を貸与するのは全国初という。

 県は今年度中に「県子どもの貧困対策推進計画」を策定する予定で、奨学金制度創設もその一環。県内の生活保護世帯の大学等進学率は19・5%(13年3月)で、全国の32・9%(同)を大幅に下回っている。


2016年02月23日

福岡教育大学の学長選を考える会、寺尾氏は即刻辞職を! 櫻井氏も即刻就任辞退を!

福岡教育大学の学長選を考える会
 ∟●寺尾氏は即刻辞職を!!! 櫻井氏も即刻就任辞退を!!!

寺尾氏は即刻辞職を!!! 櫻井氏も即刻就任辞退を!!!

 
 寺尾氏が福岡県の労働委員会から「不当労働行為」として反省と謝罪を求められている問題の中に、「大学院教育学研究科長の任命の拒否」「教育研究評議会の評議員任命拒否」「教員ヒアリングの拒否」といったことが入ってあるようですが、福岡教育大学の「教育研究」担当理事である櫻井孝俊氏がそれに関与していることは、火を見るより明らかです。
  
 櫻井氏が寺尾氏の「不当労働行為」にどういうかたちで手を貸したのか、その詳細については、現在積極的に取材を行っている最中ですが、櫻井氏が寺尾氏による「排除と私物化、 差別と弾圧の大学経営」の共犯者であることは、間違いありません。現に、櫻井氏は、今年の4月以降、寺尾氏を大学から追い出すどころか、「副学長・教職教育院院長」として手厚く処遇するつもりのようです。
 
 健全な感覚をお持ちの全国の大学関係者の皆さん、教育関係者の皆さん、市民の皆さん、寺尾氏の行った「不当労働行為」が櫻井氏によって再び繰り返されることを防止するために、櫻井氏の学長就任辞退、文科大臣による任命拒否を求める運動にご協力下さい。
  
 ↓  ↓  ↓
 下記のページを読者の方から教えて頂きました。皆さん、是非これらのページをしっかりご覧下さい。
 
☆全国大学高専教職員組合 ( http://zendaikyo.or.jp/ )
福教大教職組:「不当労働行為」に対して正義の審判が下りました!
http://zendaikyo.or.jp/?action=common_download_main&upload_id=12186
http://zendaikyo.or.jp/index.php?action=pages_view_main&active_action=journal_view_main_detail&post_id=2466&comment_flag=1&block_id=3175#_3175
 
☆全国国公私立大学の事件情報( http://university.main.jp/blog/ )
http://university.main.jp/blog8/archives/cat96/

岐阜大「君が代は斉唱しない」 馳文科相「交付金が投入されているのに恥ずかしい」

ハフィントンポスト(2016年02月22日)

岐阜大(岐阜市)は2月17日、国歌「君が代」を入学式・卒業式で斉唱しない方針を表明した。これに対して、馳浩文部科学相が「運営交付金が投入されているのに恥ずかしい」と批判する事態になっている。

きっかけは、下村博文文部科学相(当時)が2015年6月、国立大の学長に対して式での国歌斉唱と国旗掲揚を要請したことだった。これについて、岐阜大の森脇久隆学長はその後の記者会見で「学内でよく話し合って対応したい」と話していた。

そして森脇学長は17日の定例記者会見で、今春の卒業式と入学式で国歌「君が代」を斉唱しない方針を明らかにした。岐阜大は旧制岐阜高等農林学校(岐阜大応用生物科学部の前身)の校歌「我等(われら)多望むの春にして」を愛唱歌としており、森脇学長は「式には愛唱歌の方がふさわしい」との考えを示した。

これに対し馳文科相は21日、金沢市で記者団に、「国立大として運営費交付金が投入されている中であえてそういう表現をすることは、私の感覚からするとちょっと恥ずかしい」と述べた。朝日新聞デジタルは次のように報じた。

馳氏は21日、金沢市内での講演で「岐阜大学の学長が国歌を斉唱しないと記者会見した」と指摘。その後、記者団に「(下村氏の要請は)大学の自主的な活動についてああしろ、こうしろと言うものでもない。学長が(斉唱しないことに)言及することはちょっと恥ずかしい」と語った。


2016年02月22日

岐阜大が国歌斉唱しない方針 馳文科相「恥ずかしい」

朝日新聞(2016年2月21日)

 馳浩文部科学相は21日、金沢市で記者団に、岐阜大学の森脇久隆学長が卒業式などで国歌「君が代」を斉唱しない方針を示したことについて、「国立大として運営費交付金が投入されている中であえてそういう表現をすることは、私の感覚からするとちょっと恥ずかしい」と述べた。

 卒業式や入学式での国歌斉唱は昨年6月、当時の下村博文・文科相が全国の国立大学長らに要請していた。岐阜大は前身の旧制学校の校歌を式で斉唱しており、森脇学長は今月17日の定例記者会見で、これまで通りの方針で臨む考えを示していた。

 馳氏は21日、金沢市内での講演で「岐阜大学の学長が国歌を斉唱しないと記者会見した」と指摘。その後、記者団に「(下村氏の要請は)大学の自主的な活動についてああしろ、こうしろと言うものでもない。学長が(斉唱しないことに)言及することはちょっと恥ずかしい」と語った。


奈良女子大学、准教授を懲戒解雇処分

MBS(2/19 00:50)

 奈良女子大学は、授業中に不適切な発言をしたとして、40代の男性准教授を懲戒解雇処分にしました。

「学生並びに関係者に心からお詫びを申し上げます」(大学関係者)

 大学によりますと、懲戒解雇処分を受けたのは40代の男性准教授で、授業中、学生に対して不適切な発言をするなどしたということです。

 おととし12月、大学の相談ポストに匿名の届け出があり、調査委員会を立ち上げて調査していたということです。

「学生に対する重大なハラスメントを行い、就学環境を著しく悪化させた。当該職員を懲戒解雇といたしました」(大学関係者)

 准教授はハラスメント行為を認めているということですが、大学側は准教授の名前や具体的な内容については、明らかにしませんでした。


2016年02月21日

酪農学園大学で進行している事態を憂う

酪農大はやっぱり素晴らしい!
 ∟●寄稿(第10回)酪農学園大学で進行している事態を憂う!!

酪農学園大学で進行している事態を憂う!!


神沼 公三郎(かぬま きんざぶろう、北大名誉教授)


理由になっていない学長解任の理由

 2015年7月、酪農学園大学の干場信司学長が解任された。常識的に考えて、学長が解任されるとは学長自身によほどの非違行為があったか、あるいはそれに匹敵するぐらいに何か重大な一件があったのだろうと想像する。そこで私は、若いときからの知り合いである干場さんの立場が心配になって解任の理由を知りたいと思い、その理由が書かれているといわれる学校法人酪農学園の文書を読んだり、数人の酪農大関係者にたずねてみたりしてみた。だが、文書に書かれている解任理由は、どだい理由になっていないとの印象を強く持った。また、私の質問に答えてくれた数人の酪農大関係者からも、あれでは解任の理由にならない、あるいは解任の理由がさっぱりわからないという答えが返ってくるだけだった。要するに、理由にならない理由をもって学長解任という極めて異常な事態が発生したと言わざるを得ない。
 しかも解任の手続きが正当なものではないという。学校法人酪農学園の寄附行為には学長を解任する規定がない。そのため、理事会の意思で変更できる寄附行為施行細則に急きょ学長解任規定を新設して、それによって学長を解任したというのである。これはどう見ても理事長・理事会のご都合主義であり、しかも手続き上の瑕疵である。
 解任理由がおよそ理由になっていない点といい、解任手続きにおける明らかな瑕疵といい、あきれるばかりだ。理事長・理事会の恣意で干場学長を解任したのである。だから、干場さんは解任手続きの不当性を弾劾して自己の正当性を主張するため、裁判に訴えざるを得ない。あくまで私の判断だが、提訴した内容から見て干場さんが裁判に負ける要素はない。裁判に絶対に勝てると思う。だが、ここ数年、私が支援している大学関係のいくつかの裁判でつくづく思うのだが、裁判官は大学の自治をわかっていないし、わかろうともしない。また、裁判官という職種はどうも権力側の肩を持つ傾向が強いようだ。そんなことから、専修大学北海道短期大学や千歳科学技術大学などで起きた不当な教員解雇事件の裁判では、法人側のとった措置を裁判所がほぼ無条件に認定して、原告側が敗訴している。解雇が明らかに不当であっても、その不当性を裁判所が認めるかどうかは全く別問題である。そんなことから、干場さんの裁判でも油断は禁物だ。

大学自治の担い手を再確認しつつ支援運動を盛り上げよう

 ここ数年、学校法人酪農学園の理事長は、教育・研究の自由と大学の自治を常に強調する干場学長の言動が非常に気に入らぬ様子だったという。学外にまで大いに聞こえてきた酪農大の名称変更問題やその他のさまざまな問題など、いろんな点で酪農学園の理事会では激論がかわされたのだろう。そんなとき干場さんは、いつも大学の自治の観点を基礎に置いて意見を主張したと聞いている。そんな干場学長に対する一種の報復措置として学長職を解任したのであれば、この措置は、大学の自治を理事長・理事会が自ら破壊する行為である。
 大学の自治の中心的担い手は誰か。これに対する回答は論者によりさまざまであり、正解は一つではないだろう。だが、大学の自治のあり方と学生の存在、役割が深い関係にあるのは事実だ。かつて大学紛争という時代があって、学生の動向が大学の行方に大きな影響を及ぼした。大学の学長や経営者は教職員の動向を把握しようとするのもさることながら、それ以上に学生の動向に最大の関心を寄せ、注意を払った。学生の動きが大学の現状と将来にとって決定的に大きかったからである。
 なぜ、学生の動きが重要なのか。この問いに答えるのも簡単ではない。大学では教職員の人数よりも学生の人数がはるかに多いという、量的問題が重要なポイントであるのは事実だが、それ以上に、学生がいるから大学が成り立つ、学生がいなかったら大学ではないという単純な現象に問題の本質がひそんでいるような気がする。大学の主役は学生であると大学紛争の昔からよく言われたが、この本質的ポイントは、時が流れたとはいえ少しも変わっていないのではないか。
 酪農大の学生は干場学長の解任について理事長に説明を聞きたいと申し入れたが、理事長は即座に対応せず、一定の時間がたってからようやく説明会を開催した。そして、実際の説明会の場で理事長の説明は通り一遍、非常に不親切な内容だったという。理事長のこうした対応からは、事態の真相を知りたいという学生の要求に応えることが理事長にとっていかに苦痛で、いかに重大な課題だったかを読み取ることができる。学生の要求は、理事長に対してそれほどにパンチの効いたものだったのである。
 ここに、裁判支援の運動を進めるに当たり、学生の持つパワーと常に連携し、学生のパワーを常に引き出すような方針が求められる。大学の自治の主役は学生であるという命題を忘れず、むしろその命題を積極的に活かす目標を常に再確認していくならば、たとえ裁判所が大学の自治に関する判断が苦手であっても、かならずや裁判所の最終判断に影響を与える運動に結実していくであろう。

終わりに

 酪農大は、学校の始まりから数えるとすでに80有余年に達するという。その間に、言うまでもなく多くの卒業生を含む関係者各位のたゆまぬ努力があって今日の酪農大がある。聞けば、学生の過半数は道外から入学しているとのこと。建学の精神に基づく自由で自律的な教育・研究を展開してきた結果、酪農大の評価は、道内の他大学が大いにうらやむほど全国的に確たる地位を得ている。私の感じるところ、干場学長の解任に見られる理事長・理事会の横暴は酪農大における大学の自治を破壊し、歴史的に築かれた今日的到達点を無に帰せ占める行為である。その行為を許さず、ふたたび自由闊達な大学に戻すためにも、学生のパワーを常に引き出しつつ、裁判に勝利する道を追求してゆくべきである。

以上


2016年02月19日

内部告発准教授、職場復帰を要求 3大学教職員組合

■毎日新聞(2016年2月18日)

 学校法人常葉学園(静岡市葵区)が運営する常葉大短期大学部の補助金過大受給を内部告発した男性准教授(42)が懲戒解雇処分を受けた問題で、静岡大、静岡県立大、静岡英和学院大=いずれも同市=の教職員組合が17日、准教授の職場復帰を求める共同声明を出した。
 准教授を巡っては静岡地裁が1月25日に処分無効を認める地位保全の仮処分を認可したが、同学園は不服とし東京高裁へ控訴している。記者会見した静岡大の鳥畑与一教授は「常葉学園は地裁の決定を尊重し、准教授の研究や学会活動への復帰をすみやかに認めるべきだ」。
 静岡英和学院大短期大学部の児玉和人准教授は「地方私大は教員の職場環境が厳しく、解雇権の乱用は許し難い」と語った。

准教授の復職求め声明、静大など 教職員組合、常葉大側に

■中日新聞(2月18日)

 常葉大短期大学部(静岡市葵区)の補助金不正受給を内部告発した男性准教授が大学を運営する常葉学園から懲戒解雇され復職を求め静岡地裁に提訴した問題で、静岡大など3つの教職員組合は17日、男性の研究者としての権利保護を求める共同声明文を常葉大学と常葉学園に郵送した。
 ほかの組合は、静岡県公立大と静岡英和学院大の教職員組合。声明文では昨年7月と今年1月の2回、静岡地裁が男性の地位保全を認める仮処分決定を出したにもかかわらず常葉大は男性の職場復帰を認めていないと指摘。「司法の重ねての判断を尊重し、教育研究者としての権利と活動を保証することを求める」としている。
 男性は常葉学園による国の補助金の不正受給をもみ消すよう脅されたとして2012年8月に理事長や面談に当たった職員ら3人を強要罪で静岡地検に刑事告訴したが、3人は不起訴となった。
 学園側は名誉を傷つけられたとして昨年3月に男性を懲戒解雇。男性は同年5月に復職などを求める裁判を静岡地裁に起こし、係争中。

准教授の地位保全を、3大学教職員組合 常葉学園に声明文

■静岡新聞(2016年2月18日)

 常葉大短期大学部(静岡市葵区)の補助金不正受給を内部告発し、常葉学園から懲戒処分を受けた40代男性准教授について、県内の3大学教職員組合は17日、学園側に、静岡地裁が処分無効と地位保全を認めた仮処分決定を尊重し、教育研究者としての男性の権利を守るよう求める声明を発表した。
 同日、代表者らが県庁で記者会見し、声明文を同学園に送付した。発表したのは、静岡大学と県公立大学、静岡英和学院大学の各教職員組合。声明文は、「異議申し立てが却下された重みを真摯(しんし)に受け止めて対応することが高等教育機関の義務」としている。
 男性は、補助金過大受給を調査していた2010年に学園の危機管理担当者から脅迫されたとして担当者らを強要罪で告訴。いずれも不起訴になり、男性は「秩序を乱した」として処分を受けた。15年7月、地裁は告訴に一定の相当性を認め、処分無効と地位保全を認める仮処分を決定。
 学園側の異議申し立ても退けた。学園側は東京高裁に抗告した。会見に同席した男性によると仮処分決定を受けて職場復帰したが授業をもてず、所属学会の人事にも影響があると言う。


2016年02月18日

常葉大短大部不当解雇事件、静岡県内3大学教職員組合の合同声明「巻口勇一先生の教育研究者としての権利を守るため速やかなる職場復帰を行うことを求めます」

静岡県内3大学組合合同声明(2016年年2月16日)

巻口勇一先生の教育研究者としての権利を守るため
速やかなる職場復帰を行うことを求めます。

 本年1月25日に静岡地方裁判所は、昨年7月3日の巻口先生の地位保全を認めた仮処分決定の有効性を再度確認しました。これは、常葉大学による解雇措置にもかかわらず、巻口先生が「労働契約上の権利を有する地位にあること」を繰り返し認めたものです。解雇措置を巡る裁判が進行中とは言え、それが確定するまでは、巻口先生の労働者としての権利は労働契約法に基づいて厳格に保護されるべきものです。私たち三大学の教職員組合は、常葉大学が司法の重ねての判断を尊重して、巻口先生の速やかなる職場復帰を行い、その教育研究者としての権利と活動を保証することを求めるものです。
 静岡地方裁判所の判決は、常葉大学の巻口先生に対する解雇措置が、巻口先生の常葉大学に対する内部告発に端を発したものであるとの認識に立ちつつ、常葉大学側が、巻口先生が常葉大学の「脅迫行為」を強要罪として告発したことを、「学園の秩序を乱し、学園の名誉又は信用を害した」として懲戒解雇処分としたことに対して、「本件懲戒解雇は処分として、重きに過ぎるものと言わざるを得ない」として「本件懲戒解雇は無効であると一応認められると」認定したものです。
 この判断のもと、仮処分判決は、巻口先生の「教育・研究活動は、単なる労働契約上の労務の提供に止まらない。准教授の地位に基づくがゆえになし得る研究や学会活動などがあり、これらは、・・・仮の地位の保全を認めなければ」、巻口先生に「回復しがたい著しい損害が生じるというべきである」と地位保全の必要性と緊急性について特別に強調をしています。
 昨年7月の仮処分決定に対して、常葉大学がその取消しを申し立ててきたことによって、巻口先生の回復しがたい著しい損害は一層深刻なものになってきたと言えます。今回、この異議申し立てが却下されたことの重みを、常葉大学は真摯に受け止めて対応することが、高等教育機関としての義務であると考えるものです。私たち三大学の教職員組合は、内部告発者の権利は「公益通報者保護法」等に基づき最大限尊重されるべきであり、かつ教育研究者の労働契約法上の権利は厳格に擁護されるべきものと考えるものであり、重ねて静岡地方裁判所の決定の尊重を常葉大学に求めるものです。

2016年年2月16日
              
静岡大学教職員組合  執行委員長 藤井道彦
静岡県公立大学教職員組合 執行委員長 佐々木隆志
静岡英和学院大学教職員組合 執行委員長 児玉和人

2016年02月16日

福岡教育大が教職員組合、寺尾愼一学長の数々の「不当労働行為」に対して正義の審判

全大教
 ∟●福岡教育大が教職員組合ニュース(2016年2月10日)

寺尾愼一学長の数々の「不当労働行為」 に対して正義の審判が下りました。

 組合は、福岡県労働委員会に不当労働行為救済申立を行っていましたが、2月9日付けで、寺尾愼一学長宛に命令書が発せられました。

 以下に主文を掲載します。

1 被申立人国立大学法人福岡教育大学は、法人のウェブサイトに 掲載中の「福岡教育大学のミッションの公表にあたって」(別紙)と題する文書から、同文書2ページ 16 行目「なぜなら、先般」から同 ページ 29 行目「名誉の回復に取り組みます。」までの文章を削除するとともに、今後同文章を掲載してはならない。

2 被申立人国立大学法人福岡教育大学は、本命令書写しの交付の日から10日以内に、次の文書(裏面)を申立人福岡教育大学教職員組合に手交するとともに、学内イントラネット「ガルーン」のトップページ等見やすい場所に、14日間掲載しなければならない。

 団体交渉における不誠実さがそのままは認めてもらえなかったのが、大変 残念ですが、組合活動への弾圧、支配介入が認められて、法人に対してお灸 が据えられた形になりました。組合員が安心して組合活動ができる環境を保 障し、働く教職員ひとりひとりを大切にする大学となるよう、法人の努力が 問われています。
 これからも、組合員ひとりひとりが団結して働きやすい明るい職場環境づ くりに努力してまいりましょう。これまでの皆さんのご支援ありがとうござ いました。

平成 年 月 日

福岡教育大学職員組合
執行委員長 鈴木 浩文 殿

国立大学法人福岡教育大学
学長 寺尾 愼一

 当法人が行った下記の行為は、福岡県労働委員会によって労働組合法第7 条に該当する不当労働行為と認定され、また、下記4の発言内容を、法人の ウェブサイトから削除するよう命じられました。
 今後このようなことを行わないよう留意します。

1 平成26年4月日、法人が宮田洋平組合員を研究科長に任命しなかった こと。

2 法人が、岡俊房組合員を平成 26 年度教育研究評議会評議員に任命しなか ったこと。

3 平成26年4月9日、寺尾愼一学長が、岡俊房組合員が講座主任を務める 国際共生教育講座の教員人事に関するヒアリングを直接行わなかったこと。

4 平成25年12月20日、寺尾愼一学長が、全教職員向け説明会において、 組合が行ったビラ配布を信用失墜行為であるなどと批判し、教育学部長らに 対し、ビラ配布への対応や見解を文書で提出するよう命じた旨発言したこと、 及び法人が、その発言内容を法人のウェブサイトに掲載したこと。

学長は、福岡県労働委員会の「命令」 を誠実に履行し、教職員の労働環境の改善に努めよ!


福岡教育大が教職員組合、声明「国立大学法人福岡教育大学は,福岡県労働委員会の救済命令を真摯に受けとめ, 排除と私物化, 差別と弾圧の経営を改め,大学運営の正道に復帰せよ」

全大教
 ∟●福教大教職組:声明「国立大学法人福岡教育大学は,福岡県労働委員会の救済命令を真摯に受けとめ, 排除と私物化, 差別と弾圧の経営を改め,大学運営の正道に復帰せよ」

声 明

国立大学法人福岡教育大学は,福岡県労働委員会の救済命令を真摯に受けとめ, 排除と私物化, 差別と弾圧の経営を改め,大学運営の正道に復帰せよ

2016年2月12日
福岡教育大学教職員組合
執行委員長 鈴木 浩文

( 1 )命令書の概要と本組合の評価
 2月10日,本組合は,福岡教育大学不当労働行為救済申立事件(福岡労委平成 26 年(不)第10 号)に係る福岡県労働委員会の命令書写しを受領した。命令書では申立事項 4 項目,
① 平成 25 年の学長選考結果を疑問視して組合が行ったビラ配布活動に参加した組合員を,寺尾愼一学長が大学院教育学研究科長に任命しなかったこと。
② 法人による臨時給与減額に対し,組合の全面的支援を受けて提起された未払賃金請求訴訟の原告団に加わった組合員を,寺尾愼一学長が教育研究評議会評議員に指名しなかったこと。
③ ②の組合員が主任を務める講座の教員人事ヒアリングを,寺尾愼一学長が敢えて自ら行わなかったこと。
④ 寺尾愼一学長が,全教職員向け説明会において,組合による①のビラ配布を信用失墜行為であるなどと批判し,教育学部長らに対してビラ配布への対応や見解を文書で提出するよ う命じた旨の発言をしたこと,及びその発言内容を大学公式ウェブサイトに掲載したこと。

 以上①~④を不当労働行為として認定した。これらは,本組合の申立を大筋で認容するもので,妥当な命令である。他方,同命令書が,団体交渉において法人が十分な資料提示による説明を怠ったことを,不誠実団交と認定しなかった点については,団体交渉の正常化を困難にするものであり,大変遺憾である。

( 2 ) 不当労働行為と認定された法人の行為の本質
 上記①~④は,福岡教育大学教職員の労働条件に深く関わる事柄であるからこそ,正当な組合活動に対する不利益取扱・支配介入として,不当労働行為が認定されたものである。福岡県労働委員会が労働条件の検討に当たって,被申立人の大学としての特性を十分に考慮したことは極めて重要である。①では,教職員の意向投票結果を覆して学長選考会議が当時の現職の寺尾学長を選考したことにつき,学長の人選は労働条件に影響を及ぼす事項であり,それへの疑義表明は組合の正当な活動に含まれうるとした。また,教授会が大学院研究科長を選考することとなっていた旨を認定し,学長の権限を過大視することなく,研究科長の選考やり直し及び研究科長を学長による選考とする規程変更を峻拒した教授会の総意を正当に評価した。②については,教育研究評議会は教育研究に関する重要事項を審議する審議機関であり,そこでは教育研究上の観点から多様な意見を持つ者の参画が前提されるとして,原告の排除を不当とした。③でも同様に,学長ヒアリングの場からの原告の排除を不当とした。④では,①に関係して,学長が大学の全教職員に対して組合員への処分を示唆することにより,組合活動を妨害しようとしたことを,正しく不当労働行為と認定した。

 寺尾学長による①~④の行為に一貫するのは,自らと意見を異にする者を大学運営の場から排 除し,ひいては差別・弾圧を加えようとする,独裁的・強権的姿勢である。そうした姿勢は,今日の民主主義社会において認容されるべきではなく,まして自由な知的探究の場としての大学に おいては,断じて許されるものではない。今回の不当労働行為認定は,組合活動・労働条件の観点から,寺尾学長による,排除と差別・弾圧を基調とする経営姿勢に対し,高度な権威を有する公的機関がはじめて明確な NO を突きつけたものであって,画期的なものであるとともに,数年来の種々の人権侵害・排除と抑圧に苛まれてきた大学構成員として,一筋の光明を見た思いである。

(3)法人の管理職・責任ある立場の方は,今回の命令を正視し,大学を正常化すべきである
 本組合及び多数の大学構成員の観点から判断して,今回の①~④に関する命令は至極妥当なものである。しかし,寺尾学長が在任した6年間,とりわけ平成 25年の再選後の2年間において, 被申立人の管理職(理事,副学長等)や責任ある立場の方々(監事,経営協議会委員,法人運営を指導監督する立場にある文部科学省及び国立大学法人評価委員会)は,こうした観点を全く重視しなかった。救済申立以後も救済命令の出た今日まで,法人の経営姿勢は改善に向かうどころか,悪化の一途をたどってきたと言わざるを得ない。具体的には,
ア)学長選考において,意向投票自体が廃止され,教職員の意向は学長選考において全く考慮されなくなった。
イ)大学院研究科長は学長による選考制に改められ,学長の意に沿わない組合員はそもそも選考される可能性がなくなった(この規程改正自体は教授会では否決されたにもかかわらず)。
ウ)その後研究科長のみならず学部長の選考権限も奪われた結果,教授会は学長が指名した 学部長・研究科長が主宰することとなり,審議事項を極めて制限された上に何らの議決すら行わ
れなくなり,本来は最も重要な審議事項であるはずのカリキュラムの改定すら審議されていない。 エ) 評議員は,平成28年度からは各講座の代表ではなく,学長が任命した学部長が,学長の意に沿う教員を推薦する形式に改められることとされ,多様な意見は全く吸い上げられなくなる。
オ)講座は平成30年度をもって廃止される予定で,教員人事のボトムアップ機能は消失した。
カ) 教員の懲戒について,教授会はもとより評議会での審議すら廃し,学長指名の委員が調査・審査を行うこととし,事実上学長の意思で処分できる体制となった。その後最近数ヶ月の間に3名の教員が停職処分を受けたが,役員らは自らの管理責任を問題にすらしていない。

 こうした制度の改変に伴い,ごく一部の管理職らが大学の運営を壟断し,教員に配分される教育研究費を 4 分の 1 にまで激減させながら,大学の英語名改悪・ロゴマーク制定に多額の資金を浪費する,公募によらない恣意的な教員採用人事を連発する,といった,大学の私物化が完了しつつある。寺尾学長再任後に決定された生涯教育課程の廃止,初等教育教員養成課程における選修制の廃止,大学院改組は,いずれも福岡教育大学の将来にとって決定的に重大な施策でありながら,すべて教授会で大差で否決されたにもかかわらず,強行されている。また,今回不当労働行為と認定された重大な人権侵害を学長自ら敢行しているにもかかわらず,それに抗議して法人の主催する人権教育研修会への出席を拒否する職員に対し,処分を発動する意向まで示している。
 今回不当労働行為が認定された各事項について,学長によるこの2年間の諸施策を顧みると,それは不当労働行為の認定から逃れるべく,大学のまっとうな制度や蓄積された知恵を跡形も無く抹殺するものであった。いわば,家があれば火事が起こる危険があるからと言って,火事が起こる前に家を取り壊してしまおうとするようなものである。「大学」であるから問題が起こると考えて,「大学」の本質を破壊したのである。しかしそのような行為が,今回の命令の趣旨に根底的に反するものであることは明らかである。

 学長,学長が任命した理事,副学長(学部長・研究科長含む),副理事,また学長が推薦した監事,依頼した経営協議会の学外委員,及び経営協議会学外委員を含む学長選考会議委員,そして文部科学省及び国立大学法人評価委員会には,今回の命令書を熟読して頂きたい。自らが推進し,ないし消極的にであれ是認してきた寺尾学長の大学運営が,大学の正常な運営を妨げ,それが今日なおブレーキを破壊された車のように暴走を続けていることは,真摯に反省されるべきである。その上で,自らの責任を明らかにしたうえで,正常化に直ちに着手して頂きたい。我々の言う正常化とは,大学が構成員の多様な知見・意見と人格・人権を尊重し,権限を有する特定の個人の恣意に左右されることなく,自由な教育・研究の場として存続・発展することである。本組合の組合員たる教職員は,大学の正常化と,正常化後の大学の運営にあたり,努力を惜しまない。

 末尾ながら,これまで本組合の闘争に多大なご支援をいただいた全大教(全国大学高専教職員組合),全大教九州,及び各加盟単組,その他学内外の関係者・市民に対し,心よりの感謝を表明する。上記の通り,現在のところ被申立人の経営姿勢が改善される兆しはまったく見えておらず,本組合は今後とも大学および労使関係の正常化を目指して闘争を続ける決意である。益々のご支援をお願いする次第である。


2016年02月15日

大学 地方私大、相次ぎ公立化 定員割れで経営難 地元自治体が「救済」

■毎日新聞東京版(2016年2月9日)

 若者の流出を食い止めようと、定員割れで経営難に陥った地方の私立大学を、地元の自治体が公立大学法人化する動きが各地で起きている。私大より学費は下がり、志願者は大幅に増えるという。しかし「大学間の公正な競争を妨げる」と懸念する声もある。今年4月から公立大学法人をスタートさせる2自治体の例から、自治体と大学のあり方を考える。

●国の交付金で学費半減

 山口県山陽小野田市の「山口東京理科大」は工学部の単科大学。地元自治体の協力で学校法人東京理科大(東京)が1987年に設立した短大が前身だ。95年に4年制大学となった。近年は定員割れが慢性化し、累積赤字は約90億円に上っていた。

 市成長戦略室によると、2014年7月に理科大側が「市の公立大学法人にできないか。駄目な場合は廃校も視野に入れている」と申し入れてきた。公立大学法人になると国から学生数に応じた交付金を受けられる。市の試算では、一番厳しく見積もっても公立化後の9年間は赤字にならないとの結果が出た。

 県内には国立の山口大に工学部があることもあり、市は単科大学のままでは公立化する必要性が弱いと判断し、県内初の薬学部新設を打ち出した。白井博文市長は「公立大学法人への選択こそ『地方創生』に役立つ。学費が半減し、県内唯一の薬学部が誕生すれば、進路の選択肢を増やし、市の産業力強化や定住促進につながる」(昨年1月の市民向けメッセージ)と強調。直後の昨年の入試(15年度入学者選抜)は受験生が定員200人の7倍を超えたという。市の担当者は「今年(16年度入学者選抜)は市長が高校を回り、テレビCMでもPRし、昨年以上の志願者が集まっている。卒業生の6割に県内に就職してもらうことを目指す」と話す。

●若者人口確保するため

 京都府福知山市の成美大学も今年4月から公立化され、「福知山公立大学」に改称する。

 成美大は学校法人成美学園が2000年に設置した京都創成大学が前身。福知山市も設置時から27億円を負担して支援し、経営情報学部のみの単独学部で運営してきた。

 開学当時は定員195人に106人が入学したが、近年は入学者が50人を下回るように。赤字決算が続き、複数の重大な問題があるとして、文部科学省の認証機関「大学基準協会」から「不適合」の判定を受けていた。学園や市民団体などの要望を受け、市が有識者会議を設置。その報告書は市内での4年制大学の存在意義を認めて公立化も一つの選択肢と判断したが、「抜本的な改革をしなければ公立化しても成功しないのではないか」との懸念も示した。

 公立化を決めた市は、市民説明会で「大学は若者人口を確保する最も効果的な装置で、地方公立大学だからこそ学生が集まる」と理解を呼び掛けた。

 新大学は「1学部、定員50人」を踏襲し、4月から学部名を「地域経営学部」に改称する。市大学政策課の担当者は「一年でも早く定員を200人に増やしたい」と話す。今年の入試では推薦入試の志願者が約6倍になるなど、定員を上回る志願者が集まっているという。

●補助金の国公立偏在に批判も

 文科省によると、これまでに計5私大が公立法人化された。このほか、新潟産業大(新潟県柏崎市)、長野大(長野県上田市)、旭川大(北海道旭川市)、諏訪東京理科大(長野県茅野市)などが自治体に公立化を要望している。

 こうした動きに批判的な声もある。約410大学が加盟する「日本私立大学協会」の小出秀文常務理事は「公立化して志願者が増えるのは学費が安くなるから。安易に公立大学を増やせば、努力している周辺の私立大の経営を圧迫する。国の補助が国公立大に偏っている現状や、公立大の存在意義を問う時にきている」と指摘する。【高木香奈】

私立から公立大学法人になった大学

大学名    所在地       開学年  公立化年

高知工科   高知県香美市など  1997 2009

静岡文化芸術 浜松市       2000 2010

名桜     沖縄県名護市    1994 2010

公立鳥取環境 鳥取市       2001 2012

長岡造形   新潟県長岡市    1994 2014

山口東京理科 山口県山陽小野田市 1995 2016(予定)

福知山公立  京都府福知山市   2000 2016(予定)


2016年02月14日

奨学金が卒業後、5年在住すれば返還免除 宇都宮市が募集開始

東京新聞(2016年2月13日)

 宇都宮市は、大学や短大、専修学校(専門学校)に進学する人を対象にした奨学金「返還免除型育英修学資金」の貸し付け希望者を募集している。卒業後、市内に五年間暮らせば、市が奨学金の返還を求めない制度。定住人口の確保策を充実させる。
 支給額は一カ月当たり二万円。四年制大学なら計九十六万円になる。留年時には支給が停止されるが、進級すれば再開される。返還は「最終学校を卒業後の四月から」とし、大学院の在籍中は猶予される。
 対象は、四月の入学者十人程度。市内在住で、成績の評定が五段階で平均四・〇以上が条件。小論文、面接などで選考する。学校を卒業後、一年以内に市内に住み始める必要がある。
 市は、二〇一三年十二月に市民から寄付された一億円と、一五年度予算の一億円を合わせた計二億円で「市育英基金」を設置。市の担当者は「定住してもらうには、学校の卒業時に住むことを選んでもらうことが大事。学ぶ意欲が強くあるが、経済的理由で修学が困難な人の手助けをしたい」としている。
 募集は今月二十九日まで。県の奨学金との併用はできないが、市の返還型奨学金や、日本学生支援機構の奨学金との併用はできる。

奨学金返済、全額肩代わり…県内3年就職が条件

読売新聞(2016年02月13日)

 鹿児島県は、日本学生支援機構の奨学金を無利子で借りている県出身者が大学卒業後に県の基幹産業で最低3年間就職することを条件に、奨学金の返済を全額肩代わりする制度を設ける。

 毎年100人を募集する計画で、今春の就職者から対象とする。新年度一般会計当初予算案に関連費2億円を計上した。

 発表によると、教育の機会均等と、農林水産、IT、観光といった県の基幹産業を担う人材の確保が目的。都道府県レベルで同様の制度を設ける動きが始まっているが、県教委は、全額を肩代わりするのは珍しいとしている。

 県教委によると、制度は基金を設けて運用し、毎年4億円ずつを積み立てていく。市町村、経済団体にも協力を求めており、毎年、県が2億円、市町村と経済団体が計2億円を出資していくことを想定している。

 申し込みの機会は高校3年生時と、大学3年生時の2回設け、県、市町村、経済団体でつくる選考委員会で審査する。選考されても実際に条件となる産業に就職しないと対象外となる。2016年度に限っては、大学4年生も申し込める。

 日本学生支援機構の奨学金を無利子で借りるには家庭の経済的事情に加え、成績が優秀であることなどが条件。4年間の貸与金額は最高で計300万円を超える人もいる。

 今回の制度で就業条件を最低3年間としたのは、3年間働いた場合、離職率が低いからだという。

 伊藤知事は12日の記者会見で、「社会的な公正や貧富の差の是正を図るには教育の機会を確保することが大切。財政的な制約によって大学へ進めないことがないような社会をつくりたい」と述べた。


准教授の地位保全を、3大学教職員組合 常葉学園に声明文

■静岡新聞(2016年2月18日)

 常葉大短期大学部(静岡市葵区)の補助金不正受給を内部告発し、常葉学園から懲戒処分を受けた40代男性准教授について、県内の3大学教職員組合は17日、学園側に、静岡地裁が処分無効と地位保全を認めた仮処分決定を尊重し、教育研究者としての男性の権利を守るよう求める声明を発表した。
 同日、代表者らが県庁で記者会見し、声明文を同学園に送付した。発表したのは、静岡大学と県公立大学、静岡英和学院大学の各教職員組合。声明文は、「異議申し立てが却下された重みを真摯(しんし)に受け止めて対応することが高等教育機関の義務」としている。
 男性は、補助金過大受給を調査していた2010年に学園の危機管理担当者から脅迫されたとして担当者らを強要罪で告訴。いずれも不起訴になり、男性は「秩序を乱した」として処分を受けた。15年7月、地裁は告訴に一定の相当性を認め、処分無効と地位保全を認める仮処分を決定。
 学園側の異議申し立ても退けた。学園側は東京高裁に抗告した。会見に同席した男性によると仮処分決定を受けて職場復帰したが授業をもてず、所属学会の人事にも影響があると言う。

2016年02月13日

実践的な職業教育行う新たな高等教育機関創設を

NHK(2月12日)

文部科学省の審議会は、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関を3年後をめどに創設し、大学を卒業したのと同じように学位を取得できるようにするという基本方針を示しました。
これは政府の教育再生実行会議の提言を受けて文部科学省の中教審=中央教育審議会が検討を進めているもので、12日開かれた特別部会で基本方針が示されました。
それによりますと、技術革新やグローバル化に伴い働くのに必要な知識や技術が複雑化、高度化しているとして、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関を3年後の平成31年春をめどに創設するとしています。
新しい学校は、2年制から4年制で、高校の卒業生や学び直しを目指す社会人を対象とし、職場実習を行ったり企業の社員を講師にしたりして、学問と技術の両方を学ぶほか、卒業すれば大学と同じように学位を取得できるようにするということです。
特別部会の委員で、大学教育に詳しい筑波大学の金子元久特命教授は、「職業が多様化するなか高等教育の在り方も変化が求められているが、新しい教育機関の役割や従来の大学との違いについてさらに議論が必要だ」と話しています。
中教審はことし夏ごろに最終的な方針をまとめ答申することにしています。

ニーズへの疑問も

実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の創設は、政府の教育再生実行会議で提言され、ことし閣議決定された成長戦略の実行計画にも盛り込まれました。職業教育はこれまで専門学校を中心に行われてきましたが、専門学校は国の認可が必要ではないなど大学や短大に比べて設置基準が緩いため、教育の質にばらつきがあると指摘されてきました。また、大学でも卒業後の進路を見据えた授業は増えてきていますが、まだ十分ではないとして、文部科学省は新たな高等教育機関で企業などと連携した授業を行い、高度な実務能力を持つ人材を育成したいとしています。
ただ、少子化が進むなかで新たな教育機関へのニーズがどれほどあるのか、専門家の間からは疑問視する声も上がっています。文部科学省によりますと、18歳人口は今年度の時点でおよそ120万人とこの20年で57万人少なくなり、私立大学のおよそ4割は定員割れとなっています。さらに、今ある大学や専門学校と差別化できるのかや、教員や教育の質をどのように確保するのかといった課題も指摘されています。文部科学省は「専門学校や短大などが新しい教育機関に移行することを想定しており、社会人も入学できるようにする。少子化のなかで学校の数が増え続け、運営に行き詰まるケースが相次ぐとは考えていない」としています。


大阪大 研究費2億円余の不正経理 大学院教授を懲戒解雇

NHK(2月12日)

大阪大学の教授などが、少なくとも2億円余りに上る研究費を不正に経理処理したとされる問題で、大学は12日、大学院情報科学研究科に所属する52歳の教授を懲戒解雇の処分にしました。
懲戒解雇の処分を受けたのは、大阪大学大学院情報科学研究科の教授(52歳)です。大学によりますと、教授など3人は10年以上前から、物品を購入したように装い、支払われた研究費を業者に預けるなどして、少なくとも2億1000万円余りの研究費を不正に経理処理し、このうち一部を私的に流用していたということです。
大学は12日、教授を懲戒解雇の処分にし、工学研究科に所属していた70歳の元教授の「名誉教授」の称号を取り消しました。教授は大学に対し、「元教授と相談のうえで行ったもので、私的に流用した認識もないが、多大な迷惑をかけたのは事実で申し訳ない」などと話しているということです。
大阪大学の西尾章治郎学長は「教員としてあるまじき行為で、決して許されるものではない。不正使用の根絶に向けて全学を挙げて取り組み、信頼回復に努める」とするコメントを出しました。

[同ニュース]
教授を懲戒解雇=研究費不正使用で-大阪大
研究費不正、阪大教授を懲戒解雇
研究費不正、阪大教授を解雇 最大2億7千万円
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2016年02月10日

大阪府大・市大の存続・発展へ力を合わせましょう―学問の自由・大学の自治を尊重して

■日本共産党大阪府委員会
 ∟●大阪府大・市大の存続・発展へ力を合わせましょう―学問の自由・大学の自治を尊重して

大阪府大・市大の存続・発展へ力を合わせましょう―学問の自由・大学の自治を尊重して

2016年2月8日  日本共産党大阪府委員会学術文化委員会

 府議会と大阪市議会は昨年12月と今年1月、知事と市長がそれぞれ提出していた府立大と大阪市立大の「統合」を準備する議案(府大・市大の中期目標を一部変更)を大阪維新の会などの賛成多数で可決強行しました。日本共産党は反対しました。

 同趣旨の議案は2013年11月の市議会で、府大・市大「統合」方針を含む「大阪都」構想は昨年5月の住民投票で、それぞれ否決されています。これらの民意と両大学の学生や院生、教職員、卒業生ら大学関係者の批判・反対の声を踏みにじって強行したことは許されません。

 両大学の統合は、大阪の教育、文化、福祉、経済などの様々な分野で長期にわたり大きな影響を与える問題です。統合は政治権力が押し付けるのではなく、府民意見を尊重した両大学の関係者による慎重な議論・検討が必要です。

 私たちは、これまでの議論を踏まえ、府大・市大「統合」問題をめぐる経過と問題点、重点的な大学政策を提起し、府民的討論と共同を呼び掛けます。

1 府大・市大「統合」問題をめぐる経過

 大阪府と大阪市は2013年秋に「新大学ビジョン~強い大阪を実現する知的インフラ拠点をめざして~」(9月)や「新法人基本方針」(10月)を公表し、府大・市大「統合」計画の基本を明らかにしました。これは、大学を構成する学生や院生、教職員のあいだでの自由な議論を抜きに、また、府民と市民の意見をほとんど聞かずに、「大阪維新」主導の府市統合本部のもとで、問答無用で強引に推進されたものです。

 こうした「統合」計画のもとになった「提言」(「新大学構想<提言>~統合と再編、新教学体制と大胆な運営改革~」2013年1月)を策定したのは、「大阪府市新大学構想会議」ですが、この会議を構成する6人の委員のなかには府大と市大の大学関係者は一人も含まれていませんでした。

 「新大学ビジョン」をベースにして、大阪府と市、府大と市大は「新大学案~新世代の大学~ 大阪モデル」(同年10月)を作成・公表しました。

大学関係者の批判と「統合」関連議案の市議会での否決

 こうした府・市の動きをみて、府大・市大名誉教授ら21氏は2013年10月、「橋下市長の大学自治への介入と府大・市大の拙速な統合を憂慮する」声明を発表し、「大学には独自の建学の精神と伝統があり、専門分野も独自に発展を遂げて」おり、「大学の統合はそれぞれの大学の内発的要求が合致し、財政的保障が十分なされなければ難しい」として、「高度の有機的な研究教育機関である二大学の統合計画をこのまま進めるというのはあまりに拙速」だと指摘しました。

 これに先立って同年3月には、市大の学生が提出した「市立大学と府立大学の拙速な統合撤回を求める陳情書」が市議会財政総務委員会で「大阪維新」以外の会派の賛成多数で採択されていました。

 こうした大学関係者の批判をまえに、橋下徹市長(当時)が提出した府大・市大「統合」関連議案(市大の中期目標と大学法人定款の一部変更案)が2013年11月の市議会で「大阪維新」を除く会派の反対多数で否決されました。これを受けて府は議案提出を見送りました。

 「統合」関連議案は、2016年度の「府立大学との大学統合をめざし」準備すると明記し、市大理事長と学長を分離し、理事長を市長任命とすることで大学の支配・統制を強め、「強い大阪を実現するための」大学という特定の大学観を押し付けるものでした。

 この時期に、橋下市長(当時)は、安倍政権による「大学のガバナンス(統治)改革」を先取りして、市大学長選挙での教職員意向投票の廃止を押し付けました。

大学「統合」の延期と住民投票の民意

 「統合」関連議案否決を受けて大阪府・市は翌年(2014年)4月に両大学「統合」の延期を表明、当初予定の2016年度の大学「統合」はなくなり、今後については、「両大学で、主体的に大阪における公立大学のあり方について検討」するとされました。これを受け、府大・市大は2015年2月に「『新・公立大学』大阪モデル(基本構想)」を公表しています。

 2015年5月に実施された、大阪市民による住民投票では、府大・市大「統合」方針を含む「大阪都」構想が否決され、市議会での「統合」関連議案の否決に続いて市大存続の民意が示されました。

 住民投票の翌日に発表された大阪市立大学教職員労働組合の声明は、「大阪市立大学は、大阪市民とともにある大学であり、市民の示した民主的な意思、市民が選んだ都市の将来像とともに進むべきである」と強調しました。

 日本共産党の石川多枝府議は昨年12月の府議会教育常任委員会で、「関係者の合意形成もないままで統合ありきで進めるのは拙速だ」と批判。小川陽太大阪市議は今年1月の市議会本会議で、「大阪市がすべきは、未来ある若者により広く高等教育を保障し、教育研究条件の拡充を図ることだ」と強調しました。

 この府議会(教育常任委員会)と市議会の「統合」関連議案の採決では、結論ありきで検討を急がず、関係者の意見を柔軟に取り入れることや、議会の意見を十分踏まえるとする附帯決議を全会一致で可決しました。市議会の附帯決議は「一から幅広く議論」するとしています。ここに、両大学「統合」を押し付ける「おおさか維新」政治と府民・大学関係者との矛盾が現われています。

2 府民・大学関係者の共同の広がり

 両大学の学生有志でつくる「大阪の公立大学のこれからを考える会」は2016年1月、大学の統合計画の白紙撤回を求める署名を、市大学長あてに2498人分、府大学長あてに2784人分を提出。「統合を前提にした改革はおかしい」と語りました。このなかで、「受験生にとっても、比較的安い授業料で学べる二つの公立総合大学が減らされれば、選択肢が奪われます。家族にとっても子や孫の学ぶ場が奪われる」と訴えています。

 大学関係者が実施した学内アンケートでも、回答した教員の7割が統合を「進めるべきでない」としています。

 2015年11月に開催された多様な分野の研究者による「豊かな大阪をつくる」シンポジウムは府大・市大統合問題をテーマに取り上げ、「大学統合は、大阪の文化、教育、福祉、経済等の様々な領域において長期にわたって多大な影響を与える」として、学生と教員らが活発な議論を行いました。

 両大学の卒業生らでつくる「大阪府立大学問題を考える会」と「大阪市立大学の統合問題を考える会」は、「拙速な統合反対」と知事・市長に署名11000人分以上を提出したことを始め、学習会や議会要請などの取り組みを進めています。

 こうした府民・市民と大学関係者の共同が政治を動かしています。府大・市大の存続・発展へ力を合わせましょう。

3 府民・市民の大学教育への願いに応えて――日本共産党の提案

 この間の経過からみて、「統合」計画は両大学が内発的に要求しているものではなく、政治権力により強権的に大学に押し付けられたものです。これは、憲法が保障する学問の自由を脅かし大学の自治を破壊する学校教育法改悪などを強行してきた安倍政権「大学改革」の先取りです。大学関係者からは、「統合」による教育研究条件低下と学費負担増を危惧する声が上がっています。

 府大と市大はそれぞれ、独自の建学の精神と伝統をもち、専門分野も独自に発展を遂げ、教育研究に重要な役割を果たしています。「二重行政」を解消するとして、両大学を「統合」することは許されません。

 私たちはこうした点を踏まえ、重点的な大学政策について改めて次の諸点を提案します。

(1)府大・市大「統合」計画を撤回します

 大学の再編・統合は、教育・研究を充実させる見地に立って、学内合意を基礎にした大学間の自主的な話し合いと、地域の意見を尊重することを前提としてすすめるべきです。「おおさか維新」が主導する府大・市大の「統合」(統廃合)計画は、政治権力による大学への介入であり撤回します。

(2)学問の自由・大学の自治を守ります

 憲法が保障する学問の自由・大学の自治を守ります。世界で形成されてきた「大学改革の原則」は、「支援すれども統制せず」であり、大学の自治を尊重して大学への財政支援を行うことです。大阪府・大阪市と、教育研究を担う両大学との関係を律する基本的なルールとして、また、大学運営の原則として確立します。

(3)大学の日常的運営に必要な経費の増額をはかります

 この間、両大学への運営費交付金が削減され続けてきました。大学の日常的運営に必要な経費(基盤的経費)である運営費交付金を増やし、教育研究条件の拡充をはかります。

 国に対しては地方交付税の大学経費を引き上げることや公立大学への国庫補助制度を確立するなど財政支援を強めることを求めます。

(4)学費負担の軽減、給付奨学金制度をつくります

 国際人権規約が定めた高校・大学の段階的無償化条項が、国民世論と運動におされて留保撤回されました。大学で経済的な心配なく学び、将来に希望をもって研究したい若者の願いを実現するために、学費無償化にむけて、大学授業料を段階的に引き下げます。奨学金の無利子化、返済方法の改善、給付制の創設と授業料減免制度の拡充をはかります。

(5)基礎研究を重視し、科学、技術の調和のとれた発展へ

 科学、技術は府と市がその多面的な発展をうながす見地から、研究の自由を保障し、長期的視野からつりあいのとれた振興をはかってこそ、社会の進歩に貢献できます。

 そのため、基礎研究を重視し、科学、技術の調和のとれた発展と府民・市民本位の利用をはかります。公正で民主的な研究費配分を行い、研究における不正行為の根絶をはかります。産学連携の健全な発展をうながします。女性研究者の地位向上、研究条件の改善をはかります。

府民・大学関係者と共同して

 府大・市大は日本と大阪での学術の進歩に貢献し、住民要求に応えた大学教育を行い、大阪の文化、経済の発展に寄与しています。今後もその役割の発揮が期待されます。

 日本共産党は引き続き、広範な府民・大学関係者と共同して、安倍自公政権の補完勢力である「おおさか維新」政治と対決し、府民・市民の大学教育への願いに応えて、府大・市大の存続・発展へ力を尽くします。


2016年02月09日

日本私大教連、定員超過大学に対する補助金不交付・減額措置基準の「厳格化」に関する見解

日本私大教連
 ∟●定員超過大学に対する補助金不交付・減額措置基準の「厳格化」に関する見解

定員超過大学に対する補助金不交付・減額措置基準の「厳格化」に関する見解

2016年2月4日
日本私立大学教職員組合連合
中央執行委員会

 安倍政権は、「地方創生」策の一環として、大都市圏(特に東京圏)への学生の集中を是正 することを閣議決定し、その手段として文科省が、入学定員超過の私立大学に対する補助金 の不交付・減額措置の強化を実施することを決定しました。2015 年 7 月 10 日には文科省高等教育局私学部長、日本私立学校振興・共済事業団理事長が連名で「平成 28 年度以降の定員 管理に係る私立大学等経常費補助金の取扱について(通知)」を発出しています。

 現行の経常費補助金が全額不交付となる定員超過率(収容定員 8000 人以上 1.2 倍、8000 人未満 1.3 倍)を 2016(平成 28)年度から段階的に引き下げ、2018(平成 30)年度には、
・収容定員 8,000 人以上の私立大学では、1.10 倍以上で全額不交付
・収容定員 4,000 人以上 8,000 人未満の私立大学では、1.20 倍以上で全額不交付 とすることを決定しています。
 さらに 2019(平成 31)年度には、収容定員の規模にかかわらず、入学定員充足率が 1.0 倍を超える場合、超過した入学者数に応じた学生経費相当額を減額する措置を導入する方針 を示しています。
 政府・文科省は、三大都市圏に集中する大規模・中規模大学の定員超過を抑制し、地方私 大の活性化を図ることを政策目的としていますが、これらの措置では大都市圏への学生集中 を抑制するという政策目的を果たすことにはつながりません。また文科省が主張している「教 員一人あたりの学生数などの教育研究条件の維持・向上」も図れないどころか、学費値上げ や教育研究条件の悪化を誘発しかねません。その理由は次のとおりです。

(1)地方私立大学の活性化をはばんでいるのは、貧困な補助金および学生支援策 地方大学に定員割れが集中している大きな原因は、大都市圏への人口流出をもたらす地方の所得水準の低さや産業構造の問題および大学進学率の低さにあります。地元大学に進学す る若者を増やすためには、都市圏私大の入学者数を制限するのではなく、経済的理由で大学 進学を諦める若者を減らすことです。
 地方私立大学の活性化を本気で図ろうとするならば、少なくとも、経済的な理由で大学進 学を断念せざるを得ない事態が生じないように、給付奨学金制度や就学支援金制度を創設す るなど、学費負担軽減のための抜本的な対策を講じ、地方大学の進学率を引き上げる施策こ そ求められます。
 また定員割れ大学に対する補助金不交付措置は、年々厳格になりました。在籍している学 生に対しても不交付となる措置は、「地方創生」の政策目的に反するばかりか、学生の教育を受ける権利の侵害です。過疎地の初等・中等教育に対する政府の対応に比べて、なんと冷遇 されていることでしょう。地方私大の淘汰促進政策となっている定員割れ大学に対する補助 金の減額措置・全額不交付措置を中止し、在籍する学生数に見合う経常費補助の確保、さら に増額配分こそ、実施しなければなりません。
 文科省は、2015 年度予算で経常費補助の特別補助に「経営強化集中支援」予算 45 億円を 新規計上しましたが、額もわずかで、毎年のように内容が変動する場当たり的な予算措置で は、安定的に充実を図ることなどできません。
 地方私立大学の活性化をはばんでいる原因は、淘汰をすすめる補助金政策および貧困な学 生支援策という現行政策にこそあります。

(2)定員超過率の「厳格化」措置と私学助成 そもそも定員超過率の「厳格化」、補助金不交付措置は、
 一片の通知文書で決定されてよいような問題ではありま せん。かつて私立大学がマスプロで、しかも国立大学に比 して高い学費であることは、私学助成制度の整備によって 解決されなければならない課題でした。定員超過の状態を どのように解消して、しかも学費を上げずにすむか、その ために経常費補助を計画的に引き上げるということが経 常費補助制度の目的でした。
 政策として経常費補助が開始されたのは 1970 年で、補 助金不交付となる定員超過率(以下、定員超過率)が定め られたのは 1973 年でした。当時は 7.0 倍までの定員超過 が認められていました。私立学校振興助成法が施行された のが 1975 年で、このときの定員超過率は 5.0 倍でした。
 その後 1977 年から 1981 年までに 3 倍から 2.5 倍にさがります。この間、経常費補助率(以下、補助率)は 1981 年 までに 29.5%にまで上昇しました。7 倍から 2.5 倍への驚 異的な低下は、経常費補助制度によって支えられていたの です。
 その後、臨調行革と受益者負担主義への転換により、補 助率は低下を続けます。定員超過率は 84 年まで 2.5 倍に 据え置かれますが、その後、補助率が低下していくにもか かわらず、定員超過率は下がり続け、96 年までに 1.5 倍に まで下がります。しかしその後下げ幅は鈍化して、2011 年 1.3 倍になるまでに 15 年を要しています【右表】。
 補助率の低下と定員超過率の「厳格化」の併行を可能にしたのは、各大学での学費値上げと人件費などの抑制です。この結果、学費値上げは、貧困 な奨学金制度とあいまって、アルバイトづけの学生生活を常態化させ、人件費抑制はアウト ソーシングや非正規雇用、任期付教員という安価な教職員への代替をもたらすことになりま した。
 今回の大都市圏の中規模・大規模私大の定員超過率の「厳格化」措置の背景には、18 歳人 口が減少する中で大規模私大などが進めてきた定員純増をともなう規模拡大に対する批判が あるとみることができるかもしれません。しかしながら、10.3%でしかない補助率のもとで、 定員超過率を大規模大学の場合、現行の 1.3 倍から、わずか 3 年間で 1.1 倍にまで引き下げ るという政策は、あまりにも急激なダウンサイジングであり、教育・研究条件の改善につな がる保証はありません。

(3)定員超過率の厳格化を教育・研究条件の改善につなげることができる保証はない 入学する学生数が減少すれば、一見すると学生一人あたり経常経費、学生数と教員数の比率、学生一人あたり教育施設費は、高くなります。しかしながらこれを実現するためには、 財源が必要です。
 経常費補助金が全額不交付となる定員超過率の引き下げは、中規模・大規模大学の学納金 収入の大幅な減少をもたらします。例えば、収容定員 8,000 人規模の大学で、現行の補助金
 不交付となる入学定員超過率 1.3 倍近くの学生を入学させている大学の学納金収入が 130 億 円であるとすると、この大学が補助金不交付となることを回避するために入学定員超過率を 1.1 倍未満に引き下げれば、学納金収入は 20 億円以上、15%以上も減少することになります。
 同じく入学者数を定員の 1.0 倍に抑制すれば、学納金収入は約 30 億円、23%以上も減少しま す。私大経常費補助の長期にわたる減額により、私立大学の学納金収入への依存度は非常に 高まっており、また教育・研究の質向上のために経常費支出が増加している状況において、 これほどの収入減は私立大学にとって死活問題です。政府はこの大幅な収入減を何に転嫁し ろというのでしょうか。
 学納金に転嫁すれば、学費の大幅値上げを引き起こすことになります。学生数の減少にと もなって経常経費を減らせば、学生一人あたり経常経費は増えません。教員の新規採用を控 えれば、結局、学生数と教員数の比率も変わりません。また定員超過率に見合う学生数を定 員化すれば、実態はかわりません。
 定員超過率の「厳格化」を教育・研究条件の改善につなげることのできる大学がないわけ ではありません。それは学納金の減少を上回る帰属収支差額をあげてきた、これまで教育・ 研究を軽視して「溜め込み」をすすめてきた大学です。こうした大学が溜め込んできた原資 を教育研究経費に使うならば、学生一人あたり指標に示される教育・研究条件を改善できる でしょうが、「溜め込み体質」を変えるという転換が必要になります。
 定員を厳格に守ることで教育・研究条件の向上を実現するための財源を含めた方策が、具 体的に示されなければ「絵にかいた餅」にすぎません。

(4)すべての在籍学生に補助金を不交付にすることは過度に懲罰的 定員超過に対する補助金不交付措置は、定員割れに対する補助金不交付措置と同様に、実際に在籍している学生の補助金までも不交付とする懲罰的なものです。基本的な考え方とし て、学部の入学定員が 1,000 人の大規模大学の場合、現行では定員超過入学者数が 299 人ま では補助金が交付されるのに対し、2018(平成 30)年度からは 100 人以上の定員超過で補 助金が不交付となります。いくつか例外条件が付されてはいるものの、1,000 人以上の学生 が在籍し、教育・研究が現に行われているにもかかわらず、基準をたった 1 人でも超過すれ ば学部全体の補助金が全額不交付となることによって、それが大学側の入学人数確保策の失 敗であったとしても、しわよせを受けるのは学生です。

 以上のとおり、今般の定員超過に対する「厳格化」措置は、「地方創生」という政策目標を 実現するものではありません。また多大な財源が確保されなければ、教育・研究条件の低下 につながりかねない危険性をもっています。このように深刻な影響が見込まれるにもかかわ らず、今回の政策決定プロセスは、国会での審議もせず、私立大学関係者の意見も聴かず、 中教審での検討も行わないまま、安倍内閣が閣議決定したことを行政が実行に移している点 でも重大な問題です。日本私大教連はこれら一連の措置に対して抗議するとともに、撤回す ることを強く求めます。
 定員規模の急激なダウンサイジングを強いる今回の措置に対して、理事会には、むしろ教 育・研究条件の改善につなげるために長期的で冷静な対応が求められています。定員超過率 の「厳格化」により学納金収入が減少し続ける 3~7 年間を過ぎて、8 年後から 10 年後ほど のスパンでみれば、定員枠での学納金収入に見合う経常経費によって採算を確保することは 可能です。理事会は、使途の決まっていない金融資産を使うなどして、教育・研究条件が低 下しないよう目を配る責任があります。安易な労働条件の引き下げによって、この危機を乗 り越えるようとすることには、断固、反対します。

以上


奨学金の返還額下限、月2000~3000円 所得連動制度で骨子案

日経(2016/2/5)

 奨学金の月々の返還額を卒業後の所得に連動させる新制度を巡り、文部科学省の有識者会議は5日、返還額の下限を月2千~3千円とする骨子案をまとめた。年間の返還額は所得の9%か10%とする方針で、今後どちらかに決める。年収300万円以下であれば申請によって返還を最長10年間猶予できるとした。

 文科省は週明けからパブリックコメント(意見公募)を行い、3月末までに報告書をまとめる。

 新制度の「所得連動返還型奨学金」は、2017年春に大学・短大などに入学する学生から対象となる。日本学生支援機構の無利子奨学金の利用者から先行して導入し、希望者は今年4月から在籍する学校を通じて申し込む。卒業後の年収はマイナンバーを使って把握する。

 骨子案のシミュレーションでは、返還額を所得の9%に設定した場合、一人世帯で年収200万円なら月4300円、年収300万円なら月8500円と試算している。

 現行制度の返還月額は借りた額に応じて固定されており、無利子奨学金を借りた大学生の場合、9230~1万4400円。年収が300万円以下なら返還が猶予されるが、安定的な収入を得られない非正規雇用の若者が増えるなか、負担が重いとの指摘が出ていた。


お金ないから大学行けない 国立でも授業料年54万円、40年前比15倍

毎日新聞(2016年2月4日)

「国立大の授業料は安い」というのは、もはや昔の話だ。2015年度の授業料は年間約54万円で、40年前よりも15倍に値上がりし、私立との差も縮まった。授業料の高騰は、大学生2人に1人が奨学金を借り、卒業時に数百万円の借金を背負う状況も招いている。このままでは、大学に行ける層と行けない層が所得で明確になる階級社会が生まれてしまうのではないか。【石塚孝志】

 「ある学生の話ですが、母親から奨学金をもらっている人と付き合ってはだめと言われたと。もし結婚したら、相手の借金返済で家計が苦しくなるからというのが理由です」と驚くのは、著書「希望格差社会」のある中央大文学部の山田昌弘教授(社会学)。「日本は、親があまり裕福でなかったら大学へ行くなという階級社会に確実に向かっています。さらに大学に行っても奨学金受給の有無が学生間に結婚格差までも作り出している」と指摘する。

 経済的な理由で大学進学が困難になっている状況は、幾つかの調査で裏付けられる。まず、国立社会保障・人口問題研究所が11年に発表した「結婚と出産に関する全国調査」。その中で「理想の子ども数を持たない理由」の1位は「子育てや教育にお金がかかりすぎる」で、約6割が挙げた。日本政策金融公庫が昨年2月に発表した教育費負担の実態調査では、高校入学から大学卒業までに1人当たり平均880万円が必要と試算した。その一方で民間の平均年収は減少。国税庁によると、14年が415万円で、04年から約24万円も減った。山田さんは「教育費の工面は厳しく、大学に行かせたい親は子どもの数を絞る傾向がある。これでは、より少子化を招いてしまいます」と話す。

 文部科学省によると、40年前の1975年度の大学授業料は、国立は3万6000円、私立の平均は約5倍の18万2677円だった。その後、国私間の差は徐々に縮まり、14年度は国立が53万5800円、私立が86万4384円で約1・6倍になった。

 この授業料の格差是正について、旺文社教育情報センターの大塚憲一センター長は「政府は本来なら私立の補助金を引き上げて授業料を抑えるべきなのに、国立の授業料の値上げで格差を縮めてきた」と指摘する。将来的にはさらなる授業料値上げの懸念もありそうだ。

 そもそも日本の大学授業料の国際的な水準はどうなのか。経済協力開発機構(OECD)が昨年11月に発表した教育に関する調査では、日本は13?14年ベースで「授業料が高額で、学生支援体制が比較的未整備の国々」に分類された。また、大学など高等教育に対する国の財政支出を国内総生産(GDP)比で見ると、12年ベースで日本は0・8%。OECD加盟34カ国の平均1・3%を大幅に下回り、高等教育に冷たい国の姿勢が際立っている。

 この背景について、教育ジャーナリストの渡辺敦司さんは「自民党や財務省には、教育は個人の利益だから利益を受ける人が払えという『受益者負担』の考えが強くある」と説明する。対照的な国として挙げたのが北欧諸国。「授業料が無料か低額で、支援制度が手厚く、教育は社会で支えるという理念がある。日本は、家族が無理してでも進学させたいという国民性に国が頼っているだけなのです」

給付型奨学金なし、借金重荷に

 では、OECDに「比較的未整備」と認定された、この国の学生支援体制はどうなっているのか。奨学金問題対策全国会議事務局長の岩重佳治弁護士は「世界で奨学金といえば、返済義務のない給付のこと。先進国で公的な給付型奨学金制度がほとんどないのは日本だけ」と、お寒い現状を説明する。

 奨学金制度の詳細を知ろうと、独立行政法人「日本学生支援機構」の12年度の「学生生活調査結果」を見ると、大学生の厳しい懐事情が浮かび上がる。昼間部の学生の過半数52・5%が奨学金を受給。そのうち9割の学生が受給している同機構の奨学金の内容は次の通りだ。国公立で自宅通学の学生は無利子で月最大4万5000円、有利子なら同12万円を借りることができる。返済額は人によって違うが、無利子で4万5000円を4年間借りた場合、卒業後は216万円の借金を背負う。

 岩重さんは「学費が上がり家計が苦しい中で、奨学金を利用せざるを得ない学生が増えている。将来の仕事や収入が分からずに借りるため、もともと延滞が起きやすい。しかも非正規雇用ならば収入が安定せず、一生借金漬けになる恐れがある」と警告する。

 政府は16年度には無利子奨学金貸与者や授業料免除者の増員などを予定するが、岩重さんは「規模も小さく、根本的な解決になりません。政府は貸与ではなく、給付型奨学金や、より柔軟な返済制度を整備すべきです」と訴える。実は、文科省が給付型制度の創設を要求しても、財務省は財源不足などを理由に認めてこなかった。先月21日の参院決算委員会でも麻生太郎財務相は「単なる財政支出になる。将来世代からの借金と同じ」と述べている。

 財務省に根強い受益者負担論を崩す一つの解決策として、東京大の小林雅之教授(教育社会学)は「教育にお金を掛けることは個人だけでなく、社会的、経済的効果があることを示す必要がある」と話し、三菱総合研究所が10年に発表した調査内容を挙げる。概略は、大学生1人当たり約230万円の公的な教育支出により、卒業後に税収の増加、失業給付金や犯罪関連費の抑制などで約2倍の便益がある??というものだ。

 小林さんも参加する文科省の教育再生実行会議が昨年7月に発表した第8次提言では、7000億円の予算で、大学生の奨学金完全無利子化や、大学・専門学校の授業料の公立高校並みへの引き下げができるとした。要は、日本の将来を託す若者にお金を掛ける意思があるのかという話だ。

若者よ、声上げよ!

 大学進学時の所得階層差が拡大していると見る小林さんはこう訴える。「所得の高い層が私立に比べて学費の安い国公立に流れ、所得の低い層がはじき出される傾向が出ている。大学進学のために必死でお金を工面してきた所得の低い層の無理がそろそろ限界に来ている」。さらに中学・高校生にも現実を教える必要性を説く。「この時期から借金を背負うリスクを教えなければいけない。貧乏だから大学に行けないと言う子には『そんなことはない』と伝える一方で、奨学金に頼る危険性も説明すべきです」。このような現実を見据えて、小林さんは「教育費の負担軽減は待ったなし」と力説するのだ。

 岩重さんが重要視するのは、若者が声を上げることだ。「大きな声にまとまれば、国も無視できないはず」と指摘する。

 今夏の参院選では初めて18歳からの選挙権が認められる。若い人にはぜひ、自分たちの問題として考えてほしい。


国立大学の学費 値上げの危険ここに 交付金削減へ新方式導入

しんぶん赤旗(2016年2月8日)

 安倍晋三首相らは、国立大学の学費値上げの危険性について「デマ」だと国会で繰り返しています。しかし、値上げの危険性はデマどころか、現実にあることは隠せません。

 安倍政権による国立大学の学費値上げ計画は、昨年10月、政府の財政制度等審議会で「(国からの)運営費交付金に依存する割合と自己収入割合を同じ割合とする」という財務省の方針が了承されたのが発端です。

方針は撤回せず

 財務省方針は、今後15年間、交付金を毎年1%削減して1948億円も削減する一方、大学の自己収入を2437億円も増やせというもので、同省は現在もこの方針を撤回していません。

 同審議会がとりまとめた昨年11月の「建議」は、国立大学に対し、数値目標は示さなかったものの「運営費交付金の削減を通じた財政への貢献」を求め、「授業料の値上げについても議論が必要」「国費に頼らずに自らの収益で経営を強化していくことが必要」と打ち出しました。

 自己収入増を授業料だけで賄えばどうなるのか―。日本共産党の畑野君枝衆院議員が昨年12月に国会でただすと、文科省は「授業料は40万円増えて93万円になる」と答えました。

 若者が奨学金で多額の借金を背負う実態を無視した暴論であり、高等教育の段階的な無償化を求める国際人権規約や、憲法が定める教育機会の均等にも反するものです。馳浩文科相も「一律削減ありきの考え方に反対だ」と答えざるをえませんでした。

 運営費交付金の削減に対しては大学関係者や学生、保護者からも反対の声が広がり、来年度予算案では交付金は前年度と同額になりました。しかし、交付金と一体に配分されていた補助金が半減され、各大学に配分される予算は88億円減となっています。

 さらに重大なのは、最も基盤的な経費である基幹運営費交付金は毎年1%、100億円も削減する新たなルールが導入されました。

 文科省は、この100億円を使って各大学の「機能強化」を支援するとしていますが、これはそのままでは「人・物・施設」には使えません。

 国立大学協会の里見進会長も「機能強化促進分は使途が限定されているので、教育研究活動に必要な基盤的予算(基盤経費)はこれまで以上に減らさざるをえません」「高等教育局の予算もかなり減額されたので、補助金として大学に配分される予算も少なくなる」と指摘しています。

値上げの悪循環

 結局、民間企業からの資金獲得が困難な大学は、学費値上げに踏み切らざるをえなくなります。国立大学への予算削減による学費値上げの危険が現実にあることは明らかです。

 公明党も前出の「建議」について、昨年12月11日の参院文教科学委員会で「授業料の値上げによって教育の格差が拡大してしまう」(新妻秀規議員)と批判し、「わが党として到底容認できません」と明言していました。

 国立大の学費値上げは私大にも波及し、学費値上げの悪循環を招くことは必至です。日本共産党は「国の大学予算削減のために学費を値上げする方針を撤回させるという一点で、引き続き世論と運動を広げよう」と呼びかけています。

 (深山直人)

新潟大、財政難で教員人事凍結 原則2年間、補充もなし

朝日新聞(2016年2月4日)

 新潟大学は今後おおむね2年間をメドに、教員人事を原則凍結する方針を決めた。定年退職する教授が出ても、新規募集や内部昇任を控える。決定は1月28日付で、即日実施。2004年度の国立大学法人化以降、国からの運営費交付金が減少傾向にあり、同大の財政事情も厳しさを増す中、退職する教員の補充を控えることで人件費を抑える目的がある。

 高橋姿学長は「教員の給与を減らすわけにはいかないので、退職者の補充を控える形とした。苦渋の選択」と話す。5人分の空きポストができれば1人補充するなど、一部例外措置は設ける。新潟大は1月からは、50歳以上を対象とする教職員の早期退職募集制度も始めており、人件費の抑制策を進めている。

 一方、各学部では財政難のため、実験に必要な消耗品を教員がポケットマネーを使って購入するなどの事態も生じており、一部教員らは執行部の運営手法に反発。「新潟大学の現状と将来について考える教員有志の会」を設立し、先月27日には人事凍結に反対する300筆以上の署名を集めて高橋学長に提出していた。同会のある世話人は「状況を分析し、今後の対応を考えたい」と話している。


国立大の財政難は超深刻 新潟大は教員人事凍結、研究費は「自腹」

Jcast ニュース(2016/2/4)

国立大学法人の新潟大学は、財政難を理由に、2016年春から2年間をめどに、定年退職する教授が出ても教員の新規募集や内部昇任などの人事を凍結する。

 国からの運営費交付金が減少したのに対応し、人件費を抑える措置だが、全国の国立大学法人が加入する国立大学協会は「(経費削減で人事を凍結したケースは)これまで、聞いたことがありません」という。

新潟大への運営費交付金、15年度は134億円 12年間で7.6%減

新潟大学が教員人事の凍結を決めたのは、学部長らが重要事項を審議する教育研究評議会が開かれた2016年1月28日で、即日実施に踏み切った。

人事凍結の背景には、国立大学の収入の約3~4割を占める、国からの「運営費交付金」の減少がある。新潟大によると、同大の運営費交付金は国立大学法人に移行した2004年度の145億円から、15年度は134億円に減少した。

一方、同大の教員の定年退職者は毎年20~30人で、人件費の削減効果は年間で数千万円から億単位になるとされる。今後も厳しい状況が予想されるため、退職する教員の補充を控えることで人件費を抑えることにした。

ただ、決定が1月だったため、3つの教員組織(人文社会・教育科学系、自然科学系、医歯学系)ごとに空きポストが5つ出た場合や病院診療の担当教員に欠員が出た場合、配置数が国の設置基準を下回る場合――などは例外として新たな配置を認める。

支障がある場合は非常勤講師などで補うほか、3か月ごとに教員の配置や財政状況を確認して必要に応じて見直すともいう。

具体的には、大学では現在、電気情報工学系列の教授を1人募集(3月31日締め切り)しているが、この募集を最後に、原則教員の採用を凍結することになる。

高橋姿学長は今回の人事凍結について、「あくまで短期的な対応」と強調したうえで、「教員の給料や教育、研究の質を下げないための苦渋の判断」と話す。

新潟大は16年1月から、これまでの学長らからの勧奨退職に代わって、50歳以上を対象とする教職員の早期退職制度を導入。大学側は「(この制度は)退職を促すものではない」と話しているが、経費削減のため、人件費に手をつけざるを得なくなってきたようすがうかがえる。

さらには、教員が実験に必要な消耗品を「自腹」で購入するなどのケースも生じているらしい。大学側は「すべてを把握しているわけではありません」としたうえで、「予算が回らない時期にそういったことはあるかもしれません」と、こうした話を耳にしたことがないわけではないと話す。

財政難は「新潟大学に限ったことではありません」

新潟大学の「人事凍結」を受けて、インターネットではその衝撃が広がっている。

“「なんで国立大学法人の新潟大学が財政難?」
「地方の有力国立大学でもこの状態かよ・・・」

といった驚きの声や、

“「こんなんで新潟大はまともな教育できんの?」
「しわ寄せが行くのは若手の教員ってわけだ。文科省はどう思っているんだろうな」
「こんな事態に陥っている大学に、受験生は魅力を感じるだろうか?」
「教員が退職、補充なし→教員数が減少→一人あたりの仕事が増える→教育研究成果が上がらなくなる。負のスパイラルだな」
「削れるところって他にもあるような気がするが・・・」

などの嘆きや、教育への影響を憂う声も数多く寄せられている。

とはいえ、国立大学の財政難は「新潟大学に限ったことではありません」(国立大学協会)。大学が経費節減のために、古い機材を更新しないで使いまわすようなことは珍しくなく、今後はさらに厳しくなることが予想されている。

財務省によると、2015年度の国立大学法人の予算収入(研究機構を含む90法人)は全体で2兆4650億円。このうち、運営交付金は1兆945億円と44.4%を占めている。残りは授業や入学検定料の3666億円(14.9%)や附属病院収入の9786億円(39.7%)などの自己収入になる。

この運営交付金を2031年度までに約9800億円にする方針で、今後毎年1%ずつ削減する。すでに2004年の法人化以降の12年間で1470億円(11.8%)が削減され、加えて消費税率の引き上げや諸経費の値上りで、人件費や教育研究費など大学の運営基盤は急激に脆弱になっている。

その一方で、財務省は自己収入を毎年1.6%増加させるよう提案が示しているが、16年度以降の新たな財源として期待できるのは、「税額控除が認められるようになった寄付金ぐらい」。ただ、寄付金収入は「個々の大学で異なりますが、現状でも数%ほどだと思います」(国立大学協会)とわずか。減っていく運営交付金の穴を埋めるには心もとないかもしれない。

生き残りには、学生数を増やすか、経費削減を続けるしかないようだ。


2016年02月08日

准教授懲戒処分無効 異議申し立て退ける

■読売新聞(2016年1月26日)

 常葉学園の補助金の不正受給を内部告発し、懲戒処分を受けた男性准教授(42)を巡り、処分の無効と地位確認を命じた静岡地裁の仮処分決定に対し、学園側が異議を申し立てた保全異議審で、同地裁(小松美穂子裁判官)は25日、仮処分決定を支持し、異議を退ける決定を出した。

 小松裁判官は決定のなかで、学園の担当者が准教授に対し、暴力団員の話を引き合いに出したとされる点について、「問題を解決する力があることを示すために暴力団に関する話をする必要がない」と指摘。「他に隠された意図があるのではないかとの疑いを抱くのも無理からぬこと」などと認定した。

 県庁で記者会見した准教授によると、昨年7月の仮処分決定で職場には復帰したが、授業は担当できていないといい、「授業を休むとスキルが落ちるので、早く復帰したい」と訴えた。

 決定について学園の担当者は「主張が認められず残念。弁護士と相談して今後の対応を決めたい」と話している。

 准教授は復職や慰謝料300万円の支払いを求める訴訟を静岡地裁に起こしており現在、係争中だ。

常葉大不当解雇事件、仮処分異議申立 静岡地裁決定全文

静岡地裁決定全文(2016年1月25日)

常葉大准教授への仮処分再び認める 静岡地裁

■中日新聞(2016年1月26日)

 常葉大短期大学部(静岡市葵区)を懲戒解雇された男性准教授の地位保全の仮処分が静岡地裁に認められた問題で、同地裁は15日、常葉大学を運営する常葉学園から出されていた異議申し立てを退け、あらためて仮処分を認める決定をした。男性は、常葉学園による国の補助金の不正受給をもみ消すよう脅されたとして2012年8月に理事長や面談に当たった職員ら3人を強要罪で静岡地検に刑事告訴したが、3人は不起訴となった。学園側は名誉を傷つけられたとして、昨年3月に男性を懲戒解雇した。男性は静岡地裁に地位保全の仮処分を申し立て、同地裁は昨年7月地位保全の仮処分を認めた。

 小松美穂子裁判官は、異議申し立てを退けた判断に伴い、学園職員が暴力団との関係をほのめかすなどして恐怖心を抱かせ、不正受給のもみ消しを求めたとする事実関係を認定。地位保全を認めなければ、研究や学会活動に著しい損害が生ずるとした。男性は復職を求める訴えを静岡地裁に起こし係争中。

 西ヶ谷知成弁護士は、「学園はブラック企業と評価されても致し方ない対応だ。引き続き経営責任を追及していく」と述べた。


2016年02月07日

常葉学園の補助金過大受給、解雇の短大部准教授、地位保全の仮処分 静岡地裁認可

毎日新聞(2016年1月26日地方版)

 学校法人常葉学園(静岡市葵区)が運営する常葉大短期大学部が2001年度から4年間、補助金を過大受給していた問題で、過大受給を内部告発した短大部の男性准教授(42)が25日記者会見し、同学園から受けた懲戒解雇処分の無効を求める地位保全の仮処分決定を、静岡地裁が認可したと明らかにした。

 准教授や代理人弁護士によると、准教授は12年12月に短大部の過大受給を内部告発。同学園は外部識者による調査委員会を発足させ、14年2月に同学園は少なくとも480万円の過大受給をしていたと発表した。ところが同学園は15年3月、内部告発により名誉を傷つけられたとして、准教授を懲戒解雇処分した。

 同学園の木宮岳志・常務理事は「裁判所の決定は残念。弁護士と相談し東京高裁への控訴も検討する」と述べた。准教授は同学園に対し損害賠償や復職などを求める訴えも同地裁に起こし、現在も争っている。【早川夏穂】

なぜ?! 岡山大学の教授2人解雇

webronza(2016年01月28日)

なぜ?! 岡山大学の教授2人解雇
論文不正の告発から解雇処分までの4年間に起きたこと

高橋真理子
2016年01月28日

 岡山大学が薬学部の教授2人を昨年末に解雇した。2人は「論文不正の告発が解雇につながった」と主張、年明けに処分無効と慰謝料を求めて岡山地裁に提訴した。ツイッターなどでは「不正を告発したらクビ?」と驚きと憤りが広がっている。しかし、取材をしてみると、それほど単純な話ではない。始まりは、薬学部教授が博士論文の不正に気づいたことだった。ところが、その後に次々と異例の事態が起きた。ついには、学長や学部長ら35人で構成される教育研究評議会が2人に対して「岡山大学教授に必要な適格性を欠く」という、これまた異例の判断をして解雇を決定した。そこまでの経過を追う。

拡大岡山大学の本部

 解雇されたのは、森山芳則・元薬学部長と榎本秀一・元副学部長。森山氏は岡山大学薬学部を卒業し、帝京大や広島大、大阪大学で助手や助教授を務めたあと、1998年に岡大薬学部教授に就任した。薬学部が69年に設置されてから、初めての岡大卒の教授だった。生体膜の生化学が専門で、現在に至るまで研究室のメンバーとともに数多くの論文を出している。

大学院生の論文不正発覚が発端

 4年前の1月、薬学部の大学院生の博士論文に不正が見つかり、大学院医歯薬学総合研究科に設置された調査委員会が、この論文は博士号審査からはずすと決めた。森山氏によると、この過程で社会人ドクターコースに入ってすでに博士号を得ていた製薬企業社員2人の論文に、他人の修士論文の引き写し部分があることが発覚。これを報告したとき、森田潔学長から「これ以上、騒がないで欲しい」と隠蔽を指示されたと言う。一方、学長側は「不正隠蔽の指示など一切していない」と主張する。

 その真相は判断できないが、この後、事態は思わぬ展開を見せる。2012年から翌年にかけて、森山氏や榎本氏からハラスメント(嫌がらせ)を受けたという申し立てが複数の薬学部教員から出たのである。大学内部の人によると、個人を罵倒するメールを薬学部教員の多数に送るといった行為などがあったらしい。しかし、学部長選挙で森山氏は薬学部長に再選され、榎本氏が副学部長に選出された。その後、ハラスメント防止委員会は計6人(教授1,准教授4、すでに大学を辞めた元教授1)からの申し立てを一括して調査すると決めた。……


全大教、声明「大学教員の処分手続きおよび内容の適正化を求めます-大学教員の身分保障は学生の教育権を保障し学問の自由を守るために必要なものです-」

全大教

(声明)大学教員の処分手続きおよび内容の適正化を求めます- 大学教員の身分保障は学生の教育権を保障し学問の自由を守るために必要なものです -

最近、国立大学において、教員が長期間の停職など重い懲戒処分を受け、なかには解雇されるという事件が立て続けに発生しています。これらの事件の中には、処分手続きが不十分、あるいは処分内容が恣意的と疑われる事案が含まれています。

たしかに、大学教員による研究不正や、学内外における犯罪行為・社会通念上許されない行為が発生する場合もあり、そうした事案に対しては、身内をかばうということでなく、厳正な審査の上で公正な処分が行われなければならないのは当然です。

しかしながら、不十分あるいは恣意的な手続が疑われる事案が発生する背景には、学校教育法の「改正」(註1)によって、相当数の大学において、教員の不利益処分や懲戒を含む教員人事事項が教授会の審議事項から外され、さらに大学によっては、教員の処分に学長・役員会の意向が直接反映されやすくなるよう人事委員会(あるいは懲戒委員会)等の構成等が変更されている、などのことがあります。学長・役員会が、社会からの非難を恐れ、あるいは学内の政治的思惑から、厳正・公正な調査と審査を経ずして処分権を発動しているのではないか、また、処分の量定において過度の厳罰主義に陥っているのではないか、と疑われる事例もみられます。
私たちは、こうした傾向に危惧を覚えます。

恣意的、不公正な審査によって教員が不当な処分を受けるといった事態は、それが教員本人の身分・労働条件についての重大な問題であるとともに、教育を受ける学生の教育権の問題でもあります。現に教育を受けている教員の突如の変更や、かつて教育をうけた教員に対する理不尽な処分による名誉の毀損は学生にも及び、学生の人生にとっても非常に大きな不利益となります。
軽々に教員の身分が不利益に変更されることがまかり通ることは、学問の自由に触れる問題です。それは、教育、研究内容を萎縮させ、そのことは学術全体の歪みにつながっていきます。

私たちは、国立大学においては教育公務員特例法の対象外となった現在でも(註2)、教員の身分に関わる審査は、教員代表が構成する教育研究評議会において慎重な審査が行われることが必要であり、学長・役員会はその審査を最大限尊重すべきと考えています。その審査は、必要かつ十分な事実調査の上になされなければならず、それは厳正であり専門的見地からなされるよう、公正な構成をもつ調査委員会においてなされていなければならないと考えています。
国立大学法人においては、現在でも学校教育法によって、教授会において教員人事について審議することが求められており、国立大学法人法により教育研究評議会の審議事項であることを確認されなければなりません(註1及び註3)。こうした厳正・公正な手続きが、慎重に進められたうえで、適正な処分が行われるように求めます。

大学自身が、自ら社会に対して責任をもって説明をすることができる十分な自浄機能を持ち発揮し続けることが、社会からの付託にこたえることであり、学術を守り育てる責任を果たすことであると確信しています。
学長・役員会には、こうした考えを共有し、ともに大学・学術を守っていくことを求めます。

2016年2月4日
全国大学高専教職員組合中央執行委員会

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1)2015年の学校教育法の「改正」によって教授会の審議事項に関する定めがなされた。その中でも、同法第93条第2項第3号の「教育研究に関する重要な事項で、教授会の意見を聞くことが必要なものとして学長が定めるもの」の一として、同法の施行通知(文部科学省)で「学校教育法第93条第2項第3号の「教育研究に関する重要な事項」には,教育課程の編成,教員の教育研究業績の審査等が含まれて」いると明示されている。

2)教員の身分に関わる決定については、かつて、国立大学が法人化される以前は、教育公務員特例法によって、「転任・降任・免職」については、「評議会の審査の結果によるのでなければ、意に反して転任・降任・免職されない」、「懲戒」については、「評議会の審査の結果によるのでなければ懲戒処分を受けない」、と、いずれも評議会の審査が要件であった。
法人化によって、国立大学教員の身分が非公務員となった。このことにより自動的に、教育公務員特例法の適用の対象外となった。
しかし、公務員法制の適用から外れたことで、ただちに教員に対するこれらの不利益処分を教員代表機関の審査に付す必要性がなくなったわけではない。
教育公務員特例法によって、教育に携わる公務員である国立大学教員の身分が「特例」とされていたのは、公務員一般の身分と同等に任命権者の意思によって処分を受けることは大学の自治を侵害し学問の自由を危うくすることにつながりかねないので、それを排除するために、人事権を大学に、しかも専門的見地から十分に審査するために、教員組織である(教育研究)評議会に置いたものである。この法の趣旨は現在でも非常に重要であり、大学においてはそれぞれの自治の判断で、組織的に十分な審査を進めることを旨とし、教育研究評議会における審議を実質的に十分に行うことを定めて、実施していくことは必要である。

3) 国立大学法人法では、教育研究評議会についてその審議事項の一として、第11条第4項第4号に「教員人事に関する事項」をあげている。この「教員人事に関する事項」には当然ながら懲戒に関することも含まれている。にもかかわらず、実際の運用でそのようになっていない大学があり、このことは重大な問題であると考える。さらには、教育研究評議会の構成が、専断的大学運営を行う学長の意向に沿う形で、教育研究に関する重要事項を審議するに相応しい公正な構成とはいえない状況にさえなっている国立大学法人も見受けられる事態は、大きな問題である。


全大教、声明「法と事実を枉(ま)げる高裁、地裁の不当判決に抗議し、徹底審理と公正な判断、また国立大学法人労働者の労使自治確立を改めて強く求める」

全大教

(声明)
法と事実を枉(ま)げる高裁、地裁の不当判決に抗議し、徹底審理と公正な判断、また国立大学法人労働者の労使自治確立を改めて強く求める

全国大学高専教職員組合中央執行委員会

2016年2月4日

 2012 年途中から約2年間にわたって、国立大学、高専、大学共同利用機関で働く教職員の賃金の一方的な減額が行われた。この賃下げが政府の国立大学法人制度、独 立行政法人制度の枠を超えた法的根拠なき要請と無法な運営費交付金の減額、これらに安易に追従する法人側の対応によって引き起こされた不当な措置であった こと、もともと例外的に認められるにすぎない就業規則変更による労働条件不利益変更の要件を充たさない違法無効な措置であったこと、震災復興財源捻出を賃 下げ実施及び運営費交付金減額の理由としながら、賃下げ実施後の各法人及び政府の財政運営はその説明を裏切るものであったことは、これまでに発表した声明 等(*1)でも明らかにしてきたし、全大教が全国闘争として取り組んでいる全国11の未払い賃金請求訴訟(*2)のたたかいの中で、ますます現実に明らかになってきている。

 ところがこの間、裁判所は国立大学法人等に求められる自主的・自律的な経営や労使自治による労働条件決定の原則を事実上骨抜きにするかのような誤った法解 釈と事実認定を通じて、違法無効な賃下げを行った法人側、ひいてはそのような措置を行わせた政府を救済する判断を下してきた。
 
 昨年後半に出された二つの第一審判決(高エネルギー加速器研究機構事件2015年7月17日水戸地裁土浦支部判決、富山大学事件2015年12月24日富山地裁判決)の うち、前者では法人財政に占める運営費交付金の割合が高いことを理由に政府の要請に反する措置は困難であったとして、また逆に法人財政に占める運営費交付 金の割合が相対的に低い後者では、中期目標・中期計画に基づく施設整備の必要性や剰余金の使途の拘束性などを著しく過大に見積もることを通じて、賃金の不 利益変更を行う「高度の必要性」を肯定した。いずれの判決も、それ以前に出された3判決(国立高専機構事件2015年1月21日東京地裁判決、福岡教育大学事件2015年1月28日福岡地裁判決、京都大学事件2015年5月7日京都地裁判決)と 同じく、単に労働者の生活と権利を軽く扱うだけでなく、各法人が自主的な経営努力と健全な労使自治に基づいてその設置目的を果たすことを求めた国立大学法 人等の制度趣旨を否定しかねない点でも不当な判決である。また、高エネ研事件の判決については、労働協約の拘束力の軽視、賃下げに並行して行われた退職金 減額の不利益の甚大さや退職給与の持つ賃金の後払い的性質の軽視とい、点でも看過しえない不当性をもつ。
 
 我々は、先行する訴訟の判断や国立大学法人等と政府との関係への通俗的な理解に寄りかかったこれらの地裁判決に抗議するとともに、なお続行する第一審訴訟で各地の地方裁判所が裁判官の独立と良心にかけて、公正な判断をすることを強く求めるものである。
 
 上に挙げた5つの第一審での不当判決に対しては、いずれも原告団がこれを不服として控訴し、審理は高等裁判所に移された。そのうち2つの事件について、原 告側からの証人申請の却下、新たな主張立証のための弁論続行の申入れの却下、さらに弁論再開申立の却下など一方的かつ強権的な訴訟指揮がされる中で、控訴 審判決が出されている(福岡教育大学事件2015年11月30日福岡高裁判決、国立高専機構事件2016年1月13日東京高裁判決)。

 これら判決の内容は、上に述べたような審理を尽くそうとしない訴訟指揮のあり方が判断にそのまま現われたものであった。第一審判決をほぼ丸ごと肯定し、原 告側の控訴審での追加的な主張・立証――原判決での法人の中期計画に関する事実認定の誤り、法人財務諸表等に基づけば賃下げ回避は可能であったとの専門家 の意見、原判決は労働法令の従来の解釈を逸脱するものであるとの専門家の意見など――を原判決と同様な論理立てで切り捨てるのみで、良くも悪くも控訴審独 自の判断はほとんど見当たらない。つまり、それぞれの事件の第一審判決の不当性がそのまま維持されたものであった。
 
 我々は、裁判を受ける権利を十分保障せず、控訴審の審理を一方的に打ち切って第一審の不当な判断を擁護したこれら高裁判決に抗議するとともに、現在続行中 の京都大、高エネ研の各控訴審訴訟、これから開始される富山大の控訴審訴訟で、裁判所が徹底して審理を尽くし、第一審の不当な判断を覆すことを強く求める ものである。

 我々が給与臨時減額措置に対する未払い賃金請求訴訟を全国闘争として取り組む目的の根本は、さきの声明でも述べた非公務員化、法人化された国立大学法人等 の運営と労使関係を支える次のような当然の基本的原理を確認し、かつ大学・高等教育の現場、労使関係の現場においてこれらを現実のものにすることにある。「国 立大学法人等は、高等教育を行い学術研究を推進するというその設置の目的を果たすべく、国の中期目標・中期計画を通じた関与や事業実施に必要な財政措置を 受けながらもみずから自律的な経営判断を行う当事者能力をそなえた、独立した経営体である。そこで働く労働者の権利は、労働基準法、労働契約法等の一般労 働法制のもとで適切な保護を受けるものであり、その中での労働条件の決定は労使間の自治によって行われなければならない。国立大学法人等のこうした自主 性・自律性、そのもとでの労使自治、また高等教育機関に保障されるべき自治の精神に基づいて、独立行政法人通則法など関係法令の規定が解釈され、そのもと での政府の措置が規律されなければならない。」 全大教は、これらの基本的原理の確認の上に立って国立大学、高専、大学共同利用機関でらくすべての労働者の生活と権利を擁護するために、法廷の中でも、またそれぞれの職場や地域社会など法廷の外でも、たたかいを継続する決意を表明する。


2016年02月06日

兵庫医大の元教授が提訴 損害賠償も 地裁

毎日新聞(2016年1月22日)

 著書の虚偽記載などを理由に兵庫医科大(西宮市)を懲戒解雇された西崎知之・元同大医学部主任教授(61)が「懲戒理由に事実はない」などとして、同大を相手取り地位確認と2200万円の損害賠償を求める訴訟を21日、神戸地裁に起こした。

 訴状などによると、西崎元教授は昨年4月、著書「認知症はもう怖くない」を出版。大学側は▽同書にある「兵庫医大倫理委員会の承認を得た」などの記載が虚偽▽論文にデータ盗用があった、など計5項目を懲戒理由に挙げている。

 西崎元教授は「虚偽記載とされた記載は誤記で、故意はない」などとして4項目は事実ではなく、残る「無許可の兼業」は事実だが懲戒解雇するまでもないと主張。同大ホームページで懲戒解雇やその理由が公表されたのは名誉毀損(きそん)にあたるとして、損害賠償も請求した。

 西崎元教授は同日会見し、「誤記は出版直後に気づき、第2刷から訂正した。今後も患者のために研究にあたりたい」と話した。

 同大は「懲戒解雇には学内の適切な手続きを経ているので有効と考える。しかるべき対応を行います」とのコメントを出した。


2016年02月05日

東北大、パワハラで男性教授停職 工学研究科の60代男性教授

マイナビニュース(2016/02/05)

 東北大は5日、同じ研究室の教員3人を大声で叱るなどパワーハラスメントを繰り返したとして、工学研究科の60代の男性教授を停職3カ月の懲戒処分とした。

 大学によると、教授は2012年4月~13年10月、毎朝のミーティングを少なくとも1時間半にわたって行い、大声で問いただしたり、叱ったりした。また、東日本大震災の建物被害に伴い新たな研究スペースを確保するため、建物周辺で樹木の伐採や根の撤去をやらせた。大学は、作業は業者に依頼するべきだったとしている。

 教員3人はうつ病などになって病気休暇を取得。教授は「ハラスメントの認識はない」と話しているという。