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2014年10月20日

天使大学不当労働行為事件、ついに法人側が命令内容の「ポストノーティス」を掲げた

北海道私大教連
 ∟●【速報】天使大学(札幌)法人がポストノーティスを履行

(天使大学不当労働行為事件) 

 昨年夏の北海道労働委員会救済命令に続き、この9月に法人側が一方的に申立てていた中央労働委員会での再審査命令(棄却)を経て、学校法人天使学園(近藤潤子理事長)は命令内容の「ポストノーティス」を10月15日に実行しました。
 ポストノーティスは通常、不当労働行為という非行を組合と公衆に対して陳謝する社会的目的をもつものですが、敷地が狭い同大学での場合、正門前ではなく「公用掲示板」への貼りだしです。10日間の継続した掲示が求められています。
 本来、一方的に再審査を申立てたとて免れ得ない初審命令を履行しないまま約1年3か月の間も棚上げしてきた法人側は猛省すべきですが、ようやくの履行は前進です。

【北海道労働委員会】http://www.pref.hokkaido.lg.jp/rd/sms/contents/sinsa/meirei.htm
【中央労働委員会】http://www.mhlw.go.jp/churoi/houdou/futou/dl/shiryou-26-0926-1.pdf


2014年10月04日

「天使大学理事会は中労委命令を速やかに履行せよ!」、中央労働委員会命令に関する組合声明

■北海道私大教連書記局ニュース、Vol.19より
 ∟●「天使学園不当労働行為事件」中央労働委員会命令に関する組合声明
 ∟●(中労委)天使学園不当労働行為再審査事件(平成25年(不再)第52号)命令書交付について

「天使学園不当労働行為事件」中央労働委員会命令に関する組合声明

 「天使学園不当労働行為事件」(初審道労委平成23年道委(不)第31号事件)は、法人側が救済命令を不服として2013年8月7日に再審申立てを行いましたが、2014年9月19日に中央労働委員会は、再審査申立てを棄却しました。(中労委平成25年(不再)第52号)

1.本件の経過
 天使大学教職員組合(以下、組合)は、2011年12月末、北海道労働委員会(以下、道労委)に救済を申立て、「天使学園不当労働行為事件」として1年7?月余の審査を経て、2013年7月24日に救済命令が出されるに至りました。初審では、①ハラスメント事案に関わる配置転換等の労働環境調整の団交拒否 ②就業規則に関わる懲戒委員会規程及びハラスメント規程改定に関する団交拒否について救済を認め、法人に対してポストノーティスによる謝罪を命じました。
 初審の結果は、組合にとっても上記以外の争点では一部不満の残るものではありましたが、本命令を甘受し、学内状況や労使関係を改善すべく対応を協議していたところ、法人は命令を不服として「中央労働委員会への再審査申立て」を行いました。再審査申立て中であっても、命令の履行を免れるものではありませんが、法人は命令の真意をくみ取ることなく命令を履行することはありませんでした。

2.再審査申立ての経過
 再審査では2度の調査が中央労働委員会(東京)で行われ、法人は初審命令内容には事実誤認があり、団交には誠実に応じてきたと主張し、団交に不慣れな面もあり不当労働行為と断罪するほどの悪質性はないとして、ポストノーティスも不当であると述べました。しかしその後、法人は自らの主張を裏付ける具体的な事実誤認の証拠を提出することはありませんでした。また、中央労働委員会の和解提案においては、組合側が初審命令のハラスメント及び懲戒の規程を前規程に戻し検討することが絶対条件としながらも、謝罪方法はポストノーティスに拘らない和解案を提示しましたが、法人は何一つ譲る姿勢を示さず和解は成立しませんでした。
 また、初審命令後に3回団交が行われましたが、ハラスメントや懲戒問題規程については団交事項であることを認めつつも、「これまでも誠実に対応している」と繰り返し2年前と全く同じ主張を述べるのみでした。

3.中労委の命令
 中労委の命令は、ハラスメント問題にかかわる労働環境調整やハラスメント及び懲戒規程は義務的団交事項であるにもかかわらず、法人の対応は実質的に団交拒否であり、誠実に対応したとはいえないとして、その不当労働行為性を認めました。
 また、ポストノーティスについては、法人は公用掲示板への掲示は多くの人の目に触れるため、法人の信用が著しく毀損されるとし掲示は不要と主張しました。
 しかし、命令では、義務的団交事項でも法人は実質団交を拒否した行為は「憲法28条労働者の団結権等」を著しく軽視した態度であり、また救済申立てから2年を経過した団交でも資料を持参しなかったことを理由に実質的議論に臨まない態度を問題とし、「よって本件は、法人と組合の集団的労使関係秩序を回復する必要性の高い事案であり、法人に同種行為の再発を防ぐためにも公用掲示板への文書掲示を命じることは妥当」であるとし、中労委は法人の申立てを棄却しました。

4.不当労働行為を繰り返した理事に対する組合見解
 第1には中央労働委員会の再審査棄却の結果を真摯に受け止め、速やかな命令の履行を求めます。
 この度の道労委の初審から中労委再審査申立てへと理事たちがとった一連の行為は、学校法人の経営責任を負う者の行いとは言いがたく、教職員に不信と威圧を与えるものであります。労働委員会のポストノーティスを大学への信用を毀損するものだと言い張る理事会ですが、自らの行為を顧みることなく、不必要な係争に時間と費用をかけ続けることこそが、大学を私物化し、学生や教職員などのステークホルダーへの裏切り行為といえるのではないでしょうか。
 教育の質を担保する教職員の欠員状態解消より、次々と法人側の労務対策役員を補充してきたことがその証であると言えます。内省することなく自らの考えに固執し、組合敵視対策を取り、恣意的人事を繰り返し、大学運営の独裁化と私物化する現体制は速やかに刷新されなければならず、理事長をはじめとする理事の総退陣が必要といわざるを得ません。

 組合としては、今こそ教職員が一致協力して大学の健全化と事態の改善に取り組む決意であります。また、この3年間に組合に寄せられた同窓生、旧教職員、学生のご父母や他大学教職員、医療関係者、さらには「天使大学の教育を守る会」の皆様のご支援に感謝し、天使大の再生に向けて力を尽くすことを表明いたします。

2014年10月3日

天使大学教職員組合
北海道私立大学教職員組合連合執行委員会

2014年10月01日

天使大学不当労働行為事件、中労委命令

中央労働委員会
 ∟●平成25年(不再)第52号、天使学園不当労働行為再審査事件

天使学園不当労働行為再審査事件
(平成25年(不再)第52号)命令書交付について

 中央労働委員会第一部会(部会長 諏訪康雄)は、平成26年9月25日、標記事件に関する 命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。
命令の概要は、次のとおりです。

【命令のポイント】 ~組合員の労働環境の調整等に関わる議題について、経営権の問題であり団体交渉事項 にはならないとした法人の対応は、不誠実な団体交渉に当たるとした事案~

1 組合員のハラスメント事案に関して、配置転換等の労働環境の調整を求めた議題は組合員の 労働条件に関わるものであるにもかかわらず、配置転換は経営権に関わる問題であること、ハ ラスメント事案はプライバシーに係る問題があるとして団体交渉事項に当たらないとする法人 の対応は、不誠実な団体交渉(労組法第7条第2号)に当たる。
2 法人のハラスメント規程及び懲戒委員会規程の改正を議題とする団体交渉において、ハラス メント規程の改正について具体的に説明した状況はうかがわれず、さらに、両規程の改正に関 する問題は経営権の問題であり団体交渉事項にはならないとの認識を殊更明らかにしていた法 人の対応は、不誠実な団体交渉(労組法第7条第2号)に当たる。

Ⅰ 当事者
再審査申立人 学校法人天使学園(「法人」)(札幌市)
教職員約110名(平成25年4月現在) 再審査被申立人 天使大学教職員組合(「組合」)(札幌市)
組合員55名(平成25年4月現在)

Ⅱ 事案の概要
1 本件は、法人が、①組合員2名(X1及びX2)のハラスメント事案に関して、配置転換を含 む労働環境調整を求めた団体交渉に誠実に対応しなかったこと、②法人のハラスメント規程及び 懲戒委員会規程(「両規程」)の改正を議題とする団体交渉に誠実に対応しなかったこと、③法人 施設の空き室利用について、組合に他団体より重い要件を課したこと、④法人が設置する大学の 教務部長の選考に当たり、Aが組合の代表であることを理由として、同人を教務部長に任命する ことを拒否したことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
2 初審の北海道労委は、上記①及び②が、労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第2号 の不当労働行為に該当するとし、団体交渉応諾及び文書掲示を命じ、その余の申立てを棄却した ところ、法人は、これを不服として再審査を申し立てた。

Ⅲ 命令の概要
1 主文 本件再審査申立てを棄却する。
2 判断の要旨

(1)組合員のハラスメント事案に関する労働環境調整義務の履行要求につき、これを団体交渉事 項でないなどとした法人の対応が、団体交渉拒否に該当するか。
ア 組合員2名に係るハラスメント事案の発生に伴い、配置転換等の労働環境の調整を求めた議題は組合員の労働条件に関わるものであり、団体交渉事項に当たると認めるのが相当である。
イ 法人は、X1についてハラスメントの事実がないこと、配置転換は経営権に関わる問題であること、ハラスメント事案はプライバシーに係る問題があることを根拠事項として、同議 題は団体交渉事項に当たらないと主張していたものである。しかしながら、組合が、ハラス メントの事実があったか否かそれ自体を問題とし、X1のハラスメント事案の詳細について 説明を求めているわけではなく、X1について、配置転換等の措置を講じて労働環境を改善 してほしい事態が発生していることから、これを早急に実施してほしいと要望するものであ ったことは明らかである。また、X2の事案については、法人自身が、X2に、配置転換等 の労働環境の調整を行うと伝えていたのに、これがなかなか実施されなかったことから、組 合が、組合員であるX2の労働環境の早期改善を求めて、法人に団体交渉を申し入れたこと も明らかである。
 このように、組合は、組合員の労働条件に係る労働環境を改善するための話合いをするた め、X1及びX2の事案を団体交渉の対象事項としていたのであるから、話の内容が個人の プライバシーにわたるものであるか否かが、法人から組合に、どの程度詳しく説明すること ができるかという点に影響することがあったとしても、そもそも団体交渉事項に当たらない として、法人が、全く説明しないことを正当化することはできない。

(2)両規程の改定要求の議題につき、経営事項であることなどを理由に、団体交渉事項でないと した法人の対応が、団体交渉の拒否に該当するか。
ア 両規程は、懲戒に関する取扱いや、ハラスメント等の問題が起きた場合の適切な労働環境 について定めるもので、いずれも労働条件に関わるものである上、法人に雇用される労働者のすべてに適用される労働者の待遇に関わる定めであると認められることからすれば、上記 議題は、団体交渉事項に当たる。
イ 法人は、団体交渉において、「懲戒委員会規程は、私学法の改正に伴って改正した寄附行 為の趣旨に沿って改正したものであり、理事会が意思決定の最終責任を取ることができるように理事の割合を増やしたものである。」という程度の説明はしているが、私学法改正の趣 旨からすれば、その説明が理解し難いと組合が考えたのもやむを得ないところであり、また、 ハラスメント規程の改正について具体的に説明した状況はうかがわれない。さらに、法人は、 団体交渉において、組合に対し、両規程の改正に関する問題は経営権の問題であり団体交渉 事項にはならないとの認識を殊更明らかにしていた。
 組合は、両規程がいかなる意味で改正の必要性があったのかということや両規程の適切な 内容とはどのようなものであるかを団体交渉における話合いの中心としたかったと考えられ るが、そのような事項について法人は、当初から説明を拒否していたのであるから、たとえ 団体交渉の開催が数時間にわたっていたとしても、実質的にみて、法人が誠実に団体交渉に応じていたものであると評価することはできない。

(3)救済方法
 本件において、法人は、義務的団体交渉事項であることが明らかな議題について、そもそも 団体交渉事項に当たらないとして、組合からの団体交渉申入れを拒否していたのであるから、 憲法第28条において認められている労働者の団結権等を著しく軽視する態度を取り続けてい たといわざるを得ない。
 さらに、法人は、本件救済申立てから約2年が経過した後の団体交渉において、資料を持参 していないこと等を理由に実質的な議論に入らないなど、依然として、誠実に団体交渉に臨ん でいるのか疑問があるといわざるを得ない対応をとり続けている。
 以上からすれば、本件は、法人と組合間の正常な集団的労使関係秩序を回復する必要性の高 い事案であり、法人による同種行為の再発を防ぐためには、誠実に団体交渉に応じるよう命じ るとともに、法人施設内に出入りする関係者が視認し得る公用掲示板への文書掲示を命じるこ とには理由があるということができる。

【参考】
初審救済申立日 平成23年12月16日 初審命令交付日 平成25年7月24日 再審査申立日 平成25年8月7日


2013年08月10日

「天使大学不当労働行為事件」に関する教職員組合声明

 天使大学は,不当労働行為事件について地労委決定と救済命令(7月24日)に従わず,8月8日,中央労働委員会へ再審査を申し立てた。

 (参考資料)
 ■北海道労働委員会 天使学園事件(平成23年道委不第31号)
  ∟●命令書概要版(PDF形式 145KB)
  ∟●命令書全文・記号版(PDF形式 304KB) 

「天使大学不当労働行為事件」に関する教職員組合声明

 天使大学不当労働行為事件(平成23年道委不第31号事件)について北海道労働委員会は7月24日、救済命令を発しました。それに対して学校法人天使学園(近藤潤子理事長)は、8月8日に中央労働委員会へ再審査申し立てを行いました。
 一連の動きに関して、教職員組合としての見解を表明します。

天使大学教職員組合
北海道私立大学教職員組合

〔1〕救済命令に至る経過
 天使大学教職員組合(以下、組合)は、2011年12月末、北海道労働委員会(以下、道労委)に救済を申立てた。「天使大学不当労働行為事件」は1年7ヵ月余の審査を経て、7月24日に救済命令が交付された。同申立ては、①ハラスメント事案に関わる配置転換等の労働環境調整の団交拒否,②就業規則に関わる懲戒委員会規程及びハラスメント規程改定に関する団交拒否,③組合による学内の空室利用について、その決裁要件を他の団体等より重くしたことへの組合に対する支配介入,④教授会が承認した教務部長人事について慣例を破り、理事会で投票により組合代表であった教務部長人事を否決したことは組合員への不利益扱いという4点について救済を求めたものである。命令では①②について救済を認め、法人に対してポストノーティスによる謝罪を命じた。 一方で③④については、組合の申立てを棄却した。

〔2〕命令に対する組合の見解
 2009年11月の学長選挙において前学長(現理事長)が退き、2010年4月より現学長体制がスタートしたが、学長公選制撤廃、学内諸規程の矢継ぎ早で一方的改悪や教学自治への介入が続き、これに危機感を覚えた教職員は2011年2月に組合を結成するに至った。過半数組合として理事会と向き合う組合に対し、理事会は当初より徹底した組合敵視策を取り続けてきた。
 組合としては、申立て事項の全てが救済されなかったことは極めて遺憾であり、特に上記④は、従来の教学人事の任用の慣例を破り投票に持ち込み、保留票も多い中で組合代表であった教務部長を否決したことは、この人事に先立つ関連規程の改定等などからも恣意的な行為を疑わざるを得ないと考えている。しかし、理事会が「組合員である」と言葉に出していないが故に立証ができないとして棄却されたことは、甚だ残念である。とは言え、①②の団交拒否については厳しく命令書にて断罪したこと。同時に、審査段階での法人側の「組合は、組合員の一部に人事権を持ち経営上の機密に触れる教授を構成員としており労組法上の労働組合にあたらない」という組合そのものを否定する稚拙な主張に対しては、これを却下したこと。さらにポストノーティスを認めたことは十分に評価すべき命令であったと考えている。

〔3〕法人理事会の中労委再審査申立てと、法人としての資質
 組合としては、一部不満の残る救済であったとはいえ、本命令を甘受し学内の混乱を早期に収拾して、より良い教育研究環境を取り戻すために労使関係の改善に着手すべく対応を協議していたところである。その矢先、法人は7月31日に「中央労働委員会への再審査申立て予定」を組合側へ文書にて通知してきた。同命令の再審査申立てにあっても、その履行義務は免れるものではない。法人は命令の真意をくみ取り、教学への支配介入に固執してきたこれまでを顧み、その反省の上に、命令の履行と労使関係改善のために努力する姿勢を社会的に示すべきときである。
 組合は、労使関係の早期正常化のため、早々に団体交渉を通じて共に課題検討が行えるよう準備を進めてきた。しかし、法人側は、団交拒否について命令書で指摘されたようにまたもや自己の主張に固執し、さらにこの事態を長期化させようとしている。学校法人という公的機関としての責任やステークホルダーである学生等の利益を考慮しているとは思えない。この度の理事会の判断には、学校法人の責任者としての適性についても疑いを持たざるを得ない事態である。理事会が、このまま道労委による命令を履行せず平然とし続けるならば、その姿勢は断罪されなければならず、組合としては理をもって堂々と権利を行使し、その対応にあたっていく決意であることを抗議とともに表明する。

〔4〕法人理事会の民主化を
 法人理事会は、現学長を含め2名の教学理事を除き、理事長以下全員が80代前後であり、学校法人経営を担う力量には甚だ疑問が残る。そのような中で私学法改正、寄附行為を金科玉条のごとく振りかざし、理事長をはじめ一部の理事らによる専断的行為により教学組織に混乱をもたらす結果となっている。また、評議員会、監事らも理事会のみが選任するものとなり、また理事長アドバイザーが常任監事となるなど自浄作用が働く仕組みは皆無に近い。教育の質を担保する教職員の欠員状態解消より、次々と法人側の労務対策役員を補充するなどしていることがその証である。また、顧問弁護士も理事者の縁戚にあたる者を採用し、組合対策費など係争事件ごとに多額の報酬が支払われている可能性が高く、理事長や一部理事による大学の私物化の様相が垣間見える。この度の命令不履行と中労委再審査申立ての一連の行動も、学校法人を預かる理事者の立ち振る舞いとは思えず、自らの主張に固執し大学全体を混乱に貶める行為と言えるのではなかろうか。
 私たちは法人理事会が教学との対立関係を解消し、正常な労使関係構築と大学運営において力を合わせることを切望するが、そのためには現理事会体制の刷新が必須であると言わねばならない。救済申立てから一年半に亘る調査、審問を経て、多くの教職員が理事会の刷新こそが問題解決の第一歩であると認識できたことが今回の教訓であることをこの機会に付言する。

〔5〕冷静な対話を
 現理事会を先導する一部理事の方々へ申しあげたいのは、組合および大学教学への対立的感情を捨て、本学の理念である内省性を高め、この事態に終止符を打つべき時期であることを悟られ、出処進退を明確にされたいということである。道労委の命令に服し、大学人に相応しい姿勢を呼び覚まし、労使が対等にして公平な話し合いのテーブルに就くことを、最後に重ねて呼びかけるものである。

以 上

2013年07月29日

天使大学不当労働行為事件、地労委命令 救済とポストノーチスを求める

北海道
 ∟●北海道労働委員会・最近の命令

■ 平成25年に交付した命令

 ○ 天使大学事件(平成23年道委不第31号) 新規

 組合は法人に対し、組合員のハラスメント事案に関する労働環境調整義務の履行及び懲戒委員会規定等の改定を交渉事項とする団体交渉を申し入れたところ、法人は団体交渉事項に該当しないなどとして、団体交渉を拒否した。また、法人は組合の空き室利用について、その使用許可を理事長決裁として、他の団体に対するよりも重い要件を課した。
  これらが不当労働行為であるとして申立てがあった。
  さらに、学長が教授会の意見を聞いて組合代表者を法人が設置する天使大学の教務部長に推薦したにもかかわらず、法人は、同人が組合の代表であることを理由として、教務部長に任命することを拒否したことが、不当労働行為であるとして追加申立てがあった。
 当委員会は、これら申立ての一部について救済を命じました。

※ 参考 本件審査の状況
    救済申立日
当初申立て 平成23年12月26日
     追加申立て 平成24年 4月 6日
    命令交付日  平成25年 7月24日

  PDFアイコン 命令書概要版(PDF形式 145KB
  PDFアイコン 命令書全文・記号版(PDF形式 304KB) 

平成23年道委不第31号天使学園不当労働行為事件命令書(概要)

1 当事者
 (1)申立人  天使大学教職員組合(以下「組合」という。)
 (2)被申立人  学校法人天使学園(以下「法人」という。)

2 事案の概要
(1)組合は、法人に対し、組合員に対するハラスメント事案に関して、配置転換など労  働環境調整義務の履行を求めて団体交渉の申入れを行ったが、法人は「団体交渉事項には該当しない」としてこれを拒否し、その後開催された団体交渉においても、法人は、同様の主張をするほか、「守秘義務の関係で団体交渉には応じられない」などとして、団体交渉を拒否した。
 また、組合は、法人に対し、懲戒委員会規程などの改定について、その再改正を求めて団体交渉の申入れを行ったが、法人は、団体交渉において、「各規程改定については経営権の問題なので団体交渉事項には当たらない」などとして、団体交渉を拒否した。
 法人は、組合の空き室使用について、その使用許可を理事長決裁として、他の団体に対するよりも重い要件を課して、組合の運営事項に対する支配介入をした。
 これらの法人の行為は、労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第2号及び第3号に該当する不当労働行為であるとして申立てがなされた。

(2)教授会の承認を得た上で、学長が組合の代表者を教務部長とする推薦を理事会に行 ったところ、理事会は、役員選任を投票により決めることとし、組合代表者について、賛成4票、反対2票、白票3票という結果等により、法人は、同人が組合の代表であることを理由として、教務部長に任命することを拒否した(以下「本件任命拒否」という。)。
 この法人の行為が、組合員に対する不利益取扱いであり、労組法第7条第1号に該当する不当労働行為であるとして追加申立てがなされた。
(3)以上のほか、法人は、組合は、組合員に人事権を持ち経営上の機密に触れる教授を構成員としており、労組法上の労働組合に該当しない旨主張した。

3 主文要旨
 (1)法人は、組合が申し入れた組合員のハラスメント事案に関する労働環境調整義務の履行及び懲戒委員会規程等の改定を交渉事項とする団体交渉において、それらが団体交渉の対象にはならないとするなど自らの主張に固執することなく、要求事項に対して自らの見解の内容や根拠を具体的かつ明確に示して組合の納得を得るよう努力して、団体交渉に誠実に応じなければならない。

 (2)法人は、上記(1)の行為が不当労働行為であると認定されたので今後繰り返さないようにする趣旨の文を縦1メートル、横1.5メートルの白紙にかい書で明瞭に記載して、法人の学内公用掲示板に、本命令書写し交付の日から7日以内に掲示し、10日間掲示を継続しなければならない。

4 判断要旨
(1)組合は、労組法上の救済適格を有するか否か。(争点5)
 ア 法人は、組合が労組法第2条ただし書第1号に該当して自主性要件を欠くから、労組法の労働組合ではないと主張するので、まず、この点について検討する。
 同号の趣旨は、労働組合の自主性確保の見地から、使用者の利益代表者を参加させてはならないとするものであり、その解釈に当たっては、当該労働組合の自主性が確保されるか否かとの見地から実質的に判断されるべきである。
 イ 法人は、天使大学(以下「大学」という。)の教授は、「雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者」(労組法第2条ただし書第1号)に該当すると主張する。ここで「直接の権限を持つ」者とは、労働者の地位身分を決定変更する事項について、直接決定する権限をもつ者のことであり、人事権限を有するとしても、それが間接的なものにとどまる者は「直接の権限を持つ者」とは言えず、これに該当しない。
 大学の教授は教員の採用及び昇任手続に関して、特別教授会の構成員として、その特別教授会の議に参加する立場にあるが、それは理事会の議決に当たりその意見形成に間接的に関与するものにとどまるのであって、かかる特別教授会の構成員であることをもって、上記の「直接の権限を持つ」者とは認めることができない。
 また法人は、大学の教授は、「使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にてい触する監督的地位にある労働者」(労組法第2条ただし書第1号)に該当すると主張する。しかし、大学の教授が、教員の採用及び昇任手続において候補者の評価、教員の勤務評定等に関する機密の事項に接し、また特別教授会の構成員として、その特別教授会の議に参加するとしても、各教授自身が、法人の人事管理、労務管理の計画と方針の決定に関与する機会を有するものではなく、このような教授会の職務権限からは、その職務上の義務と責任が組合員としての誠意と責任とに直接抵触する者に当たると認めることはできない。
 法人は、教授として自らの専門領域の准教授その他の教職員の監督的地位にあることはいうまでもないとも主張するが、それは労働者としての教職員に対する法人の業務遂行上及び労務管理上も当然に監督的地位にあることを意味しない。
 以上のとおりであるから、争点5に関する法人の主張は認められない。

(2)組合員のハラスメント事案に関する労働環境調整義務の履行要求につき、これを団体交渉事項ではないなどとした法人の対応が、団体交渉の拒否に該当するか否か。(争点1)
 ア 一般的に、組合員である労働者の労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係  の運営に関する事項であって、使用者に処分可能なものについては、義務的団交事項であるということができる。組合員である労働者の労働の環境等も原則として労働条件に該当するということができることから、本件団交申入れの議題である労働環境調整義務の履行については、義務的団交事項であると認めることができる。
 法人は、個別具体的な労働者の問題について、個別の苦情処理手続が設置されている場合には同手続によって処理されるべきであり、法人にはハラスメント調査・解決のための手続が存在しているのであるから、団体交渉において個別的な権利主張を取り上げる必要はないと主張する。
 個別的労働条件に関する事項について、労働協約に基づき労働組合の関与する苦情処理等の別段の手続に委ねることとし、当該事項を団体交渉事項から除外している場合には、そのような取扱いは、団体交渉権保障の趣旨に反しない限りは、許容されるということができる。
 しかし、本件においては上記のような労使協議もなされておらず、法人のバラスメント調査・解決のための手続は、団体交渉の代わりとなる手続と認めることはできないといわざるを得ないことから、同手続があること自体をもって団体交渉を拒否する正当理由にはならない。したがって、法人の上記主張は認められない。

イ 使用者は、団体交渉において、合意達成や譲歩を義務付けられるものではないが、団体交渉を実効的なものにするため、誠実な対応を通じて合意達成の可能性を模索する義務がある。すなわち、使用者は、合意を達成するよう自己の主張を相手方が理解し、納得することを目指して、誠意をもって団体交渉に当たらなければならない。具体的には、労働組合の要求や主張に対する回答や自己の主張の根拠を具体的に説明したり、必要な資料を提示するなどし、また、結局において労働組合の要求に対し譲歩することができないとしても、その論拠を示して反論するなどの努力をすべき義務がある。このような義務を果たすことなく、使用者が自己の主張に固執することは、誠意ある交渉態度とはいえず、実質的に団体交渉を拒否したものというべきである。
 法人としては、プライバシー保護に配慮しつつも、X1が主張する職場環境の悪化の具体的な内容を確認するとともに、研究室の移動や配置転換など何らかの対応が必要なのかどうか、何らかの対応や提案が検討できないかどうかなどについて組合と団体交渉において協議し、自己の主張を組合に納得してもらうための努力が必要であったと認められるが、法人は、労働問題と認めないとの主張に固執した態度に終始したといわざるを得ない。また、X2に関する事案についても、解決案が示されてから2か月が経過しており、ハラスメント事案の性質やハラスメント規程においても調査報告の期間も設けられていることからすると、早期の解決案の実施が求められていたということができることから、法人としては解決案の早期実施ができない事情を十分に説明し、その実施目途を含めて、組合の理解を得るための努力が必要であったと認められるが、それが行われず、かえって人事のことも含み経営権にかかわる問題で団体交渉の対象にはならないと回答した。以上のような法人の交渉態度は誠意あるものとは認められないことから、上記のとおり、実質的に団体交渉を拒否したものといわざるを得ない。
 したがって、争点1に係る法人の対応は、法第7条第2号に該当する不当労働行為である。

(3)新ハラスメント規程及び新懲戒委員会規程の改定要求につき、規約改定については経営事項であることなどを理由に、団体交渉事項ではないとした法人の対応が、団体交渉の拒否に該当するか否か。(争点2)
 ア 法人は、旧ハラスメント規程及び旧懲戒委員会規程の改定について、私立学校法改正の趣旨に沿って権限と責任の所在を統一し、懲戒委員会の構成、委員長の選任方法を変更したものに過ぎず、組合員の人事の基準(理由ないし要件)や手続(組合との協議、同意など)を変更したものではなく、労働条件その他の待遇や当該団体的労使関係の運営に関する事項には該当しないから、ハラスメント規程及び懲戒委員会規程の改定は義務的団交事項に当たらないと主張する。
 就業規則は、懲戒に関する取扱いについては、懲戒委員会その他の必要事項を別に定めると規定し、これを受けて設けられたのが懲戒委員会規程である。懲戒委員会規程は、懲戒の手続、委員会の構成及び選出区分、委員会の成立・議決などの重要事項を規定しており、懲戒委員会規程は労働条件その他の待遇に関する事項を規定しているということができ、また、ハラスメント規程についても同様であると認められることから、両規程の改定問題は義務的団交事項に該当すると認められる。

 イ 法人は、2回の団体交渉において、懲戒委員会規程の改正の経過等について、一応の説明を行っていることが認められる。 しかし、組合側に説明のないままに改定されているとの指摘や、規程の見直しを求める組合の要求に対しては、団体交渉の対象にはならないとしてそれ以上の協議に応じず、組合に対して規程改正に関する説明等を行う手続を取らなかった理由、懲戒委員会の委員における理事の人数などについて法人が検討したとする内容の詳細、理事会における議論の内容、理事会が事案ごとに適切に選ぶとしている委員の人選の基準を説明したり、組合の要求に応じられない具体的理由を示すなど、その理解を得るための努力がなされているとは認められない。このような法人の交渉態度は誠実なものとは認められず、争点2に係る法人の対応は、実質的な団体交渉拒否に該当し、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為である。

(4)組合の空き室利用につき、法人がその利用許可を理事長決裁として、他団体より重い要件を課したことが、組合の運営に対する支配介入に該当するか否か。(争点3)
 組合は、空き室利用許可申請の決裁が、外部団体を含む他団体に対しては事務局長決裁としながら、組合に対してのみ理事長決裁を要するとする法人の対応は、他団体に比して不利益に扱うことになるので、組合の運営に対する支配介入に当たると主張する。
 しかし、法人の具体的な施設管理権の行使の事実が認められない状況のもとで、許可申請書の決裁権者が事務局長か、理事長とされているかという事実だけでは、使用者の組合運営に対する干渉又は弱体化行為であるとまでは評価することができないというべきである。
 したがって、争点3に関する組合の主張は認められず、その請求を棄却するのが相当である。

(5)教授会の承認を得た上で、学長が組合代表者を教務部長とする推薦を理事会に行ったにもかかわらず、理事長が白票の扱いを恣意的に運用するなどして理事会が本件任命拒否をしたことが、組合員への不利益取扱いに該当するか否か。(争点4)
 ア 本件において、組合代表者が組合活動の中心にいたことに争いはなく、教務部長という特定の職制に選考しないということは人事上の不利益取扱いであるということができる。
 そこで以下において、組合が主張する本件任命拒否が、組合代表者が組合員であることないし組合活動を理由として行われたと認められるかどうかを検討する。
イ 組合は、旧選考規程当時、学長が上申した選考結果を理事長が任命拒否した事実がないこと、新年度職制の選考に当たり過去に行われたことのない投票が行われたことなどを指摘し、あたかも投票で否決されたかのように振る舞う理事長の態度からは、恣意的に組合代表者を排除しようとする意図が推認できると主張する。
 新年度職制の選考手続に当たっては、学長の推薦手続及び教授会等の意見聴取手続が、新選考規程に従ってなされていることは明らかである。そして、新選考規程によれば、新年度職制の選考議案は、理事会の審議事項であるとされている。
 新選考規程が「理事長は理事会の議に基づき任命する。」と規定する趣旨は、合議体である理事会の審議に付すことを意味すると解するのが相当であり、したがって、合議体の審議の結果には拘束力があることになる。
 したがって、規定上は理事会の議決がなされることが予定されているということができ、職制の選考に当たり投票を行うことにより理事会の議決を行うことも認められているといわざるを得ない。旧選考規程では、教務部長は学長が指名し学部教授会で選考するとしていたことから、理事会はその選考に関与しておらず、学長が選考による結果に基づく上申を理事長に行った際に、理事長がこれを拒否した事例がないことも、投票を否定する理由とはならない。そして、組合は職制の選考に当たって投票によったことはないと主張するが、新年度職制の選考は新選考規程での最初の選考手続であり、これまで投票がなされていなかったことをもって、投票によったことを問題とすることはできない。
 また、理事会において理事の意見交換もなされる一方、組合代表者が教務部長としては不適切であるとか、組合員であるなどといった発言は、理事会において一切なされていない。
 組合は、白票は保留であり、保留票とは「意思決定を賛否明らかな投票結果に委ねる」という趣旨であると主張するが、証拠上、理事会においてそのような理事の意見が出されたとか、白票をそのように取り扱うと理事会で決めたという事実は認められない。寄附行為の条項からは、表決の際に議場に在って表決権を有する者の数を基礎に、その過半数を要すると解するのが相当であり、組合の主張は証拠上はもとより、寄附行為の条項の解釈としても認め難いものといわざるを得ない。
 以上によると、教務部長として推薦された組合代表者、研究科長(看護栄養)及び専攻主任(栄養)の各候補者は、投票の結果、出席した理事の過半数の賛成を得ることはできなかったと認めるのが相当であり、組合が主張するような恣意的に組合代表者を排除する意図を推認することはできない。

ウ 監事及び理事からの発言を受けて、理事会で議論がなされた結果、投票によって決まらなかった教務部長、研究科長(看護栄養)及び専攻主任(栄養)については、学長と理事長との協議の結果に一任し、その結果を理事会に報告することになったが、この点に関して、組合は、協議の意味について、組合代表者については否決されて、それ以外の者から誰を人選するのかを協議するという意味ではあり得ないと主張する。 しかし、証拠上、白票が反対ではなく保留としてその意思決定を賛否明らかな投票結果に委ねた趣旨であると理事会で決めたと認めることはできない。教務部長を除く2職制については、賛成1票、反対4票、白票4票であったのであるから明らかに理事会において否決されたと認めざるを得ず、教務部長候補の組合代表者も理事会において否決されたと認定するのが相当である。その上で、前記監事と理事の発言も受けて、この3職制について、教学と経営側で十分協議を行うのが望ましいとの理事会の意向から、理事長と学長の協議に委ねられたと認定するのが相当である。
 組合は、上記主張を前提に、「理事長は協議となった意味を全く無視して、その3名については既に否決されているとして、3名以外の者からの人選に固執して、結局それを押し通した」と主張する。そして、「協議となった経緯を全く無視し、協議で検討すべきとされた人選を無視した人選を行った理事長の態度からは、明らかに恣意的に組合代表者を排除しようとする意図が推認できる」と主張する。
 しかし、上記のとおり、組合の主張の前提となる事実が証拠上認め難く、理事会において上記3候補者が否決されたと認めるのが相当であることからすると、組合のこの主張は前提を欠き、理事長が恣意的に組合代表者を排除しようとする意図を有していたと推認することはできない。
 理事長が上記意図を有していたことや、教務部長候補者として学長が推薦した組合代表者を支持することなく、理事長が他の候補者を推した行為が、組合代表者が組合員であること、若しくは労働組合の正当な行為をしたことを理由とするものであることが立証されたとは認め難い。
 また、理事会は、保留とされた教務部長、研究科長(看護栄養)及び専攻主任(栄養)について、理事長と学長間の協議に委ね、最終的に理事長案が理事会に報告されてこれを承認しているが、上記判断からすると合議体である理事会の当該判断についても不当労働行為としての不利益取扱いであるとは証拠上認め難い。
 したがって、本件任命拒否をもって、労組法第7条第1号の不利益取扱いに該当するということはできない。

5 審査の経過(調査9回、審問2回)
 (1)申立年月日   平成23年12月26日
  追加申立て   平成24年4月6日
 (2)合議年月日   平成25年6月17日、平成25年6月28日、平成25年7月12日
 (3)命令書(写し)交付年月日  平成25年7月24日