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 カテゴリー 教育費問題

2017年01月18日

NY州が公立大無償化へ 全米初、最大100万世帯に恩恵

AFP(2017年01月04日)

【1月4日 AFP】米ニューヨーク(New York)州のアンドリュー・クオモ(Andrew Cuomo)知事は3日、全米で初めて中低所得世帯の学生を対象に公立大学の授業料を無償化する計画を発表した。大学無償化は昨年の大統領選に向けた民主党の候補指名争いでバーニー・サンダース(Bernie Sanders)上院議員が公約として掲げていた。

 民主党のクオモ知事は記者会見で「今日、成功するためには大学教育が欠かせなくなっている」と述べ、米国の大学生が平均で3万ドル(約350万円)の負債を抱えている現状に言及した。

 その上で「エクセルシオール(Excelsior)」という大学奨学金制度を始めると発表し、2017年度から世帯年収10万ドル(約1200万円)以下の学生を対象に授業料無償化を目指すと明らかにした。2018年度からは対象を同12万5000ドル(約1500万円)以下に広げたい意向も示した。

 クオモ知事は「このような制度は米国初であり、この国の目を覚ますものになるはずだ」と強調した。

 対象は最大で100万世帯に上る見通し。年間の経費は1億6300万ドル(約190億円)と見積もられているが、クオモ知事は財源の詳細は明らかにしなかった。計画はまだ州議会で承認されていない。

 ニューヨーク州立大学(State University of New York)やニューヨーク市立大学(City University of New York)といった高い評価を得ている州内の大学の場合、年間授業料は6500ドル(約77万円)を超えることもある。

 コーネル大学(Cornell University)やコロンビア大学(Columbia University)、ニューヨーク大学(New York University)といったニューヨークで最も名高い大学は私立であるため、今回の無償化計画の対象外になるとみられる。

 将来の大統領選出馬を視野に入れているとされるクオモ知事の会見にはサンダース議員も同席し、計画に祝意を示した。

2016年02月09日

お金ないから大学行けない 国立でも授業料年54万円、40年前比15倍

毎日新聞(2016年2月4日)

「国立大の授業料は安い」というのは、もはや昔の話だ。2015年度の授業料は年間約54万円で、40年前よりも15倍に値上がりし、私立との差も縮まった。授業料の高騰は、大学生2人に1人が奨学金を借り、卒業時に数百万円の借金を背負う状況も招いている。このままでは、大学に行ける層と行けない層が所得で明確になる階級社会が生まれてしまうのではないか。【石塚孝志】

 「ある学生の話ですが、母親から奨学金をもらっている人と付き合ってはだめと言われたと。もし結婚したら、相手の借金返済で家計が苦しくなるからというのが理由です」と驚くのは、著書「希望格差社会」のある中央大文学部の山田昌弘教授(社会学)。「日本は、親があまり裕福でなかったら大学へ行くなという階級社会に確実に向かっています。さらに大学に行っても奨学金受給の有無が学生間に結婚格差までも作り出している」と指摘する。

 経済的な理由で大学進学が困難になっている状況は、幾つかの調査で裏付けられる。まず、国立社会保障・人口問題研究所が11年に発表した「結婚と出産に関する全国調査」。その中で「理想の子ども数を持たない理由」の1位は「子育てや教育にお金がかかりすぎる」で、約6割が挙げた。日本政策金融公庫が昨年2月に発表した教育費負担の実態調査では、高校入学から大学卒業までに1人当たり平均880万円が必要と試算した。その一方で民間の平均年収は減少。国税庁によると、14年が415万円で、04年から約24万円も減った。山田さんは「教育費の工面は厳しく、大学に行かせたい親は子どもの数を絞る傾向がある。これでは、より少子化を招いてしまいます」と話す。

 文部科学省によると、40年前の1975年度の大学授業料は、国立は3万6000円、私立の平均は約5倍の18万2677円だった。その後、国私間の差は徐々に縮まり、14年度は国立が53万5800円、私立が86万4384円で約1・6倍になった。

 この授業料の格差是正について、旺文社教育情報センターの大塚憲一センター長は「政府は本来なら私立の補助金を引き上げて授業料を抑えるべきなのに、国立の授業料の値上げで格差を縮めてきた」と指摘する。将来的にはさらなる授業料値上げの懸念もありそうだ。

 そもそも日本の大学授業料の国際的な水準はどうなのか。経済協力開発機構(OECD)が昨年11月に発表した教育に関する調査では、日本は13?14年ベースで「授業料が高額で、学生支援体制が比較的未整備の国々」に分類された。また、大学など高等教育に対する国の財政支出を国内総生産(GDP)比で見ると、12年ベースで日本は0・8%。OECD加盟34カ国の平均1・3%を大幅に下回り、高等教育に冷たい国の姿勢が際立っている。

 この背景について、教育ジャーナリストの渡辺敦司さんは「自民党や財務省には、教育は個人の利益だから利益を受ける人が払えという『受益者負担』の考えが強くある」と説明する。対照的な国として挙げたのが北欧諸国。「授業料が無料か低額で、支援制度が手厚く、教育は社会で支えるという理念がある。日本は、家族が無理してでも進学させたいという国民性に国が頼っているだけなのです」

給付型奨学金なし、借金重荷に

 では、OECDに「比較的未整備」と認定された、この国の学生支援体制はどうなっているのか。奨学金問題対策全国会議事務局長の岩重佳治弁護士は「世界で奨学金といえば、返済義務のない給付のこと。先進国で公的な給付型奨学金制度がほとんどないのは日本だけ」と、お寒い現状を説明する。

 奨学金制度の詳細を知ろうと、独立行政法人「日本学生支援機構」の12年度の「学生生活調査結果」を見ると、大学生の厳しい懐事情が浮かび上がる。昼間部の学生の過半数52・5%が奨学金を受給。そのうち9割の学生が受給している同機構の奨学金の内容は次の通りだ。国公立で自宅通学の学生は無利子で月最大4万5000円、有利子なら同12万円を借りることができる。返済額は人によって違うが、無利子で4万5000円を4年間借りた場合、卒業後は216万円の借金を背負う。

 岩重さんは「学費が上がり家計が苦しい中で、奨学金を利用せざるを得ない学生が増えている。将来の仕事や収入が分からずに借りるため、もともと延滞が起きやすい。しかも非正規雇用ならば収入が安定せず、一生借金漬けになる恐れがある」と警告する。

 政府は16年度には無利子奨学金貸与者や授業料免除者の増員などを予定するが、岩重さんは「規模も小さく、根本的な解決になりません。政府は貸与ではなく、給付型奨学金や、より柔軟な返済制度を整備すべきです」と訴える。実は、文科省が給付型制度の創設を要求しても、財務省は財源不足などを理由に認めてこなかった。先月21日の参院決算委員会でも麻生太郎財務相は「単なる財政支出になる。将来世代からの借金と同じ」と述べている。

 財務省に根強い受益者負担論を崩す一つの解決策として、東京大の小林雅之教授(教育社会学)は「教育にお金を掛けることは個人だけでなく、社会的、経済的効果があることを示す必要がある」と話し、三菱総合研究所が10年に発表した調査内容を挙げる。概略は、大学生1人当たり約230万円の公的な教育支出により、卒業後に税収の増加、失業給付金や犯罪関連費の抑制などで約2倍の便益がある??というものだ。

 小林さんも参加する文科省の教育再生実行会議が昨年7月に発表した第8次提言では、7000億円の予算で、大学生の奨学金完全無利子化や、大学・専門学校の授業料の公立高校並みへの引き下げができるとした。要は、日本の将来を託す若者にお金を掛ける意思があるのかという話だ。

若者よ、声上げよ!

 大学進学時の所得階層差が拡大していると見る小林さんはこう訴える。「所得の高い層が私立に比べて学費の安い国公立に流れ、所得の低い層がはじき出される傾向が出ている。大学進学のために必死でお金を工面してきた所得の低い層の無理がそろそろ限界に来ている」。さらに中学・高校生にも現実を教える必要性を説く。「この時期から借金を背負うリスクを教えなければいけない。貧乏だから大学に行けないと言う子には『そんなことはない』と伝える一方で、奨学金に頼る危険性も説明すべきです」。このような現実を見据えて、小林さんは「教育費の負担軽減は待ったなし」と力説するのだ。

 岩重さんが重要視するのは、若者が声を上げることだ。「大きな声にまとまれば、国も無視できないはず」と指摘する。

 今夏の参院選では初めて18歳からの選挙権が認められる。若い人にはぜひ、自分たちの問題として考えてほしい。


2015年11月25日

日本の公的教育支出、また最下位 12年のOECD調査

朝日新聞(2015年11月24日)

 安倍内閣は、最低賃金を年3%ほど引き上げることを目指す方針を固めた。引き上げの目安額は国の審議会が決めてきたが、政府が目標を示して引き上げを促す。ここ4年は10円超だった上げ幅はさらに拡大するが、負担が増える中小企業などの反発は避けられない。

 24日の政府の経済財政諮問会議で安倍晋三首相が表明する方向だ。政府は名目GDP(国内総生産)を2020年ごろまでに600兆円に伸ばす目標を掲げている。達成には名目で年率3%超の成長が必要で、あわせて最低賃金も年率3%程度の引き上げを目指す。

 最低賃金(時給)は今年度、全国平均は798円。引き上げ額は18円で、単純比較できる02年度以降で最大の上げ幅だった。今後、仮に年3%ずつ最低賃金が上がるなら、単純計算でも年20円をこえる引き上げが続き、20年代には「全国平均1千円」に届く計算だ。

 最低賃金の引き上げ額の目安は年1回、労使の代表や大学教授による厚生労働省の審議会で決定する。政権としての目標が示されれば、引き上げに向けて議論が進むことになりそうだ。ただ、中小企業からは「さらに賃金が上がるのは痛い」との声も出ており、上げ幅が拡大すれば経営が圧迫される企業が増えそうだ。


2015年07月09日

教育再生実行会議、10%超消費増税…使途は教育拡大に

毎日新聞(2015年07月08日)

 政府の教育再生実行会議(座長、鎌田薫早稲田大総長)は8日、将来的に10%を超える消費増税をした場合、その使途を教育に拡大することを求めるなど教育財源の確保に関する提言を安倍晋三首相に提出した。ただ、安倍政権は10%を超える引き上げには否定的で、財源確保の実現は不透明だ。

 教員の資質向上策などを盛り込んだ5月に続く第8次提言。提言は今後優先すべき教育投資先として、幼児無償化と大学などの高等教育段階の教育費負担の軽減を挙げた。その理由を「少子化の克服や世代を超えた貧困の連鎖に大きく貢献する」と説明。必要な費用の試算例を▽3?5歳児の幼児無償化約1兆円▽大学生の奨学金の充実など高等教育の教育費負担軽減約7000億円と示した。

 財源策として、税制の見直しや民間資金の活用策を挙げた。10%超の消費増税が導入されれば税収の使途を教育にも広げることを提案した。

 このほか、国立大への個人寄付について寄付控除を拡大することや、国立大学の資産運用について規制緩和を検討するよう求めた。

 同会議が設定していたテーマに関する提言は今回で終了した。下村博文文部科学相は8日の記者会見で今後について「これまでの提言のフォローアップを図るとともに、新たなメンバーで別のテーマにも取り組みたい」と意欲を示した。【三木陽介】


2015年05月12日

国立大授業料、値上げを-財務省

ウォール・ストリート・ジャーナル日本版(2015年5月11日)

 財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は11日、文教・科学などの分野で、歳出抑制に向けた方策を議論した。財務省は、教育環境を改善するため国立大学の授業料引き上げも含めて検討するよう提案した。また、救急搬送の一部有料化検討も打ち出した。

 国立大学・大学院(86法人)の授業料標準額は年53万5800円。自主判断で値上げ(上限2割)や値下げ(下限なし)が可能だが、値上げは2研究科(大学院)にとどまる。

 同省は値上げの場合に増える各大学の収入を、「教育環境の改善や低所得家庭の学生支援に振り向けるべきだ」(幹部)と話している。値上げの対象は富裕層に限定される見込みだが反発が生じる可能性もある。

 義務教育分野では、児童・生徒数減少などを踏まえると、現在の教育環境を維持しつつ2024年度までに小中学校教職員を約4万2000人減らすことが可能だと指摘した。

 地方財政については、地方自治体が行う救急搬送について、結果として軽症だった場合の有料化を「検討すべきではないか」と問題提起した。全国の自治体の消防費合計額は年間約2兆円。救急出動が過去10年で2割増える中、約半数は軽症という。自治体が自由に使える「一般財源」は、リーマン・ショックにより地方税が不足。地方交付税交付金の「別枠加算」などで埋めてきた。しかし、景気が上向いていることなどを挙げ、一般財源の水準切り下げや、加算などの廃止を改めて求めた。

 公共事業では、「全体の公共事業費は増やせないということを前提に、必要不可欠な社会資本の機能を確保していく」と提出資料に明記。今年度予算の約6兆円から増やさない姿勢を示した。 

財政審:教職員4万人削減…「少子化」着目、歳出見直し案

毎日新聞(2015年05月11日)

 財務省は11日、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)を開き、文教分野や地方などの歳出見直し案を提示した。少子化に伴い、小中学校の教職員を今後10年程度で約4万2000人削減できると指摘したほか、委員からは安倍晋三政権が地方創生の目玉施策として今年度予算に盛り込んだ1兆円の「まち・ひと・しごと創生事業費」の効果を疑問視する声も相次いだ。

 歳出の見直し案は、今月末をめどに取りまとめる財政審の建議(報告書)に盛り込んだ上で、安倍首相が議長を務める経済財政諮問会議に、麻生太郎財務相が報告する見通し。教職員の削減案には、文部科学省などから反発が上がるのは確実だ。

 小中学校の教職員数は現在約69万人で、今回提案した削減幅は約6%に相当する。今後の少子化を踏まえれば、今後10年間、学級数に応じて配置されている教職員を約3万7700人減らすことができるとした上で、少人数指導などのため配置されている教職員も約4200人を削減が可能とした。削減によって、人件費削減額は全体で約2300億円(うち国費は約780億円)が見込めるとした。

 国立大の授業料は、各大学が自主判断で決めることができるが、大半が文科省が定めた授業標準額の53万5800円と同額としていると問題提起した。国立大入学者は富裕家庭の子供も多いことから、私立大の授業料(平均86万円)近くに値上げした上で、親が低所得で優秀な学生向けの奨学金制度を充実させるなど、学ぶ意欲を重視した改革を行うべきだとした。

 また、地方財政については、2008年のリーマン・ショックをきっかけにした税収不足で導入された地方自治体向けの「別枠加算」など支援措置は速やかに廃止すべきだと提案。「まち・ひと・しごと創生事業費」については、委員から「ばらまきになる危険性がある」などの声が続出した。人口減に陥っていれば一定額が交付される仕組みを問題視したためで、今後の予算の使われ方を注視していくという。


家計に重い教育費の負担 日本公庫調査

わかやま新報(15年05月11日)

日本政策金融公庫がまとめた近畿地区の平成26年度「教育費負担の実態調査」の結果、収入が低い世帯ほど教育費が家計に重くのし掛かり、年収400万円未満の世帯では教育費負担が年収の約5割を占めていることが分かった。

調査結果によると、高校入学から大学卒業までに必要な教育費は子ども1人当たり888万円で、自宅外通学の場合は約1532万円。自宅外通学では、仕送り額が年間平均149・6万円(月額12・4万円)、自宅外通学を始めるためのアパートの敷金や家財道具などの費用が43・9万円となっており、この分が加算されている。

世帯年収に占める在学費用の割合は、平均で18・3%。負担割合「10%以上20%未満」が30・9%と最も多くなっているが、年収が「200万円以上400万円未満」の層では年収の約5割を教育費が占めている。
子どもの在学先別に世帯年収を比較すると、年収差は「短大」と「国公立大」の間で最大287万円となっている。

教育費の捻出方法は、節約(32・3%)、預貯金や保険の取り崩し(28・5%)が多く、節約する支出項目は、食費・外食費(63・9%)、旅行・レジャー費(61・3%)、衣料費(37・6%)の順に多かった。

子どもの留学については「させたい」または「条件が合えばさせてもよい」と答えた割合が全体の57%を占め、前向きな世帯が多い結果となった。一方、留学させることはできないと考える世帯が、留学の障害と感じることは「費用の負担」が最多の69・7%で、留学費用の負担が課題であることがうかがえる。

調査期間は平成26年11月22日~12月2日。25~64歳の高校生以上の子どもを持つ保護者を対象にインターネットでアンケート形式で調査した。有効回答数は600人(2府4県から各100人)。 


2015年04月21日

低い高等教育の公支出、OECD加盟国で最下位

Viewpoint(2015/4/20)

 統一地方選挙で、多くの政党が教育分野の公約として掲げるのが「教育の予算増」。OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で、日本の公財政教育支出(国や地方自治体等の支出)の対GDP比率が低いことは、かねてから問題とされてきた。各党の政権公約もこれを意識したものだ。

 2011年の統計ではOECD平均5.6%に対して、日本は3.8%。総人口に占める子供の割合が少ないことや、中高等教育で私立学校の比率が欧米より比較的高いなどの理由がある。

 特に、就学前教育と高等教育の割合は加盟国で最下位。高等教育ではOECD平均1.4%に対して、日本は0.8%。公私負担の割合では公財政負担が平均69.2%に対して、日本は34.5%にとどまる。

 もちろん、高齢者福祉、医療、雇用対策などとの兼ね合いで、教育の公的予算を大幅に増やすことは簡単ではない。各国個別の教育事情があり、公財政支出とGDPの比較には意味がないとの指摘もある。

 ただ、地方創生が重要政策となる中、人材育成や地域活性化プロジェクトなど地域で大学が果たす役割に期待が高まるが、その一方で大学生の学力や意欲が低下するのは深刻な問題だ。


2014年11月26日

脱・貧困のための進学が… 授業料高騰、重い奨学金返済

朝日新聞(2014年11月25日)

「貧困と東大」

 大手メーカーに勤める朝倉彰洋さん(25)は東大生だった2009年、そんなテーマで調査した。

 東大が行った「学生生活実態調査」では、東大生の親の年収は「950万円以上」が過半数を占めている一方、「どれくらいの貧困層が広がっているのか、知りたかった」。自分が入居していた学生寮は経済的な困難を抱えた学生が多く、アンケートを配ってみた。49人の回答者のうち、親の年収が300万円未満の学生が15人いた。

 「貧困層でも支援制度の存在をもっと広く知ってもらえれば、家庭の経済状況に関係なく東大に進学できるはずだ」

 朝倉さん自身、母子家庭で育った。母親には「勉強にかかるお金は出してあげる」と言われていたが、愛知県から東京への進学を伝えると一転、「行かせるお金はない」と反対された。国立大学の授業料(標準額)も、1975年度の3万6千円が、いまは約15倍の53万5800円かかる。

 そもそも中学時代は大学進学も考えていなかった。高校の先生の助言を受けながら、授業料の免除を手にした。給付型奨学金も得て大学院にも進んだ。「制度を教えてくれた中学や高校の先生、一緒に東大を目指した仲間、どれか一つでも欠けていたら進学できなかった。自分は運が良かった」

 愛知県春日井市のショッピングセンターの一角。週に1度、約2時間、大学生のボランティアが、中学生たちにほぼマンツーマンで教える。生徒は生活保護世帯や母子家庭の子ら約15人だ。

 その一人、中学3年の女子生徒(14)も母子家庭で育った。塾に通うのはあきらめていたが、教室に通いながら、商業高校への進学をめざす。卒業したら、すぐに就職するつもりだ。「大学に行くお金はないし、就職したら母が楽になるかな、と思って」

 この教室に中学3年の長男(14)を通わせる母親(38)は、「息子はなんとか大学まで行かせたい」と話す。夫(38)は病気がち。介護の資格を取ってパートで家計を支えてきた。経済的に豊かな人はどんどん上に行くのに、貧しい人は貧しいままだと感じる。「息子には繰り返してほしくない。踏ん張って上がっていってほしい」と願う。

 貧しくても能力を発揮できれば、未来を切り開けるのが、教育だった。だが、経済格差が拡大するなか、貧困を脱するための教育の平等が揺らいでいる。

■バイトを掛け持ち「もう大学やめたい」

 経済的に苦しいと、進学しても道は険しい。授業料の借金が重なり、家庭に負担がのしかかる。

 宮城県に住む保育士の母親(50)は、非正規雇用で稼ぐ月収約13万8千円で子ども2人を育てている。私立大学に通う長女(20)は、公立高校に進学時から貸与型奨学金の「借金」を背負ってきた。大学でも奨学金を二つ借りたので、卒業時の残高は、合計260万円に上る見込みだ。中学2年の長男(14)が高校に進学すれば、新たな借金が重なる。

 小学校教諭を目指す娘は、奨学金返済のためにレジ打ちなど二つのバイトを掛け持ちする。だが朝5時に起きて夜中まで学業とバイトに明け暮れる毎日。友人とのつきあいもできず、娘は夏になって「バイトがきついので、もう大学をやめたい」と言い出した。

 「バイトをやめてもいいよ、と本当は言ってあげたい。でも、今やめたら150万円の借金はどうするのと言うしかない」。無事卒業できても、借金を返せる職につけるか、確たる保証はない。「貧乏から脱出させるための進学でも、借金が増えるだけの『降りられない賭け』になっている」。母親の悩みは深い。

■奨学金受ける割合52・5%

 子どもの貧困率が過去最悪を記録する一方、国立大学の年間授業料は40年前の約15倍。奨学金という名の「借金」に頼らざるを得ない家庭は増え続けている。日本学生支援機構によると、昼間の4年制大学に通う学生のうち、奨学金を受けている割合は2012年度に52・5%に達した。10年前より20ポイント以上も増えた。奨学金を受けている人のうち、約9割が貸与型だ。

 名古屋市の杉山智哉さん(20)は、父が交通事故による後遺障害で思うように働けず、苦しい家計状況で育った。大学2年の途中で学費を払えなくなり、除籍に。高校、大学で受けた奨学金約350万円が借金となって重くのしかかる。

 子どもの貧困対策について考える集会などに参加し、「知識が無いと解決法も分からない。無知は貧困につながる」と思うようになった。貧しいと、知識を身につけるための教育さえ受けられない。「貧乏なら働けという考えが、貧困の連鎖を生んでいると思う」(杉原里美、山本奈朱香、河原田慎一)

■学費の壁、米・豪学生も

 「格差是正の装置」と見られてきた教育が、財政状況の悪化を背景に学費の高騰によって脅かされつつある。経済協力開発機構(OECD)によると、「教育は福祉」という理念があるフランスやオランダでも学費が上がっている。

 05年からの6年間で学費が28%上がった豪州では、シドニー大3年のカイル・ブレイクニーさん(21)が怒りをぶちまける。低所得層が多い先住民アボリジニーで、「貧困から脱するための高等教育を、貧困だから受けられないのでは絶望的」と憤る。「多文化主義国家と自称しながら、先住民や移民の子に『貧乏人は弁護士や医者になるな』と言っているようなものだ」

 保守連合のアボット政権は、大学への財政支出を減らし、最大300億豪ドル(約3兆円)の歳出削減案を打ち出している。法案が国会を通れば、修士号取得までにかかる授業料は現在の数万ドルから、2年後には世界でも最高級の10万豪ドル(約1千万円)以上になるとの試算もある。

 豪州では約40ある大学のほとんどが国立で、1989年までは無料だった。「今の時代に生まれたから10万ドルかかるなんて」。低所得層の生徒が多く通うシドニー郊外の高校生グレイス・ハーリーさん(17)はため息をつく。

 米国でもこれまでは、貧しい家庭で生まれ育っても大学を卒業すればいい職につき、中流階級に入れると言われてきた。しかし、米国の大学でつくるNPO「カレッジ・ボード」によると、4年制大学の1年間にかかる費用は、昨年の私立大学の平均で約3万1千ドル(約370万円)にのぼる。インフレ率を考慮しても、30年前の約2・5倍だ。公立、一般私立大の卒業生の約6割が借金を背負い、平均借入額は約2万7千ドル(約320万円)に達するという。

 NPO「学生借金危機」の創設者、ロバート・アップルボームさんは「借金のために、卒業しても家や車の購入ができず、起業できない人は多い。経済全体にも悪影響を与えている」と指摘する。(シドニー=郷富佐子、ニューヨーク=中井大助)

■進学費用は税金で 矢野真和・桜美林大学教授

 政府は貸与型の奨学金で機会の不平等の問題を解決しようとしたが、それは借金でしかない。負の遺産は親から子に引き継がれ、固定化している。大学に行けない人には、低所得だと返さなくていい所得連動型奨学金にして、私立大も国立大並みに授業料を引き下げ、進学費用は税金で負担するべきだ。親が支払うという意識を変える必要がある。高卒者と大卒者の将来得られる所得格差が広がる中、大卒者の生涯所得から得られる税収は、公的に投入した額を十分上回る。大学の授業料は、消費税1%分の額でしかない。大学は親の負担で18歳の子が行くところから、みんなで負担して、みんなが人生で一度は勉強するところになればいいのではないか。


2014年10月16日

家計に負担、遠い大学 地方の生徒「本当は行きたい…」

朝日新聞(2014年10月15日)

 地域によって広がる大学進学率の差は、能力があるのに進学できないという状況を生んでいる。大学の少ない地域から、大都市圏の大学をめざす高校生を持つ家庭には下宿代などの経済負担がのしかかる。

大学進学率の地域差、20年で2倍

 「本当は大学に行きたいんだけど、親から言われたんだよね」。青森県立の高校で進路指導を担当する50代の男性教諭は今春、3年生の女子生徒が冗談めかした言葉に、切なくなった。提出された進路調査の第1志望欄には「公務員」。国立大も狙える学力だが、重い費用負担が理由だ。大学生の兄がおり、「妹の学費まで賄えないのだろう」と推し量った。

 例年、約300人の3年生全員が進学を志望するが、今年は就職希望者が約20人。同僚と「経済的な理由だろう」と話した。かつて成績上位の生徒に東北大(仙台市)を勧めたら、生徒の親から「金がかかる。余計なこと言わないで」と怒られたこともあった。

 隣の秋田県。小中学生の全国学力調査で上位の常連だが、高校生の大学進学率は42%で全国平均(54%)を下回る。「経済状況もあり、単純に『学力調査=進学率』とはいかない」と県教育委員会の担当者は言う。

 「進学の機運を高めて、頑張る高校生を応援しよう」と県教委は2010年、東大など難関大学の現役合格者数を数値目標に掲げた県高校総合整備計画を策定。希望する高校生向けに予備校講師による「ハイレベル講座」を開くなどの支援に取り組んでいる。


2014年10月08日

大学中退調査、経済的な負担を軽くしたい

讀賣新聞(2014年10月07日)

 学費を払えずに、学ぶのをあきらめる大学生が増えている。意欲ある学生が勉学に励める支援策の充実が求められる。

 文部科学省の調査によると、2012年度に全国の大学や短大などを中途退学した学生は7万9000人に上った。

 このうち、経済的理由での中退が20%を占める。前回の07年度調査より6ポイント増加した。文科省は「不況の影響が続き、家庭の経済的な格差が広がったことが背景にある」と分析する。

 授業料の支払い猶予など、大学側の柔軟な対応が欠かせない。

 政府の奨学金を利用しやすくすることも大切だ。文科省は、大学卒業後の年収に応じ、毎月の返済額を変えられる「所得連動返還型奨学金」の導入を目指している。弾力的な仕組みは、返済の負担を軽くする効果が期待できよう。

 奨学金は、無利子に比べて有利子の方が多い。経済状況の厳しい学生が安心して利用できるようにするには、無利子の貸出枠を増やしてもいいのではないか。

 気がかりなのは、学業不振での中退も目立つことだ。経済的理由、転学に次いで多い。

 近年、大学生の学力低下が指摘される。少子化の中で生き残りを図る大学が、定員確保を優先した結果、授業についていけない学生が増えている可能性がある。

 大学全入時代を迎え、取りあえず入学したものの、意欲がわかず、学業不振に陥る学生もいる。

 各大学は、補習などの支援に加え、教職員が学生の相談に乗り、きめ細かくアドバイスする体制を整えてもらいたい。

 大学と学生のミスマッチを防ぐためには、大学が情報発信を充実させ、求める学生像や教育内容を明確に示す必要もある。

 受験生は将来の進路を見据えた上で、志望する大学や学部を決めることが望ましい。高校側にも適切な進路指導が求められる。

 12年度に休学した学生は、6万7000人だった。そのうち、海外留学を理由にした休学は1万人にとどまる。

 海外で異文化に接し、様々な経験を重ねる留学は、学生が成長する上で貴重な機会だ。

 ところが、「卒業が遅れ、就職で不利になる」といった懸念が、学生には根強い。企業の間に、留学体験を積極的に評価する意識が広がってほしい。

 学生が留学時に取得した単位を、日本の大学が卒業単位に認定するなど、留学しやすい環境を整えることも重要だ。


2014年09月26日

大学・高専中退:7万9311人…「経済的な理由」最多

毎日新聞(2014年09月25日)

 文部科学省は25日、2012年度に全国の国公私立大と高等専門学校(高専)で中途退学した学生が、全学生の2.7%の7万9311人に上ったとする調査結果を発表した。前回の07年度の数に比べ約1.6万人増え、中退率も0.24ポイント上昇した。経済的な理由を挙げた学生が前回調査より約6ポイント多い20.4%で最も多かった。中退者は非正規雇用の増加要因にもなっていることから、同省は来年度以降、無利子の奨学金拡充など対策を強化する。

 調査は今年2?3月、全国の大学・短大と高専の全1191校を対象に実施。1163校(97.6%)から回答があった。学生中退調査は、リーマン・ショック(08年)の影響を調べるため、07年度の実数と08年度途中の人数を調べた09年実施の調査以来、今回で2回目。

 中退者と中退率は、国立1万467人(中退率1.8%)▽公立2373人(同1.6%)▽私立6万5066人(同3.0%)▽高専1405人(同2.5%)??の計7万9311人(同2.7%)。私立は国公立に比べ中退率が高かった。07年度は6万3421人、08年度は約6万9000人(08年度は年度途中のため推計値)だった。

 中退理由の内訳は、経済的理由に次いで、転学(15.4%)▽学業不振(14.5%)▽就職(13.4%)??と続いた。07年度は、転学(14.9%)▽就職(14.4%)▽経済的理由(14.0%)の順で、12年度は経済的理由の増加が目立った。国公私立別で、最も多かったのは国立が就職(20.5%)、公立が転学(15.8%)、私立が経済的理由(22.6%)と分かれた。私立は学費が国公立に比べて高く、さらに値上げされる傾向にあることが要因とみられる。【三木陽介】


2014年08月09日

授業料減免へ専門学校補助新設 文科省が概算要求

共同通信(2014/08/08)

 文部科学省は8日、生活保護世帯など経済的に余裕がない専門学校生の授業料を減免する学校に、補助する制度を創設する方針を固めた。2015年度予算の概算要求に必要経費を盛り込む。

 減免の対象は、国公立に比べ授業料が割高な私立の専門学校生を想定。就職に必要な資格、技能を取得する学生を軸に支援を検討する。卒業後に地元の中小企業に就職する学生も多いことから、地域活性化にも貢献できるとしている。

 授業料の減免は国公立や私立大学が実施しており、私立大学の場合は減免に必要な費用の半額以内を国が補助している。専門学校には国が費用を補助する減免制度はなかった。


2014年06月06日

入学金、廃止します。 印西の東京基督教大 受験生の声反映

東京新聞(2014年6月5日)

 東京基督教大学(印西市)は三日、二〇一五年度から入学金を廃止すると発表した。初年度の学費負担が大きいという受験生の声を反映した。同大によると、首都圏では嘉悦大学(東京・小平市)が入学金を廃止しているが、全国的に珍しいという。
 廃止するのは、入学金二十六万円と入寮費十一万円の計三十七万円。初年度の授業料など必要な学費は九十五万円になる。
 ただ、新入生は授業料や施設費が値上げされるため、卒業までの四年間に必要な学費はほぼ同じになる。
 広報担当者は「初年度の学費が高いため、受験を諦めた人もいる。海外の大学では入学金そのものがないため、グローバル化への対応の一つ」と話している。
 同大は全寮制で、神学部(定員百六十人)のみの単科大学。学生は全員クリスチャンで、四人に一人が留学生という。受験の筆記試験には聖書の科目がある。 (三輪喜人)

2014年05月31日

京都の私大下宿生、初年度費用は「親の年収3分の1」

京都新聞(2014年05月30日)

 京都の7私立大・短期大に入学した下宿生で最初の年にかかる費用の平均は親の年収の3分の1を占めるとする調査結果を、京都私立大学教職員組合(京都市上京区)がまとめた。新入生への仕送り額も減少しており、組合は「家計負担を軽減するためにも国の支援が必要だ」と訴えている。

 同志社や立命館、京都産業、龍谷大などの学生の父母に昨年5~7月にアンケートを実施。7471人から回答を得た。

 下宿した場合の入学年の平均費用には、受験費用27万1523円や住居費44万7672円、大学への初年度納付金131万2526円、4~12月の仕送り74万8544円があり、総額278万265円だった。

 これに対して保護者の平均年収は843万330円で、入学年の費用が占める割合は33%に上った。実際は年収から所得税などの税金や社会保険料が差し引かれるため、「手取りの所得に占める割合は半分近いはずだ」(同組合)という。

 新入生への5月の仕送り額は8万6362円で、前年同月に比べて1239円(1・4%)減少した。2006年の10万5585円に比べると1万9223円(18・2%)減っている。

 組合の佐々江洋志書記長は「家庭の負担が重すぎる。国は私立大の助成を増やして授業料の減免に結び付けたり、奨学金を拡充したりして支援すべきだ」と話している。


2014年04月18日

大学図書館、火の車 海外誌値上がりに、円安追い打ち

朝日新聞(2014年4月17日)

 東京は、全国の大学生の4分の1が集まる、学生の街だ。研究のため、世界中の文献を集めた大学図書館で長く時間を過ごす人も多い。しかし、いま、その図書館の台所事情が、火の車になっている。有名な学術雑誌でさえ、リストラせざるをえない状況に追い込まれている。

 慶応義塾大信濃町キャンパス(東京都新宿区)にある北里記念医学図書館。国内外の雑誌が並んでいる棚から1月、ネイチャーやサイエンス、セルといった海外の科学誌が消えた。

 「紙の雑誌は、論文を執筆する時などに閲覧していました。参考文献の書き方などの形式を確認するためです。1冊あると便利だったのですが……」(慶大医学部の遠山周吾助教)

 「紙」の雑誌の内容なら、「電子版」をパソコンなどで読むことができる。多くの大学では、研究室や自宅からアクセスできて便利な電子版への切り替えを進めてきた。しかし有名どころまで「紙」が「リストラ」されたことに、研究者は戸惑いを隠せない。……


私大も親も苦しい懐 競争でコスト増、学費高止まり

朝日新聞(2014年4月17日)

 大学生を持つ親たちの懐事情は厳しい一方で、学費は高止まり――。私立大を巡るそんな現状が文部科学省などの調査で浮かび上がった。大学側は学生獲得に向けてコストを削れない事情を抱え、親たちは負担の重さに悲鳴を上げている。

 「地元の国公立大か、東京の私立大か最後まで迷った」

 東京都内の有名私大に通う男子学生(2年)は、昨年の入試直前まで本命を絞りきれずにいた。ネックは学費だ。親からは、学費が安くて自宅から通える地元・中国地方の国公立大学に行ってほしいと言われていた。しかし、東京の大学で学びたい気持ちが強く、都内の私大を受験した。今は、3種類の奨学金を利用し、週3回のバイトをしながら、年間の学費約100万円を支払っている。この学生は「節約すれば、生活はできます」と話す。……


2014年04月07日

親のスネ 細くなる一方 首都圏 私大生仕送り最低8万9000円

東京新聞(2014年4月6日)

 首都圏を中心とする私立大に二〇一三年度に入学した下宿生への仕送り月額(六月以降の平均)は十三年連続で減少して八万九千円となり、一九八六年度の集計開始以降で過去最低を更新したことが、東京地区私立大学教職員組合連合(東京私大教連)の調査で分かった。
 調査は昨年五~七月、茨城、栃木、埼玉、千葉、東京、神奈川の六都県にある十五大学・短大の新入生を対象に実施し、保護者五千四十八人から回答を得た。うち下宿生は千九百五十八人だった。
 下宿生への仕送り額は前年度より五百円減り、ピークだった九四年度の十二万四千九百円から三割近く減少した。仕送り平均額から家賃平均額を引いた生活費は一日当たり九百三十七円となり、過去二番目に低かった。
 一方、自宅生も含めた保護者の平均年収は九百一万九千円で、過去最低だった前年度から約二十七万円増えたが、東京私大教連の担当者は「家庭の経済状況が厳しいことに変わりはなく、仕送りを増やすまでの余裕はないようだ」と話している。
 受験費用のほか初年度納付金、住居費、四~十二月の仕送り額の合計は二百九十三万八千二百二十六円で、年収の三分の一を占めていた。

私大下宿生への仕送り額最低に 月8万9000円

日経新聞(2014/4/4)

 首都圏を中心とする私立大に2013年春に入学した下宿生への仕送り額(6月以降の月平均)は月額8万9千円で、13年連続で減少したことが4日、東京地区私立大学教職員組合連合の調査で分かった。前年度より500円減で、1986年度の調査開始以来の最低を更新。ピークの94年度(12万4900円)と比べると3割近く減った。

 東京私大教連は「世帯収入は伸び悩んでおり、大学生を抱える家庭の厳しい家計が浮き彫りになった」と指摘。学費負担を軽減する給付型奨学金などの助成制度の拡充を国に求めた。

 調査は昨年5~7月、東京や神奈川など6都県にある15大学・短大の新入生の保護者を対象に実施。仕送りをしている1958人の回答を分析した。

 調査によると、仕送りの平均額は11万9300円だった00年度から年々減少。一方、家賃の平均額は同年度の5万9600円から微増傾向が続き、13年度は6万900円になった。

 仕送りから家賃を引いた1カ月の生活費は2万8100円。1日当たり937円で、最も多かった90年度(2460円)の4割にとどまる。受験費用や住居費、4~12月の仕送りなどの合計は293万8226円で、回答した保護者の平均世帯年収(901万4千円)の32%を占めた。

私大生:経済効果は?仕送り過去最低、生活費1日937円

毎日新聞(2014年04月04日)

 首都圏の私立大・短大に昨春入学した自宅外通学生の生活費は1日937円??。東京地区私立大学教職員組合連合(東京私大教連)が4日、こんな調査結果を発表した。仕送り額は13年連続で減少し過去最低を更新。「アベノミクス」の経済効果が、1人暮らしの大学生を抱える家庭にまでは浸透していない実態が浮き彫りになった。

 調査は早稲田大、明治大など首都圏の15私立大・短大の新入生の保護者を対象に昨年5?7月に実施。5048人から回答を得た。このうち自宅外通学は約4割。仕送り額は月平均8万9000円で、1986年度の調査開始以来過去最低だった前年度より500円下がった。仕送り額から家賃を引いた生活費は1日平均937円。2年連続で1000円を切り、過去最高だった90年度(2460円)の半分以下だ。

 同教連によると、不足分を補うためのアルバイトで疲れ切った学生も珍しくなく、生活費を節約するため安価な学生食堂さえ利用せず、昼食に弁当持参の学生も目立つという。

 文部科学省は奨学金事業の改善を図るとして、今年度予算で、無利子奨学金の貸与人員を前年度より2万6000人増やし45万2000人(1人当たり平均年間68万円)とするなど対策を講じている。同教連は、返済の必要がない給付型奨学金の創設や希望者全員への無利子奨学金貸与を求めている。【三木陽介】


2014年03月17日

教育費、水面下で急増する「奨学金返済破綻」-脱デフレの「8大落とし穴」

PRESIDENT(2013年5月13日号)

 「最近の家計診断で特徴的な出来事の一つが、大学時代にもらっていた奨学金を返せずに困っているケースが増えていることです。借りた本人が返せず、連帯保証人になった親が年金から返済していることも決して珍しいことではありません」

ファイナンシャル・プランナーの畠中さんはこう語る。

 独立行政法人の日本学生支援機構の奨学金だと、月額で最高12万円を借りることができる。4年間フルに借りると総額で576万円。これだけの負債を背負ったまま社会人生活のスタートを切ったら、返済で懐具合が汲々となるのは火を見るより明らか。同機構の発表データによると、2011年度末における民間金融機関の基準に準じたリスク管理債権はトータル4493億円で、要返還債権である4兆8204億円の9.3%を占めている。そこで機構は返還回収を強化するために、債権回収会社を使うようになった。

 翻ってみて、大学に進学するまでの教育費の実態はどうなっているのだろう。家計の見直し相談センターの藤川さんと八ツ井さんがいつも注目しているのが文部科学省の「子どもの学習費調査」で、そこで明らかになった世帯年収別の学習費が図9だ。年収400万円未満の公立と、年収1200万円以上の私立とを比較すると、小学校で7.42倍もの開きが出ていることに驚く。いくら高年収でも、教育費が重い負担になってはいないのかと首をかしげたくなる。

 実は金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、12年時点で年収1200万円以上の世帯のうち5.1%は無貯蓄。同1000万~1200万円未満クラスになると、その割合は11.4%にまで跳ね上がる。そうした厳しい数字を踏まえながら藤川さんは次のようにいう。

 「1000万円前後の高所得者なのに、貯蓄がなかったり、あっても100万円程度という世帯の場合、子どもを私立学校に進学させているところが少なくありません。親の付き合いで、それなりの場所に行くとなると、奥さんの洋服代などもかさみ、次第に家計が苦しくなっていくのです」

 どの親も子どもによい教育を受けさせたいと願うもの。しかし、身の丈以上の教育費をかけて日々の生活が苦しくなり、精神的に疲れ切った親の顔を見せることが子どもの教育にとって本当にいいことなのか。また、日本の家庭は家族全員でお金について話し合う習慣があまりない。その結果、お金に関するリテラシーが乏しくなり、多額の奨学金の返済に苦しむ若い世代を生んだ遠因のようにも思われる。

 アベノミクスで成長戦略が軌道に乗って企業収益が回復し、それにともなって賃金がアップするにしても、まだ時間がかかる。その間に2%になるかどうかは別にしても、輸入品を中心に物価は少しずつ上がってくる。そこに追い打ちをかけるかのように、消費増税や社会保障の負担増が重くのしかかってくる。

 「だからこそ人口構成に合わない社会保障制度の改革が急務なのです」と八ツ井さんがいうように、目の前の課題から目をそむけてはならないのだ。そして、日々の生活を見直すなかで、家族全員がお金に対する意識を変革させていくことが、一見遠回りのように思えても、実は大切な家計を落とし穴に入り込ませないようにする近道になってくれるはずだ。


2014年03月10日

北海道の私大、学費下げ続々

月刊私塾界

 過去10年間でみると、道内に本拠地を置く私大23校のうち、一部の学部のみを含め学費を減額改定したのは7大学。値上げした4大学を上回る。北海道の2013年度の18歳人口は5万1359人で、10年間で23%(1万5821人)減った。全国平均の16%を7ポイントも上回る。13年度の短大・大学への進学率は39.9%で、全国平均(53.2%)との差は10ポイント以上。昨年5月時点で道内の23大学のうち、半数近い11大学が定員割れしている。

2014年02月05日

高校~大学教育費1349・2万円…今年度89・7万円増

読売新聞(2014年2月4日)

 日本政策金融公庫奈良支店は、2013年度に県内で実施した教育費負担の実態調査の結果を発表した。高校入学から大学卒業までに必要な教育費の平均が子供1人当たり1349・2万円と前年度に比べて89・7万円増加。一方、世帯年収に占める授業料や通学費などの在学費用は子供が2人いる世帯では66・9%(同21・5ポイント増)と、子供の教育費が家計の中心となっている実態が浮かび上がった。

 調査は昨年7月、「国の教育ローン」を利用した209世帯を対象に行われ、33世帯から回答があった。

 在学費用に受験料や入学金などの入学費用を足した「必要な費用」は、高校で429万円、大学で920・2万円。高校入学から大学卒業までの合計は、国公立大進学で934・3万円、私立大では理系1427・7万円、文系1092・5万円となった。

 一方で、世帯年収は減少傾向にあり、平均は552・6万円(同5・2万円減)だった。

 教育費の捻出方法(複数回答)については「奨学金」(51・5%)、「教育費以外の支出を削る」(48・5%)が上位を占め、節約している支出(同)は「旅行・レジャー費」と「外食費」が66・7%と最も多かった。


2014年01月31日

高校~大学の学費1055万円…政策金融公庫調べ

読売新聞(2014年1月30日)

2004年から111万円増

 高校入学から大学卒業までに必要な学費が子ども1人当たり1000万円を超えることが、日本政策金融公庫(東京)の調査でわかった。

 調査は、「国の教育ローン」を貸し付けている同公庫が2013年7月に実施。教育ローンを利用した約2万2000世帯に調査票を送付し、4942世帯から回答を得た。

 回答を基に、同公庫が入学費用や在学費用を累計したところ、子ども1人当たりの学費は高校で344・6万円、大学で711・2万円となり、高校入学から大学卒業までに1055・8万円かかることがわかった。04年調査では944万円だった。

 世帯年収の平均は552・6万円で、12年に比べて5・2万円減。子どもが2人いる世帯では世帯年収に占める学費割合が40・1%となり、比較可能な過去7年分の調査で最高となった。

 教育ローン以外での教育費の捻出方法を複数回答で聞いたところ、「奨学金を受けている」(60%)、「節約」(56%)、「子ども本人がアルバイト」(41%)が上位を占め、子ども本人が教育費を工面するため努力している様子が浮かび上がった。

 「国の教育ローン」は、低所得者でも利用しやすいよう、民間の金融機関に比べて利用要件が緩やかに設定されている。年間の利用は11万件に上り、その約1割を母子家庭世帯が占める。


2014年01月14日

慶上智に日大も 私大で相次ぐ「学費値上げ」は妥当なのか

News ポストセブン
 ∟●慶上智に日大も 私大で相次ぐ「学費値上げ」は妥当なのか(2014.01.12)

慶上智に日大も 私大で相次ぐ「学費値上げ」は妥当なのか

 今春から関東・関西の有名私立大学の授業料が軒並みアップする。本当に上げる価値があるのか。親世代がついつい「自分の時代」と勘違いしやすい、大学の授業についてコラムニストのオバタカズユキ氏が考える。
 * * *
 大学受験勉強の追い込み期だ。当事者である受験生のあなたには、「このサイトを見ている暇があったら、英単語の1つでも2つでもいいから頭の中に詰めこみなさい」と言いたいが、その親御さんや大学関係者、大学に関心がある方々には広く知っていただいたほうがいい、ちょっと頭の痛い話がある。
 日経新聞(電子版)では12月14日、朝日新聞(DIGITAL)では12月27日に報じていたけれども、この春からあちこちの私立大学が学費を値上げする。これまでも人知れずちまちま上げていた大学はあった。だが、有名どころが次々と値上げを表明、しかも消費税が上がる年に、という事態はニュースだろう。受験生の保護者はさらなる出費の覚悟をしたほうがいい。
 朝日新聞(DIGITAL)の記事をもとに、具体例をいくつかあげると、最も値上げの率が高く目立っているのは日本大学だ。全14学部のうち6学部で、年間の学費を5万~20万円増額するとしている。古い人にとっての日大は「中小企業の社長の息子が行くボンボン大学」というイメージもあるようだが、実はこの大学には学費を抑えた学部が多く、ここ5年間ほどは値上げをしていなかった。だから、これでついにあの日大の学費も首都圏の他の有名私大並みになってしまった、と捉えたほうがいいかもしれない。
 次いで、目立つのは早稲田大学だ。これまで1、2年次から徴収していた計15万円の「基礎教育充実費」を廃止。そのかわりに、新しく「全学グローバル教育費」年間7万円を徴収。4年間で卒業したとしても28万円かかるので、15万円を引き算して13万円の増額だ。また、政治経済学部の授業料は3万円アップ、他の学部の全学年で年間5~7千円の授業料を値上げする。
 他では、上智大学が「教育充実費」を新設し年間2万円増、授業料等も文系で年間7200円、理系で1万3700円の値上げ。明治大学は、5年ぶりに授業料を文系学部で年間5万円、理系学部で4万円の値上げをする。ただし、入学金は8万円減額とのこと。あとマスコミが伝えるところでは、慶應義塾大学、中央大学、青山学院大学、成蹊大学、関西大学が、率は低めだけれども値上げを決めている。
 逆に値上げを据え置くのは、関東では東京理科大、法政大、立教大、専修大あたり。だが、これらの大学はこの数年間でそれなりの学費値上げを行ってきたので、別に良心的なわけでもない。関西の大学も据え置きが多いが、国公立が非常に強いエリアなので、もとが安めの関大以外の私大は他の出方をうかがっていると見たほうがいい。
 値上げの言い分は大学によっていろいろだが、ざっくりまとめてみると次の2つの理由による。1つは、老朽化が進んだ校舎の建て替えや、遠方からの学生を呼び込むための学生寮の増設費が必要だということだ。寮については納得できないでもないが、私大でそんなに建て替えを急ぐような校舎が多いかな、という気はする。オンボロ校舎のまま頑張っている方々の国公立大学を思えば、「私大はまだ見栄えで人寄せできるつもりか」と首をひねる。

 もう1つの値上げ理由は、少人数授業などきめ細やかな教育体制の充実のために必要だという件。これはたしかに、そうなのだろう。ここ10年ほどの間に、「1年次からゼミをやる」というような大学や学部がずいぶん増えた。大教室での老教授による棒読み講義が減り、グループディスカッションをやる授業や、文系でも実習的な色彩の強い授業が増えている。さんざん批判されてきた「マスプロ教育」は減少方向にある。
 学生個人によりきめ細やかな対応をする教育の実践には、当然、人件費が余計にかかる。大学側からしたら1単位あたりの利益率が減るので、学費そのものを上げざるをえないわけだ。
 しかし、である。そのような教育体制に力を入れ始めてしばらく経つが、成果のほどはいかがか。これはデータでなかなか示せない問題だが、大学生や若手社員を取材していて、「大学の勉強は?」と聞いても、「べつに関係ないですよ」という返答が圧倒的に多いのは昔も今も変わらない。むしろ、きめ細やかになったことで、出欠取りが厳しくなり、「意欲もないのに」授業に出る学生が増えている。これは多くの大学教員もぼやいている件だ。
 もちろん、こうした状況について、今はマスプロ教育から少人数教育への過渡期でいずれ内実のともなった大学教育が実現する、という見方もできよう。だが、話が戻るけれども、そのぶん学費値上げは必至なわけだ。
 文部科学省の平成23年度データによると、私立大文系の授業料の平均額は743,699円で、入学料などを含めた初年度納付金の平均額は1,155,405円だ。理系の場合は、授業料が1,040,472円、初年度納付金が1,497,747円。今回の値上げラッシュで、これらの数字はもっと跳ね上がる。
 コストに見合ったリターンという考え方は教育に当てはめるべきではないかもしれないが、これだけの大枚をはたく価値のある大学教育は本当に必要なのか。大学で職を得ている人以外の誰がその価値を求めているのか。逆に学費を下げられるのなら、むしろ昔流のマスプロ教育を増やして、あとは学生の自主性に任せる、といった大学が出て来たっていいのではないか。具体的にかかる金額を見つめていると、そんなことも考えてしまう。
 いまや同学年の半分が大学に進学する時代。でも、この「常識」だって崩れていくかもしれない。あまり注目されていないのだが、大学進学率は2009年に50%超えして以降、2011年の51・0%がピークで、そこからは下がっている。2012年は50.8%で、2013年は49.9%と、実は僅かながら半分を割っている。
 大学進学率の「頭打ち」の原因が、高卒就職率が改善しているせいなのか、なんなのか、明言できている識者はいない。けれどもこれは単純に、親の懐具合が限界に来た、ということなのではないだろうか。
 ちなみに、これもいまひとつ認識されていない話だからつけ加えておく。国立大学の学費である。上記と同じ平成23年度データでは、授業料は535,800円、初年度納付金は817,800 円。こと文系学部に関してなら、私大とものすごい差があるわけではない。貧乏なうちの子が頑張って国立に合格しても、けっこうなお金がなければ通えない。受験生の親が若かった頃とはまるで状況が異なることを、知っておいたほうがいい。


2013年12月24日

沖大奨学生制度、大胆な公的支援が必要だ

琉球新報(2013年12月20日 )

 沖縄大学が県内大学として初めて創設した、児童養護施設や里親家庭の高校生を対象にした奨学生制度で、第1号となる5人の合格者が決まった。年間72万円の授業料を4年間全額免除する。
 虐待などさまざまな事情で児童養護施設などで過ごす子どもたちは全国で約3万人、県内でも500人余に上る。児童福祉法に基づく制度上、18歳になると自立とみなされ、原則として高校卒業時に児童養護施設を退所しなければならず、里親委託も解除される。子どもたちが大学進学を希望しても、経済的な理由で断念する場合が多いという。
 沖大の奨学生制度は、社会的養護が必要な子どもたちに夢と希望を与えるだけでなく、子どもたちの厳しい境遇に社会の関心を向けるきっかけともなり意義は大きい。あらためて敬意を表するとともに、県内の他の大学などにも波及することを期待したい。
 一方でそれは行政が担うべき役割でもある。高等教育の付与はいわば人材への投資であり、最大の振興策であるはずだ。未来への投資として、希望する生徒全てが進学できるよう大胆に予算を配分してしかるべきだ。
 国の支援制度では、18歳の施設退所時に、「大学進学等自立生活支度費」として7万9千円が支給される。親の経済的援助が見込めない場合は特別基準が加算されるが、家賃や生活費を工面しながら多額の授業料を自力で賄うには、限界があるのは明らかだ。
 3年前のクリスマスに児童養護施設にランドセルが寄付されたことをきっかけに、全国に「タイガーマスク現象」が波及したことは記憶に新しい。裏を返せば、施設で暮らす子どもたちへの公的支援が十分ではなく、個人の寄付や民間の支援団体の善意に支えられている実態を示していよう。
 厚生労働省の調べでは、児童養護施設で暮らす生徒の大学などへの進学率は約1割にとどまり、過半数が進学する一般家庭とは大きな格差がある。
 貧困と低学力には因果関係があることが学力テストから立証されている。とりわけ沖縄の貧困率は全国最悪との調査結果もある。社会的養護が必要な子どもたちの境遇は推して知るべしだ。貧困の連鎖を絶ち切るためにも、国、県を中心に、社会全体で子どもたちの未来を閉ざさない仕組みを早急に構築する必要がある。

2013年12月17日

高校・大学でかかる費用は1,055万円…国の教育ローン利用者

リセマム(2013年12月16日)

 日本政策金融公庫は12月13日、国の教育ローン利用者世帯を対象とした教育費用負担の実態調査結果を発表した。高校入学から大学卒業までに必要な費用は、子ども1人当たり前年比24.1万円増の1,055万円であることが明らかになった。

 同調査は、平成25年2月~3月に「国の教育ローン」を利用した21,892世帯を対象に、郵送にて無記名回答による調査を行い、勤労者世帯4,942世帯の回答を得た。調査時点は平成25年7月。

 教育費について、高校入学から大学卒業までに必要な費用は、子ども1人当たり1,055万円となり、前年調査の1031.7万円と比べ24.1万円増加した。過去5年間でみると、1,000万円を越える高止まり状態が続いている。

 高校卒業後の入学先別にみると、私立大学に入学した場合は、理系で1,156.9万円、文系で1,035.2万円であるのに対し、国公立大学では863万円となっている。

 自宅外通学者のいる世帯の割合は41.9%で、仕送り額は年間平均92.1万円(月額7.6万円)となっている。

 教育費の負担について、世帯年収(平均552.6万円)に占める在学費用の割合(子ども2人世帯)は、平均40.1%となり、(現行の集計基準で比較可能な)過去7年間で最高となった。年収階層別にみると、年収が低い世帯ほど在学費用の負担は重くなる。特に、「200万円以上400万円未満」の層では平均負担割合が58.2%となり、年収の6割近くを占めている。

 教育費の捻出方法は、「奨学金を受けている」が59.9%ともっとも多く、次いで「教育費以外の支出を削っている(節約)」56.3%、「子ども(在学者本人)がアルバイトをしている」40.7%、「預貯金や保険などを取り崩している」22.5%、「残業時間やパートで働く時間を増やした」21.0%と続く。
《工藤 めぐみ》


2013年12月16日

私大、14年春学費値上げ 早大・明大・日大など

日本経済新聞(2013/12/14)

 早稲田大学や明治大学、日本大学など有力私立大学が来春、学費を値上げする。値上げ分は学生の留学支援や校舎の建て替えなど教育環境の整備に充てるところが多い。授業料は非課税だが、消費増税で教材費、資材費などの負担が増える分を補う面もある。大学生を抱える家計の負担は一段と重くなりそうだ。

 日大は6年ぶりに学費を値上げする。来春、理工学部など6学部に入学する新入生が対象で、年5万~20万円の負担増となる。…


2013年01月04日

「高校無償化」制度から朝鮮学校を排除しないようパブリックコメントを送りましょう! 1月26日まで!

「高校無償化」措置を朝鮮学校に適用することを求める大学教員の要請書

「高校無償化」制度から朝鮮学校を排除しないようパブリックコメントを送りましょう!

 報道などでご承知のことと存じますが、安倍新政権はいわゆる「高校無償化」制度を朝鮮学校に適用しない方針を決めました。12月28日に開催された閣僚懇談会で、下村博文文部科学大臣が「朝鮮学校については、拉致問題の進展がないこと、朝鮮総連と密接な関係にあり、教育内容、人事、財政にその影響が及んでいることなどから、現時点の指定は国民の理解が得られないので、不指定の方向で検討したい」と提案したところ、安倍晋三総理大臣が「その方向でしっかり検討してほしい」と返答し、その場で了承されました。そこで政府は、野党時代の自民党が議員立法で提出した法案をベースに、朝鮮学校が指定される根拠となる条文を削除する省令改悪をおこなうこととし、12月28日よりパブリックコメント(意見公募手続)を募集しはじめました。
(文部科学大臣会見) http://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/1329446.htm

 パブリックコメントは下記のページから1月26日(土)まで募集しています。コメントの募集締切後、間もなく省令改悪をおこなう予定でいるものと考えられます。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185000617&Mode=0

 どのような省令改悪が目論まれているかは、上記ページの「省令案の概要」をご覧下さい。また、このメールの末尾に《解説》として要点を掲載しておきました。

 わたしたちは民主・自民両政権の共同作業による朝鮮学校の排除に憤りを隠せません。文科省に寄せられたパブリックコメントにどれほどの効果があるのかは不明ですが、わたしたちの多様な反対の民意を、可能な限りぶつけたいと思います。下記の要領【1】で、ぜひ各自がコメントを文科省に送って下さい。

 と同時に、文科省に送付したコメントを、下記の要領【2】でわたしたちにもお寄せください。ブログ上で公開することにより、「パブリックコメント」を真に「パブリック」なものにしたいと考えています。

呼びかけ人一同
 板垣竜太(同志社大学)、市野川容孝(東京大学)、鵜飼哲(一橋大学)、 内海愛子(大阪経済法科大学)、宇野田尚哉(大阪大学)、 河かおる(滋賀県立大学)、駒込武(京都大学)、坂元ひろ子(一橋大学)、 高橋哲哉(東京大学)、外村大(東京大学)、冨山一郎(同志社大学)、 中野敏男(東京外国語大学)、藤永壮(大阪産業大学)、 布袋敏博(早稲田大学)、水野直樹(京都大学)、三宅晶子(千葉大学)、 米田俊彦(お茶の水女子大学)
ブログ: http://d.hatena.ne.jp/mskunv/
お問い合わせ先: msk_univ@yahoogroups.jp

***************提出要領*****************

【1.まずパブリックコメントを文部科学省に送ってください】

 1月26日(土)までに文部科学省に意見を送って下さい。
 提出先は下記のいずれかです。

郵送:〒100-8959 東京都千代田区霞ヶ関3-2-2
         文部科学省初等中等教育局財務課高校修学支援室宛
ファックス:03-6734-3177
電子メール: shorei@mext.go.jp
 ※メールの場合、件名を【パブリックコメントに対する意見】とする。

 盛り込むべき情報は下記のとおりです。

・名前
・性別、年齢
・職業(在学中の場合は「高校生」「大学生」など在学する学校段階を表記。)
・住所
・電話番号
・意見

※「御意見については、氏名、住所、電話番号を除いて公表されることがあります」とのことです。

【2.パブリックコメントを公表しましょう】

 文部科学省に寄せたコメントは、公表されるとしても先のことになりますし、文科省側で取捨選択される可能性もあります。それとは別に、朝鮮学校の排除に反対する声を集約し公表することは、「パブリックコメント」を真に「パブリック」なものにするためには重要なことであると考えます。コメントを公表しても構わない方は、下記のフォームより、文科省に送った内容をお寄せ下さい。
https://ssl.form-mailer.jp/fms/10d0216c229112

 お寄せいただいたコメントは、下記ブログで公開する予定です。
http://d.hatena.ne.jp/mskunv/

《解説》省令案の要点

 2010年4月に制度が開始された時点では、次のような外国人学校が適用対象とされました。

(イ)大使館を通じて日本の高等学校の課程に相当する課程であることが確認できる「民族系外国人学校」
(ロ)国際的な学校評価団体から認定された「インターナショナル・スクール」
(ハ)それ以外の外国人学校で文科大臣が指定したもの

 このうち(ハ)については、文科省の定める審査規程にもとづき、「高等学校の課程に類する課程」を置いていると認められれば文科大臣が指定することになっていました。その審査規程が公表されたのが2010年11月でした。専修学校の設置基準相当の指定基準であったため、それにもとづいて朝鮮高級学校を審査すれば指定されることは明らかでした。ところが民主党政権下で朝鮮学校の審査は不当に引き延ばされ続け、その挙げ句に、バトンを渡された自民党新政権がこの(ハ)規定自体を削除することにしたわけです。
 なお、(ハ)規定にもとづき、これまで2つの外国人学校が指定を受けました。横浜のホライゾンジャパンインターナショナルスクールと大阪のコリア国際学園です。これらの学校については、「経過措置を設ける」と記されています。朝鮮学校をターゲットにした省令変更により、それ以外の学校にも負の影響が及ぶことになったのです。


2012年11月13日

「高校無償化」制度の朝鮮学校への適用を求める大学教職員の要請書

「高校無償化」措置を朝鮮学校に適用することを求める大学教員の要請書

 今年10月、田中眞紀子文部科学大臣は、いわゆる「高校無償化」制度の朝鮮学校への適用について、「この内閣がそろそろ政治的な判断をする時期に来ている」と発言しました。このことに関連して、現政権での速やかな制度適用を求める大学教職員の要請書を作成しました。「年内解散」も議論されるなか、遅きに失した感は否めませんが、とにかくわたしたちの声を日本政府にぶつけたいとの思いで賛同を呼びかけます。要請書をお読みいただき、賛同いただけるようでしたら、11月14日(水)正午までに下記の要領でご署名をお願いします。
(現在、提出日を調整しています。詳細は賛同者にメール等にてお知らせします。)

【署名の仕方】
 下記の署名用フォームのページにアクセスし(携帯からでも可能)、必要事項を記入のうえ、送信してください。
https://ssl.form-mailer.jp/fms/7b8343bc222478

※政府に提出する名簿にはお名前と所属大学のみを記します。職位は提出する名簿の信憑性を担保するために念のために確認させていただくものです。不記入でもけっこうです。なお、インターネット上でのお名前等の公開/非公開については、フォーム上で選択することが可能です。

※今回の要請書は高校の次の段階に位置する高等教育に携わる立場からのものです。何らかのかたちで大学に職を得ていれば教職員の別、常勤・非常勤・有期雇用などの別は一切問いません。もちろん国籍・居住地の別も問いません。

※メッセージをご記入いただいた場合、政府に提出するとともに、報道関係者に公開する可能性があることをご了解ください。不記入でもけっこうです。

※アクセスが集中して送信できない場合は、お手数ですが、しばらく待って再度送信してみてください。1時間に50人以内しか受け付けられません。アクセス制限は1時間毎に更新されます。たとえば10時台にアクセス制限ページが表示された場合は、11:00には解除されます。

※ご質問・ご意見は、次のメール・アドレスまでお願いします。
問い合わせ先: msk_univ@yahoogroups.jp

※最新情報は下記ブログにて更新予定です。
http://d.hatena.ne.jp/mskunv/

2012年11月 日
内閣総理大臣 野田 佳彦 様 文部科学大臣 田中 眞紀子 様 内閣官房長官 藤村 修 様

「高校無償化」制度の朝鮮学校への適用を求める大学教職員の要請書

 2010年4月1日に「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」(以下、「高校無償化」制度と略す)が施行されました。施行当初より朝鮮学校は外国人学校のなかでも特殊な扱いを受け、すぐに制度が適用されませんでした。同年11月にようやく文部科学省が審査基準等の規程を公表し、朝鮮学校はその手続きにのっとって申請しました。ところが日本政府は、同月に朝鮮半島の西海(ソヘ)で起こったいわゆる「延坪島(ヨンピョンド)事態」を口実として、審査を突如「停止」しました。それから約2年もの長期間に渡って、朝鮮学校のみ審査が「停止」されるという、異常な行政上の不作為が継続しています。その間、各地の朝鮮高級学校は卒業生を2度送り出し、来春には「高校無償化」制度が始まった年に入学した生徒が卒業の時期を迎えます。かれらに対し、日本政府が不利益を与え、排除のメッセージを送り続けていることに、わたしたちは満腔の怒りを覚えます。わたしたちは高等教育に携わる立場から、朝鮮高級学校のみを「高校無償化」制度の適用外としてきたことに強く抗議します。

 法令制定当初、日本政府は制度適用の可否について、「外交上の配慮などにより判断すべきものではなく、教育上の観点から客観的に判断すべき」と表明していました。これまでほぼ全ての高等教育機関が朝鮮高級学校卒業者の受験資格を認めてきたことからも、朝鮮学校の教育が「高等学校の課程に類する課程」であることは明らかで、教育上の観点から審査すれば適用対象となることは疑う余地がありません。にもかかわらず政府は、政治判断により審査を止めてきました。この間の政府の不作為は、朝鮮民主主義人民共和国に対する敵対的な外交政策の矛先を朝鮮学校の児童・教職員・保護者への攻撃にすりかえたものとする以外に説明不可能です。2010年に国連・人種差別撤廃委員会が、朝鮮学校への「高校無償化」制度の適用除外について、「子どもの教育に差別的な影響を及ぼす行為」として懸念を表明したように、日本政府の措置は法制度的なレイシズムとして国際的にも非難されるべきものです。加えて、この間の日本政府の姿勢は、地方自治体による教育補助金にも悪影響を及ぼし、大阪をはじめ各地で朝鮮学校への補助金支出を削減する動きを助長しています。こうした日本政府および地治体
方自治体による排除は、1948~49年における朝鮮学校の閉鎖措置に並ぶ歴史的な大弾圧であり、植民地主義と冷戦の重畳する歴史が未だ終結していないことを想起させます。

 本年10月、田中眞紀子文部科学大臣は、この問題について、「審査に時間がかかっており、この内閣がそろそろ政治的な判断をする時期に来ている」という旨を明言しました。わたしたちは現内閣に対し以下の点を要請します。

(1) 「高校無償化」制度を速やかに朝鮮学校に適用すること。
(2) 審査を政治的に停止してきたことに鑑み、2010~2011年度の朝鮮高級学校在校生に対しても、「高校無償化」制度を遡及適用すること。
(3) この間の日本政府による作為・不作為によって朝鮮学校の生徒と関係者が被った精神的苦痛に対し、公式に謝罪すること。

呼びかけ人(11月12日現在、あいうえお順)
 板垣竜太(同志社大学)、市野川容孝(東京大学)、鵜飼哲(一橋大学)、 内海愛子(大阪経済法科大学)、宇野田尚哉(大阪大学)、 河かおる(滋賀県立大学)、駒込武(京都大学)、坂元ひろ子(一橋大学)、 高橋哲哉(東京大学)、外村大(東京大学)、冨山一郎(同志社大学)、 中野敏男(東京外国語大学)、藤永壮(大阪産業大学)、 布袋敏博(早稲田大学)、水野直樹(京都大学)、三宅晶子(千葉大学)、 米田俊彦(お茶の水女子大学)


2010年08月04日

朝鮮学校も無償化へ調整 文科省方針、政権内になお異論

http://www.asahi.com/edu/news/TKY201008030514.html

 今年度始まった「高校無償化」制度をめぐり、文部科学省は、全国の朝鮮学校の除外措置を解除する方向で最終調整に入った。文科省は教育の専門家による会議を設置して制度適用の可否を議論してきたが、「日本の高校に類する教育をしており、区別することなく助成すべきだ」との判断を固めたという。……

2010年07月31日

京滋地区私大教連、緊急声明「平成23年度概算要求における高等教育予算の拡充を!」

京滋私大教連
 ∟●平成23 年度概算要求における高等教育予算の拡充を!

平成23 年度概算要求における高等教育予算の拡充を!

2010 年7 月28 日
京滋地区私立大学教職員組合連合

 現在、日本の高等教育において、私立大学・短期大学(以下、「私立大学」)には学生全体の約75%が学ぶとともに、全体の大学数における私立大学の割合は80%を占めており、私立大学は高等教育分野において名実ともに大きな役割を果たしています。
 また、私立大学は社会の各分野に優秀な人材を輩出し、日本社会の発展に寄与するとともに、教育・文化・地域振興などさまざまな分野を通じて、地域の発展にも多大な貢献を果たしてきました。
 他方、国立大学が法人化されて以降「国立大学法人運営費交付金」が毎年1%減額される中で、「私立大学等経常費補助金」も2006 年~2008 年までの3 年間にわたって94 億7 千万円もの補助金が減額されてきました。元来、国立大学法人と私立大学では公財政支出に大きな格差がある中で、これだけ多額の補助金が削減されたことは、私立大学の教育・研究および経営基盤にも大きな影響を及ぼしました。
 こうした状況の下、政府が6 月22 日に閣議決定した「財政運営戦略」で示した今後3 年間の予算編成では、「基礎的財政収支対象経費」の大枠を平成22 年度の約71 兆円を上回らないとする考えを示す中で、平成23 年度予算の概算要求に関して、社会保障費などを除く「政策経費」を全省庁で一律「10%削減」するとの方針が7 月27 日に開かれた臨時閣議で決定されたことは、今後の高等教育予算にも重大な影響を及ぼす問題であると考えます。
 仮に私学助成(平成22 年度予算・4390 億円)が10%削減されることになれば、439 億円もの削減になり、大学の経常費補助金では322 億円の削減となります。小泉政権時の骨太方針の下ですら1%の削減であったことを考えると、このような大幅な削減は到底容認できるものではありません。政府が掲げる「新成長戦略」における新たな需要と雇用創造を支えるのは「人」であり、そうした「人」を育てる主体的役割を担っている高等教育の予算を大幅に削減することは本末転倒といえます。……


2010年04月16日

切り詰めても…年間186万円! 大学の費用

http://benesse.jp/blog/20100415/p5.html

新年度に入り、勉強をがんばろうと気持ちを新たにしているお子さんも多いことと思います。その一方で、保護者の方々にとっては、将来の教育費が心配ですよね。では、大学に通わせるためには、いくらかかるのでしょうか。独立行政法人「日本学生支援機構」の調査(2年ごと、2002<平成14>年度までは文部科学省が実施)によると、2008(平成20)年度は大学・学部(昼間部)で年間185万9,300円でした。それでも200万円を超えていたピーク時の2000(平成12)年度に比べ、1割減ったといいます。何に出費がかさみ、何を切り詰めているのでしょうか。……

2010年04月13日

東京私大教連、私立大学新入生の家計負担調査(2009年度)

東京私大教連
 ∟●私立大学新入生の家計負担調査(2009年度)

私立大学新入生の家計負担調査
2009年度

1.「受験から入学までの費用」は、自宅外通学者は212万6761円で前年度比2万2700円(-1.1%)減額した。自宅通学者は150万561円で前年度比200円増額した(表1)。
2.「受験から入学までの費用」の内訳は、自宅外通学者で受験費用、家賃、敷金・礼金、生活用品費が減額した(表1、図1)。
3.自宅外通学者の「受験から入学までの費用」の構成では、初年度納付金が6割を占める(表2)。……


2010年04月07日

不況で授業料の減免申請急増、山梨県内の大学

http://www.sannichi.co.jp/local/news/2010/04/06/4.html

 不況で学費負担の軽い国公立大学志向が強まる中、山梨県内の大学で授業料の減免制度の申請が相次いでいる。……