2017年06月20日
サイト紹介、山口雪子さんを支える会-視覚障害者に対する不当配転事件
今までの経緯山口さんへインタビューする形でまとめました。
1、短大側から今回の通告を受けたのはいつ?
授業外しは、2016年2月5日の学科会議においてです。
次年度分掌を学長が説明する中で、出席者全員に告知する形で「28年度、山口先生に授業はありません」と、言われました。
研究室明け渡しについては、次年度より学科主任教授となる方からのメールで「学長指示」として通告されました。ただし学長側は、「単なる研究室移動であって退去ではない」と言っています。
でも、移動先は旧事務室で、しかも使用できるスペースが限られています。研究に必要な資料などを置いておくスペースはありません。
学長から「私物を撤去してもらう」と言われているので、机やロッカー以外、スクリーンリーダー(文章を元読み上げるソフト)の入ったパソコンも私物となってしまいます。つまり、私の研究活動そのものをできなくする処置だと感じています。2、短大側の理由は?
① 授業中に飲食したり、無断で出て行ったりする学生を注意できなかった
② 筆記試験を採点する際に学生の答案を第三者に読み上げてもらった 等です。
実は、2年前に、ほぼ同様の理由で退職勧奨を既に受けています。
特に2年前の時は学生課題を第三者に読んでもらっていたことが「個人情報漏洩」と叱責されました。
「視力がない教員は職業能力がない」と言われ、続けるのは難しいかとも思いました。
しかし、2年前は「補佐員を私費で雇用する」ことで退職を免れ、授業を続けてきました。
補佐員は週2日で授業の中では出席簿への記入などを手伝っていただいています。
ただし、短大との制約の中に「補佐員は学生と直接関わってはならない」とあるため、飲食や居眠りなどをみつけたとしても学生に注意を促すことはできません。
そのような中で学生から飲食している者への指導をしないとクレームが出ている…と言われ、2月5日の告知を受けました。3、裁判で訴えていることは?
2件の仮処分申請 と 本案提訴 をしています。
まず、3月2日に研究室退去を無効にするための仮処分申請をしました。
3月14日が引き渡し期限となっていたためです。
15日以降に研究室に入れない・勝手に部屋の荷物を移動される等の危惧がありました。
そのため、研究室退去について先に申請しました。
そして、3月23日に授業外しを撤回するよう求めた仮処分申請と、研究室退去・授業外しを不服とする地位確認の提訴を行いました。
全て岡山地裁倉敷支部に提出していますが、岡山地裁本庁での取り扱いとなるそうです。4、通告から提訴まで
2年前、「話し合いで穏便に何とか解決したい」と願いました。
母校の悪い評判は学生や卒業生が心を痛めるだろうと思ったからです。
今回、2月5日に告知された時も、「まだ何とか穏便に…」との思いが強くありました。
そこで、代理人弁護士から話し合いをしていただくことで何とかならないかと考えました。
2月9日に代理人就任挨拶と面談申し入れを弁護士の先生がしてくださいました。
しかし、なかなか面談の期日について回答はありませんでした。2月22日に大学側代理人弁護士からの挨拶があり、ようやく3月1日に話し合いの場がもたれました。
短大側は、学長と主任教授以外に学科教員6名を同席。
私のできないこと(飲食・居眠りが注意できない等々)をA4用紙にまとめさせて読み上げさせたそうです。
そして、研究室の明け渡しについても、授業外しについても通告に変更はないとのことだったそうです。
致し方なく期限の迫っていた研究室退去について先に仮処分申請をしました。
ここでの審尋は非公開ですから、学生や卒業生に知れることなく解決する希望を持っておりました。
しかし、3月15日審尋でも変更・撤回はないとの姿勢は堅いものでした。
新年度に入ってから授業外しのことを不服申し立てしても遅すぎます。
そのため、せめて年度内にできることを…と考え、3月23日の提訴となりました。5、大学での授業は?
現在(H28.4月)、時間割に私の名前はありません。授業はできない状況です。
待遇として「准教授の役職変更はない」とのことですが、会議席は学科教員から外れた末席にされており、教員としての処遇がどうなているのか疑問には感じています。
ただ私のほうで確認する術もなく、今後どうなるのかは私自身がわからない…というのが本音です。6、研究室の明け渡しは?
保留となっています。
第1回審尋が上述のように3月15日でした。そのため代理人弁護士の方から「仮処分が結審するまでは研究室については現状維持」とするようにとの求めを仮処分申請後に大学側代理人弁護士にしてくださり、結果として大学側は保留を了承しています。7、どのような場所に働きかけを?
文部科学省を含め様々なところへの働きかけを模索しています。
文科省に今回の問題について仮処分申請などをする前に何か救済してもらえるところがないかと問い合わせをしたことがあります。
でも文科省の答えは「学校と教員の問題は労使の問題だから厚労省に…」とのことでした。
厚労省には、4月から障害者差別解消法が施行されることもあり、障害者雇用対策課を頼って要請させていただく経緯となりました。でも労使問題、障害者の雇用問題だけではないと思っています。
「共生社会を目指す教育」 を子ども達にするよう求めている教育現場。
人権を無視したことをしていて真の教育ができるのでしょうか?
より良い教育現場であるように指導する責任は文科省にはないのでしょうか?
そのことに気づいていただきたい…
文科省としても考えていただきたい…そんな強い希望もあり、署名の提出先の筆頭は文部科学大臣にさせていただいております。
障害で配置転換無効判決に不服 岡山短大運営の学園が控訴
視覚障害を理由に、事務職への配置転換と研究室からの退去を命じたのは不当な差別だとして、岡山短大(倉敷市有城)の山口雪子准教授(52)が、短大を運営する原田学園(同所)に配置転換の無効などを求めた訴訟で、学園側は3日、准教授側の主張をほぼ認めた一審岡山地裁判決を不服として控訴した。 一審判決は、配置転換を「権利の乱用」と指摘して無効と認定。精神的苦痛を受けた慰謝料などとして110万円の支払いも命じた。 学園側は同日、配置転換の業務命令の効力仮停止を決定した地裁の仮処分についても、地裁に保全異議を申し立てた。
岡山短大が控訴、一審判決に不服 広島高裁
視覚障害を理由に授業の担当から外されたとして、岡山短大(岡山県倉敷市)の山口雪子准教授(52)が、短大を運営する原田学園を相手取って職務変更命令の取り消しなどを求めた訴訟で、同学園は3日、職務変更命令の取り消しと慰謝料など計110万円の支払いを命じた岡山地裁の一審判決(3月28日)を不服として広島高裁岡山支部に控訴した。控訴について学園側は「裁判所の認識や判断には間違った部分がある」と主張している。この裁判は、山口准教授が授業中に飲食や無断退室する学生を見つけられなかったとして、昨年から授業の担当を外されたことを視覚障害者に対する不当な差別だとして起こした。岡山地裁は判決で「介助者を置くなど短大側が適切な対応をすれば授業の問題は解決できる」として、授業の担当から外した短大側の命令は無効だとした。控訴について山口准教授は「あきらめずに主張を続けていきます」と話している。
視覚障害理由の配転命令「無効」 岡山短大に賠償命令
岡山短期大(岡山県倉敷市)の女性准教授が「視覚障害があることを理由に授業を外され、事務職への変更を命じられたのは不当」として、短大を運営する学校法人を相手取り、配転命令の撤回などを求めた訴訟の判決が28日、岡山地裁であった。善元貞彦裁判長は、配転と研究室の明け渡し命令は無効とし、短大側に慰謝料など110万円の支払いを命じた。訴えていたのは、倉敷市の山口雪子さん(52)。判決によると、山口さんは1999年に岡山短大の教員となり、幼児教育学科の准教授として勤務してきた。網膜異常で視野が狭くなる「網膜色素変性症」を患い、次第に視力が低下。14年に退職勧奨を受け、私費で視覚補助の補佐員を雇って授業を続けていたが、昨年3月、事務職への変更を命じられたことなどを不服として提訴した。
裁判で、短大側は「授業中、ラーメンやお菓子を食べている生徒を注意できなかったり、無断退出が横行したりしている」などと主張。これに対し、判決は「適切な視覚補助のあり方に改善すれば、学生の問題行動については対応可能」と指摘。「職務の変更の必要性は十分とは言えず、権利の乱用だ」と退けた。
山口准教授が勝訴 障害理由の授業外しは無効 岡山短大、権利乱用認める 慰謝料など110万円 地裁
岡山短大(岡山県倉敷市)の山口雪子准教授(52)が、視覚障害を理由に授業の担当から外されたのは不当な差別だとして、短大を運営する学校法人原田学園(同市)に事務職への職務変更命令の取り消しなどを求めた訴訟の判決が3月28日、岡山地裁であった。善元貞彦裁判長は職務変更命令は無効と判断し、短大側に慰謝料など計110万円の支払いを命じた。【平井俊行】判決によると、山口准教授は昨年2月、授業中に飲食や無断退室をする学生を見つけられなかったとして、次年度から授業の担当を外され、学科事務を行ない、更に研究室を立ち退くよう短大側に命じられた。山口准教授は網膜色素変性症で視力が低下し、文字の判読が困難な状態だった。
判決で善元裁判長は、山口准教授の介助者を置くなど短大側が適切な対応をすれば授業の問題は解決できると判断。「職務変更命令は山口准教授が教員として授業を行なう機会や研究発表の自由を完全に奪うものであり、短大側の権利乱用だ」と指摘した。更に「視覚補助のあり方を全体で検討し、模索することこそ、障害者に対する合理的配慮の観点からも望ましい」と述べた。また研究室からの立ち退きについては「立ち退きを命じた経緯が不当な職務変更を前提としており無効」と説明した。
原告代理人弁護士「画期的な判決」
判決後の記者会見で山口准教授は判決内容を喜び、「1年間、授業の担当から外されて、学生を教えることは私が人生を全うするうえでかけがえのないものだと改めて感じた。教員としての本分である授業に戻れるよう頑張ります」と語った。原告代理人の水谷賢弁護士は「障害者差別解消法や改正障害者雇用促進法(ともに昨年4月施行)に定められた合理的配慮のあり方を短大側に投げかけた点で画期的な判決だ」と話した。
短大側は同29日の点字毎日の取材に対し「(控訴するかどうか)今の段階で答えられることは何もありません」と答えた。
2017年06月08日
日本で定年が保障された教授職を解雇されたキム・ミギョン教授
日本で定年が保障された教授職を解雇されたキム・ミギョン教授キム・ミギョン元広島市立大平和研究所教授(54)は、この1カ月間、ソウル光化門(クァンファムン)のあるオフィステル(オフィスと住居が合わさった空間)に滞在している。3月17日に懲戒解雇され5月2日に帰国した。「解雇で日本滞留資格を失い、これ以上留まることはできませんでした。12年間に集めた韓日関係資料と数百冊の本を捨てて帰国しました」。大学は退職金の5千万ウォン(約500万円)も払わなかった。2005年に講師としてこの大学に来て、3年後に定年が保障された教授になった。「日本ではたびたび体調を崩しました。復職訴訟で勝つまで戦うために、体調を管理しなければとこの頃痛切に思います」。今月2日、ハンギョレ新聞社で彼女に会った。
警察に逮捕され12日間留置場の独房に拘禁された後に不起訴処分を受け解放された当日、解雇通知書が彼女に伝えられた。「どんな手段を使ってでも私を追い出したかったのでしょう。私を追い出してこそ彼らが生きるからです」。何があったのだろうか?大学は、彼女がロンドン行きの飛行機代34万円を不当に受領したとして詐欺の疑いで告訴した。彼女は2014年、韓国国際交流財団基金で韓国においてサバティカル(長期休暇)を過ごした。「最初は英国のケンブリッジ大に行こうと研修計画書を大学に出しました。その後、財団の支援が遅れて確定したために、上級者の吉川元・平和研究所長に報告し、所長推薦書を受けて韓国に行きました」。大学は、彼女が韓国で研修をしていた2014年12月、突然に英国に行かなかったことを問題にして帰って来いと指示した。サバティカルの終了日より2カ月操り上げて広島に行った。ロンドン行きの飛行機代は、大学に復帰して2カ月後の2015年4月に受け取った。「所長と事務室の職員が度々(飛行機代を)申請するように言いました。私が英国に行かなかったことを知っていながら申請しろと言うので、しなければならないのかと思いました」。彼女を無嫌疑処分した警察も、この点を不思議に思ったという。「大学が、自分が予約した“1年オープンの往復チケット”という粗末な証明資料で金を支払ったことがおかしいと、警察がそう言いました」。彼女は「飛行機代を受け取る意図がないのに、大学がそのような状況を作って私を追い詰めたのではないかと思う」と話した。
広島市立大「飛行機代不当受領」で告訴
警察が無嫌疑釈放すると即刻解雇
「大学が罠にはめたという心証」
吉川平和研究所長「いじめ報告書」
昨年3月に出したが特別な措置なく
「所長と市長が生きるために私を追い出した
勝つまで戦い続ける」彼女は釜山大の英文科を卒業し、米国ジョージア大で修・博士学位を受けた。博士論文は「70年代の韓国の女性労働運動」を主題に書いた。息子ブッシュの1期大統領時代の2000~2004年には、米国務部公共外交専門委員として仕事をした。米国政府の対外広報を担当するポジションだ。ブッシュの再選が確定した後に辞表を出したと話した。「4年間ブッシュが掲げた“悪の枢軸”広報ばかりしていました。もうその仕事をしたいとは思いませんでした」。1年後の2005年10月、公募を通じて広島市立大に行った。
彼女は、大学の解雇措置には安倍晋三首相の政策を批判するなど、自身の所信発言が影響を及ぼしたようだと話した。「2006年から韓国、米国、オーストラリア、シンガポールの新聞への寄稿を通じて、日本の右傾化を批判しました」。 4年前「安倍が過去の歴史には口を閉ざして被害者のフリばかりをしている」という内容の寄稿(金正恩<キム・ジョンウン>と安倍の“危険なタンゴ”)が韓国の新聞に掲載された。「2006年に韓国のある地方紙に自分の寄稿が載った日、右翼が当日午前にその文を訳して広島市長や市議会側に送り抗議をしたのです」。2011年には、研究のために泥棒の汚名を着せられもした。「私が韓国の東北アジア歴史財団のプロジェクトである『日本人たちの領有権紛争認識』調査を引き受けると、大学が個人の研究だとして大学の郵便受けやコピー機も使ってはならないと言いました。後には私が研究所の建物の鍵を盗んだとして泥棒呼ばわりしました」。
彼女は、今回の事態の核心人物として2013年4月に平和研究所所長として赴任した吉川元氏を挙げた。「吉川氏が日本最大の右翼組織である日本会議人脈の推薦で所長に任用されたという話を最近聞きました」。
吉川氏は赴任後、時をわきまえず彼女を呼び出した。「電話を受ければ、たった一言です。ぞんざいな口調で『来い』といいます。私を座らせて『韓国の国民は未開だ』と悪口を言います。一度などは週刊新潮に載った低級な『慰安婦記事』を見せ、『コピーしてちゃんと勉強しろ』と言ったのです。『男が戦場に出て行く前に女を抱いてみるのが何で悪いのか』とも言いました。韓国女性の代表として下級者である私を呼んで、侮辱して羞恥心を与えるという意図が目に見えました」。彼女は悩んだ末に昨年3月、大学の「ハラスメント(権力を悪用したいじめ)委員会」に所長の行動を指摘した報告書を提出した。「報告書を出した後、委員会の人と一度だけ相談しました。解雇され帰国した後に、大学の事務局長が「報告書を撤回する心境の変化があるか」という内容のメールを送って来ました。私の腹を探るつもりだったのでしょう」。彼女はこの報告書が解雇措置と関係あるのではと考えている。「報告書の内容だけ見れば、所長は解雇されて当然です。そうなれば彼を任命したり推薦した人々も、ぞろぞろと問題になります。報告書を提出した後、ある同僚教授が『所長は日本会議ラインだ。触れれば大変なことになる』と耳打ちしたりもしました」
「私が先例になれば学問の自由はなくなります。同僚教授がこう言いました。『あなたのような目に遭わないと言える教授はいない。誰もがあなたのようになりうる』と」。彼女は現在、世界政治学会人権文科会長を受け持っている。イルテル・ツーラン世界政治学会会長と米国際学会人権文科会長、米政治学会会長などの学者が解雇措置の不当さを指摘する意見書を送ったと話した。「解雇が人権の侵害であり、学問の自由を剥奪する行為であり、手続きも無視したとのことが共通した指摘です」。日本の国際キリスト教大の稲正樹教授など、日本の多くの教授も支援の意思を明らかにしたと話した。
カン・ソンマン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
韓国語原文入力:2017-06-04 20:36
http://www.hani.co.kr/arti/international/japan/797457.html 訳J.S(3066字)