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2007年10月11日

国立大学、「天下り」よりたちが悪い「役員出向」

■「意見広告の会」ニュース428

「天下り」よりたちが悪い「役員出向」

      「会」事務局
*「ニュース」読者は既にご存じの通り、「役員出向」は、いま分かったことではありません。
 ようやく国会で追及が始まろうとしています。
 これまでの状況については、「全国公私立大学の事件情報」が関連「ニュース」コーナーを作って下さっています。以下からご覧下さい。
http://university.main.jp/blog/

*衆議院文部科学委員会(平成18年3月10日 金曜日)での民主党・山口壯議員の質問については、164回第5号を以下からご覧下さい。
http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_kaigiroku.htm

[新聞報道]
北海道新聞
産経

国立大学法人法・意見広告の会、特集「国立大学法人の役員出向」
特集「国立大学法人の役員出向」、04年度05年度の国立大学法人における出向役員(理事)の状況
特集「国立大学法人の役員出向 第2回」、「役員出向」制度による国立大学法人理事の使い回し
特集「国立大学法人の役員出向 第3回」「役員出向」制度による国立大学法人理事の使い回し その2
特集「国立大学法人の役員出向 第4回(特集最終回)」 「役員出向」制度による国立大学法人理事の使い回し その3
国大法人出向理事・事務局長体制の詳細(2004~2005年)

衆議院文部科学委員会(平成18年3月10日 金曜日)164回第5号、民主党・山口壯議員の質問
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009616420060310005.htmより

○山口(壯)委員 政治は結果責任だと言います。現実に、小泉内閣ができてから順番にこの五年間を見たらずっと減っているわけです。そういう意味では、義務教育費の国庫負担が二分の一から三分の一に減る中で、これも国が教育にどういう意気込みを持っているかということになるから私は聞いているわけです。しっかりやってください。

 さあ、きょうの本題に入りましょう。資料を配ってください。皆さん行き渡りましたか。

 これは、私も本会議で、もう三年前になるかな、反対させてもらった国立大学の独立行政法人化にまつわる資料です。あのときも、私は、独立行政法人化と言っているけれども、独立じゃなくて、結局文部科学省の意図がすごく反映されてしまうんじゃないのかと。そしてまた大学について、あのときも言いましたけれども、例えば基礎研究、もうからないものは出しにくくなる、独立行政法人、もうからないものは成り立たなくなる、官から民へというのが入ってくるから本当にいいのかと。あのときも言いました、ノーベル賞をとった今までの人たち、これは決して一つの尺度でしかないけれども、残念ながらみんな国立大学なんだと。そういう意味では、基礎研究がしっかりしている日本から、もうかるものしかやらない日本に、薄っぺらくなってしまうんじゃないのかということが一つ。もう一つは、文部科学省の人事について質問しました。当時、河村副大臣とか遠山大臣がいろいろ答えられたわけですね。独立行政法人化というのは大学の自律性、自主性を高めるものだから、こういうことを言われていました。

 国立大学法人法の十三条、「理事は、」「学長が任命する。」となっている。そして十六条は、「政府又は地方公共団体の職員は、役員となることができない。」と。もちろんこれは、一回やめた格好をとってなるという役員出向の形があるわけですけれども、これはまさに偽装じゃないですか。官から民へとはこのことですか。冗談じゃないでしょう。

 順番に見ていきましょう、一つずつ。

 今お配りしているこの山形大学の池田大祐さん、四年の四月から十二月まで九カ月しかいないんです。この方はこの後、東京工大事務局長になられたと思いますけれども、そうですか。

○玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 今、山形大学の理事についての御指摘でございますが、これは、国立大学の職員から、十六年四月に国立大学法人の職員に、委員御案内のとおり、法律をもって、国立大学法人法の規定をもって身分が変わってきたわけでございまして、そういう意味で、山形大学の理事としては確かに十六年の四月から始まっておりますけれども、その前、十四年の四月からこの山形大学の職員は事務局長として就任し、その間、十六年の四月に身分が切りかわっていった。そして御指摘のとおり、十六年の十二月三十一日でそこからかわって、現在は東京工業大学の事務局長になった、こういう経緯でございます。

○山口(壯)委員 山形大学に行く前はどちらにおられましたか。

○玉井政府参考人 今すぐ調べますけれども、委員からの資料要求に沿って山形大学を調べたものですから、山形大学の場合だけを、ちょっと手元に資料がありますので今申し上げたわけであります。

○山口(壯)委員 文部科学省から行かれたということですか。

○玉井政府参考人 お答え申し上げます。

 この者が直接文部科学省から山形大学に行ったのか、あるいはほかのところから行ったのか、今ちょっと手元に資料がございませんのでお答えをしかねるわけでございますが、ただ一つ御理解賜りたいのは、法人化の前は、国立大学の職員は文部科学省の職員であり、文部科学省の組織の一つという位置づけでございます。そういう上で人事異動が行われていたということは御理解を賜りたいと思います。

○山口(壯)委員 文部科学省から行っているわけですね。事務方、ちょっと待って。このリストについて全部聞いていくから。どこから行ったか、ちゃんと今、調べておいてくださいよ。そして、東京工大事務局長として行っている。

 千葉大学、佐藤政夫さん。この方は、事務局長からこうなっている。それは官房長、言われるとおりだ。その前はどこから来たのか。そしてその後、どこに行ったか、お答えください。

○玉井政府参考人 今の千葉大学の御指摘は、東京水産大学から千葉大学に行ったというふうに承知をしております。(山口(壯)委員「その前」と呼ぶ)東京水産大学の前でございますか。

 多くの職員は、事務局長等は、大学で採用をされ、そしてその中から文部科学省本省、いずれにしても文部科学省の職員でございますから、文部科学省の本省に来ていろいろ経験を積み、また国立大学の職員としても活躍してきている、こういう経緯があるわけでございます。

○山口(壯)委員 佐藤政夫さんは、あずさ監査法人の顧問にこの後なっておられるわけです。事務局長から上がったからという今の理屈だったけれども、三カ月だけ理事をやって、その後あずさ監査法人に行っている。そして、その後に来たのが山根さん。申しわけない、私は全部調べているんです。山根さんは文部科学省のスポーツ・青少年局企画・体育課長だったんです。いいですか。


○玉井政府参考人 お答え申し上げます。

 今の千葉大学の理事の山根は、先ほど委員がおっしゃったとおり文部科学省のスポーツ・青少年局から行っているわけでございます。

 ただ、一つ御理解いただきたいのは、法人化の法案のときにも御答弁をずっと申し上げておりますけれども、大学法人の職員につきましては、各学長がみずからの考え方に基づいて幅広い分野から選考し任命を行うという権限関係になっており、そして学長から要請があれば、私どもとしては適材適所の観点からその要請におこたえをしているということでございます。

○山口(壯)委員 官房長、今から私は奈良教育大学の例を言いますから、よく聞いてください。

 これは平成十七年一月二十六日の役員会です。議事について、「理事(総務)の辞任について」ということで、「議長から、二月一日付け文部科学省の人事異動により、金田総務担当理事・事務局長が一橋大学事務局長に異動、」何だ、これはと。この奈良教育大学金田正男さん、余り官房長、いいかげんなことを言われるから、私ちょっと先にこっちに行きますよ。奈良教育大学の金田正男さんの異動については、文部科学省の人事異動により、一橋大学事務局長に異動、何なんだ、これはと。言っていることが全然違うじゃないですか。希望があるからじゃない、その後こうなっているんですよ。

 「後任には国立乗鞍青年の家所長の堀江克則氏が事務局長として着任する予定であると説明があった。 続いて、学長から人事異動の経緯について説明があり、法人の役員の任期は二年となっており中期目標等年度計画の当初であるが、手続き上、当該理事から辞任の申し出を受けることとなり、役員理事・事務局長の人事異動を承認したと説明があった。 また、本来であれば理事規則第四条に基づき、二月一日付を以て直ちに理事を選考すべきところ、学長の判断としてやむを得ずしばらくの間空席とし、大学運営を行っていく考えであり、次回役員会において議題で審議を願う予定だ」と。

 要するに、これは学長としては願っていなかった。ところが、「文部科学省の人事異動により、」、こう書いてあるんだけれども、それによって一橋大学の事務局長に行った、こういう話がある。だから、学長が決めているというのはあくまで詭弁、偽装、実際には文部科学省の意向が非常に働いている、そこなんです。

 順番に行きましょう、もう一回。

 その次の東京医科歯科大学の川本幸彦さん。この方は、兵庫教育大学の方から来て、そしてその後、兵庫教育大学の副学長になられて、後任には入江さん、大分大学の方が来た。この川本さんと入江さんは、文部科学省の方ですか。

○玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 途中の異動もございますけれども、基本的には文部科学省に勤務したことがある職員でございます。

○山口(壯)委員 福井大学の飯田和郎さんは、事務局長から理事になられて、ほんの一年一カ月いて、前の川本さんなんというのは九カ月ですからね、そして、この後どちらに行かれましたか。

○玉井政府参考人 お答え申し上げます。

 福井大学の者は、その後、ユネスコ・アジア文化センターに行っております。

 なお、先ほど申しました東京医科歯科の川本は九カ月とおっしゃいますけれども、これは兵庫教育大学からの大変強い要請がございまして、ぜひということがあったので、大変短うございましたけれども、東京医科歯科大学の方も御理解をなさって、また再び兵庫教育大学の方に行かれたわけであります。

○山口(壯)委員 その取り次ぎはだれがしたんですか。

○玉井政府参考人 法人化になった後の人事は、各学長の責任と権限のもとに、要請に応じてやっているわけでございまして、そしてそのときは、直接本人に要請したり、あるいは文部科学省に推薦をしてくれという、いろいろな中から、最終的にはルールにのっとってやっているわけでございます。

 そして、今の御指摘の東京医科歯科大学の場合には、本人に対して学長から直接の要請があったというふうに承知をしております。

○山口(壯)委員 文部科学省として取り次いだわけですね。最後に、本人からあいさつは当然ありますよ、それは人間の社会ですから。そんな黙って、文部科学省に言われたから来ましたとある日あらわれるわけがない。大人の答弁を私は期待しています。

 この京都大学、本間政雄さんは、文部科学省から行かれましたね。この京都大学の本間さんは、二〇〇四年三月に文部科学省を退職という格好でとられて、その後行かれましたね。

○玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 京都大学の者は、これは確かに文部科学省から行きましたけれども、それはたしか退職ではなくて出向という形であったと思いますが。

○山口(壯)委員 余り余計なことを言わない方がいい。退職という形をとって役員出向ということが起こっているから今問題にしているんです。退職じゃなくて出向って、そんな詭弁だの偽装だのは使わない方がいい。実態を今明らかにしてほしい。

 そして、この本間政雄さんは、この後どちらに行かれましたか。

○玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 京都大学の本間政雄は、十七年九月三十日まででございましたけれども、その後は大学評価・学位授与機構の方に行っております。

 私は、御質問があったことについてそれぞれお答えをしているつもりでございます。

○山口(壯)委員 私は、質問に余り余計な答えは要らないと言ったんです。端的に答えていただいたら、それでいいんです、官房長。

 そして、この大学評価・学位授与機構国際連携センターのセンター長兼教授として行っておられるんです。これは文部科学省の関係のところだと私は思います。

 そして、その本間さんの後任の方、何て方がどこから来ましたか。

○玉井政府参考人 文部科学省から木谷という者が理事として行っております。

○山口(壯)委員 そうです。文部科学省の大臣官房審議官木谷雅人さんが行っておられるんです。文部科学省の役人が行っているんです。もうずっと続いているんです。しかも、期間が、この京都大学のおじさん、これは一年六カ月おられたのはいい方ですよ、半年、一年とぽんぽこぽんぽこかわっている。本当にこれは大丈夫なのか。文部科学省は、自分のローテーションで人事を、独立行政法人を使っちゃいけない。独立しているんでしょう。それまでは学生部長とか事務局長だったのが、今回、理事で行っているんです、役員で行っているんです。こういうのを焼け太りという。独立行政法人なのか従属行政法人なのかがわからない。

 この大阪教育大学の中岡司さんは、どこから来られて、どこに行かれましたか。

○玉井政府参考人 お答え申し上げます。

 大阪教育大学の者は、御指摘の者は、文部科学省から行って、そしてまた今文部科学省の職員として勤務をしております。

○山口(壯)委員 そうです。文部科学省のスポーツ・青少年局学校健康教育課長でよかったですね。私は間違ったことを言いたくないから、こうやって確認しているんですよ。自分が一生懸命調べたんだけれども、間違ったと言われると後でつらいから、それで一生懸命確認しているんです、事前にこうやってお伝えして。それで、細かいことは、確かに官房長、お答えしにくいでしょう。だから、私が今申し上げていますから、万が一これで間違っていたら、また後で教えてください。それは議事録を訂正させてもらいます。

 それで、文部科学省の、今度は高等教育局大学振興課長に、中岡司さんはその後帰っていっているんです。その間、大阪教育大学におられたのは一年と四カ月か、これはいい方なんですよ、半年、一年以上いるから。ほかの例をちょっとずっと見ていただいたらわかりますけれどもね。官房長、これは余り首を振らない方がいいんです。官から民へでいいんです。

 そして、大阪教育大学の後、香川大学の桐岡さんという人は、期間としては一年半で、まあまあ三角なんですけれども、この方はちょっと私の今のポイントしているところと当てはまらないかもしれないんです。ちょっとここは省略しておきましょう。だけれども、その次に行っている遠藤克司さんという人は、やはり文部科学省の方から来ておられるんですね。

 それで、神戸大学の阪内さん、この方は一年とちょっといただけだけれども、この後どちらに行かれましたか。

○玉井政府参考人 お答えを申し上げます。

 神戸大学の者は、これは福島から行っております。

 それで、先ほど来御説明しておりますけれども、突然ではなくて、期間が短いという御指摘でございますが、それは、もともと国立大学の事務局長であったあるいは副学長であった者が、そのまま法人化によって、その当時、身分が切りかわってきたわけでございます。したがって、短いという御指摘ではございますけれども、例えば、京都大学の者でございましたら、平成十三年一月から行っているわけでございまして、これは四年九カ月ということでございますし、多くの者はやはり二年程度は行っているわけでございます。そこはひとつ正確に見ていただければと思っております。

○山口(壯)委員 官房長、ということは、この後に行かれた方々については、そういう期間を考えておられるということですか。

○玉井政府参考人 法人化したわけでございますから、人事はそれぞれの大学の学長のそれぞれの人事戦略といいますか、人事構想によって、各大学のそれぞれが考えられるわけでございまして、私どもは各大学の学長と御相談を申し上げながら、その要請に応じて、今、必要があれば、適材適所の観点からシフトを、文部科学省の職員は国立大学の法人の職員になることもあれば、逆に国立大学の法人の職員からまた文部科学省の職員になる者もあるということでございます。

○山口(壯)委員 官房長は注意深く、ひっかからなかったけれども、独立行政法人ということだから、それは建前は貫かれている。しかし、現実にその意向が反映されているというのは、先ほどの奈良教育大学の例でも、余りにも一目瞭然というやつです。

 ちなみに、二年間の間に、例えば二つ大学の理事を務められている方もいるんです。これはずっとやっていると時間がなくなっちゃうから。和歌山大学におられた坂本邦夫さん、この方は、この後神戸大学の理事になっているんです。一年ちょっとの間、坂本邦夫さんは、その間一年二カ月、三カ月理事として、それまでは事務局長、それから理事だから同じじゃないか、これは文部科学省の意向でしょう。

 それは独立行政法人ということで、運営、管理、マネジメントのできる人ということで見つけてきたわけですから、それは全く役割は本来は違うんです。だけれども、それは文部科学省が便宜上そう言っているんです。そこで一たん切って、四年の四月からは本来独立行政法人として独立するんだから、文部科学省から行かせた者はみんな引き揚げます。これが本来の姿ですよ。だけれども、前からいたから、そんなにちょっとしかいたわけじゃないんだぞというのは、これは詭弁でしょう。

 この坂本邦夫さんという人は、二年の間に二カ所、和歌山大学と神戸大学の理事をされたという理解でよろしいですか。

○玉井政府参考人 和歌山大学の者につきましては、そもそも十五年の一月に和歌山大学に行っておりまして、そこから二年二カ月後に神戸大学に行っているわけでございます。

 これは法人法のときにもずっと御答弁は申し上げているわけですし、またその後も御答弁申し上げておりますけれども、別に職員だけではなくて、当時の大学の副学長等も含めて、現にいる方々、つまり副学長や学長補佐、事務局長など、そういう学長を支えて大学運営を担ってきた、そういう方々がまず身分が切りかわり、かつまた法人化でございますので、各大学はみずからの人事戦略という中から、さらに経済界やあるいは私学関係者、あるいは高度専門職員など、幅広い分野から人材を得ようという努力をされているわけであります。

○山口(壯)委員 それなら、官房長、この一橋大学のさっきのおじさん、金田正男さん、奈良教育大学の。文部科学省の人事異動によりかわって、しかも学長はその間、急な話だから大変だと。普通だったら、学長の意向だったら後任は決めているものなんですよ、だって補佐してもらわなきゃいけないんだから。だけれども、文部科学省の意向で一橋大学の事務局長に行くから、その後を決められずに学長が、先ほどの報告になるわけです。

 私は何も別に奇妙きてれつなことを言っているつもりじゃありません。世の中は普通はそうですよ。補佐となっている理事さんが、これは二人しかいないんでしょう、理事さんがかわる以上は、その後任を先に決めているというのが普通の姿でしょう。それをその間、この方の後、時間がかかったんだから、それはやはり文部科学省の人事異動のローテーションの中でやっているからそうなってしまうんです。ほかにも、ずっとこれは同じなんです。

 大臣、今私はずっと申し上げました、エビデンスをすべて明らかにしようと。これは一部だけです。私が調べたのは理事さんについて一部だけです。国立大学全部について、四年四月から今の時点まで、どこから来てどこに行ったか、これを全部明らかにするともっともっと図柄がはっきりする。でも、一部だけれども、官から民へ、独立行政法人だ、自由と自主性を重んじようと。大臣、そういう中で、この動きはどうお感じですか。

○小坂国務大臣 山口委員のおっしゃりたいところ、すなわち、役人がわたりであちこち行って、そして税金の無駄遣いが起こっている。こういうことがもしあるとすれば、それは私も直していかにゃいかぬと思うし、そういう点においては与党も野党もありません。我々政治家は、今日的課題としてのそういった問題に一緒になって取り組んでいるわけですよね。ただ、残念ながら、私がちょっと勘が鈍いのか理解が不足しているのか、山口委員が今御指摘をされましたその問題について、どうも問題の視点が、私はちょっと理解できないところがある。

 例えば、山口委員は今、四年の四月から国立大学が独立行政法人化された、そのときには本来そこにいた人間は文部省へ全部帰るべきだ、こうおっしゃった。本当にそういうことが本来の姿なんでしょうか。(山口(壯)委員「それは逆だ、私が言っているのと」と呼ぶ)いや、さっきそうおっしゃいました。間違いなくそうおっしゃったんですが、その本来の姿とおっしゃる全部帰ることは、国立大学が独立行政法人化されたときに安定性を欠くということにもなります、継続性がなくなってしまうわけですから。

 そういう意味では、それは従来いた人間が、法人化に当たって、法人化というものの趣旨を踏まえて、すなわち、官から民へということよりも、この独立行政法人化の意図したところというのは、より効率的な運営をすることということで、国の機関として、すべての人事その他においても、これは文部科学省の職員として人事が行われるのではなくて、今後は大学が、独立法人としての独立した意思を持ってそういうものにも取り組めるような枠組みをつくるということに主眼があったものですから、そのときに全部入れかわってしまうということが本来の姿ではなくて、順次そういったことが行われながら、そういった趣旨を体せるような方向づけをしていくということが当初の考え方であった。

 それを担保するといいますか、そういった意味での附帯決議が衆議院、参議院でありましたよね。参議院における附帯決議として、「役員等については、大学の教育研究や運営に高い識見を有し、当該大学の発展に貢献し得る者を選任するとともに、選任理由等を公表すること。また、政府や他法人からの役員の選任については、その必要性を十分に勘案し、大学の自主性・自律性を阻害すると批判されることのないよう、節度を持って対応すること。監事の任命に当たっては、大学の意向を反映するように配慮すること。」また、衆議院においては、「役員等については、大学の教育研究や運営に高い識見を有し、当該大学の発展に貢献し得る者を選任するよう努めること。」

 すなわち、そういった意味では、これは別に文部科学省で経験を積んだ人間ではなくてももちろんいいわけでございますから、そういった方向の人選というものは今後行われてまいりますし、そういった者を排除もしていなかったと思いますが、しかし、それまでに国立大学が今日的評価をちゃんと得てこられたのは、そういった一つの今までの人事ローテーションはそれなりに貢献をしていたということもあるわけでございますから、そういった観点から、四年の四月にこれまでの人事を改定すべきかどうかという御議論も踏まえて検討が行われ、その後の人事異動というものが行われていると理解をしているわけでございます。

○山口(壯)委員 今、私は文部科学省に、四年の四月の時点でけじめをつけて本来だったら帰るべきだ、これは確かに言いました。私がそんなこと言っていないよと言った趣旨は、こういう理事が終わったらみんな文部科学省に行くべきだと言っているものだととられたんじゃないかと思って、そうじゃないと。むしろけじめをつけて、例えば、今役員出向でたくさんの人が行っておられるわけですけれども、そういう方々が、例えば理事を退任して文部科学省に戻るか、あるいは役員出向を中止して、もう国家公務員を完全に、実質的にも退職して、国立大学法人の経営に理事として専念する、どっちかを、けじめをつけるべきだという趣旨で私は申し上げたんです。

 これに対して、今大臣から、私は理解していると思いますけれども、例えば、文部科学省の役人が行ったから効率的な運営ができたという趣旨で言われたんではないですね。

○小坂国務大臣 御指摘のとおり、私はそういう意味で申し上げたわけじゃございませんで、ただ、文部科学省の中に求められる人材がいれば、それに協力をして出すということは当然行われることであろうと思いますし、それが独法としての大学の新しい姿だ、そう思うわけでございます。その人事権限はその独法の長にあるということでございますから、学長の自主性を生かせば、求められる人材を派遣することは否定するべきものじゃないと思っております。

○山口(壯)委員 役人を私もやっていましたから、よくわかります。もう一回本省に戻ることを想定した場合に、独立ではなくて、どういうふうに覚えがめでたいかということは、人間ですから気にならないわけがない。そこが一番問題なんです。

 そういう意味では、今までは、最初の出だしだから今までどおりきっちり面倒見てやろう、それは私も全部今やめろとは言いません、確かにそういう面はあったでしょう。しかし、これからそういうことを改めようという趣旨で大臣はお考えですか。

○小坂国務大臣 私の理解が間違えていたら事務方からちょっと訂正してほしいんですけれども、独立行政法人としての大学に、出向するということは基本的にはなくて、学長等の役員で就任をする場合には、公務員を退職して就任するというふうに思っておりますが、違いますか。(山口(壯)委員「いや、それはもう聞いていません、大丈夫です」と呼ぶ)いや、それは御指摘の部分じゃないんですか。

 要するに、もとへ戻るとかなんとかという話ですが、私は、独法の学長とか副学長とか行くときは公務員を退職して行くんだという認識なんですが、間違いですか、これ。

○遠藤委員長 ちょっと事務方答えて。

 ちょっと事務方に補足させます。玉井官房長。

○玉井政府参考人 独立行政法人の役員に出向する場合に、退職しない、すなわち退職というのは、平たい意味じゃなくて、退職金を支払って行くという形ではなくて、また各省庁に戻る、そのときは退職金を通算する、その期間を通算するという形の役員出向は法律をもって認められておりますので、これは、別に国立大学法人だけではなくて、他の法人も含めて、それぞれの人材の適材適所、組織の活性化の観点からこういうことも行われているわけであります。

○山口(壯)委員 今官房長がおっしゃっていることは私はよくわかるんです。退職金の二重取りにならないようにということで、一度退職という形をとって、そして国立大学の理事になり、帰ってきたときに、国立大学にいた分とそれから役所の通算の二重取りにならないように、一回一回けじめつけて行っている、これは公務員制度大綱で。

 だから、今官房長、ちょっと気になったのは、法律で認められているからこれからもやりますというふうに私には聞こえました。そうじゃないということを大臣、お答えください。

○小坂国務大臣 官房長の説明、私も聞いておるところは、要するに、国立大学から独立行政法人に切りかわったときには身分が切りかわるので退職扱いになる、こう聞いておったわけでございますが、今の話を聞いていると、私の理解がちょっと悪いのかもしれませんが、身分停止であって退職ではないというようにも聞こえるんですよね。身分停止と退職は違うと思いますので、私もその辺はもう一度正確に把握をしたいと思いますが、今御指摘のところは、すなわち、そういった形でわたりのように行ったり来たり、その人事が文部科学省の采配によって行われるようなことを今後とも継続することはないようにしろ、こういう趣旨じゃないでしょうか。そうであれば、私は、全くそのとおり、そう思っております。

○山口(壯)委員 いや、小坂大臣、本当に名答弁です。ありがとうございます。

 そして、当時、参議院の同僚議員の佐藤泰介議員から「現役の官僚が本省と国立大学法人の役員ポストを行き来するようではどうしても文部科学省の方を見てしまう、」これに対して遠山大臣、私も遠山さんとはばちばちバトルをやったんですけれども、このときの遠山さんはどう答えておられるかというと、大学の自主性、自律性についても配慮をしていきたいということ。その別のときに、河村当時副大臣は「文部科学省が学長の意に反して理事を割り振るというようなことは全くあり得ない」、こう言っておられるわけです。これはあるべき姿。

 しかし、今の奈良教育大学の話というのは、これをきっちり反転してしまうような話なんです。だから私は今こうやって一生懸命問題提起をしているんです。官房長、いいです。官房長の立場もよくわかるしね、それはよくわかっている。わかっているけれども、あるべき姿に持っていきたいから私はこうやってきつい議論をさせてもらっているんです。そして、今小坂大臣から言われたことの重みというのは大きいですよ。それはあるべき姿なんです、国民が納得する方向ですから。

 文部科学省からだれも行くなとは私は言っていません。しかし、たくさんある元国立大学、そこに一体今どれだけ行っているか、これは、委員長、資料提出を私は要求したいと思います。全部の元国立大学について、四年の四月から現在に至るまで、どこから来られた方で、どこに行かれたか、それを全部明らかにして提出をしてください。

○遠藤委員長 その件は、理事会において検討いたします。

○山口(壯)委員 よろしくお願いします。

 私は、質問主意書にしようかどうか迷ったけれども、質問主意書だとまた役所の人が大変だなと思うので、これは委員会提出ということにします。でも、きっちりつくってください。それが全貌はどうかということの把握につながるわけです。

 大臣、もしも何かあればどうぞ。

○小坂国務大臣 今、遠山大臣また河村当時副大臣がおっしゃったことと今私が申し上げたことは、一致しているわけですよね。すなわち、独立行政法人になった後に、大学の意向を無視して文部科学省が人事において介入をして押しつけ人事を行うようなことはない、こういうことが言われ、そして私もそれを今、同じことを申し上げました。

 求められる人事は当然行いますよ、今も、それは先ほど申し上げたとおりでありましてね。大学法人の方から、こういう人材を派遣してほしい、そういう人材が全体的に見れば知見の多い文部科学省にいるので、それを派遣してくれということは今後ともあるし。

 それから、先ほどおっしゃった奈良の例も、それは当時の、先ほど読み上げられた文章、余りに速く読み上げられたので私も的確にはちょっと把握できなかったけれども、しかし、その中で私の受けた印象は、その時点で直ちに後任を選べるかといえば、なかなか選べないという状況にあったということをあの学長は申し上げただけで、その後押し込みをされたということは学長は思ってはいないし、むしろ、その後、こういう人材がいるがどうかと言われたことに対して、学長が求めて就任をしたというのが当時の事情じゃないかと、私は先ほど委員が読み上げられた文章の印象として持ちましたが、いかがでしょうか。

○山口(壯)委員 小坂大臣も、お父上のときから私は遠くからかいま見て、御立派な政治家の家系だなと思っています。そういう意味では、余り役人にだまされることなく、政治家として見識を持ってやっていただければと思う次第です。

 そして、退職をしてから役員出向するという、偽装みたいなものです、平たい言葉で言ったら、別に偽装と決めつけないけれども。でも、そういう形をとって、公務員という立場を法律に書いてあるから一たん切って、そして役員出向という格好で行っているわけです。だから退職じゃなくて出向、それは言葉の遊びみたいなものです。実質はどうかと見抜くのが政治家ですから、形を整えるのが役人ですから。

 そういう意味では、小坂大臣、名ステーツマンとして、先ほどの答弁は非常に本質を得たと私は思っています、あの答弁でもってぜひこれからの国立大学法人を見ていってほしいと思います。

 終わります。


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