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2005年06月10日

最高裁、研修医を「労働者」と初判断 関西医大の未払い賃金訴訟判決文

最高裁判所サイト(平成17年06月03日判決)

判例 平成17年06月03日 第二小法廷判決
平成14年(受)第1250号 未払賃金請求事件
要旨:学校法人が開設する私立大学附属病院において臨床研修を受けていた医師が労働基準法及び最低賃金法上の労働者に当たるとされた事例

内容:件名 未払賃金請求事件 (最高裁判所 平成14年(受)第1250号 平成17年06月03日 第二小法廷判決 棄却)
 原審 大阪高等裁判所 (平成13年(ネ)第3214号、平成14年(ネ)第107号)

主    文

本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理    由

 上告代理人池上健治ほかの上告受理申立て理由について
 1 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
 (1) 上告人は,関西医科大学附属病院(以下「本件病院」という。)を開設している学校法人である。
 (2) 亡A(以下「A」という。)と被上告人X1との間の子であるB(以下「B」という。)は,平成10年4月16日に医師国家試験に合格し,同年5月20日に厚生大臣の免許を受けた医師である。Bは,同年6月1日から本件病院の耳鼻咽喉科において臨床研修を受けていたが,同年8月16日に死亡した。
 (3) 本件病院の耳鼻咽喉科における臨床研修のプログラムは,2年間の研修期間を2期に分け,① 第1期(1年間)は,外来診療において,病歴の聴取,症状の観察,検査及び診断の実施並びに処置及び小手術の施行を経験し,技術の習得及び能力の修得を目指すほか,入院患者の主治医を務めることを通じて,耳鼻咽喉科の診療の基本的な知識及び技術を学ぶとともに,医師としての必要な態度を修得する,② 第2期(1年間)は,関連病院において更に高いレベルの研修を行う,というものであった。
 (4) 平成10年6月1日から同年8月15日までの間にBが受けていた臨床研修の概要は,次のとおりであった。
 ア 午前7時30分ころから入院患者の採血を行い,午前8時30分ころから入院患者に対する点滴を行う。
 イ 午前9時から午後1時30分ないし午後2時まで,一般外来患者の検査の予約,採血の指示を行って,診察を補助する。問診や点滴を行い,処方せんの作成を行うほか,検査等を見学する。
 ウ 午後は,専門外来患者の診察を見学するとともに,一般外来の場合と同様に,診察を補助する。火曜日及び水曜日には,手術を見学することもある。
 エ 午後4時30分ころから午後6時ころまで,カルテを見たり,文献を読んだりして,自己研修を行う。
 オ 午後6時30分ころから入院患者に対する点滴を行う。
 カ 午後7時以降は,入院患者に対する処置を補助することがある。指導医が不在の場合や,指導医の許可がある場合には,単独で処置を行うこともある。
 キ 指導医が当直をする場合には,翌朝まで本件病院内で待機し,副直をする。
 (5) Bは,本件病院の休診日等を除き,原則的に,午前7時30分から午後10時まで,本件病院内において,指導医の指示に従って,上記のような臨床研修に従事すべきこととされていた。
 (6) 上告人は,Bの臨床研修期間中,Bに対して奨学金として月額6万円の金員及び1回当たり1万円の副直手当(以下「奨学金等」という。)を支払っていた。上告人は,これらの金員につき所得税法28条1項所定の給与等に当たるものとして源泉徴収を行っていた。
 (7) Aは,平成17年1月5日に死亡し,被上告人X1及びAと被上告人X1との間の子である被上告人X2がこれを相続した。
 2 本件は,被上告人らが,Bは労働基準法(平成10年法律第112号による改正前のもの。以下同じ。)9条所定の労働者であり,最低賃金法(平成10年法律第112号による改正前のもの。以下同じ。)2条所定の労働者に該当するのに,上告人はBに対して奨学金等として最低賃金額に達しない金員しか支払っていなかったとして,上告人に対し,最低賃金額と上告人がBに対して支払っていた奨学金等との差額に相当する賃金の支払を求める事案である。
 3 研修医は,医師国家試験に合格し,医籍に登録されて,厚生大臣の免許を受けた医師であって(医師法(平成11年法律第160号による改正前のもの。以下同じ。)2条,5条),医療行為を業として行う資格を有しているものである(同法17条)ところ,同法16条の2第1項は,医師は,免許を受けた後も,2年以上大学の医学部若しくは大学附置の研究所の附属施設である病院又は厚生大臣の指定する病院において,臨床研修を行うように努めるものとすると定めている。この臨床研修は,医師の資質の向上を図ることを目的とするものであり,教育的な側面を有しているが,そのプログラムに従い,臨床研修指導医の指導の下に,研修医が医療行為等に従事することを予定している。そして,研修医がこのようにして医療行為等に従事する場合には,これらの行為等は病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有することとなるのであり,病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り,上記研修医は労働基準法9条所定の労働者に当たるものというべきである。
 これを本件についてみると,前記事実関係によれば,本件病院の耳鼻咽喉科における臨床研修のプログラムは,研修医が医療行為等に従事することを予定しており,Bは,本件病院の休診日等を除き,上告人が定めた時間及び場所において,指導医の指示に従って,上告人が本件病院の患者に対して提供する医療行為等に従事していたというのであり,これに加えて,上告人は,Bに対して奨学金等として金員を支払い,これらの金員につき給与等に当たるものとして源泉徴収まで行っていたというのである。
 そうすると,Bは,上告人の指揮監督の下で労務の提供をしたものとして労働基準法9条所定の労働者に当たり,最低賃金法2条所定の労働者に当たるというべきであるから,上告人は,同法5条2項により,Bに対し,最低賃金と同額の賃金を支払うべき義務を負っていたものというべきである。
 これと同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく,論旨は採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 福田 博 裁判官 滝井繁男 裁判官 津野 修 裁判官 今井 功 裁判官 中川了滋)

[同ニュース]
研修医「労働者」と初判断/最高裁「労務の提供ある」(労働政策研究・研修機構、ニュース)
「研修医は労働者」、最高裁が初判断(日本経済新聞6/03)
研修医訴訟:「労働者に該当」最高裁が初判断(毎日新聞6/03)
研修医は労働者、最高裁が初認定…賃金請求訴訟(読売新聞6/03)
「研修医は労働者」最高裁も認定 関西医大に賠償命じる(朝日新聞6/03)

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2004年11月26日

首相靖国参拝は『公的』 千葉地裁判決

東京新聞(11/25)

 小泉純一郎首相の靖国神社参拝は政教分離や信教の自由を定めた憲法に違反し、精神的苦痛を受けたなどとして、千葉県内の戦没者遺族、宗教者ら六十三人が首相と国に計六百三十万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が二十五日、千葉地裁であった。安藤裕子裁判長は「首相の参拝は、職務行為」とした上で、憲法判断を回避して原告の請求を棄却した。原告側は控訴する方針。 

■賠償請求退ける

 判決理由で安藤裁判長は、小泉首相が公用車で秘書官らを同行して参拝したり、献花の際に「内閣総理大臣」の肩書を付けたりしたことに言及。「客観的、外形的に総理大臣の職務行為に該当しないことが明らかになるよう配慮した跡がうかがえず、職務行為に当たるが、原告への権利侵害はない」と述べた。

 小泉首相の靖国参拝をめぐる訴訟は六地裁で起こされ、判決はこれが五件目。

 今年四月七日の福岡地裁判決が初の違憲判断を示し、五月十三日の大阪地裁判決が憲法判断を避けるなど、司法判断が分かれていた。

 中国の胡錦濤国家主席が先の日中首脳会談で首相を強く批判するなど、靖国参拝は日中間の懸案になっているが、司法が憲法判断の回避を続けたことで、参拝をめぐる議論が続きそうだ。

 訴えなどによると、小泉首相は二〇〇一年八月十三日、公用車で秘書官五人を伴い靖国神社を参拝。拝殿で「内閣総理大臣小泉純一郎」と記帳し、玉ぐし料の代わりに「献花料」として私費から三万円を支払った。

 原告側は首相の参拝について「政教分離、思想および良心の自由を定めた憲法に違反する」などと主張。被告側は「私人としての参拝」などと反論していた。

 全国の計六地裁で起こされている同種の訴訟のうち、違憲判断が示された福岡訴訟は、損害賠償請求が棄却されて勝訴した国側が控訴できず、原告側も控訴しなかったため確定している。

 大阪、松山両地裁判決は憲法判断に踏み込まなかった。

 参拝の公私については五月の大阪地裁判決が「私的」とし、福岡と大阪の別の訴訟は、今回の千葉地裁同様「公的」としている。

 那覇、東京の両訴訟は来年に判決が予定されている。


[同ニュース]
首相の靖国参拝は「公的」 千葉地裁(共同通信11/25)
首相の靖国参拝は公的 千葉地裁、賠償請求は棄却(産経新聞11/25)
靖国参拝、首相の職務行為と認定…千葉地裁(読売新聞11/25)
首相の靖国参拝は公的・千葉地裁判決(日本経済新聞11/25)
首相公式参拝と認定 千葉靖国訴訟、原告敗訴(朝日新聞11/25)
靖国参拝訴訟:憲法判断せず、公的参拝と認定 千葉地裁(毎日新聞11/25)
首相靖国参拝は職務行為 千葉地裁判決 憲法判断を回避(中日新聞11/25)
首相の靖国参拝は「公的」 職務行為だが権利侵害なし 千葉地裁(埼玉新聞11/25)
わたしの勝ちですから… 千葉地裁判決で首相(共同通信11/25)
千葉靖国訴訟:小泉首相、公的参拝認定にも「私の勝訴」(毎日新聞11/25)

Posted by 管理者 : 掲載日時 2004年11月26日 00:26 | コメント (0) | トラックバック (0)
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