全国
 カテゴリー 大学教員の評価制度

2005年06月03日

北見工業大学における教員業績評価制度

大学編 サバイバル<85>業績評価に応じ研究費

読売新聞(6/02)

 北見工業大では、任期制とは別に、今年度から新たな教員の業績評価制度を導入している。

 評価項目は、〈1〉教育〈2〉研究〈3〉大学活性化・社会貢献の3群に大別され、それらを総合して各教員ごとの評価が出される。

 各群の内訳は、〈1〉教育=授業負担、学生による授業評価の結果、卒論指導など〈2〉研究=学術論文数、科研費申請、外部資金の導入など〈3〉大学活性化・社会貢献=産学連携、学生支援など。

 それぞれ、大学が定めた目標値や全教員の平均値を目安に、どこまで達成できたかを係数化。一定の数式に当てはめられ、総合評価が出される。

 評価担当副学長の佐々木克孝(60)によると、平均的な仕事をしていれば100点前後になるように設定してあるという。

 今年5月、初めて出された評価結果。トップが250点、下は5点と大きく差がついた。これに基づき、研究費の配分や、勤勉手当の額も決まった。各教員には、最高点と最低点のほか、教育・研究の業績を項目別に表した六角形のレーダーチャートが提示された。

 佐々木は、「自分が全体の中で、どの辺に位置するかや、足りない点を知ることができる。改善の参考にしてもらえれば」と話す。

 ただし、この評価結果で、再任や昇任が左右されることはない。学長の常本秀幸(63)は、「今後は、教員評価と任期制を関連づけ、より分かりやすい制度にしていくのが課題」と話す。


Posted by 管理者 : 掲載日時 2005年06月03日 02:20 | コメント (0) | トラックバック (0)
URL : http://university.main.jp/blog2/archives/2005/06/post_1239.html

2005年06月02日

岡山大学における教員個人評価制度

日本私立学校振興・共済事業団
 ∟●「月報私学」第90号(平成17年6月1日)より

教育条件及び経営に関する情報収集調査報告1
教育活動を重視した教員個人評価

国立大学法人 岡山大学(岡山県)

 私学経営相談センターが実施した教育条件及び経営に関する情報収集調査の中から、今回は岡山大学の「教員個人評価」への取組みを紹介します。岡山大学はこの他にも授業評価、キャリア教育等さまざまな改革への取組みを実施している大学です。

一 制度導入のきっかけ
 教員個人評価の導入は、FD(ファカルティ・ディベロップメント)活動、授業評価の実施が伏線となっている。平成十二年三月に一年半の歳月をかけて「二十一世紀の岡山大学構想」を策定した。そこで二十一世紀を見据えた教育理念の再構築を旗印に改革の方向性を決め、「評価することは大切である。その評価は個人にまでおよぶ」ことを確認した。
 大学は、該当教員に対して「研究に問題があっても学生に直接被害は及ばないが、教育に問題があれば改善を求める必要がある」こととしている。教育の問題は、個人の問題だけではなく、大学の問題であると考えている。教育の充実には、教員個人のレベルアップは欠かせないとし、大学全体で取り組むことを決定した。
 そこで教員個人評価制度導入を検討して、試行期間を経て、平成十六年度より本格的に実施した。

二 制度の策定について
 学長からの指示を受けて、ワーキンググループを結成した。自然科学系・文化科学系・生命科学系から教員代表者を選出して制度の検討を行った。制度策定に際しては、北海道大学、新潟大学、高知工科大学、長崎大学を訪問して情報収集し、また電話等により、広島大学、新潟国際大学、東京理科大学、東海大学、国際基督教大学などの状況を調査した。

三 制度のねらい
 この教員個人評価のねらいは、教育・研究など諸活動の活性化と意識改革、社会への説明責任を果たすこと、大学運営(経営)等の改善のための資料集積を図ることにあり、教員を序列化することが目的ではない。

四 苦労したこと
 制度の目的を教員に理解してもらうのに苦労した。制度の導入に際しては、説明会を開催した。教員評価制度の先進大学から講師を招へいして、シンポジウムも開催した。また本制度に対して、学内外から広く意見を募って参考にした。
 We b入力システム(学内LAN)と個人評価システムのソフトとの相性が悪く、システムがうまく機能しない場合も多く、個々に調整を繰り返した。

五 制度の特徴
 他大学の教員個人評価と比べて、岡山大学の評価は教育分野を前面に出しており、教育の自己評価という色が強い。例えば他大学では「講義は週何コマ担当していますか」などの質問が多いが、岡山大学の質問項目は教育活動の内容に関わる質問に重きを置いている。
 評価領域は四分野に分かれているが、評価は、統一された基準で行うのではなく、個人の得意な分野に重みを置くことが可能となっている。これは、教育機関という特性を考慮して制度を考えたためであり、教員は個人の特徴を活かして、そのスキルアップに努め、得意分野を強く押し出して評価を受けることができる。しかし前述したように、教育活動の軽視は許されない。

六 制度の概要
 教員個人評価は、全教員に実施している。教員は毎年その年度の活動状況を自己申告して「個人評価調査票」をWe b から入力する。入力期間は二ヶ月間ある。
① 評価領域
 教育活動、研究活動、社会貢献活動、管理活動に分類して、それぞれの領域について評価する。各教員は、それぞれの分野に重みを設定することができ、自分の特徴を活かした評価を受けることができる。しかし教育分野に関しては例外であり、「教育活動」は、しっかりと評価されることは言うまでもない。
 評価方法については、事前に部局ごとに評価基準が公表される。
【重みの事例】
(1)自己申告
(2)自己申告を部局の長が調整
(3)各領域許容幅を示して個人が選択
(4)部局の長が提示

② 評価の流れ
 評価は、部局の長が行う。
第一段階
 評価基準に基づいて、各領域を五段階評価する。
50…特に優れている
40…水準を上回っている
30…水準に達している
20…やや問題があり改善の余地がある
10…問題があり改善を要する

第二段階
 部局の長は、各領域の評点に評価に加える重みを乗じて四段階で総合評価を行う。
40以上…優れている
30~39…おおむね適切
20~29…やや問題があり改善の余地がある
20未満…問題があり改善を要する

総合評価(10点~50点)=各領域の評価
(10点~50点)×重み(%)
 〔評価例〕
 教育活動40点×40%=16
 研究活動30点×30%=9
 社会貢献活動20点×20%=4
 管理運営20点×10%=2
 合計31点 総合評価…おおむね適切

③ 評価の実施
 評価は、三年に一度行われる。過去三年度分(ただし研究活動は過去五年分) について評価する。各教員は、毎年作成した個人評価調査票を評価実施年度に評価者に提出する。各教員は、自分の評価について意見のある時は、所属する部局の長に申し出ることができる。

七 評価の活用
 組織的に教育研究の質を高めることが目的である。各教員は、毎年度に作成する個人評価調査票を点検・評価して、自己のスキルアップに繋げる。また評価結果は、実施後に部局の長から当該教員へ通知される。「やや問題があり改善の余地がある」および「問題があり改善を要する」と評価された教員に対しては、活動改善計画書を提出してもらう。

八 今後の課題
①岡山大学の教員評価制度は、「教員の教育分野のスキルアップ+得意分野を伸ばしていく」というものである。今まで教育分野の意識が低かった教員も、教育分野に関心を傾けざるを得ないようになる。
②処遇への反映を来年度から予定している。評価の良い教員には、昇給やサバティカル制度等の適用を考えている。問題ありの教員には、改善してもらえるような方向にもっていくことが必要である。例えば、一回目の評価時ではイエローカードを提示して、二回目の評価でも改善が見られない場合は、何かしらの処置をとるという制度にする。
③現在は実施していないが、評価者(部局の長)のチェック体制の整備も検討している。
④個人評価システムが完成したとは考えていない。今後、更にシステムの充実・改善を図っていく。また、予算枠の確保が重要な問題となっている。
⑤事務職員の評価制度も検討され、試行を行っている。

九 岡山大学の取組みについての所感
 とにかく教育改革について熱心というのが第一印象である。制度導入に関しては、学長の強いリーダーシップがある。その影響で、命令を受けた部下も業務が遂行しやすい状況になっている印象を受けた。
 最初から全てのコンセンサスを取っているわけではない。岡山大学の特徴として、目標が定まったら、大筋を決めて、とにかく走り出す。詳細は、走りながら決めていくというスタイルをとっている。このスタイルは、制度を策定する教職員がしっかり共有している。どうしても反対意見は出るものであるが、そういう場合は、反対の当事者を探し出してメンバーに加えて、制度策定の戦力にすることもある。理論のしっかりした的を射た反対意見であれば、それは貴重なものであり、しっかり聞いて見直していく必要がある。そうすることで、少なくとも外部で不平不満を漏らすことはなくなっていく。一度走り出したら、制度完成まで走りを止めないという熱意が伝わってきた。
 どんな制度を考える際も、学生の立場に立ってものを考えるということが身に付いている。また実際に、学生を取り込んでの改革を実行している。教育の大切さを教員に浸透させつつあり、その方向で制度を作っていることは、他大学も見習うべき点である。
 トップからの指示もあり、やりたいことがはっきりしていて、とにかくやってみる。次々と新しい取組みを打ち出しているが、改革を進めていく教職員の協力がしっかりしていることが強みである。
 岡山大学の例に倣って全国の国公立大学が本腰を入れて、このような学生の視点に立った教育改革を行い、特色を出して、実績を積み上げていくならば、私立大学にとって脅威となる。まだ制度的には、走り出したばかりである。これから実績を積み上げて、どのように教育改革がなされるかを期待するとともに、その教育を通して、どんな付加価値を付けた学生を社会に輩出していくかが注目される。


Posted by 管理者 : 掲載日時 2005年06月02日 00:19 | コメント (0) | トラックバック (0)
URL : http://university.main.jp/blog2/archives/2005/06/post_1231.html