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 カテゴリー 全大教・日本私大教連

2005年06月06日

全大教、「学校教育法の一部改正案」に対する見解

全大教
 ∟●「学校教育法の一部改正案」に対する見解(2005年6月3日)

「学校教育法の一部改正案」に対する見解

2005年6月3日
全国大学高専教職員組合中央執行委員会

 学校教育法を一部改正する法案が今通常国会に提出され今後審議に入ります。この内容については、すでに全大教として「中央教育審議会『大学の教員組織の在り方について』(審議経過の中間的な整理)に関する意見」(2005年1月9日)を提出したところです。
 本格的審議が始まるにあたり、改めてこの法案に対する見解を明らかにするものです。

1,現行制度の「準学士と称することができる」に変えて「短期大学は、短期大学を卒業した者に対し短期大学士の学位を授与する」としたことは、学位についての国際的な動向を反映し、大学の責務も明確にしたものであり、異存はなく、その規定はできるだけ早く実施されるべきものです。

2,「大学の教員組織の整備」、「高等専門学校の教員組織の整備」に関っては以下のような問題点に特段の配慮が払われることを期待します。
(1)「教授の職務を助ける」ことを主たる職務とする現在の助教授を廃止し、「学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する」ことを主たる職務とする「准教授」として学校教育法に盛り込むことに異議はありません。ただし、それにふさわしい処遇の改善が求められます。
(2)「教授及び助教授の職務を助ける」現行の「助手」を廃止し、「知識及び能力を有する者」を「助教」として「准教授」と同じ職務内容にすることは、職名は別として歓迎すべきことです。
 「准教授」の場合も含めて「教授(及び助教授)の職務を助ける」ということがともすれば、講座制とも相俟って教授に対する個人的な従属関係をも強制しかねなかったことを改めて、研究教育分野が多様化している現状にふさわしく教員全体が教員組織に所属して、その職務を遂行する形になることが期待されるものです。この点からしても「助教」という名称はふさわしいものではなく、再検討されるべきものです。
 現在の助手の教員組織における位置付けは曖昧であり、どのような種類の職務をどの程度担っているかは、各分野、各大学、各助手によって異なっており、制度上の制約とあいまって、様々な問題が出ていることは、私たちも長年指摘してきたところです。とくに大学教員と明確に位置付けられていないため授業科目の担当者になれない等の問題がこれを機に独立した教育研究者として制度的に確立される必要があります。
(3)一方、現行の助手のうち上記職務以外の者を、「所属組織の教育研究の円滑な実施に必要な業務を行う」「助手」に区分けするとしています。
 区分けする場合に本人の意向を尊重することを当然の前提として、たとえば国立大学法人においては、教授会・研究教育評議会の審議を尊重して教員の採用・昇任等にかかわる手続きをとり、公正性・透明性が保証されるものでなければなりません。その場合、本人等の異議申立権を保障することが不可欠です。
 現在の輻輳した「助手」職にあるものについて、何を基準に、どのような方法で区分するのか、新「助手」として固定化するのではなく、一定の審査の上で、教育研究者への道を保障することや希望や職務をふまえ、技術職集団への転換等多くの検討すべき課題があります。新「助手」の身分や賃金等の悪化があってはなりません。

3,本法律案の附則において、教員組織の整備に関わる事項については施行期日を「平成19年4月1日」として、今国会で成立しても、施行までに1年半の猶予を置いていることは重要なことです。大学の自治・自律性を十分発揮し、教員の労働条件改善・地位確立と社会的責務を自覚した教育研究の充実という観点から教員組織のあり方について深い検討と合意形成がはかられなければなりません。実施に当たり、それぞれの大学の英知を集めた創意工夫が必要であり、当事者の意思が尊重されねばなりません。また、その検討において、教職員組合の果たすべき役割は大きなものがあります。


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2005年05月25日

全大教と日本私大教連、高等教育無償化条項の留保撤回を求め外務省への共同要請

日本私大教連
 ∟●高等教育無償化条項の留保撤回を求め日本私大教連と全大教、外務省への共同要請の概要

高等教育無償化条項の留保撤回を求め日本私大教連と全大教、外務省への共同要請の概要

参照:国際人権規約のうち社会権規約第13条2項(c)の留保撤回に関する共同要請書

<要請・懇談の内容>

1、現段階で留保を撤回する意思はない。留保時の事情・理由が、現時点で変わっているとは考えていない。

2、国連に報告義務があることは間違いないが、06年6月30日に向けた政府報告作成は、まだ手が付いていない。06年期限の他の条約の政府報告が数本あり、そちらに忙殺されている。

3、留保撤回をするための手続きは、留保事項の重大性や重要性等によって、国会での事項になるかどうかが判断される。国会手続きにならないこともある。内閣法制局との協議にもよるが、社会権規約の13条2項(c)が、国会手続きになるかどうかは今の時点ではなんともいえない。

4、国会での審議は、外務委員会、文科委員会、予算委員会のどこでもできる。基本的には議員の質問事項に入っていれば、その議員の所属する委員会で審議される。外務委員会だけということではない。

5、政府報告の作成は、文科省が基本的に起案するが、前回の報告内容に変化がなければ外務省が起案して文科省に提示することもあり得る。現時点ではどちらともいえないが、一般的にいえば高等教育政策のことなので議論の中心は文科省になる。

6、2001年の政府報告は、文科省が起案したものである。

7、留保撤回がされるとしたら、文科省、財務省、外務省の3省の調整の結果になると予想される。文科省は高等教育政策の観点等から、財務省は国家財政の観点等からクリアーされるのではないか。留保撤回の発議は、文科省、財務省、外務省それぞれからできる。

8、今後のスケジュールや手順等は、まだ議論できていない。

 懇談は非常に率直に行われ、留保とその撤回の仕組みや関係省庁との関係など初歩的なことを含め指摘していただき有意義なものだった。

 上記5にあるように、主要な舞台はやはり文科省であり、国会の文科委員への要請行動は重要な取り組みになることが明確になった。また、政府報告作成のための準備に取り掛かっていないようなので、世論を喚起するための時間は十分有ることもわかり、今後の共同行動の意義も大いにあることがわかった。            

以上


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2005年05月23日

全大教・日本私大教連、国際人権規約のうち社会権規約第13条2項(C)の留保撤回に関する共同要請書

全大教
 ∟●国際人権規約のうち社会権規約第13条2項(c)の留保撤回に関する共同要請書(全大教・私大教連)(2005/05/17)

外務大臣
町村 信孝 殿

国際人権規約のうち社会権規約第13条2項(C)の留保撤回に関する共同要請書

2005年5月17日
全国大学高専教職員組合(全大教)
中央執行委員長 関本 英太郎
日本私立大学教職員組合連合(日本私大教連)
中央執行委員長 今井 証三

 国際人権規約は1966年12月16日に国際連合総会において採択され、日本では1979年9月21日に発効しました。このうち「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約」(以下、社会権規約)第13条2項(C)に規定されている高等教育への「無償教育の漸進的導入」を日本政府が留保し続けていることに関し、「経済的、社会的および文化的権利に関する委員会の最終見解」(2001年8月30日、以下社会権規約委員会)は、日本政府に対し留保の撤回を検討することを強く求め、2006年6月30日までに最終見解に含まれている勧告を実施するためにとった手段についての詳細な情報を含めて、第3回報告を提出することを求めています。
 国会においては、二度にわたって留保撤回の検討の決議がなされました。すなわち、国際人権規約批准承認時の国会審議においては、園田直外務大臣(当時)は「留保条項なしに批准をするのが望ましい姿」「解除する方向に努力をし、また、そういう責任がある」と答弁し(1979年3月16日・衆議院外務委員会)、同委員会が採択した要望決議には、「国際人権規約の留保事項につき、将来の諸般の動向を見て検討を行うこと」が盛り込まれました。さらに、1984年の日本育英会法の制定に際して、衆参両院文教委員会の各附帯決議において「諸般の動向をみて留保の解除を検討すること」が謳われました。
 しかし日本政府は、同規約が批准されて25年余にわたりこの問題を放置したままであり、「解除をする方向に努力」をした経緯を認めることはできません。今日、同条項を留保しているのは、社会権規約批准国151ヶ国中ルワンダ、マダガスカル、わが国の3ヶ国のみです。
 あらためて言うまでもなく、日本の高等教育に対する公財政支出は対GDP比でわずか0.5%ときわめて低く、OECD加盟国平均の半分しかありません。そのため日本は、高等教育における家計の自己負担率がきわめて高い国となり、高等教育を受ける機会の均等を損なうまでになっています。
 私たちは、日本の高等教育の発展と、高等教育を受ける機会保障のために、社会権規約第13条2項(C)の留保撤回を求める立場から、貴省に対して以下のことを要請します。

要請項目

1、社会権規約第13条2項(c)の留保を撤回すること。
2、社会権規約委員会の最終見解を社会の全ての層に広く配布するとともに、2006年6月30日までに国連に提出する第3回報告の作成スケジュールおよび手順を早急に明らかにし、国民各層に広く知らせること。
3、社会権規約委員会の最終見解に基づいて、「高等教育における無償教育の漸進的導入」に関して、私ども両組合を含む高等教育関係者、および広範な市民社会構成員の意見を求め、協議を行い、その経過を公表するなどの措置を講ずることを求めます。

以 上


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2005年04月29日

全大教・日本私大教連、国際人権規約のうち社会権規約第13条2項(c)の留保撤回に関する共同要請書

日本私大教連
 ∟●全大教・日本私大教連 「国際人権規約のうち社会権規約第13条2項(c)の留保撤回に関する共同要請書」

外務大臣
町村 信孝  様
国際人権規約のうち社会権規約第13条2項(c)の留保撤回に関する共同要請書

2005年5月17日
全国大学高専教職員組合(全大教)
日本私立大学教職員組合連合(日本私大教連)

 国際人権規約は1966年12月16日に国際連合総会において採択され、日本では1979年9月21日に発効しました。このうち「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約」(以下、社会権規約)第13条2項(c)に規定されている高等教育への「無償教育の漸進的導入」を日本政府が留保し続けていることに関し、「経済的、社会的および文化的権利に関する委員会の最終見解」(2001年8月30日、以下社会権規約委員会)は、日本政府に対し留保の撤回を検討することを強く求め、2006年6月30日までに最終見解に含まれている勧告を実施するためにとった手段についての詳細な情報を含めて、第3回報告を提出することを求めています。

 国会においては、二度にわたって留保撤回の検討の決議がなされました。すなわち、国際人権規約批准承認時の国会審議においては、園田直外務大臣(当時)は「留保条項なしに批准をするのが望ましい姿」「解除する方向に努力をし、また、そういう責任がある」と答弁し(1979年3月16日・衆議院外務委員会)、同委員会が採択した要望決議には、「国際人権規約の留保事項につき、将来の諸般の動向を見て検討を行うこと」が盛り込まれました。さらに、1984年の日本育英会法の制定に際して、衆参両院文教委員会の各附帯決議において「諸般の動向をみて留保の解除を検討すること」が謳われました。

 しかし日本政府は、同規約が批准されて25年余にわたりこの問題を放置したままであり、「解除をする方向に努力」をした経緯を認めることはできません。今日、同条項を留保しているのは、社会権規約批准国151ヶ国中ルワンダ、マダ ガスカル、わが国の3ヶ国のみです。

 あらためて言うまでもなく、日本の高等教育に対する公財政支出は対GDP比でわずか0.5%ときわめて低く、OECD加盟国平均の半分しかありません。そのため日本は、高等教育における家計の自己負担率がきわめて高い国となり、高等教育を受ける機会の均等を損なうまでになっています。

 私たちは、日本の高等教育の発展と、高等教育を受ける機会保障のために、社会権規約第13条2項(c)の留保撤回を求める立場から、貴省に対して以下のことを要請します。

要請項目

1、社会権規約第13条2項(c)の留保を撤回すること。
2、社会権規約委員会の最終見解を社会の全ての層に広く配布するとともに、2006年6月30日までに国連に提出する第3回報告の作成スケジュールおよび手順を早急に明らかにし、国民各層に広く知らせること。
3、社会権規約委員会の最終見解に基づいて、「高等教育における無償教育の漸進的導入」に関して、私ども両組合を含む高等教育関係者、および広範な市民社会構成員の意見を求め、協議を行い、その経過を公表するなどの措置を講ずることを求めます。
以上


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日本私大教連、「経営困難な学校法人への「対応方針」について(案)」に関する見解

日本私大教連
 ∟●「経営困難な学校法人への「対応方針」について(案)」に関する見解

「経営困難な学校法人への「対応方針」について(案)」に関する見解

 2005(平成17)年3月30日に公表された、文部科学省高等教育局私立大学経営支援プロジェクトチームによる「経営困難な学校法人への「対応方針」について(案)」(以下「対応方針」と略)に関し、日本私大教連としての見解を表明する。

1、経営困難に陥る原因に関して

(1)理事会ないし理事長の経営姿勢・方針が「経営困難」を引き起こしている
 「対応方針」は経営困難に陥る主たる要因を「近年における少子化等の影響」を挙げ、加えて「少数ながら不適切な経理等、学生数の減少以外の要因」を述べている。
 確かに「少子化」は大きな要因といえるが、我々が承知している私立大学・短期大学(以下、「私大」と略す)の「経営困難」な事例は、むしろ理事会ないし理事長の経営姿勢・方針が、「経営困難」を引き起こしている最大の原因であることを示している。例えば学部・学科の改組転換等で、全学的な議論に付し全学の知恵と力を結集せず、トップダウン経営とかスピード経営とか称し、軽薄な思い込みと独断で改組転換等を行い、結局、定員割れを起している事例は事欠かない。こうした私大に間々見られる共通点は、理事長の独断・専横の大学運営、情報開示をしない、教授会の無視ないし破壊、組合の無視ないし軽視などである。
 組合は団体交渉などを通してそれらの改善を要求しているが、上記のような理事会あるいは理事長は、総じて馬耳東風の感の傾向が強い。一般の企業にならえば経営責任を取って役員が辞任したり、株主代表訴訟による損害賠償請求がなされる程の事例でも、学校法人役員に対する教職員、学生等「利害関係人」による解職請求権等を定める寄附行為上の規定を持つ学校法人は皆無であり、また、私立学校法も役員の経営責任を明らかにする等の規定がないため、学校法人では理事長はじめ役員が居座り続けることになる。
 「経営困難」への対処を検討するのであれば、こうしたところにもメスをきちんと入れていかないと、「事態は繰り返される」と言わなければならない。

(2)より根本的には私大助成の貧困、高学費の放置、高等教育予算の絶対的低さが原因
 私大助成の貧困は私大の高学費を招く最大要因であり、これは家計所得が連続して低下し続けている現在、私大への進学を経済的理由によって断念させる大きな要因である。何とか高学費を工面して入学しても、教育条件は国立大学と比較して目を覆いたくなるほど劣位で、学費減免制度、奨学金制度も国立大学生と大きな較差の下に置かれているのが現実である。
 これでは私大に進学しようとする意欲が、削がれてしまうことは明白である。また教育条件のみならず研究条件も劣悪であるため、教員の研究面での苦労も並大抵ではなく、率直にいって教員は疲弊している。
 これらは誰の責任なのだろうか。答は自ずと明らかである。私大助成をわずか補助率12%程度に落とし込め、高等教育予算をOECD平均のGDP比1%の半分しか計上していない政府の責任は大と言わなければならない。また、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)」のうち高等教育の漸進的無償化を定めた13条2項(c)の留保を撤回せず、高学費を容認する政府の姿勢は糾弾に値する。

2、経営困難な法人への対策をどのように構想するか
(1)経営救済システムの構想
 現行私大助成制度が、経営困難を救済するものではないことは明らかで、その意味で「経営が悪化し再建の見込みがないと判断される学校法人に対し、国費の投入によりその存続を図ることについては」考えないとの指摘は、現在の仕組みからはそのようなものとなる。
 しかし、私立学校は今や我が国の公教育において極めて大きな役割を担っている。したがって、その役割に値する何らかの経営救済システムを国として構想することは、「国民理解は得られない」とまでは言えず、はじめからこの構想を排除すべきではない。
(2)学校法人役員に経営責任を取らせるシステムの構築と情報の開示
 「対応方針」は理事会に対し経営分析を踏まえた指導・助言などを行い、事態が逼迫している場合は「特に早期の決断を強く促す」などとしている。これはそれとして適切な指導・助言だろうと思うが、そうした事態を招いた理事会の経営責任を取らせるためのシステムの構築も必要である。
 具体的には株主代表訴訟のようなステーク・ホルダーによる損害賠償請求の法的手段の整備、寄附行為に学校法人役員に対する学生、教職員等による解職請求権を定めることなどが考えられる。また、経営の透明性を確保するための情報公開の範囲の拡大――例えば財務情報であれば学校法人会計基準第4条に規定する全て計算書類の開示を義務付けること、理事会、評議員会の議事録の開示など――とそれを拒む学校法人へのペナルティーを科すことなどが考えられる。

(3)経営に関する指導・助言と情報の開示
 「対応方針」の段階的な指導・助言は適切と考えるが、各段階の情報開示をどのように扱うかが問題になる。主要な受験者層である高校生にとって大学選択は一生を左右しかねない程の重大な選択になり得るから、出来得るかぎりの情報が、適切に受験生側に開示されるべきである。そこで、文科省等による指導・助言がなされた事実の公表と、私立学校法第47条に規定する「利害関係人」からの請求があれば、指導・助言内容及びその根拠となる経営分析資料等を開示するようにすべきである。これは経営にとっては開示されたくない情報であろうが、大学が受験生の一生に責任を持ち得るはずがないのだから、当然のことと考える。
 なお、学校法人の財政状況について、「単年度の帰属収入で消費支出をまかなうこと」ができているか否かを重要な判断基準とみなしている記述が明瞭になされていること、たとえば経営分析指標で帰属収支差額比率を挙げていることは、極めて適切である。これまで文部科学省は、帰属収入から基本金組入額を前もって引いた消費収入と消費支出との差額である消費収支差額が採算を示す数値としてきたが、学校法人会計において採算を示しているのは消費収支差額ではなく帰属収支差額であることを認めたものと理解できる。しかし学校法人会計基準がこの度改正されたが、この点が変更されていないのはきわめて遺憾である。学校法人の中には依然として消費収支差額が採算を示す数値と誤解している例が見られるので、「個々の学校法人において…財政及び経営状況を的確に把握」する必要性を述べているのであるから、帰属収支差額を算出して明示すること、それが採算をあらわす数値であることを周知徹底すべきである。

(4)学生転学支援プログラム発動の前に
 「対応方針」の学生転学支援プログラムの基本的な枠組みは、概ね適切であると考える。
 問題は、「事態が逼迫している場合には、特に早期の決断を強く促す」状況に至っている私大で、少なくとも在学生が卒業するまでの間の運転資金をどのように確保させるかである。そのような状況に至っている大学は、資産らしい資産には概ね抵当権がつけられていて、金融機関からの新規融資は不可能であろうことは容易に想像できる。したがっておそらく指導上は、少なくとも在学生が卒業できるまでの間の運転資金が確保できるだけの状態のときに、「決断を強く促す」ことになるだろう。決断が遅れれば、支援プログラムの発動ということになるが、「対応方針」も指摘するように、「一般的には転学はけっして容易な道ではなく」「いわば最後の最後に残るやむを得ない手段」であるから、少なくとも運転資金が確保できる状況のときに、「決断させる」「決断しなければならない」あるいは「強制」する仕組みが必要といえる。

(5)教職員の雇用等に関する問題
 「学生の就学機会の確保」を最重点に構想する点は、十分理解できる。同時に、そこに働く教職員の雇用を確保することも、重点として考えられるべきである。
 しかし不幸にして学生転学支援プログラムが発動される事態に陥った場合の経営状況は、給与の遅欠配も考えられるし、退職金が確保されるかどうかも危ぶまれるのではないかと予想される。したがって労働債権の最優先確保の措置が取られるべきである。

3、安心して私大で学ぶことのできる条件を整備すること
 「対応方針」は、タイトルのごとく経営困難に陥った大学への対処方針であるが、経営困難に陥らないための条件をどのように整備するかはより重要である。
 私立学校振興助成法並びに国会附帯決議に謳われる「経常費2分の1補助」を直ちに達成することと、高学費を解消するための学費負担軽減施策は二大重点政策であると考える。前者は基盤的経費部分を厚くすることであり、後者は少なくとも経済的理由で進学を断念せざるを得ない学生や、授業に出席できないほどアルバイトに依存しなくてはならない学生を無くすことのできる水準の負担軽減施策が求められる。そのためには、高等教育予算をOECD平均のGDP比1%へと倍増させることは絶対的に必要である。そして経営責任を明らかにすることができる経営体制を構築できる仕組みを構想することも重要である。

以 上


Posted by 管理者 : 掲載日時 2005年04月29日 00:20 | コメント (0) | トラックバック (0)
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2005年04月22日

日本私大教連、「学校教育法の一部を改正する法律案」の国会審議にあたってのお願い

日本私大教連
 ∟●「学校教育法の一部を改正する法律案」の国会審議にあたってのお願い

衆議院文部科学委員会 理事各位
参議院文教科学委員会 理事各位
2005年4月7日
日本私立大学教職員組合連合
中央執行委員長 今井 証三

「学校教育法の一部を改正する法律案」の国会審議にあたってのお願い

 先生には日頃から私学振興のためご尽力賜り、心より御礼申し上げます。

 さて、ご案内のように今国会に文部科学省から「学校教育法の一部を改正する法律案」が提出されております。4月にはいり国会での審議が開始される時期を迎えると思います。そこで国会審議にあたり、いくつかの点を明かにしていただければと考え、陳情申し上げたいと存じます。

 今次学校教育法改正案は、①短期大学卒業者への学位授与(第68条の二第1項)、②助手を区分して「助教」を新設すること(第58条第1項)、③「助教授を廃止し准教授を設けること」(同)とあります。このうち、①と②については、その目的・意図ともにわかりやすいのですが、③および第58条の「ただし書き」の規定の内容・意図するところがわかりにくく、改正後の教育研究組織等の在り方が想定しづらいものとなっています。また、学校教育法の改正とあわせて大学設置基準の改正も行われるはずですが、この大学設置基準改正の内容も判然としません。

 以下、第58条の改正と関連する大学設置基準の改正について指摘させていただきます。
ご賢察賜れば幸いです。

1、第58条の改正に係わって

 第58条1項に「ただし書き」が追加され、「ただし、教育研究上の組織編制として適切と認められる場合には、准教授、助教又は助手を置かないことができる。」と改正提案されています。
 この「ただし書き」部分の理由・趣旨が明瞭ではありません。「組織編制として適切と認められる場合」教授だけが置かれますが、認められる場合とそうでない場合はどこがどう違うのか分かりません。また、助教授(准教授)、助手(助教または助手)を必置でなくすことが、どのような意味で「活性化」、「国際的な通用性」につながるのかが不明瞭です。
 申し上げるまでもなく教育研究組織の編成・あり方は大学にとって最も基本的で最重要な事項ですから、大学改革をすすめるうえでもこの点が曖昧では現場が混乱しかねません。
 国会審議を通して、文部科学省から具体的な事例などを提示させ、明らかにしていただければと存じます。

2、第58条と関連する大学設置基準(昭31省令第28号)の改正にかかわって

(1) 第58条第1項で、助教授を廃し「准教授」を設け、助手のうち新たに「助教」を置くわけですから、「大学設置基準(昭31省令28号)」(大学設置基準は省令なので、その改正は国会の審議を経ず行われますが)「第4章 教員の資格」の第14条(教授)、第15条(助教授)、第16条(講師)、第17条(助手)に規定されるそれぞれの資格も改正されるはずですが、それはどのように改正されるのか、これも審議を通じて明かにしていただければと存じます。同様に「短期大学設置基準(昭50省令21号)」「第7章 教員の資格」にも教授、助教授、講師、助手の資格が規定されていますが、それらはどのように改正されるのか明らかにしていただければと存じます。
(2) また今次省令改正では、「(講座制・学科目制に関する規定を削除して)各教員の役割の分担及び連携の組織的な体制の確保や責任の明確化についての規定を新設」(文科省ホームページ上での説明)とあります。
 これは「大学設置基準 第3章 教員組織」の第7条(教員組織)、第8条(学科目制)、第9条(講座制)を削除し、新規定を設けることと思われます。
 この「大学設置基準 第3章 教員組織」の改正は学校教育法58条の改正を受けてのものであろうと考えられますが、その理由・趣旨が明瞭ではありません。学科目制・講座制はそれぞれの教育研究組織の基本的なあり方を規定しますが、それを削除する理由は何なのでしょう。そのうえで新設される組織は、既存の学科目制・講座制とどこが共通しどこが違うのかなど、判然としません。この点も明らかにしていただければと存じます。
 また、学校教育法58条ただし書きの「組織編制として適切と認められる場合」との関連についても、明らかにしていただければと存じます。
以上


Posted by 管理者 : 掲載日時 2005年04月22日 00:18 | コメント (0) | トラックバック (0)
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2005年04月14日

日本私大教連の抗議・公開質問に対する日本私立学校振興・共済事業団の回答

日本私大教連
 ∟●『月報私学』問題 : 抗議・公開質問に対する日本私立学校振興・共済事業団の回答
(日本私大教連の抗議・公開質問)『月報私学』掲載記事をめぐり、日本私立学校振興・共済事業団へ抗議・要請(2005年4月12日HP掲載)

『月報私学』問題:抗議・公開質問に対する日本私立学校振興・共済事業団の回答

 『月報私学』2005年1月1日号に掲載された「新春座談会・スクールガバナンスの新時代」において、同事業団理事長の鳥居泰彦氏が、私立学校法の改正内容や改正趣旨について事実に反することを述べていることに ついて、日本私大教連が行った「抗議並びに公開質問」に対する事業団からの回答を公表します。
 なお、本回答は、事業団から口頭でなされた回答を日本私大教連が文書化し、事業団が確認したものです。
 日本私大教連は、この回答を受け、『月報私学』への訂正記事掲載をあらためて事業団に求める方針です。



日本私大教連の抗議・公開質問に対する日本私立学校振興・共済事業団の回答

『月報私学』(05年1月1日付・第85号)の「新春座談会」の記事中、鳥居理事長が「今回の私立学校法改正で、理事会が最高の意思決定機関であることが、法律上、明確に定められました。」など述べ、実際の法改正の趣旨・内容に反した主張を繰り返したことについて、日本私大教連が行った抗議と公開質問に対して、3月24日、事業団より下記の回答が口頭でなされました。
1.座談会記事に対する日本私大教連の批判内容は理解できる。

2.鳥居理事長は、記事中「理事会が最高の意思決定機関となった」と述べたことについて、それは理事会の役割を明確にする意味で「最高」という言葉を使ったものである。

3.理事長は、私学法の改正趣旨について承知している。例えば、『事業団のあらまし』の巻頭あいさつで、「私立学校法の改正により、理事会が最終的な意思決定機関としてその役割の明確化が図られるなど、私学のガバナンスも大きく変わっていくことになります。」と述べているとおり、理事会が『最終的な意思決定機関』であることを認識している。したがって、他に何らの意図があってのことではない。

4.以上、理事会の役割の明確化を示す表現として「最高」と「最終」を同義に使用したものであることをご理解いただき、訂正記事の掲載については、ご容赦願う方向でご検討いただければ幸いである。


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2005年03月16日

京都私大教連、平和で豊かな日本の将来を作り出すために、憲法・教育基本法の「改正」を許さぬ取り組みをすすめよう

京都私大教連
 ∟●平和で豊かな日本の将来を作り出すために、憲法・教育基本法の「改正」を許さぬ取り組みをすすめよう【京都私教連第61回特別決議】

平和で豊かな日本の将来を作り出すために、
憲法・教育基本法の「改正」を許さぬ取り組みをすすめよう

 戦後日本の平和と民主主義、その骨格をなしてきた憲法・教育基本法は、かってない危機に直面しつつあります。

 背景には、戦後一貫してアメリカの軍事行動に協同歩調を取ってきた日本の安全保障政策があります。最近では9・11テロ事件に端を発するアフガニスタン戦争やイラク戦争への協力と自衛隊の海外派遣、そして日本国民すべてを戦時体制に組み込む有事法制が着々と準備されています。

 憲法を変えようとする最大の狙いは「第9条(戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認)」で、軍隊ないし「自衛軍」を明記して、「戦争できる国」にすることです。その上で集団的自衛権の行使としてアメリカ軍と海外での軍事行動を目指しているのです。

 同時に国民の意識を長期的かつ体系的に改変するために、教育の基本をなす教育基本法を全面的に改めることが企図されています。教育基本法の前文には、「この理想(現在の憲法の理想)の実現は、根本において教育の力にまつべきものである」と明記され、教育基本法には憲法の精神が貫かれており、国会議員の過半数の議決で行える教育基本法改悪を、憲法を変える「露払い」にしようとしているのです。

 教育基本法は戦前の軍国主義教育への反省と批判から出発して、教育の本質を「個人の尊厳」「真理と平和を希求する人間」育成に求めています。これは人・情報・文化が多様に交流するグローバル化した現代にこそ生かされるべきものといわねばなりません。

 ところが改正の主眼は戦後教育の基本思想を全面的に排除する方向に向けられています。例えば第1条(教育の目的)を(教育の目標)に格下げし、「教育は、人格の完成を目指し、心身ともに健康な国民の育成を目的とする」と一般的内容に換骨奪胎し、「平和的な国家及び社会の形成者」をなくし、「伝統文化を尊重し郷土と国を愛し、国際社会の平和と発展に寄与する態度の涵養」などの愛国主義教育の導入が企図されています。

 また第10条(教育行政)の「教育は、不当な支配に服することなく国民全体に対し直接責任を負って・・・」を「教育行政は、不当な支配に服することなく」と言い換えてその意味を180度変え、政府が教育の目標と方針のすべてを決められるようにしようとしています。

 私学関係者にとって見過ごせないのは教育基本法に「私立学校教育の振興」の条項を設けようとしていることです。これにはおよそ3つの意図があると考えられます。

第1は、私学教育を国のねらいに従属させようとする意図です。私学助成を、政府が立てる教育の目標や計画にそった教育を行わせる補助金として支出し、私学教育を誘導しようとしているのです。

第2は、私学関係者を教育基本法を変えることに賛成させようという意図です。私学関係者を、この条項で「幻想」を持たせて誘導する、そうした意図が見えてきます。

第3は、憲法改悪をすすめる地ならしの意図です。一部与党議員は、「私学助成は憲法違反だ、私学助成のためにも憲法を変える必要がある」と強調しています。「公の支配に属しない」教育などに公金を支出してはならないことを定めた憲法第八九条については、私学助成が第八九条違反にはあたらないことを、はるか以前から文部科学省や内閣法制局も認めているところです。教育基本法に私学振興の条項を盛り込む問題をきっかけに、こうした「私学助成違憲論」を蒸し返し、多くの私学関係者や国民を憲法「改正」論に誘導しようとする意図が感じられます。

 さて、昨年6月10日、井上ひさし氏など9人が呼びかけ人になって「9条の会」が発足しました。呼びかけは、戦争や武力の行使がいかに悲劇をよび、国際紛争の解決にならないこと、その歴史的教訓と戦後日本の歩みを指摘したうえで、9条改憲を阻止して、9条を21世紀の進路にする大切さを説いています。この呼びかけに応えて全国のさまざまな人々が「9条の会」を作り始めています。

 今こそ、平和で豊かな日本の将来を作り出すために、憲法・教育基本法の「改正」を許さぬ取り組みを、全ての国民と力をあわせてすすめようではありませんか。 そのために、組合員全員の総力をあげましょう。

右、決議します。

2005年3月12日(土)
京都私教連第61回定期大会

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2005年03月14日

日本私大教連、改正私立学校法の施行にともなう寄附行為変更をめぐって文科省へ要請

日本私大教連
 ∟●改正私立学校法の施行にともなう寄附行為変更をめぐって文科省へ要請

改正私立学校法の施行にともなう寄附行為変更をめぐって文科省へ要請

 改正私立学校法施行にともない、各学園において寄附行為変更が本格化しつつありますが、いくつかの学校法人では私立学校法改正の趣旨を誤解あるいは曲解して、寄附行為の改悪ともいえる変更を強行する動きが現れています。
 日本私大教連はこうした状況も踏まえ、3月10日、寄附行為変更をめぐって私立学校法改正の趣旨をあらためて周知徹底することなどを文科省に対して要請しました。
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(要請書全文)

文部科学大臣
中山 成彬 様

日本私大教連
(日本私立大学教職員組合連合)
中央執行委員長 今井 証三

寄附行為変更に係わる文部科学省の対応に関する要請

 私たちは去る1月17日、学校法人が寄附行為を変更する際に、私学法改正の趣旨を尊重するよう徹底する旨、貴省に申し入れを行いました。
 その際、私学法改正にともなう寄附行為変更の審査においては、形式的に法令に適合しているかどうかのみをチェックし、法改正の趣旨に照らして望ましくない点があってもこれを容認するとの説明がなされました。しかし、この貴省方針は到底首肯できるものではありません。
 私学法の一部を改正する法律案の国会審議では、その趣旨である「私立学校の公共性をより高める」「学校法人の管理運営制度の改善を図る」観点から、全会派の議員より法案の不十分な点が指摘され、真剣な審議が行われました。その中で文科省は、「改正の趣旨の徹底をはかってまいりたい」「何より運用こそが大事」と繰り返し答弁し、衆参両院の附帯決議でも「本法の趣旨・制度の内容等について十分周知し、その理解と努力を促していくとともに、改善の状況についての検証を行うこと」と謳われています。
 私たちは、今次改正が真に私立学校の公共性を高めることに資するものとなるよう、大学法人・短大法人の寄附行為変更に際して、貴省が学校法人に対し、あらためて改正の趣旨を徹底し、望ましくない点についてはこれを是正させるよう努めるべきであると考えます。またそうした立場から、下記の点について強く要望するものです。

1.理事会の位置づけについて
 改正によって理事会が最高の意思決定機関となったと誤解あるいは曲解する学校法人が散見されます。あろうことか、日本私立学校振興・共済事業団発行の『月報私学』(第85号「新春座談会・スクールガバナンスの新時代」)に、理事会が最高の意思決定機関と法律上明確に定められたとする記事が掲載されていることをとってみても、このことは放置できない重大な問題です。
 今次改正が、理事会に特別の権限を付与するものではないことを周知徹底し、誤解・曲解があればそれを正すよう要望します。
2.理事長の解任規定について
 今回の寄附行為改正において、理事長を特定の寺院の住職と定める(以下「充て職理事長」という)文部科学省所轄の学校法人があります。私たちはこの件について、是正するよう指導することを文部科学省の担当部局である高等教育局私学部私学行政課企画係に申し入れをしましたが、この件に関する担当部局の見解は、以下のようなものでした。
(1)改正された私立学校法第30条第1項第5号の解任に関する規程は、役員(理事と監事)の解任について求めたものであり、法令違反とまでは言えない。
(2)しかし、私立学校法改正の趣旨に照らし、好ましいとは言えない。
(3)「学校法人運営調査」では指導するが、今回の寄附行為改正の審査では、一切問題にしない。
 学校法人寄附行為作成例(2004年7月13日大学設置・学校法人審議会学校法人分科会決定)では、理事長の選任・解任について「理事のうち1名を理事長とし、理事総数の過半数の議決により選任する。理事長の職を解任するときも、同様とする」(第6条第2項)と定めています。私たちは、当該法人の理事会、評議員会がまったく関与できない「充て職理事長」の規定は、私立学校の公共性を高めるという今回の私立学校法改正の趣旨に反するものと考えます。
 私たちは、こうしたケースについては、法令違反ではないとしても、寄附行為改正の審査段階で明確に指摘し、改善を要請するよう強く求めます。また、理事長の選任・解任規定を定めるよう徹底することを要望します。
3.寄附行為変更の期限について
 いくつかの学校法人は、法令等により寄附行為は今年度中に改正しなければならないなどと主張し、学内諸機関での検討や、教職員の意向の反映を保障せずに、短期間のうちに寄附行為の変更を強行しようとしています。
 そうした法人の中には、先に上げたように私学法改正に乗じ、法の趣旨・目的を故意に歪めてとらえ、理事会権限の強化などを目論むものもありますが、一方で、改正された私学法附則に対する不理解や誤解から寄附行為変更の期限について混乱を生じている場合も散見されます。
 各学校法人において寄附行為の変更が本格化するにあたり、あらためてその期限を周知するよう要望します。
以 上


Posted by 管理者 : 掲載日時 2005年03月14日 00:29 | コメント (0) | トラックバック (0)
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日本私大教連、『月報私学』掲載記事をめぐり、日本私立学校振興・共済事業団へ抗議・要請

日本私大教連
 ∟●『月報私学』掲載記事をめぐり、日本私立学校振興・共済事業団へ抗議・要請

『月報私学』掲載記事をめぐり、日本私立学校振興・共済事業団へ抗議・要請

 『月報私学』2005年1月1日号に掲載された「新春座談会・スクールガバナンスの新時代」において、同事業団理事長の鳥居泰彦氏が、私立学校法の改正内容や改正趣旨について事実に反することを述べていることに対して、日本私大教連は理事長宛の「抗議並びに公開質問」(下に全文掲載)を発表するとともに、3月9日、事業団に対して抗議・要請を行いました。これに対して事業団は、検討することを約しました。
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日本私立学校振興・共済事業団
理事長  鳥 居 泰 彦  様

日本私立大学教職員組合連合
中央執行委員長 今井 証三

抗議並びに公開質問

 貴殿は、日本私立学校振興・共済事業団という私学行政に関わる公的機関の理事長という要職にありながら、貴事業団発行による平成17年1月1日付『月報私学』第85号「新春座談会 スクールガバナンスの新時代 ~私立学校法の改正と私学経営課題~」の記事中、見過ごすことのできない誤った主張を繰り返され、私立学校法の改正趣旨を誤って読者に伝えています。

 その点を以下に指摘いたしますとともに、質問と要求をいたしますので、当連合へ可及的速やかにご回答いただきたいと存じます。なお、いただいた回答は、当連合機関紙等に掲載するなど適切な方法で、組合員はじめ教職員に公開いたしますので、あらかじめご承知おきください。

1、「理事会が最高の意思決定機関となった」との誤った発言の繰り返し
 貴殿は、今次改正によって「理事会が最高の意思決定機関」となったかのごとく、誤った発言を繰り返されています。
 第85号の記事中、どこに書かれているかはいちいち指摘いたしませんが、同5ページの「意思決定の中心は誰か」との小見出しのある部分で、「理事会が最高の意思決定機関であることが、法律上、明確に定められた」と述べ、数ヶ所繰り返し「最高の意思決定機関」と発言されています。その発言を受けて、次の見出しがわざわざ「理事会が最高の意思決定機関に」(同6ページ)とあり、ミスリードされています。
 今次改正は、一部の学校法人理事会の専断的大学運営による不祥事の続くなか、私学の公共性を高めるために、責任の所在が理事会・理事長にあることを明確にしたものであって、理事会に特別な権限を付与するためになされたものではありません。理事会を「最終的な」意思決定機関ではなく、「最高の」意思決定機関であるとみなすのは、法改正の内容・趣旨に反した完全な誤りです。
 この点は、国会審議のなかで政府から明確に述べられ、また両院の附帯決議にもその趣旨は明らかとなっています。具体的に政府は、「(理事会と)教学サイド、例えば教授会との関係、評議員会等との関係が問題になるわけでございますけれども、今回の改正では、こういった両者との関係で、理事会に対し、特別の権限を与えるようなことは内容としてございません。従来の制度、現行制度が維持されてございまして、教学サイドの意見が改正によって反映されなくなるおそれはないものと考えておるところでございます」(「第159回国会衆議院文部科学委員会議録」より、文部科学委員会04年4月7日)と、明確に答弁しています。この点は、改正後におこなわれた
 日本私大教連と文科省との折衝においても再確認されております。
 以上、貴殿の発言は明らかに誤りであると断じることができます。

2、以下の2点につき可及的すみやかにご回答されたい
① 貴殿はいかなる意図を持って、このような発言を繰り返されたのか明らかにされたい。国会審議や改正趣旨について、承知されていなかったとするならその旨、ご回答いただきたい。
② 誤った記事を掲載されたわけですから、『月報私学』の直近発行号で訂正記事の掲載を要求いたします。

以 上


問題の『月報私学』2005年1月1日号はこちら≫

Posted by 管理者 : 掲載日時 2005年03月14日 00:28 | コメント (0) | トラックバック (0)
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2005年03月09日

日本私大教連、父母・学生の負担軽減と私立大学の充実を目指す国会請願

05年度私大助成請願署名

父母・学生の負担軽減と私立大学の充実を目指す国会請願

[請願趣旨]

わが国の高等教育において、私立大学・短期大学(以下、私大)は学生数で75%、学校数で80%を占め、非常に重要な役割を担っています。したがって私大の振興は国の重要な責務であり、私大助成の拡充・改善は重点的に取り組むべき施策です。このことは、私立学校振興助成法と国会附帯決議(1975年)が「私大経常費の2分の1補助」の早期達成を目標として定めていることにも、端的に表わされています。

ところが私大経常費への補助率は、1980年度の29.5%をピークにその後減少し、2003年度には12.1%まで低下しています。また私大への補助は国立大学への国費支出のおよそ5分の1、学生一人あたりにしてわずか18分の1程度でしかなく、国立大との間におおいがたい格差をもたらしています。

経常費補助が長きにわたり低い水準におかれているために、私大は教育研究条件の改善・充実を図る上で国立大の1.7倍もの高学費に依存せざるを得えず、それでもなお国立大の教育研究条件とは差別的とも言える格差が存在しています。さらに、非常に重い学費負担のために、進学や修学を断念せざるを得ない青年が増加するなど、国民の大学教育を受ける権利が著しく侵害されています。

さらにここ数年、私大経常費補助のうち基盤的な教育研究条件を充実させる一般補助が削減される一方で、一部特定の分野に対する特別補助のみが大幅に増額されています。これでは学費負担が軽減されないばかりか、学部間・大学間の格差が広がり、私大全体の教育研究の向上を図ることはできません。

世界的に見ても、日本の高等教育予算はOECD(*1)加盟国の中で最低水準であり、また国際人権規約の「高等教育の漸進的無償化」条項を留保し続けている(*2)など、日本の高等教育政策はあまりに貧困と言わざるを得ません。

大学が、知、文化、科学技術を通して地域・日本・世界の発展に貢献するためには、高等教育予算を大幅に引き上げ、誰もが安心して充実した大学教育を受けられるよう、私大全体の教育研究条件を整備するとともに、父母・学生の学費負担を軽減するための総合的な施策を実現することが求められています。

 私たちはこうした立場から、当面、次の事項を速やかに実現することを求めるものです。

   (*1) OECD=経済協力開発機構。欧米諸国をはじめ現在30カ国が加盟。
    (*2) 国際人権規約批准国151カ国中、同条項を留保しているのは日本、ルワンダ、マダカスカルのみ。

[請願項目]

1.高等教育予算をOECD平均並み(対GDP比1.0%)に倍増すること。
2.一般補助の拡充を軸に、私大経常費2分の1補助を政府の責務として達成すること。
3.父母・学生の学費負担を軽減するために、
(1)学費に対する直接助成や私学教育費減税など総合的な施策を実施すること。
(2)育英奨学事業について、無利子枠の拡大、給費制の創設など改善・充実を図るとともに、奨学金受給率の国公私立間の格差を是正すること。
4.大学が実施する経済的に修学困難な学生に対する奨学事業への補助は経常費補助から分離し、国立大学の学費減免制度に対する補助と同水準の予算措置を行うこと。
5.国際人権規約の「高等教育の漸進的無償化」条項の留保を撤回すること。


Posted by 管理者 : 掲載日時 2005年03月09日 00:03 | コメント (0) | トラックバック (0)
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2005年03月08日

全大教、横浜市大・都立4大学の問題について総務省へ要望書を提出し会見

横浜市立大学教員組合
 ∟●組合ウィークリー (2005.3.7) より

全大教、総務省と会見

横浜市大・都立4大学の問題について市・都への指導を要請

総務省、「労使の意思疎通は重要」

 先月25日、当組合の加盟する全大教(全国大学高専教職員組合)は、総務省と会見し、横浜市大と都立4大学の問題について申し入れを行いました。当組合からは中西執行委員長が参加しました。
 横浜市大と都立四大学では、今年4月の独立法人化にさいして、横浜市と東京都が、ともに任期制・年俸制など重大な問題をはらんだ諸制度を導入しようとしています。
 それぞれの制度の内容と、それら制度の導入過程は、いずれも地方独立法人法や同法案についての国会附帯決議など、関連諸法とルールに違反したものです。
 このことに関して、全大教は、当組合と東京都立大学・短期大学教職員組合の要請を受け、横浜市、および東京都に対し、是正指導をするよう申し入れました。
 これに対し総務省側は、「国会の附帯決議や総務大臣の答弁にもあるように、法人移行に当たっての労使の意思疎通は当然重要なことである」とし、「要請の趣旨は両自治体に伝える」と表明しました。
 現在、市大では、当局が当組合との交渉を経ないまま、不当にも任期制・年俸制等を導入しようとしています。当組合は、このような不正常で法の趣旨に反したやりかたを許さず、誠実な交渉を行うよう要求しています。
 総務省の回答は、当然のルールの確認であるとはいえ、あらためて当組合の要求の正しさを証左するものとなりました。

(次頁に、全大教書記長による報告)

2005年3月4日
各単組委員長殿

全国大学高専教職員組合
書記長 森田和哉

東京都立四大学と横浜市立大学の法人化に伴う総務省会見報告

 全大教は、東京都立大学・短期大学教職員組合と横浜市立大学教員組合の要請を受け、2月25日、要望書(別紙参照)に基づき総務省会見を行いました。
 これは、4月に迫った東京都立四大学と横浜市立大学の法人移行に際して東京都と横浜市が行おうとしている教員雇用制度が地方独立行政法人法及びその成立時の附帯決議の趣旨を大きく踏み外した乱暴なものであることを訴え、公立大学の法人化に責任を負う官庁として適切で迅速な指導を要請し、また見解を質しました。
 この会見には全大教森田書記長、藤田書記次長、東京都立大学・短期大学教職員組合から浜津委員長、田代副委員長、横浜市大から中西委員長が参加し、約1時間にわたって行われました。総務省側は自治行政局公務員部公務員課の溝口洋理事官等が対応しました。
 
 まず全大教森田書記長が、現在の東京都と横浜市が強行しようとしている法人化に伴う教員雇用制度の変更は、地方独立行政法人法の国会審議の際になされた衆参両院での附帯決議を大きく逸脱していることを深く認識してほしい旨の表明が行われ、次いで両組合から各々の要請書に基づき説明と要請がなされました。
 都立大学・短期大学教職員組合は、当局の発した文書、組合の要求への回答などを資料として、基準も示されないまま任期と年俸制をセットにした「新制度」と、永久に昇任・昇給のない「旧制度」という、どちらを選んでも不利益な変更である雇用制度の不当性を訴えました。さらにこの両制度が二者択一で提示されたが、教員の過半数がどちらの選択も拒否しており、このままでは労使が対立したまま4月を迎えることになる現状を説明しました。
 横浜市立大学教員組合は、市当局によって「大学教員任期法」ではなく労基法14条に基づく全教員の任期制と東京都同様算定基準も明らかにされない年俸制とが押しつけられようとしている状況を訴えました。現在の給与制度からの明らかな不利益変更であるこれらの雇用制度は、制度としての公正性、透明性が保障されておらず、また、ほとんど組合との交渉もなしに強行されようとしていることに対して、総務省としての是正指導を要請しました。
 東京都立四大学、横浜市立大学とも、職務や業績評価の基準も再任基準も明示されずに「とにかく教員に任期を付け、年俸制にする」ということのみできわめて酷似した「制度」です。
 これらの訴えに対して、総務省は、「国会の附帯決議や総務大臣の答弁にもあるように、法人移行に当たっての労使の意思疎通は当然重要なことである、要請の趣旨は両自治体に伝える」と表明しました。しかし、同時に「大学のことは熟知しておらず、法人下での勤務条件の中身は労使で決めることで、個々の事象について総務省として口を出すのは難しい。」とも述べました。それに対して組合側から、総務省が唱えた地方独立行政法人法によって公立大学を法人化する上での趣旨を達成するためには、東京都立四大学でも横浜市立大学でも総務省からの積極的な指導が必要な状況であることが重ねて要請され、総務省は「頂いた文書等をよく勉強します」と答えました。
 最後に、全大教として、第1に、東京と横浜で起こっている事態は、一般的な指導、援助では済まず、国会附帯決議をふまえた十分な指導が必要であること、第2に、そうした事態が全国の公立大学に波及する可能性があり、現場での良好な労使関係を進めるためにも、全大教と適宜会見を行うこと、を要求しました。
 これに対して、総務省は基本的に了承するとして、今回の会見は終了しました。

(次頁に全大教、総務省宛要請文)

2005年2月25日
総務大臣
麻生太郎殿

全国大学高専教職員組合
中央執行委員長 関本英太郎

東京都立四大学並びに横浜市立大学の独立行政法人化に伴う教員の雇用制度等に関する要望書

 公立大学振興のための日頃からのご尽力に敬意を表します。
 地方独立行政法人法の下で、東京都と横浜市はそれぞれが設置する大学について、本年4月よりの独立行政法人への移行・改組を進めております。その際、法人への移行に当たって、東京都および横浜市は、それぞれの大学に勤務する教員に対して、これまでの任用条件からの大幅な変更を伴う雇用条件を提示しています。
 東京都は現在都立四大学に勤務し本年4月以降も首都大学東京並びに現四大学に引き続き勤務する予定の教員に対して、法人への移行に当たって任期制・年俸制に基づく「新制度」または任期の定めがなく昇給・昇任のない「旧制度」のいずれかを選択するよう求めています。また横浜市は現在横浜市立大学に勤務し4月以降も勤務を続ける予定の教員全員に対して、法人への移行に当たって任期制・年俸制の雇用制度に切り替えることを提示しています。
 それぞれの教員はこれまで、「教員任期法」に基づく任期制が適用されていた一部の助手を除き、任期の定めのない条件で任用され、いわゆる「定期昇給」の制度が適用され、個人の業績や所属する学部・学科等の事情により異なるとはいえ昇任の機会も与えられていました。これに対して、東京都並びに横浜市が今回提示している法人への移行に当たっての雇用条件は、これまでの任用条件からの重大な変更であるとともに、明らかな不利益変更です。
 地方独立行政法人法では「移行型一般地方独立行政法人の成立の際、現に設立団体の内部組織で当該移行型一般地方独立行政法人の業務に相当する業務を行うもののうち当該設立団体の条例で定めるものの職員である者は、別に辞令を発せられない限り、当該移行型一般地方独立行政法人の成立の日において、当該移行型一般地方独立行政法人の職員となるものとする」(地方独立行政法人法59条2項)と規定しています。
 森清・総務省自治行政局公務部長(当時)は、この法律が審議された国会答弁において、「これは、設立団体の業務と同一の業務に従事する者につきましては、当該地方独立行政法人の職員として引き続いて身分を自動的に保有しつづけることができるという形を法律上措置したものでございます」(参議院総務委員会2003年7月1日)とした上で、後述する附帯決議等において、身分の承継にあたり、移行にあたっては関係者の充分な話し合いと意思疎通が求められることも明確にされています。
 条文上「別に辞令を発せられない限り」というのはその意義が限定されており、「①(独立行政法人に承継せず)〇〇省内で他の部局・機関へ移動させるという〇〇省の辞令、②独立行政法人には承継されるが、「相当の職員」にはならない場合の独立行政法人の辞令」(独立行政法人制度の解説・独立行政法人制度研究会編 松尾剛彦内閣中央省庁等改革推進本部事務局参事官補佐)の二種とされており、雇用・身分の承継については揺るぎのないところであるといえます。
 このような法の趣旨に照らした場合、雇用条件も基本的には継承されるのが当然です。
 労使の充分な交渉・協議を欠いたまま東京都や横浜市が提示しているような重大な不利益変更を伴う雇用条件変更を行うことは許されません。事実、この間独立行政法人に移行した各機関や昨年4月に法人への移行を果たした国立大学は、それ以前の雇用条件を基本的に継承しています。
 以上のことから、現在東京都並びに横浜市が進めていることは、地方独立行政法人法の趣旨からの重大な逸脱であるといえます。
 地方独立行政法人法成立時の参議院総務委員会における附帯決議においても、政府に対し、「地方独立行政法人への移行等に際しては、雇用問題、労働条件について配慮し、関係職員団体又は関係労働組合と十分な意思疎通が行われるよう、必要な助言等を行うこと。」を決議しています。
 地方独立行政法人を指導・助言する立場にある貴省として、これらの事柄についての見解を求めるとともに、必要な指導・助言にあたられることを求めるものです。


Posted by 管理者 : 掲載日時 2005年03月08日 01:36 | コメント (0) | トラックバック (0)
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2005年03月04日

全大教、衆参文教委員宛て「国立大学等の学生納付金標準額の引き上げ問題、運営費交付金等の充実に関する要望書」

全大教
 ∟●衆参文教委員宛て「国立大学等の学生納付金標準額の引き上げ問題、運営費交付金等の充実に関する要望書」(05/02/23)

2005年2月23目

衆議院文部科学委員・参議院文教科学委員各位

全国大学高専教職員組合
中央執行委員長 関本英太郎

国立大学等の学生納付金標準額の引き上げ問題、
運営費交付金等の充実に関する要望書

 貴職の大学・高等教育の研究・教育の充実と教職員の待遇改善・地位確立に向けた御尽力に心から敬意を表する次第です。
 国立大学、国立高専、大学共同利用機関が法人化されて1年が経とうとしています。
 その中で下記のように黙過しえない問題点が顕在化しつつあります。
 第1に、現在審議中の2005年度予算案に関わって、国立大学、高専の学生納付金標準額の引き上げ(国立大学は15,000円引き上げ535,800円、国立高専は6,600円引き上げ234,600円)及びそれを前提にした運営費交付金等の予算が盛り込まれております。このことは、国立大学法人法等成立時の附帯決議「学生納付金については、経済状況によって学生の進学機会を奪うこととならないよう将来にわたって適正な金額、水準を維持する」としていることに逆行するものです。また、欧米諸国では、高等教育費は実質的に無償措置がとられています。さらに日本は、国際人権規約の「中等教育・高等教育無償化条項」を批准していないわずかの国(146力国中3力国:日本、ルワンダ、マダガスカル)の1つです。
 各大学は学生納付金を据え置けば、現状でも厳しい運営費交付金が削減される仕組みとされているため、教育の機会均等の立場からすれば「苦渋の選択」であるとし、引きあげることを決定・検討している大学が多くを占めています。
 したがって、学生納付金を据え置けば、運営費交付金が削減される仕組みなどを抜本的に改めるなど、運営費交付金等の充実と算定ルールの見直しも重要な課題としてあります。

 第2に、2005年度運営費交付金は、前年度より約98億円削減され、1兆2,317億円とされています。これは、大学法人法等成立時の国会附帯決議にも「法人化前の公費投入額を踏まえ、従来以上に、各国立大学における教育研究が確実に実施されるに必要な所要額を確保するよう努めること。(参議院文教科学委員会)」に明らかに反しています。
 その要因には、2005年度以降については、文科省と財務省の協議により、(1)限定された概算要求事項以外は、2004年度運営費交付金で固定する、(2)2004年度予算を基準として、一般管理費(職員人件費等)について毎年1%の「効率化係数」をかけ、運営費交付金を減額する、(3)附属病院については「教育研究」と「一般診療」とを区別し、後者については経営努力を求めるため、病院収入に対して毎年「経営改善係数」2%をかけ、その収入目標が達成できない場合、運営費交付金を削減するという運営費交付金の算定ルールの問題があります。
 即ち、予算は一部の概算要求事項(競争的資金を中心とした「特別教育研究経費」等)を除き人件費を含めて2004年度予算で固定され、それに効率化係数、経営改善係数が毎年加わる仕組みとされ、必然的に、各大学等は自己収入増に頼らざるを得ません。
 それは、第1に、産学連携等により、自己収入増が安定的に可能な大規模大学とそうでない地方大学等との格差構造がさらに拡大する危険性をもっています。
 第2に、相対的に自己収入増大が可能な先端的・応用的分野と直ちに実用的ではないが、学問の普遍的発展の上で重要な基礎的・文化的分野との研究教育費の格差がさらに広がる危険性があります。
 第3に、運営費交付金が削減される中で、学生納付金の引き上げ、「教員任期法」の無限定な運用拡大、非常勤講師等の削減、職員の「サービス残業」の常態化、身分の不安定化等により、法人化が教育研究水準の劣悪化、教職員の労働条件悪化を招くことが危惧されます。
 こうした問題点は、「大学の教育研究に対する国民の要請にこたえるとともに、我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均衡ある発展を図るため」(国立大学法人法第1条)という設置目的に全く逆行するものであり、国立大学がこれまで果たし、今後一層その役割を発揮すべき総合的で均衡ある発展を阻むものと言わざるを得ません。また、度々指摘されている欧米に比べ半分以下の高等教育への公的支出(GDP比0.5%)の増額も重要な課題です。
 このことをふまえ、貴職におかれましては下記事項の実現について特段のご尽力をお願いする次第です。

1、学生納付金標準額の引き上げに反対されること。また、国際人権規約の「高等教育無償化条項」を早急に批准するようご尽力くださること。
2.国会での附帯決議や国立大学法人の設置目的をふまえ、学術研究の水準の向上と均衡ある発展をはかるため、国立大学等に対して、効率化係数(毎年1%、附属病院における経営改善係数(毎年2%)による運営費交付金の削減を行なわず、運営費交付金を増額すること。
 また、自己収入増への傾斜をはかる運営費交付金の算定ルールを見直すこと。
3,政府の大学・高等教育に対する公費投入額を欧米並みに早急にGDP比1%とすること。
 その際、研究教育の中・長期的発展をはかる立場から、過度の競争的資金重視政策ではなく、基礎的基盤的経費の充実をはかること。


Posted by 管理者 : 掲載日時 2005年03月04日 01:33 | コメント (0) | トラックバック (0)
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2005年02月28日

日本私大教連、国際人権規約・高等教育無償化条項の留保撒回を!

日本私大教連
 ∟●NEWSLETTER・No59(2005年2月24日) PDF版
国際人権規約・高等教育無償化条項の留保問題 資料コーナー

国際人権規約・高等教育無償化
条項の留保撒回を!

第13条
1.この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める。締約国は、教育が人格の完成及び人格の尊厳についての意識の十分な発達を指向し並びに人権及び基本的自由の尊重を強化すべきことに同意する。更に、締約国は、教育が、すべての者に対し、自由な社会に効果的に参加すること、諸国民の間及び人種的、種族的又は宗教的集団の間の理解、寛容及び友好を促進すること並びに平和の維持のための国際連合の活動を助長することを可能にすべきことに同意する。
2.この規約の締約国は、1の権利の完全な実現を達成するため、次のことを認める。
(c)高等教育は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。

■高等教育無償化条項を頑なに留保する日本政府
 上に掲げた条文は、1966年に国連総会で採択された国際人権規約「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(社会権規約。A規約とも言われる)のうち、高等教育の漸進的無償化を定めた部分です。日本政府は同規約を1979年に批准しながら、この第13条2項(c)をはじめ、4つの条項について留保し続けています。
 高等教育無償化条項を留保している国は、締約国151力国(05年1月25日現在)のうち、日本、マダカスカル、ルワンダの3力国だけです。
 批准から25年あまりの間、日本政府は、留保撤回を求める私たちの声に背を向け、国会附帯決議も無視して、その姿勢をまったく変えようとしていません。

■"2006年問題"とは……
 社会権規約の締約国は、この規約に謳われた権利の実現のためにとった措置などについて、国連に定期報告を行うことが義務づけられていますが、2001年に日本政府が提出した第2回報告に対して、国連の「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会」(社会権規約委員会)は「最終見解」において、留保の撤回を検討することを強く求める厳しい勧告を行いました。またその中で、2006年6月30日までに第3回報告を提出し、そこでこの勧告を実施するためにとった措置について詳細に報告することを要請されています。これがいわゆる"2006年問題"です。

■2006年に向けて、高等教育無償化条項の留保を撤回させる運動を盛り上げよう。
 日本私大教連は、留保撤回をめざす運動を重点課題の一つとして位置づけ、取り組みを開始しています。昨年12月の中央要請行動では、文科省に対して要請を行っています(ニューズレターNo,56参照)。また、各組織に検討を呼びかけている05年度私大助成国会請願署名案の請願項目にも留保撤回を盛り込んでいます。さらに、この問題で全大教と協議を行い、共同行動に取り組むことに合意しています。
 大学関係団体では、「国庫助成に関する全国私立大学教授会連合」や「大学評価学会」が、2006年問題を重視し、省庁要請など様々な取り組みを開始しています。大学評価学会の「暫定ホームページ」では、昨年末に行った外務省要請の概要報告が掲載されています(http://university.main.jp/blog/hyoukagakkai-main.html)。

■資料を活用し、2006年問題の情宣を
 社会権規約委員会の「最終見解」は政府に対し、それ自体を仕会の全ての層に広く配布し、「市民仕会の構成員と協議することを勧奨」しています。しかしながら、この問題はほとんど知られていないのが現状です。第3回政府報告の作成に向けて、本紙も活用して、各組織で2006年問題を学習・情宣し、「留保撤回を」の声を広げていくことを呼びかけます。


-高等教育無償化条項の留保問題に関する資料-

【資料1】第2回政府報告(2001年、外務省仮訳)
第13条
1.教育についての権利
(3)高等教育
 我が国において、高等教育を利用する機会は、すべての者に対して均等に与えられている。
(中略)
 能力を有しながら経済的理由により修学困難な者のために、日本育英会法に基づき、日本育英会が奨学金の貸与を行っている。また、日本育英会のほか、地方公共団体、公益法人等が奨学事業を行っている。さらに、国公私立の大学では、学生の経済的状況等により、授業料の減免が行われている。
 高等教育の無償化については、下記2を参照されたい。

2.後期中等教育及び高等教育の無償化等
 後期中等教育及び高等教育について私立学校の占める割合の大きい我が国においては、負担衡平の観点から、公立学校進学者についても相当程度の負担を求めることとしている。私学を含めた無償教育の導入は、私学制度の根本原則にも関わる問題であり、我が国としては、第13条2(b)及び(c)にある「特に、無償教育の漸進的な導入により」との規定に拘束されない旨留保したところである。
 しかしながら、教育を受ける機会の確保を図るため、経済的な理由により修学困難の者に対しては、日本育英会及び地方公共団体において奨学金の支給事業が行われるとともに、授業料減免措置が講じられているところである。

【資料2】社会権規約委員会からの質問事項に対する日本政府回答(2001年、外務省仮訳)

問2.社会権規約の第7条(d)、第13条2(b)及び第13条2(c)への留保を維持する必要性について説明して下さい。これらの留保を撤回するために日本が計画しているタイムスケジュールを提供して下さい。


2.第13条2(b)及び(c)への留保
 (1)我が国においては、義務教育終了後の後期中等教育及び高等教育に係る経費について、非進学者との負担の公平の見地から、当該教育を受ける学生等に対して適正な負担を求めるという方針をとっている。
 また、高等教育(大学)において私立学校の占める割合の大きいこともあり、高等教育の無償化の方針を採ることは、困難である。
 なお、後期中等教育及び高等教育に係る機会均等の実現については、経済的な理由により修学困難な者に対する奨学金制度、授業料減免措置等の充実を通じて推進している。
 (2)したがって、我が国は、社会権規約第13条2(b)及び(c)の規定の適用にあたり、これらの規定にいう「特に、無償教育の漸進的な導入により」に拘束されない権利を留保している。

【資料3】社会権規約委員会の「最終見解」(2001年8月30日採択、外務省仮訳)
C.主な懸念される問題
10.委員会は、締約国の規約第7条(d)、第8条2項、第13条2項(b)及び(c)への留保に関し、委員会が受け取った情報によれば、それらの権利の完全な実現はまだ保障されていないことが示されている一方、締約国が前述の条項で保障された権利をかなりの程度実現しているという理由に基づいて、留保を撤回する意図がないことに特に懸念を表明する。
(外務省注:第8条について留保しているのは、第2項ではなく第1項(d)である。)

E.提言及び勧告
34.委員会は、締約国に対し、規約第7条(d)、第8条2項、並びに第13条2項(b)及び(c)への留保の撤回を検討することを要求する。
62.委員会は、締約国に対し、社会の全ての層に最終見解を広く配布し、それらの実施のためにとったすべての措置について委員会に報告することを勧告する。また、委員会は、締約国に対し、第3回報告作成準備の早い段階において、NGO及び他の市民社会の構成員と協議することを勧奨する。

63.最後に、委員会は、締約国に対し、第3回報告を2006年6月30日までに提出し、その報告の中に、この最終見解に含まれている勧告を実施するためにとった手段についての、詳細な情報を含めることを要請する。
(注1:訳文中の「締約国」は、日本を示す)
(注2:段落冒頭の番号は、「最終見解」全文通しの段落番号。63が最終段落)
(原文)
E.Suggestionsandrecommendations
34.TheCommittee urges the State party to consider the withdrawal of its reservations to articles7(d),8(2) and 13(2)(b) and (c)oftheCovenant.

【資料4】国際人権規約批准承認時の国会審議での外務大臣答弁(1979年)
(※土井たか子議員(社会党二当時)の質問に答えて)
○園田直国務大臣
 これは、将来にわたって大事なことでございますから、外務大臣から発言をしておきたいと存じます。
 この人権規約の批准が他国に比べて非常におくれたことを遺憾に思っておるものであります。そこで、だんだん国際情勢、考え方が変わってまいりまして、人間の基本的な人権というものが、やはり政治、外交の中心になってだんだん上ってきた時期に、この批准がおくれていることは、他国と同等の外交というものがなかなかできにくい。そこで、当然、この人権規約というものは、留保条項なしに批准をするのが望ましい姿ではありますけれども、残念ながら、時間その他の関係で政府部内の意見が統一をできなかったということを恥じておるわけであります。いずれにしましても留保事項で、二国間の留保事項では漸進的に解消、解除されていくということがある場合とない場合があるわけでございますが、この人権規約については、留保した事項は、残念ながら留保したわけでありますから、これは当然、将来、法的な解釈その他は別として、解除する方向に努力をし、また、そういう責任があるということで、とりあえずこのような姿で批准、審査をお願いしておるということを明瞭にいたしておきます。
(衆議院一外務委員会一4号(昭和54年03月16日〉議事録より抜粋〉

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【資料5】国際人権規約批准承認時の国会附帯決議
経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約の締結について承認を求めるの件及び市民的及び政治的権利に関する国際規約の締結について承認を求めるの件に対する要望決議(1979年5月8日衆議院外務委員会〉

 国際人権規約を批准するにあたり、人権及び基本的自由の尊重は、日本国憲法を支える理念の一っであることを十分認識し、政府は、左の事項につき誠実に努力すべきである。
一、国際の平和と人権の尊重が不可分の関係にあるとの立場に立脚し、人権及び基本的自由の国際的保障を確保するために、一層の外交的努力を行うこと。
一、国際人権規約において認められる諸権利の完全な実現を達成するため、当該規約の規定に従って必要な国内的措置を講ずること。
一、すべての者は法の前に平等であり、人種、言語、宗教等によるいかなる差別もしてはならないとの原則にのっとり、外国人の基本的人権の保障をさらに充実するよう必要な措置を講ずること。
一、男女平等の原則に基づき、政治・経済・社会・教育等あらゆる分野における婦人の権利の伸張に一層の努力を行うこと。
一、国際人権規約の留保事項につき、将来の諸般の動向を見て検討を行うこと。
一、任意的調停制度の宣言(B規約四十一条宣言)について、その制度の運用の実情を勘案し、積極的に検討すること。
一、選択議定書の締結については、その運用状況を見守り、積極的に検討すること。

*日本育英会法案に対する附帯決議(衆院文教委員会1984年7月4日、参院文教委員会7月26日〉においても、「国際人権規約第十三条2(b〉及び(c〉については、諸般の動向をみて留保の解除を検討すること。」と謳われています。


Posted by 管理者 : 掲載日時 2005年02月28日 00:17 | コメント (0) | トラックバック (0)
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2005年02月15日

東京私大教連、NHK番組改変問題の徹底的な真相究明を求める声明

東京私大教連
 ∟●NHK番組改編問題の徹底的な真相究明を求める声明(05年1 月28日)

NHK番組改変問題の徹底的な真相究明を求める声明

2005年1月28日
東京私大教連中央執行委員会
(東京地区私立大学教職員連合)

 日本放送協会(NHK)が2001年1月に放送した、女性国際戦犯法廷を取り扱った特集番組「問われる戦時性暴力」の改変問題が波紋を広げている。
 事の発端は番組改変問題を取り上げた1月12日付朝日新聞記事と、翌13日に行われた当該番組の担当プロデューサーであった長井暁氏による内部告発の記者会見である。いずれも、安倍晋三内閣官房副長官(当時、現自由民主党幹事長代理)と中川昭一衆議院議員(当時、現経済産業大臣)が放送前にNHKに政治的圧力をかけ番組を改変させた、と告発している。
 当該番組の改変が行われたこと自体は、実際に安倍氏らと会ったとされるNHK幹部も認めている。問題は政治家による圧力があったか否か。仮に政治的圧力があったとして、その結果当該番組の改変が行われたか否かである。この点についてNHK幹部と安部氏らはともに政治的圧力の存在を否定しており、朝日新聞記事と長井氏の主張とは真っ向から対立している。
 この間の報道を通じて、①NHKに国会対策担当の職員がいる、②国会議員に予算および事業計画を説明する際、担当局長が役員を同行させている、③事業計画の説明等に付随して今後放送される番組の説明を行っている、④上記②および③は通常行われており、業務遂行の範囲内である、⑤当時、NHK幹部は自由民主党の国会議員でつくる「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」幹部の下村博文衆議院議員や古屋圭司衆議院議員などにも放送前に会い、当該番組の説明をしていた、ことが明らかになった。これらの事実は、NHKと政権党内の一部有力議員との癒着を如実に物語るとともに、当該番組は言うに及ばずNHKの番組全般に政治的圧力がかけられてきた疑いを抱かせるものである。
 日本国憲法第21条は、「一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない」と定めている。また、放送法第3条は、「放送番組は、法律に定める権限に基く場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない」と定めている。さらに、昨年発覚した一連の不祥事を受けて制定されたNHK倫理・行動憲章は、「外からの圧力や働きかけに左右されることなく、みずからの責任において、ニュースや番組の取材・制作を行い、豊かで質の高い放送番組を提供します」と謳ってもいる。
 これまでに明らかになった上記事実だけを見ても、放送前に当該番組の説明を政権党の一部有力議員に行っていたNHKの姿勢は、放送の自律を定めた放送法の精神に背き、自ら定めた倫理・行動憲章に明確に違反すると言わざるを得ない。NHKは厳格に倫理・行動憲章にしたがい、政権党の一部有力議員との癒着を断ち切るべきである。同時に、事は放送の不偏不党、公正、中立の根幹に関わる重大な問題である。憲法と放送法に明確に違反する公共放送に対する政治的圧力があったのか否か。仮に政治的圧力があったとして、その結果当該番組の改変が行われたか否か。私たち東京地区私立大学教職員連合(東京私大教連)は、国会が事の重大性を深く認識し、徹底的な真相究明を早急に行うよう要求するものである。


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2005年01月21日

全大教、国立大学の学生納付金改定に関わる文科省会見

「意見広告の会」ニュース242より

国立大学の学生納付金改定に関わる文科省会見

2005年1月19日

各単組委員長 殿

全国大学高専教職員組合
書記長 森田 和哉

 全大教は1月18日に「国立大学の学生納付金据え置きを求める要望書」(別記参照)にもとづく会見をおこないました。
 出席者は、全大教から斉藤副委員長、森田書記長、藤田・森戸書記次長、文科省から国立大学法人支援課の池田企画官、真子課長補佐、尾藤課長補佐、尾川教育振興係長、田畑総括係長、佐藤庶務係長でした。以下、会見の内容を報告します。

文科省 提出された要望書にお答えします。財務省との折衝の結果、国立大学の学生納付金標準額について来年度から1万5,000円を引き上げ53万5,800円とする省令改正を年度内に実施する。学生納付金標準額の改訂を含めた平成17年度予算内示については昨年12月下旬に各大学に送付した。
文科省としては、国立大学の役割は従来と変わっていないという認識で学生納付金据え置きの予算要求をした。しかし、財務省は、これまでは2年に1度の学生納付金改定があったこと、私立大と同じ土俵でというイコールフッティング論、受益者負担の観点から学生納付金を引き上げるべきとの主張があり、協議の結果今回の学生納付金標準額の引き上げに至った。
全大教要望書に、国立大学法人法等成立時の附帯決議で「学生納付金については、……適正な金額、水準を維持する」との指摘があるが、今回の授業料の改定は「適正な金額、水準」の範囲内を確保していると考える。

全大教 授業料の引き上げには反対である。法人になっても従来と同じように引き上げられると、授業料と入学金引き上げの悪循環が始まるのは必至である。

文科省 引き上げなくてすめば良かったが、国の財政事情等が許さなかった。但し、学生納付金の引き上げを2年に1度行うことはルール化されているわけでない。入学金などは私立大では最近引き下げの傾向があり、国立大学も最近は改定していない。

全大教 勤労者の賃金ベースが上がっていない中で授業料を引き上げるのは問題である。受益者負担を主張しているが、文科省の中教審「我が国の高等教育の将来像(中間報告)」でも「高等教育の受益者は学生個人のみならず社会全体であ驕vとしている。

文科省 私どもが受益者負担論を言っているわけではない。なお、学生納付金改定分は各大学の自己収入の増収分となる。学生納付金を改定しない場合はその分について、運営費交付金の減額が予定されていたが、財務省等と交渉し、今回は減額をしないこととなった。学生納付金改訂は運営費交付金に影響しないようにさせた。

全大教 授業料の引き上げをしない大学でも運営費交付金は減額されないということか。

文科省 授業料の引き上げを行わない大学は自己収入の増加分がないだけで、営費交付金は変わらない。運営費交付金の全体を見れば、学生納付金の標準額改訂による増額分81億円は、本来は運営費交付金から減額される分だが、上述したように今回は減額しないことで財務省との間で決着した。この81億円の10%については全大学に配布する。90%分は移転経費などの「特殊要因経費」として配布する。学生納付金標準額の改定分について運営費交付金の減額に連動させない今回の措置が今後どうなるかはこれからの検討交渉課題となろう。

全大教 文科省として授業料に関わって各大学を指導するようなことはないと考えるがどうか。

文科省 指導するようなことはない。各大学で検討中のようである。

全大教 2005年度大学関係予算の主な特徴はどうか。

文科省 平成16年度と比べて平成17年度運営費交付金では、特別教育研究経費(45億円増)、教育研究経費等(46億円増)の一方で、効率化係数(97億円減)や経営改善係数(92億円減)により差し引きマイナス98億円となっている。事業費総額ニしては91億円の増となっており、全体でみると国立大学の水準を何とか確保できたと考えている。(別記予算資料を参照)

最後に、引き続き適時、会見を行うことを確認して終了した。

全大教文科省会見報告に見る文科省の欺瞞

『予算・授業料情報』No.14(2005年1月20日発行)

国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

 全大教は森田書記長名による19日付の各単組委員長あての「国立大学の学生納付金改定に関わる文科省会見」の中で18日の会見内容を伝えている。そ
れによると、

【文科省】 授業料の引き上げを行わない大学は自己収入の増加分がないだけで、運営費交付金は変わらない。運営費交付金の全体を見れば、学生納付金の
標準額改訂による増額分81億円は、本来は運営費交付金から減額される分だが、上述したように今回は減額しないことで財務省との間で決着した。この81億円の10%については全大学に配布する。90%分は移転経費などの「特殊要因経費」として配布する。学生納付金標準額の改定分について運営費交付金の減額に連動させない今回の措置が今後どうなるかはこれからの検討交渉課題となろう。
s
とある。ここに示された文科省の回答は欺瞞に満ちている。重要なセンテンスについて緊急に検討しておく。「  」が文科省回答、◎が本事務局コメント。

「授業料の引き上げを行わない大学は自己収入の増加分がないだけで、運営費交付金は変わらない。」

◎これは当然であり、文科省の「功績」での何でもない。なぜなら、運営費交付金は既に値上げを前提にその分縮減されているからである。国立大学法人全体については、本事務局配信の「文科省資料A」(http://www.shutoken-net.jp/041229_5b_jimukyoku.pdf)の「収入欄」(左のコラム)を参照して頂きたい。個別大学法人については、各大学宛の内示額(書式はhttp://www.shutoken-net.jp/050106_2naiji.pdf)のg項に「授業料標準額改定増収額」が減額要因として記入されている。例えば東京大学の場合、運営費交付金の算出式のg項には351,990千円が△減印付で計上されている。要するに、「値上げを見込んで運営費交付金を減らしているのに、値上げしないなら大学の収入は減りますよ」ということなのである。

「運営費交付金の全体を見れば、学生納付金の標準額改訂による増額分81億円は、本来は運営費交付金から減額される分だが、上述したように今回は減額しないことで財務省との間で決着した。」

◎これは奇怪な回答である。上記のように、そしてまた本事務局が『予算・授業料情報』No12の末尾で強調したように運営費交付金は授業料値上げ増額分を見込んで、既に減額されているのである。この上、さらに同額分を個別大学の運営費交付金から減額することなど、公表されている運営費交付金算出の仕組みからしてあり得ない。そのような主張を財務省が行っているのであれば、それは大問題であり、文科省はその詳細な事実を直ちに公表しなければならない。もし、財務省がそのような主張をしていないのであれば、文科省が大学に対して嘘をついているのである。

「この81億円の10%については全大学に配布する。90%分は移転経費などの「特殊要因経費」として配布する。」

◎こんなことは「文科省の手柄」でも何でもない。むしろ、授業料値上げは、概算要求で提出した特殊要因経費が大幅に削減された分を補填するためではないかという本事務局の分析(『予算・授業料情報』No12)の正しさを問わず語りに示しているのである。

「学生納付金標準額の改定分について運営費交付金の減額に連動させない今回の措置が今後どうなるかはこれからの検討交渉課題となろう。」

◎これは文科省の全くの嘘である。上記のように両者は完全に連動している。「これからの検討交渉課題となろう」と“脅迫”することによって、「今回、文科省も頑張ったのだ」と思わせようとする文科省の許し難い欺瞞的態度が現れている。

『予算・授業料情報』No.15、授業料値上げ推進側の言い分はここがおかしい(2005年1月20日 国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局)

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2005年01月17日

全大教、中教審「大学の教員組織の在り方について」(審議経過の中間的な整理)に関する意見

全大教
 ∟●中央教育審議会「大学の教員組織の在り方について」(審議経過の中間的な整理)に関する意見(05/01/09)

中央教育審議会「大学の教員組織の在り方について」(審議経過の中間的な整理)に関する意見

2005年1月9日
全国大学高専教職員組合中央執行委員会

 全国大学高専教職員組合は、その前身である日本教職員組合大学部時代から、大学教員の職のあり方とその待遇改善について取り組みを進めてきました。とりわけ、助手制度とその実態からの乖離の改善、助教授の果たしている役割にふさわしく準教授という名称への変更は焦眉の問題としてきました。国立大学の法人化に伴い、自律的制度設計が可能となった現時点で、「今後の大学教員の職としては、教育研究を主たる職務とする職として教授、准教授及び「新職」(自ら教育研究を行うことを主たる職務とする)の3種類の職と(従来どおりとすることが適切な)講師を置くこと」という今回の提案は時宜にかなったものといえます。
 しかし、同時に出された講座制・学科目制とに代わる規定の制定と助手の分化等が、大学の研究教育の充実と教職員の待遇改善・地位確立につながるかどうかが問われます。

(1)学校教育法上、現在の大学の助手の職務内容は、「教授及び助教授の職務を助ける」と定められている、助手の教員組織における位置付けは曖昧であり、どのような種類の職務をどの程度担っているかは、各分野、各大学、各助手によって異なっており、無権利的な制度的・財政的制度とあいまって、様々な問題が出ていることは、私たちも長年指摘してきたとおりです。
 将来の大学教員や研究者を志し、自ら教育研究を行うことを主たる職務とする者にとって、助手の職が将来の教授等につながる職として明確に位置付けられておらず、自ら教育研究を行うこと以外に教育研究の補助や研究室の事務等の様々な職務を行わざるを得なかったり、大学教員と明確に位置付けられていないため授業科目の担当者になれない等の問題があります。
 また、「学校教育法上の「助ける」という職務内容の規定も曖昧かつ抽象的であり、実態を適切に表すものではなく、「助手」という職名も、将来の大学教員や研究者になることが期待される者の職名としては、国際的に通用性を有するものではない。」との指摘は適切なものでありますが、「将来の大学教員や研究者を志」す者にとって、おおくの分野でわが国においては、この「助手」の職を経由する以外に職を得ることが極めて困難であり、やむを得ず矛盾を抱えたままそれに就かざるをえないという現状があります。
 これらを勘案すると、「現在の助手の職を、自ら教育研究を行うことを主たる職務とし、将来の大学教員や研究者となることが期待される者として位置付ける職と、教育研究の補助を主たる職務とする職に明確に分けることが必要である。その上で、前者の自ら教育研究を行うことを主たる職務とする者については、国際的な通用性を踏まえつつ、その職名や職務内容を定めることが適当である。」との提案は妥当なものであります。自ら教育研究を行うことを主たる職務とする者については、その職務に相応する位置付け(職名、職務内容等)の新しい職(「新職」)を、学校教育法上に設けることが適当でありますが、それにふさわしい処遇(制度的、それを実質的に支える財政的基盤の確立等)が前提されねばならないことは言うまでもありません。若手教員の養成においては、教育面と研究面の両方が重要であることは当然であり、「新職」の学校教育法上に規定する職務内容としては、教育と研究の両方とすること(例えば、これまで助手には排除されていた、授業科目を独立に担当することができるなど)が適切であるというより必要な前提であると考えます。
 この「新職」は、制度上、将来、准教授、教授へつながるキャリアパスの一段階に位置付けられるものであるとしても、大学院博士課程修了後、ポスドク(PD)等を経た者などにのみ限定されるものでなく広く有能な者を求めるべきであります。各大学においては、「新職」が自らの資質・能力を十分に発揮できる活躍の場や一層の研鐙の場となるよう積極的に活用するためにも有能な人材を見つけ・育てる能力を向上させる組織的・制度的なシステムを作り上げることが緊急の課題です。
 採用や昇進等に当たっては、責任の所在を明確にしつつ公正かつ厳格な教員評価を行うことが必要であり、昇進のための審査を定期的に行うことや、一定期間ごとに適性や資質能力を審査する制度を明確にすることは必要なことですが、「新職」に期間を定めた雇用(任期制)や学内昇格を原則として行わない制度を一律に導入することなどは、それぞれの実情に応じて、各大学が各分野・部署ごとに判断するべきものであり、安易に制度化することは避けるべきであります。

(2)しかし、現在の助手を「教育研究の補助を主たる職務とする職」に「明確に分けること」場合に、とくに現在の輻輳した「助手」職にあるものを何を規準に区分するのかを含めて、困難な問題が多々あります。現行の助手が担っている職務のうち、教育研究の補助は、大学教員が教育研究に集中できる環境を醸成する上で極めて重要であり、わが国において「教育研究支援者」が他の先進国に比べて著しく低劣であり、つとに指摘されているにもかかわらず改善されていない現状を考えるならば、教育研究の補助を主たる職務とする「(新)助手」を学校教育法上に規定することには異存はありませんし、今後の大学の発展の一翼を担っているともいえます。
 ただ、そのことで「(新)助手」のポストにかかわる教員数や、国から支出される運営交付金等)の資金等が削減されることがあってはなりません。
 助手の2種の「職」への区分をどのようにして行うのか、それらの間の相互転換がありうるのかどうかも問題です。区分けする場合に本人の意向を尊重することを当然の前提として、たとえば国立大学法人においては、教授会・研究教育評議会の審議を尊重して教員の採用・昇格等にかかわる手続きをとり、公平性・透明性が保証されるものでなければなりません。その場合、本人・組合等の異議申立権を保障することが不可欠です。
 職務内容についてはおおむね中間的整理のとおりでいいと思いますが、学問分野・部署ごとに更なる検討が必要でしょう。処遇について給与表については、現在の「教育研究支援者」とみなされる技術職や一部事務職員等とともに職員の給与表の適用が、上に述べたこれまでの経緯や実際に彼らが行う職務の実態も踏まえればいいのではないでしょうか.「教育研究支援者」の抜本的待遇改善が前提とされるべきことは言うまでもなく、すくなくとも「(新)助手」が現在得ている賃金待遇等は維持されるのが最低限のものです。職名も「教育研究支援者」集団にふさわしいものとされるべきでしょう。

(3)助教授を新設される「準教授」にして学校教育法に盛り込むことに異議はありません。とくに、「教授の職務を助ける」ことを主たる職務とする現在の助教授に替えて、「学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する」ことを主たる職務とする「准教授」を設けることが適当であり、それにふさわしい処遇がもとめられます。
 准教授を設けた場合の教員の分担及び連携の組織的な体制の確保についてもおおむね妥当で、先の「新職」もふくめた教員集団が、教育・研究の単位集団として、とくに学問分野ごとに組織される学生等の集団に対する教育において有効に働くように格段の先見性と工夫が必要でしよう。

(4)これまで述べてきたように准教授、新職の考え方は望ましい方向に思えます。難しいのは、講座制・学科目制の廃止がセットになっているところです。国立大学において、講座制や学科目制が、国の行財政上の仕組みを用いた利益誘導的取り扱いと相侯って、人事、予算、教学面等の様々な側面において硬直的・閉鎖的・恣意的な運用を招き、教育研究の進展をめざす組織編制や教員人事への自主的・自律的な取組みを阻害してきたことは永く指摘されてきました。いっぽうでは、講座制・学科目制によって従来の定員や研究組織がそれなりに安定的に守られて来た事実もあり、廃止の目的は教員組織の大胆な「合理化」にあると懸念されることであり、定員の確保や組織の安定的な運営に欠けるものであってはならないことがどう保証されるかに関わってきます。
 大学の使命を果たすためには、とりわけ学生等の教育には、教員集団として対処すべきであり、そこでどういう役割を果たしていくかが、「教員組織のあり方」の基本的なことであり、個々の教員のあり方もその中で規定されてくるものです。
 現在の大学設置基準では、詳細に定められている講座制又は学科目制の規定を削除するとすれば、教員組織の基本となる一般的な在り方として少なくとも次の点は最低限守られるべきであります。
 すなわち、教授、准教授、「新職」等のすべての教員が同等の権利を持つ自立した存在であることが制度的(それを支える財政的処置を含む)保証を前提とした上で、教員組織の編制に当たり、それぞれの教育研究上の目的を達成するために役割の分担及び連携の組織的な体制がその構成員が自主的な合意によって確立され、かつ、研究・教育・運営についての責任の所在が明確でなければなりません。運営に関しては教授がその責任を果たすことは当然ではありますが、教授回答への参加は、少なくとも教授・準教授は同等であり、「新職」の参加も検討されるべきことでしょう。
 教育研究上の目的を達成するため、必要な数の教員と組織を置くことを各大学が自律的に決めた場合、文部科学省をはじめとした政府関係者は(財政的処置を含めて)その実現を図らねばならないことを明確にすべきです。


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全大教、「我が国の高等教育の将来像(中間報告)」に関する意見書

全大教
 ∟●「我が国の高等教育の将来像(中間報告)」に関する意見書(05/01/06)

「我が国の高等教育の将来像(中間報告)」に関する意見書

2005年1月6日
全国大学高専教職員組合中央執行委員会

 私たち国公立高等教育機関で働く教職員は、高等教育における教育研究が将来にわたり、一層充実することをめざして勤務しています。昨年4月に法人制度に移行した国立大学・大学共同利用機関・高専について、どのような高等教育の将来像が描かれるかを、重大な関心をもって受け止めており、その立場から、『我が国の高等教育の将来像(中間報告)』(以下『中間報告』と略記します)について、以下に意見を申し述べるものです。

1.高等教育への公財政支出
 私たちはかねてから人類と地域社会の負託に応える高等教育の新たな構築をはかるため、高等教育予算の拡大をはかることを求めてきました。この問題に関連して、『中間報告』が、現代社会において高等教育を社会の基盤と位置づけ、「高等教育を受けた人材によって支えられる現在及び将来の社会もまた受益者」として、公財政支出の抜本的な拡充をとなえており、とりわけ、欧米並みの公財政支出には及ばないだけでなく、OECD加盟国平均である対GDP比の約1%を遙かに下回り、最低位に属していることなどを資料により提示していることは、大きな意義があると言えます。
 ただし、高等教育への公的財政支援を具体的にどのように充実していくかについて、『中間報告』に示される方向性が、いくつかの問題点を内包していることを指摘せざるをえません。財政支援の具体的内容として、「高等教育への公財政支出の拡充と民間資金の積極的な導入」、「国公私を通じた競争的・重点的支援」を挙げています。こうした競争的経費と外部資金獲得の傾向を強めることが、基礎研究と先端研究のバランス、教育と研究の結合にどのような影響をもたらすかは慎重に検討されるべきです。一つには、経済活性化につながる特定の先端的研究領域の偏重が生じ、結果として、基礎的な研究や教育が軽視され、教育と研究の一体性が弱体化する可能性が危惧されます。また、上述した高等教育に関する国の財政支援策の受容がそれぞれの大学から「自発」的に促進され、この結果として行政の高等教育機関への介入がむしろ一層強化され、学術文化の発展に偏りが生じることも危惧されます。
 とりわけ、昨年4月に法人化し、現場での教育研究経費の減額という現実に直面している国立高等教育機関の教職員にとっては、何よりも基礎的基盤的経費の充実が必要不可欠であり、この点の十分な強調が必要と考えます。

2.大学の機能別分化と大学間格差是正
 『中間報告』は、「個性・特色ある大学の機能別分化」をとなえ、「各大学は、固定的な『種別化』ではなく、保有するいくつかの機能の間の比重の置き方の違い(二大学の判断に基づく個性・特色の現れ)に基づいて、緩やかに機能別に分化していくものと考えられる。」としています。各大学が機能の比重の違いにより、自身の将来像を形成していくとしていることは、各大学の自律性と多様な実態を見据えた現実的な展望であると考えます。
 ただし、大学間にはすでに格差構造があり、旧帝大を頂点とする財政規模格差、都市・地方などの地理的社会的条件による格差が従来から実質上各大学を規定しています。そうした条件から自由に、大学が自身の判断で個性を機能させる余地は低いという現実を指摘せざるを得ません。この点でも、公財政支出が「国公私を通じた競争的・重点的支援」とされている点は問題です。それぞれの設置形態内部にある格差構造をそのままにして、国公私を一つにまとめても、既にある格差解消どころか、むしろ国公私を巻き込んだ弱者切捨てに拡大していくことが危惧されます。
 大学間地域格差について『中間報告』は、「地方における高等教育機関は、教育サービスの提供の面だけでなく、地域社会の知識・文化の拠点としての役割をも担っていることに留意する必要がある。」とし、「地域社会の二一ズに十分応えるべき分野(例えば医療・教育等)や、需要は少ないが学術・文化等の面から重要な学問分野については、国として全体的なバランスが図られるよう配慮していかねばならない」として、市場原理では解決できない高等教育の特性を訴えている点は重要です。とくに地方国立大学について、地域ごとの社会経済的な差異にもかかわらず、公的財政支援により、人材養成および文化・学術の面で、地域における拠点として一定の機能を果たすことができていることを、私たちは重視しています。今後、教育研究の両面において、地域間大学格差を縮小させるような公的支援の具体策が必要と考えます。

3.評価と資源配分について
 『中間報告』は事前規制から事後チェックヘという高等教育政策の流れにおいて、「高等教育の質の保証が課題となる」としています。しかし、高等教育機関における教育研究の充実に資する評価のあり方には、なお十分な政策的検討が必要です。一つには、国立大学法人法案等関係6法案の国会審議で附帯決議が行われた経緯にも明らかなように、評価における公正性・透明性確保の問題があります。国立高等教育機関の評価機構と資源提供者が未分離であることにより、学問の自由と大学等の自治が、財政誘導によって実体のないものとなることが危惧されます。公正な評価制度の確立には、資源配分の算定基準を公表するとともに、大学等からの意見申し立ての機会を十分保障すること、基礎的基盤的分野については、短期的評価による資源配分の対象とせず、教育、研究の総合的で均衡ある発展を支えるに足る財政措置を行う必要があります。
 私たちは、評価と資源配分機関が直結する現在の方式を見直し、少なくとも、資源配分については、その自律性を高める立場から、大学・高等教育関係者が担うよう改める必要があると考えます。例えば、国大協、全大教など教職員の組織が関わるかたちで、大学関係団体自身が機能を果たしていく必要があると考えます。
 また、『中間報告』は「認証評価制度は事後チェックの中核としてきわめて重要」と位置づけています。しかし、現行認証評価制度では、評価機関の許認可権を政府が掌握し、評価基準の設定や運用に国が実質的に関与するなど、国による大学の管理統制を強め、結果として学術研究の本質をゆがめる可能性があることに『概要』は十分な検討を加えてはいません。ただし、『中間報告』は、分野別評価に限定してではありますが、「学協会等関係団体の協力」を求め、「評価する側の質の高さや適正さを担保するための仕組みを整えること等がより重要となろう」と評価機関のあり方は検討課題としています。私たちは、認証評価における国の関与を、これ以下であってはならないという最低基準を示すという意味での適格認定にとどめるとともに、評価基準の作成と運用の両面において、第三者とともに、大学・高等教育関係者の参画が不可欠と考えます。


Posted by 管理者 : 掲載日時 2005年01月17日 00:09 | コメント (0) | トラックバック (0)
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2004年12月27日

京滋私大教連、「非常勤講師問題・青年の雇用問題」と高等教育における「二〇〇六年問題」で発言

京滋私大教連
 ∟●機関誌No95(2004.12.20号) より

「非常勤講師問題・青年の雇用問題」と高等教育における「二〇〇六年問題」で発言
京滋私大教連執行委員長 細川孝

 一一月二一日、日本私大教連の第一七回定期大会が開催され、京滋の代議員の一人として参加してきました。昨年は校務のため不参加でしたので、初めての定期大会参加です。運動総括や運動方針の討議など、教職員組合の大会としては、こく当たり前の内容なのですが、全国的な動向を知ることができる点で違っています。これまで春闘フォーラムや教研集会などに参加する機会があり、他の地域の話を聞くこともありましたが、やはり定期大会となると雰囲気が違っています。ここでは、今回の定期大会で私が発言した内容を紹介し、報告に代えさせていただきます。
 まず、非常勤講師問題についてです。今年度、私大助成経常費補助金の一般助成において、「非常勤教員給与費」の予算単価が一・五倍化されました。また、厚生労働省が雇用主に対して、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の均等待遇に向けた改善を進めることを求めた「パートタイム労働指針」が示されました。またマスコミでも非常勤講師問題は注目されています。このような下で、日本私大教連として、非常勤講師の労働条件改善にどう取り組むかの検討を深めてほしいと要望しました。この問題については、大阪私大教連(関西圏非常勤講師組合)と東京私大教連の代議員からも発言がありました。
 そして、青年の雇用問題についての取り組みについてです。これは、フリーターだけでなく最近では「二ート」と呼ばれる青年層が増加しているということ、また劣悪な労働条件で働いている(働かされている)青年の問題を、高等教育機関に働く者としてどう受け止め、取り組んでいくかということです。教学改革の課題として重要な問題が提起されていると阿時に、政府や経営者団体に対する要請を行なうなどの取り組みも必要ではないかという趣旨の発言を行ないました。
 さらに高等教育における無償教育の漸進的導入、教育における過度の競争性の排除という、国際的な対応が迫られている二つの「二〇〇六年問題」への対応です。この問題は私立大学・短期大学だけでなく、日本の教育に関わる人々が協力、共同して取り組まなければならない課題です。全国組織として、そのような方向で運動を展開していくよう要望しました。また、無償教育の漸進的導入の問題については、私学助成署名の内容とも関わっていることを強調しました。
 以上の三点は、私の個人的な関心であるという側面が強いかもしれませんが、京滋私大教辿の運動にとっても重要な課題であるように感じています。一二月一七日に予定されている定期大会で、議論いただければ幸いです。
 最後に、参加代議員の発言で最も印象に残ったものを紹介します。それは、大阪私大教連の野中一也委員長の発言です。大学・短期大学に働く教員として、そして職員として、今日の情勢の下で、どのような固有の役割が期待されているのかを明らかにする必要がある、という趣旨のものでした。教職員組合運動のこれまでの蓄積をどう継承し、創造的に発展させるか、が問われているという思いを強く持ちました。


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2004年12月24日

日本私大教連、12・7私大助成中央請願行動の概要報告

12・7私大助成中央請願行動の概要報告

12・7私大助成中央請願行動の概要報告

文科省・財務省・私学関係団体へ
私大助成・高等教育予算の拡充、国際人権規約無償化条項の留保撤回などで要請・懇談

 小春日和の穏やかな天候に恵まれた12月7日(火)、日本私大教連は、私大助成・高等教育予算の充実、国際人権規約の高等教育無償化条項の留保解除、などの事項を掲げ、今年度3回目の私大助成中央要請行動を行いました。行動には、東京・東海・京滋・大阪の4地区および日本私大教連中央執行委員会から22名が参加しました。参加者は5つの班にわかれ、文部科学省財務省、私大協会、短大協会、私学振興・共済事業団へ要請を行いました。

 【参考】12・7中央要請行動資料集 (PDF版/Word版)


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2004年12月20日

全大教、国立大学の学生納付金据え置きを求める要望書を関係機関に提出

全大教
 ∟●内閣総理大臣
 ∟●文部科学省
 ∟●財務省

2004年12月15日

内閣総理大臣
小泉純一郎殿

全国大学高専教職員組合
中央執行委員長関本英太郎

国立大学の学生納付金据え置きを求める要望書

 このことについて、政府は、従来、隔年毎に国立大学の学生納付金が改定されてきたこと等を理由として、2005年度から国立大学法人の学生納付金を引き上げる方向で、検討を進めています。
 学生納付金については、国立大学法人法成立時の国会での附帯決議において、「学生納付金については、経済状況によって学生の進学機会を奪うこととならないよう、将来にわたって適正な金額、水準を維持するとともに、授業料減免制度の充実、独自の奨学金の創設等、法人による学生支援の取組についても積極的に推奨、支援すること。」(2003年7月8日、参議院文教科学委員会)とし、教育の機会均等の立場から安易な学生交付金の引き上げを強く戒めています。また、欧米諸国では、学生納付金について、実質的に無償あるいは低廉なものとしています。
 私たちは、こうした観点から下記について緊急の要望を行うものです。


経済状況によって学生の進学機会を奪うことのないよう、国立大学学生納付金の引き上げを行わないこと。

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2004年12月13日

日本私大教連、財政制度等審議会「平成17年度予算の編成等に関する建議」に対する抗議声明

日本私大教連
 ∟●財政制度等審議会「平成17年度予算の編成等に関する建議」に対する抗議声明(2004年12月6日)

財政制度等審議会「平成17年度予算の編成等に関する建議」に対する抗議声明

意図的で浅薄かつ狭隘な議論にもとづく私大助成削減の建議を撤回し
私大経常費助成を削減するな

2004年12月6日
日本私大教連
(日本私立大学教職員組合連合)

 財政制度等審議会(以下、財政審)は11月19日、2005年度予算編成に関する「建議」をまとめ、谷垣禎一財務相に提出した。その中で財政審は、私立大学等に対する経常費補助について、学生数の減少を理由に、「予算縮減にむけ厳しく見直しを図るべき」との考えを示しているが、これは極めて意図的で浅薄かつ狭隘な観点に立ったものであり、到底容認することはできない。私たちはこれに断固として抗議するとともに、来年度予算編成において私大助成の削減を行わないよう強く要望するものである。

 そもそも私大助成は、私立学校振興助成法と国権の最高機関である国会の附帯決議により、経常費に対する2分の1補助の実現が行政の責務によるものとして要請されているものである。また、私大助成の趣旨と私立大学が担っている大きな役割に鑑み、国の責任として私学振興を図るべきことが国会においても繰り返し確認されてきた。

 しかし実際には、私立大学等の全経常費に占める補助金の割合は1980年の29.5%をピークに漸減し、ここ数年はわずか12%程度にまで落ち込んでいる。しかも経常費補助の内訳をみれば、私立大学等の教育・研究条件整備のための基盤的経費に対する補助である「一般補助」は20年にわたり抑制・削減され、2004年度予算では最高時(81年度予算)の8割程度にまで縮減されてしまっている。

 こうした法治国家における行政の責任をあいまいにしたままで、財政審の歳出合理化部会・財政構造改革部会合同部会(11月1日)では、「単なる機関助成から競争原理に基づく支援へ」財源をシフトするという文脈の中で、「学生数が最近非常に減少している」ことのみを根拠として、私学の経常費助成が特に「ポイント」になっていると槍玉に挙げている。そこでは、上述したような私大助成の経緯や現状、日本の高等教育において私立大学が果たしてきた、そして今後果たすことが期待される役割などについては、一切触れられていない。「法律」よりも「政策」を上に置き、補助金削減という命題を私立大学等経常費補助にあてはめんがために、学生数「減少」を引き合いに出しただけの、極めて杜撰な議論と言わざるを得ない。

 財政審が学生数減少の根拠としているデータは、私立大学等の学生総数から聴講生、選科生、研究生等を除いたものであり、その妥当性自体疑義をはさまなければならない。財政審は生涯学習社会への対応、社会人教育、優秀な大学院生の養成など必要ないとでも主張するつもりなのか。そのための経費支出など取るに足らないとでも言い張るのであろうか。また付け加えれば、財政審に資料として提出された学生減のグラフには、学生数の算出基礎も出所も注記されておらず、また議事録を見る限り口頭での説明もまったくされていない。あたかも、私立大学等の学生総数は増加しているという事実を隠蔽するかの如くである。

 百歩譲って、この恣意的なデータに基づいたとしても、私大助成削減の根拠とは決してなりえない。たとえば、このデータから学生一人当たりの経常費補助額を算出してみても、80年代前半には15万円前後だったものが、90年代には12万円台で推移し、ここ数年でようやく14万円台に回復したことがわかる。2004年度は14.6万円であり、この額は1984年度とほぼ水準である。同様に、「一般補助」の学生一人当たり補助額を算出してみれば、1980年度には14.9万円だったものが、2004年度ではわずか9.8万円でしかなく、大きく減少しているのである。

 これだけをとってみても、「学生数が減少しているのに補助金が増え続けている」などとは到底いえないのであって、財政審の議論がいかに意図的で浅薄かつ狭隘なものかが明らかである。

 私立大学は日本の大学教育の約75%を担っており、日本の高等教育において非常に大きな役割を果たしている。安直な補助金削減は、私立大学のみならず高等教育全体の水準低下、ひいては国力低下につながりかねない愚策である。

 私たちは、財務省がこうした愚策をおこなわないよう、あらためて強く要望する。そして、私大助成が長期にわたり極めて低い水準に抑制されてきた事実、そもそも日本の高等教育予算がOECDの中で最低の水準にある現実こそを見直し、それらを増額・充実させることが国の責務であることを訴えるものである。

以上


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2004年12月11日

全大教、国立大学法人等の運営費交付金問題等で関係機関へ要望書を提出

国立大学法人等の運営費交付金問題等で関係機関へ要望書を提出(2004/12/12日)

文部科学省
財務省
国大協

Posted by 管理者 : 掲載日時 2004年12月11日 01:43 | コメント (0) | トラックバック (0)
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全大教、社団法人国立大学協会臨時総会にあたって(要望)

全大教ホームページ
 ∟●全大教「社団法人国立大学協会臨時総会にあたって(要望)」

2004年12月8目

社団法人 国立大学協会
会長 佐々木 毅殿

全国大学高専教職員組合
中央執行委員長関本英太郎

社団法人国立大学協会臨時総会にあたって(要望)

 貴協会が、新たな法人制度のもとで大学・高等教育の充実・発展と教職員の待遇改善・地位確立に向けてご尽力されていることに対し心より敬意を表します。全国大学高専教職員組合(全大教)は、法人制度の下で、国立大学の教育研究が将来にわたり一層充実し、教育研究の営みに携わる教職員の労働条件・地位が改善・向上することをめざしています。

 国立大学等が今年4月に法人移行して約8ヶ月が経過し、重大な問題点が顕在化しつつあります。それは、効率化係数やrマイナスシーリング」等大学予算の今後の見通しが不透明になり、大学をめぐる競争的環境の中で、学長裁量経費等「全学プール経費」が増大し、現場研究費の減額、運営費交付金の算定上の「特定教員」削減の動き、非常勤講師手当相当額の減額による教育への影響、超過勤務手当の不足等教育研究の現場では様々な混乱と不安が生じていることです。
 すでにご承知の通り、2005年度以降については、文科省と財務省の協議により運営費交付金について、新たな算定ルールが導入されます。このことは、予算の「マイナスシーリング」問題と合わせて、大学の教育・研究・医療の充実と教職員の権利擁護にとって重大な問題を内包しています。

 即ち、予算は一部の概算要求事項(競争的資金を中心とした「特別教育研究経費」等)を除き人件費を含めて2004年度予算で固定され、それに効率化係数、経営改善係数が毎年加わる仕組みとされ、必然的に、各大学等は自己収入増に頼らざるを得ません。
 それは、第1に、産学連携等により、自己収入増が安定的に可能な大規模大学とそうでない地方大学等との格差構造がさらに拡大する危険性をもっています。
第2に、相対的に自己収入増大が可能な先端的・応用的分野と直ちに実用的ではないが、学問の普遍的発展の上で重要な基礎的・文化的分野との研究教育費の格差がさらに広がる危険性があります。
第3に、運営費交付金が削減される中で、r教員任期法」の無限定な運用拡大や職員の「サービス残業」の常態化、身分の不安定化等により、法人化が教職員のモラール低下を招くことが危惧されます。
 これらの問題点は、「大学の教育研究に対する国民の要請にこたえるとともに、我が国の高等教育及び学術研究の水準の向上と均衡ある発展を図るため」(国立大学法人法第1条)という設置目的に逆行するものであり、国立大学がこれまで果たし、今後一層その役割を発揮すべき総合的で均衡ある発展を阻むものと言わざるを得ません。
 また、度々指摘されている欧米に比して半分以下という高等教育に対する公的支出(GDP比0.5%)の増額も重要な課題です。

 貴協会の臨時総会にあたり、総会の趣旨をふまえ、予算問題に絞り要望を提出するものです。法人化を前にした2003年12月6日、国立大学協会は、臨時理事会を開き、「学長指名の返上をも念頭に置きつつ、重大な決意を持って」運営費交付金の算定ルールの見直しの問題点を指摘し、その充実等を求めるr運営費交付金の取り扱いについての要望」を決定し、文部科学大臣に提出され、そのr要望」は12月12日の臨時総会において全会一致で採択されています。こうした経緯もふまえ、貴協会におかれましては下記事項の実現について特段のご尽力をお願いする次第です。


1 国会での附帯決議や国立大学法人の設置目的をふまえ、学術研究の水準の向上と均衡ある発展をはかるため、国立大学等に対して、「マイナスシーリング」や効率化係数等を加えず、運営費交付金を増額すること。また、自己収入増に拍車をかける運営費交付金の算定ルールを見直すこと。さらに、大学附属病院の有する高度の公共性に鑑みて、収益第一主義につながる「経営改善係数」の導入は行わないこと。
2 政府の大学・高等教育に対する公費投入額について欧米並みに早急にGDP比1%とすること。
3研究教育の均衡ある発展をはかる立場から、過度の競争的資金重視政策ではなく、基礎的基盤的経費の充実をはかること。

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2004年12月09日

京滋私大教連、国庫助成の大幅な増額を求める共同アピール

京滋私大教連HPより

国庫助成の大幅な増額を求める共同アピール

今日、国内外の情勢が激動する中で、21世紀の社会発展とそれを支える人材を育成するために、高等教育が果たすべき役割はますます重要になっています。一方、規制緩和が急速に進むとともに、大学の持つ経済的な役割を一面的に強調し、国の国際競争力強化への貢献が求められています。また、学生・父母、地域社会や産業界など、大学が教育・研究活動をおこなう上でかかわる第三者への説明責任も強く求められています。

今年度より、国立大学の法人化と大学の第三者評価制度が、実行段階に移っており、国公私立大学は新たな局面を迎える中で、各大学は社会的な役割の発揮がいっそう求められています。また、学校教育法の改正により、大学設置基準が大幅に緩和されて以降、私立大学・短期大学(以下私立大学)において、多数の新たな学部・学科の設置申請が進むとともに、さまざまな専門職大学院の開設もおこなわれています。

一方で、1992年をピークに205万人だった18歳人口が、2009年までに120万人まで減少すると予測されている中で、私立大学の存立自体の危機も広がっています。文部科学省は、「大学全入時代」が、当初の予想より早まり2007年度に迎えることを明らかにしました。このような状況の中で、日本の高等教育全体をどのように発展させていくのかが、今まさに問われています。

しかし、現在の高等教育予算は、文部科学省も今年度の白書で認めるように、国際的に見ても極めて低い水準にあります。予算配分においては、21世紀COEなどの競争的資金においても、国立大学が圧倒的に優位な立場にあって、私立大学は厳しい状況に置かれています。わが国の私立大学は、学生数の75%、学校数の80%を占め、高等教育における中心的な役割を担っています。ところが、私大経常費への補助率は1980年度の29.5%をピークに減少し、2002年度にはその半分以下の12.2%まで低下しています。このように、私立大学への経常費補助があまりにも低水準であるために、多くの私立大学では教育・研究条件を充実させていくことが困難になっています。また、私立大学の学費は、国立大学法人の1.7倍あまりの水準にあります。

このように、大学運営の基盤的経費を削減・抑制する一方で、競争的予算を大幅に増額するだけでは、学生・父母の学費負担を軽減できないばかりか、学部間格差・大学間格差はますます拡大することになり、高等教育機関全体の発展をはかることはできません。わが国が文化、科学、技術の発展を通じて世界に貢献するためには、高等教育予算を欧米諸国並みの水準に引き上げるとともに、誰もが安心して充実した大学教育を受けられるように、私立大学の教育・研究条件を整備するための国庫助成を大幅に増額する必要があります。

また、現在の厳しい状況の中でこそ、今日までの高等教育機関の発展を支えてきた「学問の自由」と「大学の自治」の意義と役割を改めて見直し、高等教育機関に携わる全ての構成員の総意で、大学創造を進める必要があります。私たち大学教職員も、学生・父母の負担軽減のために出来うる取り組みを考えるとともに、社会的な使命を深く自覚して、大学間の協同と連帯を強める必要があります。

私たちは、本日のシンポジウムを通じて、教育・研究の充実、地域社会との連帯・協同、将来を見据えた新たな私立大学づくりを行うことで、厳しい時代を乗り越えて、社会的に広く支持される存在となるよう努力することを確認しあいました。本日の議論が、広く市民の皆さんに理解され、私立大学における教育・研究の発展と国庫助成の大幅な増額が実現することを心から求めます。

2004年12月4日(土)
関西私大助成シンポジウム2004
京滋地区私立大学学長懇談会
国庫助成に関する私立大学教授会関西連絡協議会
国庫助成をすすめる全国私立大学中央連絡会近畿ブロック

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2004年11月29日

日本私大教連、第17回定期大会特別決議「日本国憲法、教育基本法の改悪に反対し、日本の平和と民主主義を守ろう」

日本私大教連

日本国憲法、教育基本法の改悪に反対し、日本の平和と民主主義を守ろう

2004年11月21日
日本私大教連第17回定期大会

いま、戦後日本の平和と民主主義の礎を築いてきた日本国憲法と教育基本法を改悪しようとする動きが急速に強まっています。

日本国憲法は、戦前日本がアジアを侵略し、2000万人にものぼる犠牲者を出してしまったことへの反省の上に立って、戦争の違法化、人間の尊厳、基本的人権の擁護を掲げて制定されました。特に憲法9条は、戦争放棄、戦力の不保持、国の交戦権の否認を明文化して、「政府の行為によって、再び戦争の惨禍が起こることのないやうに決意」しました。

ところが、日本政府は、日本国憲法の平和と民主主義の枠組みをはずして、大幅な改悪を進めようとしています。11月16日、自民党憲法調査会は、憲法改正草案大綱の原案を明らかにしました。その中では、「個別的、集団的自衛権の行使をするための自衛軍の設置」や「国際貢献活動のための武力行使の容認」を定めるとともに、天皇を「日本国の元首とする」と明記するなど、現行憲法が掲げる平和と民主主義を、真っ向から否定する改正条文を提案しています。こうした憲法改悪の動きは、日本国憲法の存在がアジアにおける戦後の日本の立場と発展を支えてきた事実を否定することはもとより、日本とアジアの痛ましい歴史を何ら省みることのない愚行です。

 日本国憲法改悪の動きと並行して、教育基本法改悪の動きも進んでいます。今年6月、自民党と公明党の与党で構成する「与党教育基本法改正に関する検討会」が、中間報告をまとめました。報告では、検討の前提として「一部改正ではなく、全面改正を目指す」ことを明確な目的にしています。その上で、教育の目標に「国を愛し」「国を大切に」するという愛国心の精神を掲げています。さらに、戦後の民主教育の根幹である「教育の機会均等」、経済的地位による教育上の差別の禁止から、大きく後退する考えを示しています。しかし、「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期する」教育基本法の理念こそが、これまでの、そして、これからの21世紀社会の発展とそれを支える人材を育成する上で必要不可欠なのです。

 いま大切なことは、日本国憲法と教育基本法を正面から掲げて、平和主義の精神を日本から世界に向かって発信することです。憲法9条に示された内容は、国際的にも高い評価を受け、国連もミレニアム宣言で、憲法前文にある「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏を免れ、平和のうちに生存する権利」の理念を、各国が採用することを求めています。国内では、知識人・文化人の呼びかけによる「憲法9条の会」が発足し、全国各地で活動を展開するなど、平和と民主主義を守ろうとする人々の自発的な活動が大きなうねりになりつつあります。

 私たちは、日本国憲法を改悪して、海外での軍事行動をおこなういかなる体制づくりも許すわけにはいきません。私たちは、教育の現場で働く教職員が先頭に立って、平和と民主主義の日本国憲法と教育基本法を守る全国民的な運動に参加することを強く呼びかけます。

同定期大会特別決議「イラクからの自衛隊撤退を要求する決議」(2004年11月21日)

Posted by 管理者 : 掲載日時 2004年11月29日 00:10 | コメント (0) | トラックバック (0)
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