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2017年10月03日

「衆議院総選挙での立憲勢力の前進を求める」京都の大学人の声明

「衆議院総選挙での立憲勢力の前進を求める」京都の大学人の声明(PDF)

「衆議院総選挙での立憲勢力の前進を求める」京都の大学人の声明

2017年10月3日

 臨時国会の冒頭で、安倍晋三首相は衆議院を解散しました。安倍政権は特定秘密保護法、安保法制(戦争法)、共謀罪、軍学共同など憲法破壊の政治を強行し続けてきました。立憲野党はこの間、憲法第53条にもとづいて臨時国会の開催を要求してきましたが、安倍首相は政治の私物化=「森友・加計」疑惑の追及を恐れて不当にも冒頭解散するにいたりました。疑惑隠し解散以外の何ものでもありません。
 代表質問や予算委員会における質疑をいっさい行わずに解散・総選挙を行うという暴挙を厳しく批判したいと思います。同時に、この選挙を通じて、安倍政権を退陣に追い込み、日本の政治に立憲主義・民主主義・平和主義を取り返す機会にしていかなければならないと考えます。
 総選挙を目前にして、「希望の党」が結成され、民進党から「合流」するという事態が生じています。憲法の改変や安保法制の容認を掲げる小池百合子氏らの政策を見れば、安倍政権が進めてきた政治を転換するものとは言えないことは明らかです。わたしたちは「市民と野党との共闘」にもとづいて立憲勢力が前進することが不可欠と考えます。
 この点で、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」が9月26日に、民進党、日本共産党、自由党、社民党に申し入れした「衆議院議員総選挙における野党の戦い方と政策に関する要望」に示された方向が重要と考えます。「要望」では、憲法とりわけ9条の改変反対、安倍政権が行った立憲主義に反する諸法律(特定秘密保護法、安保法制、共謀罪法など)の白紙撤回、原発再稼働を認めないなど7つの政策を示しています。そして、4野党がこれらの政策を「重く受け止め、安倍政権を倒すという同じ方向性をもって、全力で闘うことを求めます」と述べています。
 今回の衆院選にあたって、政党の解体や新党の結成がどのようになされようとも、立憲主義を重んじる野党や無所属の候補者が、市民連合の「要望」に示された方向で選挙を戦われることに希望を見出したいと思います。そして、わたしたち自身が政治の主役であることを改めて確認したいと思います。
 わたしたちは、この間、安保法制や共謀罪、軍学共同に反対する運動を通じて、京都の大学人の共同を進めてきました。そのような前進を基礎にしつつ、衆議院選挙において、思想・信条の自由を前提にしながら、市民社会とともに立憲勢力の前進を求めて奮闘していく決意を表明するものです。

【呼びかけ人】         
池内了(総合研究大学院大学名誉教授)       
碓井敏正(京都橘大学名誉教授)         
岡田直紀(京都大学准教授)     
岡野八代(同志社大学教授)      
木戸衛一(大阪大学准教授)            
木下由紀子(神戸女子大学名誉教授・京都大学非常勤)
小松浩(立命館大学教授)              
宗川吉汪(京都工芸繊維大学名誉教授)       
高山佳奈子(京都大学教授)             
細川孝(龍谷大学教授)              
本多滝夫(龍谷大学教授)              
松尾匡(立命館大学教授)              

【事務局連絡先】  
細川孝(hosoyanhp@yahoo.co.jp)

2014年07月09日

京滋私大教連、憲法違反の集団的自衛権の行使容認に関する閣議決定に断固抗議する緊急声明

京滋私大教連
 ∟●憲法違反の集団的自衛権の行使容認に関する閣議決定に断固抗議する緊急声明

憲法違反の集団的自衛権の行使容認に関する閣議決定に断固抗議する緊急声明

2014 年 7 月 4 日
京滋私大教連執行委員会


 7月1日、安倍内閣は戦後 60 数年続いてきた「海外での武力行使をしない」という憲法9条の解釈を変更し、憲法違反の集団的自衛権の行使容認に関する「閣議決定」を行ないました。この間、首相官邸前では連日のように抗議行動が行なわれ、30 都道府県157の自治体(京都府では向日市、長岡京市、宇治市、大山崎町)で、集団的自衛権の行使容認の「閣議決定」に反対する決議や意見書が採択されているにもかかわらず、これらの声に一切耳を傾けることなく、安倍内閣が「閣議決定」を強行したことに強く抗議するものです。

 安倍首相は「国民の命と暮らしを守る」ために、従来の憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使容認に関する「閣議決定」を行なう必要性を強調しています。しかし、「閣議決定」に向けた与党協議は完全非公開で行なわれ、国家を縛る憲法解釈の議論をしているにもかかわらず、国民を排除して密室での協議に終始してきました。こうした対応そのものが、「憲法とは権力を縛るもの」という原則を根幹から否定する極めて重大な行為です。

 安倍内閣が、歴代政権の下で積み重ねられてきた憲法解釈を一片の「閣議決定」で変更すること自体きわめて重大な問題ですが、このような手法をとらざるをえないことは、安倍首相の自信のなさを表しているとも言えます。自ら考えていた憲法 9 条の明文改憲も、改憲手続きの緩和も多くの国民の反対の声に圧されて頓挫したため、憲法解釈の変更によって戦争行為に踏み出す集団的自衛権の行使容認に関する「閣議決定」を行なう安倍内閣には、「国民の命と暮らしを守る」ために政権を担当する資格すらないと言わざるをえません。

 今回の「閣議決定」に対して、学生たちの間にも自らが戦場へ赴く対象となりうることへの不安や動揺が広がっています。大学は、過去の痛苦の反省の上に立って「二度と学生を戦地に送り出さない」という反戦・平和の誓いの下、平和と民主主義に立脚した日本社会の発展に寄与してきましたが、それ故に学生を再び戦地へ送り出すような事態を招くことにつながる道は絶対に阻止しなければなりません。

 私たちは、憲法第 9 条において「1.国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」「2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と定めた平和主義を積極的に世界へ押し広げていくことが、「国民の命と暮らしを守る」ための最善の策であると考えます。私たちは、今後、日本政府による集団的自衛権を行使させないために、多くの国民・労働者と共同して、憲法の平和主義を推し進めていく決意です。

以上

2014年07月03日

自由法曹団、安倍政権の閣議決定による集団的自衛権行使容認に強く抗議する声明

自由法曹団
 ∟●安倍政権の閣議決定による集団的自衛権行使容認に強く抗議する声明

安倍政権の閣議決定による集団的自衛権行使容認に強く抗議する声明

1 政府は本日、臨時閣議を開き、日本が集団的自衛権の行使を可能にすることを柱とする日本国憲法第9条の「解釈変更」を、閣議決定により強行した。われわれは、閣議決定が違憲無効であることを宣言するとともに、平和を求める民意を無視して閣議決定を強行した安倍内閣の責任を追及し、この暴挙に断固抗議するものである。

2 日本国憲法第9条は、1項で、個別的自衛権の行使として行われるものを含めてすべての戦争を放棄し、2項では戦争の放棄を実現するために、すべての軍備の保持を禁止し、国の交戦権を否認している。日本国憲法制定のための帝国議会においては、当時の首相であった吉田茂も、「第9条2項において一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争も、交戦権も放棄したものであります。」と答弁しており、当時の政府が、憲法9条により、個別的自衛権の行使も含めて戦争が放棄されたと解釈していたことは明らかである。

 その後、朝鮮戦争の勃発と東西冷戦構造の進展の中で自衛隊が創設された。自民党政権と内閣法制局は、憲法9 条の解釈の「転換」を図り、自衛隊の存在を認める「専守防衛論」がとられることとなったのである。しかし、この「専守防衛論」の下においても、我が国が行使できる自衛権は自国への急迫不正の侵害があった場合に防衛する個別的自衛権に限定され、集団的自衛権の行使は憲法9 条のもとでは許されないという立場が、戦後、歴代政権により堅持されてきたのである。

3 ところが、本閣議決定は、「個別的自衛権」「集団的自衛権」、そして「集団安全保障」という区分を意図的に放棄して「自衛のための武力の行使」と一括りにした上で、「自衛のための武力の行使」が憲法上許容される場合として、「わが国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合、これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るためにほかに適当な手段がない時」には、「必要最小限度の実力を行使すること」が憲法上許容される、としたのである。

 このような憲法解釈の変更は、憲法第9条の本来的な解釈から認められないことはもちろん、戦後の歴代政権の立場からも違憲であるとされてきた集団的自衛権の行使、そして集団安全保障上の措置としての海外での戦争・武力行使を無条件に解禁することを企むものであるといわざるを得ない。政府は集団的自衛権等の「限定容認」であるとの主張を繰り返すが、「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由・・・が根底から覆される明白な危険」があるか、「ほかに適当な手段がない」かどうかの判断は、時の政権にまかされており、限定のための「要件」として意味をなしていないというほかない。すなわち、閣議決定により、集団的自衛権等を名目とした海外での武力行使が無制限に許容され、日本が、世界で戦争をする国に変質しようとしているのである。

4 そして、このような憲法解釈の大転換、そして、国民の権利に重大な影響を与える国の政策の大転換を、閣議決定により行おうとする政権の態度も、強く非難されなければならない。

 安倍政権は、私的会合にすぎない「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」に、集団的自衛権の行使容認等についての検討を委ね、同懇談会の報告を受けたのち、ごく短期間の与党内での密室協議を行ったのみで、閣議決定を行ったのである。国会審議を行わず、広く国民の議論に委ねることも回避しようとする点で、民主主義を否定するものであることはもちろん、憲法に基づく政治を求める立憲主義をも否定するものである。

5 閣議決定においては、集団的自衛権の行使の容認以外にも、いわゆるグレーゾーン事態における自衛隊の活動の迅速化や、「武力の行使との一体化論」の放棄による自衛隊の戦闘地域での活動範囲の拡大等が目論まれている。これらについても、憲法9条に反する活動を拡大するものとして違憲であり、到底許すことができないものである。

6 安倍首相は、閣議決定後の記者会見においても、「外国を守るために戦争に巻き込まれることはない。」「国民を守るための自衛の措置のみがとられる。」などと説明するが、詭弁であるというほかない。過去に、集団的自衛権行使の名の下に、ベトナム戦争へのアメリカ軍の参戦、アフガニスタン・対テロ戦争へのNATO 軍の参戦等が行われたが、これらは大国による覇権を求める戦争であった。このような戦争に今、日本が巻き込まれようとしているのである。

7 自由法曹団は、政権の勝手な解釈によって憲法第9条を破壊し、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定に強く抗議するとともに、安倍政権によって企まれている、戦争する国づくりのためのあらゆる改憲策動を阻止するために、全力を尽くすことを表明する。

2014年7月1日

自 由 法 曹 団
団 長 篠 原 義 仁

2014年07月02日

日弁連、集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明

日弁連
 ∟●集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明

集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明


本日、政府は、集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定を行った。

集団的自衛権の行使容認は、日本が武力攻撃をされていないにもかかわらず、他国のために戦争をすることを意味し、戦争をしない平和国家としての日本の国の在り方を根本から変えるものである。

集団的自衛権の行使は、憲法第9条の許容するところではなく、そのことはこれまでの政府の憲法解釈においても長年にわたって繰り返し確認されてきたことである。

このような憲法の基本原理に関わる重大な変更、すなわち憲法第9条の実質的な改変を、国民の中で十分に議論することすらなく、憲法に拘束されるはずの政府が閣議決定で行うということは背理であり、立憲主義に根本から違反している。

本閣議決定は「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」等の文言で集団的自衛権の行使を限定するものとされているが、これらの文言は極めて幅の広い不確定概念であり、時の政府の判断によって恣意的な解釈がされる危険性が極めて大きい。

さらに、本閣議決定は、集団的自衛権の行使容認ばかりでなく、国際協力活動の名の下に自衛隊の武器使用と後方支援の権限を拡大することまで含めようとしている点等も看過できない。

日本が過去の侵略戦争への反省の下に徹底した恒久平和主義を堅持することは、日本の侵略により悲惨な体験を受けたアジア諸国の人々との信頼関係を構築し、武力によらずに紛争を解決し、平和な社会を創り上げる礎になるものである。

日本が集団的自衛権を行使すると、日本が他国間の戦争において中立国から交戦国になるとともに、国際法上、日本国内全ての自衛隊の基地や施設が軍事目標となり、軍事目標に対する攻撃に伴う民間への被害も生じうる。

集団的自衛権の行使等を容認する本閣議決定は、立憲主義と恒久平和主義に反し、違憲である。かかる閣議決定に基づいた自衛隊法等の法改正も許されるものではない。

当連合会は、集団的自衛権の行使等を容認する本閣議決定に対し、強く抗議し、その撤回を求めるとともに、今後の関係法律の改正等が許されないことを明らかにし、反対するものである。

 2014年(平成26年)7月1日
  日本弁護士連合会
  会長 村越  進

2014年07月01日

憲法学者ら 閣議決定断念求める声明

NHK(6月30日)

憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に反対する憲法学者らが会見し、「限定的な容認だから日本の平和主義は維持されるというのは、国民を誤解させる説明だ」として、閣議決定を断念するよう求める声明を発表しました。

声明を発表したのは、憲法学者で慶應義塾大学名誉教授の小林節さんや内閣法制局長官を務めた大森政輔さんなど、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に反対する専門家のグループです。
会見では、弁護士の伊藤真さんが「外国どうしの武力紛争に参加する集団的自衛権の行使は、その一部だとしても専守防衛を掲げてきた政府の憲法解釈の延長線上に位置づけられるものではなく、限定的な容認だから平和主義は維持されるというのは、国民を誤解させる説明だ」と訴え、閣議決定を断念するよう求める声明を発表しました。
また会見で、小林さんは「集団的自衛権の行使を容認するなら憲法9条の改正を発議し、日本人も戦場で戦うのかどうかを国民に問う必要がある。今、行われようとしているのは解釈に名を借りた憲法の破壊、無視であり、これを許せばあとで歴史の転換点だったと言われることになるだろう」と指摘しました。


2014年06月16日

憲法9条にノーベル平和賞を、署名8万超 ノルウェー委員会が推薦受理

The Wall Street Journal(2014 年6月15日)

 集団的自衛権の行使容認をめぐり憲法解釈を変更する議論が進む中、戦争の放棄を定めた憲法9条にノーベル平和賞を受賞させようという動きが広がっている。神奈川県座間市に住む主婦らが中心となってノルウェーのノーベル賞委員会に提出した推薦状が今年4月、正式に受理された。集まった署名は6月8日時点で8万人分を超えた。

 活動の始まりは、主婦の鷹巣直美さん(37)の「9条の素晴らしさに光を当てることはできないか」との思いからだった。鷹巣さんは高校卒業後にオーストラリアに留学。アフガニスタンなどの難民と知り合う機会を持ち、戦争の悲惨さを実感したという。

 その後、米軍基地のある座間市や相模原市の主婦、幼稚園教諭らが集まり、昨年8月、「『憲法9条にノーベル平和賞を』実行委員会」を設立。インターネットや街頭で署名を募り、大学教授らの推薦文と2万4887人分の署名をノーベル賞委員会に送付した。受賞対象は個人と団体に限られるため、「9条を長年にわたり保持し続けた日本国民」が受賞候補となっている。

 実行委員会の共同代表の一人、保育園理事長の星野恒雄さん(80)は小学6年生のときに終戦を迎えた。「国のために死ぬのが生きがい」の軍国少年だったが、疎開先から戻ったときに見た東京の焼け野原の衝撃は大きく、親戚も兵隊として出征したまま戻ってこなかった。「命をつぶされることがどれほど残酷なことか。戦争は嫌だというのが骨身に染みた」

 ノーベル平和賞の発表は10月。星野さんは「受理は第一歩。これからが本番だ」と候補になった後も署名を集め続けている。「今年が無理でも、受賞するまで何度でも推薦する。続ければ、9条改憲を進める人たちに対する圧力になる。署名の集まりは国民の平和への期待の表れだから」と力を込める。 

[時事通信社]

2014年06月13日

自由法曹団、『解釈改憲・立法改憲は「戦争」への道 安保法制懇報告書・批判』(意見書)を作成・発表

自由法曹団
 ∟●『解釈改憲・立法改憲は「戦争」への道 安保法制懇報告書・批判』(意見書)を作成・発表

 2014年6月12日、『解釈改憲・立法改憲は「戦争」への道 安保法制懇報告書・批判』(意見書)を作成・発表し、国会議員への要請をしました。

(意見書本文はこちら)


2014年06月06日

京滋私大教連、緊急声明「憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に向けた検討を行なうことに断固抗議する」

京滋私大教連
 ∟●緊急声明「憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に向けた検討を行なうことに断固抗議する」

<緊急声明>
憲法解釈の変更による集団的自衛権の
行使容認に向けた検討を行なうことに断固抗議する

2014 年 5 月 30 日
京滋地区私立大学教職員組合


 5 月 15 日、安倍首相は自らの私的諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が提出した集団的自衛権の行使を容認する報告書を受けて、憲法解釈の変更を検討する考えを表明しました。
 集団的自衛権とは、自国が直接の武力攻撃を受けていなくても、緊密な関係にある他国が武力攻撃を受けた際、実力をもって阻止する権利のことですが、憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使容認をすることは、「海外での武力行使」を不可能としてきた憲法上の「歯止め」を取り払う極めて重大な問題です。
 現在憲法の第 9 条では、一切の戦力不保持を明確に規定していますが、歴代の政府は「自衛」のための「必要最小限度」の実力(自衛隊)を持つことは、憲法違反ではないとの考え方を取る一方、「集団的自衛権」の行使については、「憲法上、許されない」との立場を一貫して取ってきました。
 それは、これまでの政府見解で「集団的自衛権は権能としては保有しているが、それを行使することは『自衛のための必要最小限の範囲』を超えるものであって、憲法上許されない」(1981 年 5 月 29日政府答弁書)としている通り、「集団的自衛権」の行使は、憲法上認められないとの立場を堅持してきたのです。このような歴史的経緯の中で積み重ねられてきた憲法解釈を、一内閣の判断で性急に変更することなど到底認められるものではありません。
 安倍首相は、憲法 9 条の「改正」が難しいとみると、第 96 条の憲法改正手続きの「改正」を目論んだものの、それも難しいと考える中で今度は憲法解釈の変更という手段を持ち出しました。そして、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認に対しても批判が高まる中で、それらの批判をかわすために「集団的自衛権の行使といっても、放置すれば日本の安全に重大な影響を及ぼす場合などに限定して行使する」とする「限定容認」論を持ち出しています。しかし、「日本の安全に重大な影響を及ぼす場合」を判断するのは時の政権であって、このようなまやかしの「限定容認」論を持ち出すこと自体、首相としての資質が問われる重大な問題です。
 このような安倍内閣の政治姿勢は、中国、韓国といった近隣諸国との関係を悪化させており、大学にも深刻な影響を及ぼしています。日本政府は、2020 年までに外国人留学生数と日本人の海外留学者数を倍増させる方針を打ち出していますが、日中関係、日韓関係の悪化によって、中国・韓国からの留学生が減少するとともに、日本人の学生も中国・韓国への留学を回避する動きが強まっています。
 そのため、ある大学では毎年実施されていた中国人学生との現地での交流プログラムに日本人学生の希望者が集まらず、プログラムの実施が取り止めになるなど、大学での学びにも重大な支障が生じる事態となっています。今、重要なことは近隣諸国との緊張関係を増幅させる主張や姿勢を強めることではなく、近隣諸国との相互信頼と共存関係の構築、日本国憲法の平和主義にもとづく主張と外交政策を考えていくことです。
 現行憲法の前文では、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」と規定されており、大学は、かつて積極的に学生を戦地に送り出していた痛苦の過去を反省し、「二度と学生を戦地に送り出さない。学生は二度とペンを銃に持ちかえない」という反戦・平和の誓いの下、日本社会の平和と民主主義の発展に寄与してきました。
 現行憲法の理念の下で育まれてきた平和と民主主義の礎を覆し、主権者である国民の意向を無視して、自らの判断で戦争行為に踏み出そうとする安倍内閣に強く抗議するとともに、私たちは日本社会の理性と良識を結集し、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認を許さない国民的な合意を形成していく取り組みを呼びかけるものです。

2014年04月29日

大江健三郎氏、護憲訴える 東京で沖縄問題シンポ

琉球新報(2014年4月27日)

 【東京】「沖縄の問いにどう応えるか―北東アジアの平和と普天間・辺野古問題」と題したシンポジウム(普天間・辺野古問題を考える会主催、法政大沖縄文化研究所共催)が26日、東京都内の法政大で開かれた。作家の大江健三郎氏やオーストラリア国立大学名誉教授のガバン・マコーマック氏、我部政明琉球大教授が基調講演し、米軍普天間飛行場の移設問題などをめぐって討議した。
 仲井真弘多知事による辺野古埋め立て承認などの現状を踏まえ、沖縄の米軍基地の在り方などを話し合ったほか、尖閣問題、集団的自衛権の行使容認に進む安倍政権の問題点などについて議論が展開された。
 大江氏は「沖縄ノート」執筆時に何度も沖縄に通い、沖縄戦当時の「集団自決」(強制集団死)について聞き取りをした経験などに触れ「集団的自衛権の行使容認など、民主主義を壊すことを許してはいけない。沖縄の人たちが大きな被害を被ると懸念している」と述べた。さらに「憲法を守り続けよう。それを言うことが本土の人間がなし得る唯一の行動、闘いであると考えている」と呼び掛けた。
 マコーマック氏は海外有識者による辺野古新基地建設への抗議声明について紹介。「沖縄に重荷を追わせ続けて、その上に新基地を押し付けることに県民が反対するのは当たり前だ」と話し、声を上げ続けていくことの重要性を指摘した。

2014年04月22日

自由法曹団、「改憲手続法(日本国憲法の改正手続に関する法律)改正案の廃案を求める声明」

自由法曹団
 ∟●改憲手続法(日本国憲法の改正手続に関する法律)改正案の廃案を求める声明

改憲手続法(日本国憲法の改正手続に関する法律)改正案の廃案を求める声明

1 2014年4月8日、自民党、公明党、民主党などの与野党7党により、日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案(以下「改憲手続法改正案」という。)が、衆議院に提出された。
 そもそも改憲手続法は、最低投票率の定めがなく、公務員・教育者に対する運動規制が盛り込まれ、有料意見広告が野放しにされ、広報協議会による改憲PRが無制限に認められるなど、重大な問題が含まれており、参議院で3つの附則と18項目にも及ぶ附帯決議がなされた「未完成の欠陥法」である。国民主権と民主主義の原則に反する改憲手続法の欠陥はどのように「改正」しようとも治癒するものではないのであって、改憲手続違法自体が廃止されなければならない。この点、今回、衆議院に提出された改正案は、改憲手続法の欠陥を何ら治癒しないものであることはあきらかであり、憲法9条の改悪を中心とした「壊憲」策動の一つである改憲手続法改正案は廃案にするしかない。

2 改正案は、第一に、選挙権年齢の18歳以上への引き下げをしないまま国民投票法の改正を強引に推し進めようとしている。
 第1次安倍政権下の2007年5月に成立した改憲手続法は、附則3条において、18歳以上の者が国政選挙に参加できるよう選挙権を有する者の年齢を定める公職選挙法について必要な法制上の措置を講ずるとされていた。これは、選挙年齢・成年年齢についての国民的な議論と法改正が不可欠であることを国会が確認したことを意味している。
 しかし、今回提出された改正案は、選挙年齢や成年年齢についての国民的議論をまったく行わず、改憲手続法のみを前倒しにして成立させることを前提とするものであり、改憲ありきの「見切り発車」というほかなく、断じて許されない。
 また、今回の改憲手続法案の改正が成立した後、公職選挙法が改正されないまま、国民投票が行われた場合、18歳以上20歳未満の者は、国の在り方を決める憲法改正には投票できるが、他方で憲法改正の発議権をもつ国会議員を選ぶ投票権は有しないという極めて矛盾した状態が発生しかねない。

3 第二に、改正案は、公務員の国民投票運動の参加を過度に制限しているものである。
 すなわち、改憲手続法改正案の中では、公務員が行う国民投票運動については、賛成・反対の投票等の勧誘行為及び憲法改正に関する意見表明としてされるものに限り、憲法改正の発議から国民投票の期日までの間は、裁判官、検察官等の一部の公務員を除いて政治的行為を伴わない限りにおいてすることができるとしている。
 しかし、改憲手続法の成立時に附則11条が設けられたのは、国民投票が国民の意見を最大限に反映すべきものであって、公務員の国民投票運動の自由を明記し、その自由を保障すべきとされたからである。
 そもそも憲法尊重擁護義務を負う公務員が憲法を護るために国民投票運動を行うことができることは現行憲法の趣旨に沿うものである。
 また、堀越事件最高裁判決(最判平成24年12月7日)で、公務員の政治活動は公務員の職務遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められない限り自由であることが確認されているのである。
 このような観点からすれば、今回の改憲手続法改正案で定められた公務員の国民投票運動の参加は、むしろ公務員の政治活動を過度に広汎に制限するものであり、公務員が加わった憲法運動への抑圧を生み出す危険があり、改憲手続法成立時の附則11条の見地から大幅に後退するものである。

4 第三に、改正案は、附帯決議において検討課題とされていた最低投票率、有料意見広告等の問題を積み残したまま強引に国民投票法案を成立させようとするものであり、重大な欠陥が放置したままにしようとしている。
 附帯決議の中で、低投票率により憲法改正の正当性に疑義が生じないよう最低投票率の意義・是非について国民投票法の施行までに検討を加えることや、テレビ・ラジオの有料広告規制については、公平性を確保するため、国民投票法の施行までに必要な検討をすること等といった重大な検討課題を課していた。
 附帯決議の中で課されていた検討課題は、政権与党や取り巻きの大企業による一方的な喧伝の下、国民の関心を獲得することができないまま低投票率によって国の在り方を決める憲法が改正されないようにするため必要不可欠なものである。
 しかし、国民投票法改正案は、これらの検討課題を放置したまま強引に憲法改正の国民投票だけを実現しようとするものであり、国民主権を蔑ろにするものである。

5 以上より、改憲手続法改正案が重大な問題を孕む破綻した法案であることは明らかである。
 自由法曹団は、問題点を無視したまま強引に改憲策動を推し進めるため改憲手続法案の改正を数の論理に任せて成立させようとする自民党を中心とした与野党7党を糾弾するとともに、改憲手続法の改正案の廃案及び改憲手続法そのものの廃止を断固求めるものである。

2014年4月21日
自 由 法 曹 団
団長 篠 原 義 仁

2014年04月19日

学者50人が解釈改憲に反対の会を設立

TBS(2014年4月18日)

 歴代の政権が認めてこなかった集団的自衛権の行使を憲法解釈の変更により、認めようとする安倍政権の姿勢は「危険」だとして、およそ50人の学者が「立憲デモクラシーの会」を発足させ、会見を行いました。

 「立憲デモクラシーの会」は、憲法学や政治学のほか、社会学や人文学など、幅広い分野からおよそ50人の学者が呼びかけ人となり発足したもので、設立趣意書では、「万能の為政者を気取る安倍首相の最後の標的は憲法の解体だ。今必要なことは、憲法に基づく政治を取り戻すことだ」などとして、安倍政権の姿勢を強く批判しています。

 共同代表を務める法政大学の山口二郎教授は、集団的自衛権の行使容認について議論している安倍総理の私的諮問機関「安保法制懇」を念頭に、「非現実的な想定を前提に憲法9条を事実上、なし崩しにするというような一部の学者の議論に対して徹底的に反論していくことが必要だ」と語りました。(18日20:57)

「立憲デモクラシーの会」発足
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140418/k10013859891000.html

2010年04月23日

自由法曹団、改憲手続法の施行に反対し廃止を求める声明

自由法曹団
 ∟●改憲手続法の施行に反対し廃止を求める声明

改憲手続法の施行に反対し、廃止を求める声明

1 2007年5月18日に公布された改憲手続法(日本国憲法の改正に関する法律)の施行が2010年5月18日に迫っている。
 改憲手続法は、「憲法を頂点とした戦後レジームからの脱却」を目指すとし、任期中の明文改憲を唱えた安倍晋三首相(当時)が、国民的な批判・反対の声を無視し強行採決により成立させたものである。明文改憲策動の中から生まれた改憲手続法は、「公正中立な手続法」ではなく、「9条改憲のための手続法」たる本質をもっている。
 強行採決からわずか2ヶ月後である2007年7月29日の参議院選挙における自民党惨敗は、このような「戦後レジームからの脱却」路線への断罪であった。2009年8月30日の衆議院選挙で自民党は「憲法審査会の早期始動、自主憲法制定の早期実現」を公約としたが、国民はこれを選択しなかった。改憲路線は2度にわたって国民の断罪を受けたのである。
 国民の意思に反して強行採決され、2度にわたって国民から拒絶された改憲手続法が施行されることなど許されない。……


2010年04月16日

日弁連、憲法改正手続法の施行延期を求める会長声明

日弁連
 ∟●憲法改正手続法の施行延期を求める会長声明

 憲法改正手続法の施行延期を求める会長声明憲法改正手続法は、2007年5月18日に公布され、2010年5月18日施行予定とされており、施行期日が目前に迫っている。

 同法は、附則3条において、投票年齢の問題に関し、「この法律が施行されるまでの間に、年齢満18年以上満20年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう、選挙権を有する者の年齢を定める公職選挙法、成年年齢を定める民法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする」とし、附則11条において、公務員の政治的行為に対する制限に関し、「この法律が施行されるまでの間に、公務員が国民投票に際して行う憲法改正に関する賛否の勧誘その他意見の表明が制限されることとならないよう、公務員の政治的行為の制限について定める国家公務員法、地方公務員法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとする」としている。しかし、選挙権を有する者の年齢、成年年齢、公務員の政治的行為に対する制限のいずれについても、いまだ必要な措置が講じられていない。……